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「この町なら、食べ物が買える」
町の出入り口前に来てすぐに、ユミは言った。真上にはそこそこ大きな門が建つ。
「そりゃあ、町だもんね」
サファイアは平然と言い返す。
「それにしても、ごく普通の町だねぇ」
続けてこう呑気な感想を述べた。ユミが鼻を鳴らす。
「そうかもね…。で?何を買うつもりなの?」
サファイアは即答した。
「焼き菓子!」
「やきがし??」
ユミが不思議そうに聞き返す。
「え?!焼き菓子知らないの!!?」
サファイアは逆に驚いて叫んだ。ユミはこくりと頷き、更に訊ねる。
「それは、西地方の物?」
「うん。…ああ、そうか。ユミは東地方の人っぽい感じだもんね。焼き菓子は、西地方のお菓子。すっごく美味しいんだよ!!」
「へぇ。自分の事は全然思い出せないくせに、そういう事には詳しいの…」
顔を輝かせて説明するサファイアに、ユミは半ば呆れた顔で呟いた。
「何でだろうね?」
サファイアは再び呑気そうな顔を作って、町の出入り口の門を潜る。そしてユミを振り返り、言った。
「ユミ、行こう!」
「全く………」
ユミはやれやれと首を横に振り、駆け出すサファイアの背中を見つめた。