ミランテスの町は、そこそこ賑わっていた。何もかもが平凡な造りの町だ。大通を挟んで、両側に家や店が建ち並んでいる。
しかしミランテスには、他の平凡な町とは明らかに違う、大きな特徴がある。それは、この町を外から見ただけでは到底気付く事が出来ないものであった。
出入り口の門を潜ってすぐに走り出したサファイアだったが、20歩程進むとふいに立ち止った。そしてゆっくりと空を見上げる。
「うわぁ……綺麗だなぁ……」
青空が広がっていた。金に輝く太陽も昇っている。それらを見たサファイアは、思わず感嘆の声を漏らしていた。
「どうしたの?」
ユミが後ろから、のんびりとした足取りで追い付いて来た。そして突っ立っているサファイアに声をかける。サファイアは前を向いたまま答えた。
「ううん、何でもない。ただ、この町は空が綺麗だなぁって思って」
ユミは苦笑する。
「さっきまで『平凡な町』って言ってたくせに」
サファイアも苦笑いになり、ユミに訊ねた。
「えへへ…。ねぇ、焼き菓子の店ってどこにあるの?」
ユミは首を横に振る。
「知らない。わたしは一度しかここに来ていないもの。…ちょっと待ってて。今聞いてくるね」
そう言って、すぐ近くの店に入っていった。
今度はサファイアがその背中を見送る番だった。