キィ……
木製の扉が小さく音をたてて開いた。
「ようこそ、花の館へ」
そこには、数人の人が居た。お下げの人や、今にもマジックを披露しそうな人、風俗店にいそうな人や、不思議な形のスカートを履いた人、帽子に傘を持った人…不思議な組み合わせだ。俺にはメイドカフェやら美少女カフェやらを巡る趣味はないのだが。
「どうぞ、こちらへ〜」
人懐っこそうな少女…。どちらかと言えば幼女に近いだろうか。その子が俺を部屋の中央にある、テーブルに案内した。そこにはお菓子やらお茶やらが並べられていた。いくつか席があるところから見るに、茶会でも開く為の机なのだろう。俺はそのうちのひとつに座る。テラ・マーテルも、椅子に座り、側にいた幾人かも席に座った。
「何か言いたそうな顔ですね…。私で良ければ聞きますから、どうぞお話ください」
ニコリとテラ・マーテルは笑う。その笑顔は、心を開ける鍵みたいに、俺の心を開けた。お菓子をつまみ、お茶を飲みながら、今までのことについて、話していた。会って間もない他人だ。なのに心落ち着くのはなぜだろう。俺は、ふぅ…と一息ついた。
「話を聞いてくれて、ありがとう。そういえば、お代は…?」
こんな素敵なところで、素敵な体験ができたのだから、お代は弾むのだろうか。そんなことを考えながら、テラ・マーテルの口元を見つめる。
「お代ですか、そうですねぇ…あなた達がお金と呼ぶものは、こちらではただの紙切れですし…」
こちらでは?その言葉にちょっとした違和感を覚えた。ここは異界なのか?
「ですから…お代は、あなたです……」
今までと変わらぬ笑みでそう言い放ったテラ・マーテルを、驚いた目で見る間もなく、視界はどんどん暗くなっていった。
「おやすみなさいませ…花の館で、これからも良い夢を…」
そんな声が聞こえた気がした。
雨が降っていた。この世界の天気は全てテラが操っている。花に水やりをする時間なのだろう。
外にいるテラに、カルミアは声をかける。
「こんなことをしても、いいんでしょうか…?」
「あら、カルミア…。こうしなければ、生きられない。そうでしょう?」
「それは…」
「人間と同じですよ。生きるために他の生物を殺、す。そして生きる」
「それに、人間界であまり必要とされてない人達つれてきてるんだし、いいんじゃないですか…?」
後ろから別の声がする。そこにはスイレンが立っていた。
「まぁ、そうですね」
カルミアは頷く。
「さぁ、戻りましょう。次のお客を接待する準備をしなくては…」
そうテラが言い、三人は花の館へ入っていく。
その後ろには、雨に濡れたスニーカーが転がっていた。
以上!終わり!!
文才なくて申し訳ない
>>130で、誤字った。「ニュース番組が」じゃなくて、「ニュースキャスターの声が」でした。