>>41 【スマホ?】
気付いたらそこは、地球ではなかった。いや、現代ではなかった…と言った方が正しいのかもしれない。
その惑星は地球なのかも知れない。けれど、景色は私の知っている地球ではなかった。
「なに、ここ」
目の前を通るのは鉄の自動車ではなく、薄い膜で囲まれたショボン玉の様なもの。
高校生にもなって思い浮かぶのはドラえもんの世界観で、けれどそれよりもはるかに文明は進歩している。
私は、目が点になる、という表現がぴったり合うような顔をしていただろう。
一瞬間を置いて、現実味がないその現実を認識した瞬間、スマホへ手が伸びた。
その行動は、今の女子高生っぽい。依存、とまではいかないが、やはり便利なのだ。
電源を入れる。画面が明るくなる。パスワードを入力すると、いつも通り開く。まずは110番、とダイヤルしても、つながらない。
漫画でよくある、時空を超えて電話。時空を超えて未来からの電話、なんて、幻想に過ぎなかった。
「なに、ほんとになにここ」
呑気な事を考えてはいるけれど、私はまだ女子高生。怖くないわけがない。
もし自分が、時空を超えて全く知らない世界へ来てしまったら?なんて考えたら、怖いに決まっている。
私はそんな想像をしたこともなかったし、こんな状況にでもならなければそんな例えは出てこない。少し、例えが突飛過ぎたかも知れない。
なにか。今、なにかできる対処法はないのだろうか。
道行く人を眺めていると、一人の女性と目が合った。
目があった瞬間、目を大きく開き、私のもとへ近づいてくる。私の事を知っているのだろうか、と考えたけれど、それはありえない。私は、相手を知らないのだから。
「もしかして、貴方も?」
彼女は言った。
もしかして、この人も過去から来たのかも知れない。同じ状況の人が、もっと居るのかもしれない。
高揚感を抑えきれず、何度も縦に頷いた。
「本当に!?よかった、一人だと心細くて……私もなの」
そう言って彼女は、私にスマホ?を見せた。
何故?なのかというと、そのスマホはスマホに似ているけれど、なにかが少し違ったからだ。
けれどそれはどこからどう見てもスマホだ。違和感の正体は分からずとも、スマホはスマホ。
同じ立場の人間を見つけた事で、私は嬉しくなり、喜んで自分のスマホを見せた。もしかしてこれが、過去から来たというサインなのだろうか。
彼女はとても嬉しそうに微笑み、私の手を握った。ほぼ無理矢理の握手に、私も応えた。
彼女は「いきましょう」と言い、私はそれに従った。
きっと、彼女は過去へ戻る為の方法を探しているのだと思った。
けれど、少し違和感を感じる。道行く人に話を聞いている様子の彼女は、全く緊張していないのだ。
私はガチガチなのに、なんのためらいもなく、赤の他人(未来人)に声をかけている。
コミュニケーション能力の差だろう、と結論付けてしまえば、何も言い返せない。
彼女が探しているのは、過去への戻り方だろう。早く帰りたい気持ちはわかる。
「……は、はやく見つかるといいですね」
私は少しできた間で、そう言った。
彼女は頷き、「もう見つけたよ」という。
驚いた。もしかしてここでは、過去へ自由自在に行ったり来たりすることができるのではないだろうか?
だから、こんなにも早く見つかったのかもしれない。
人類の進歩すげー、なんて思いながら、私は「どこですか?」と問うた。
彼女は目の前の扉を指さし、「入れば終わるわ」と言った。
こんなにも進歩した世界とおさらばするのは、すこしもったいない様な気もした。
けれどすぐにでも家に帰りたい私は、迷わず入ることを決めた。
「本当にありがとうございました!!」
彼女にお礼を言うと、「仲間がいてよかった」と、スマホを持っている手を振った。私も、手を振り返した。
これで帰れる。さようなら、未来。