恋の音

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1:日向:2015/02/22(日) 20:24 ID:y/2

頭の中で好きな歌手の声が響く。
ヘッドホンで蓋をした耳からは街の声も音も聞こえない。

「………」
あ、また来た。
口をパクパクさせてるから何か言ってるんだろうなー。
「…え………ん?」
は?と首をかしげる。
まぁこれは俗にいうナンパだろう。
が、こいつは違う。
寒い日も雨の日もいつもいつも来る。
無視しても「ねぇ。」と声をかけてくる。ナンパだろうけどこいつは他のチャラ男とは違う

25:日向:2015/03/10(火) 19:18 ID:y/2

「ぐすん・・・」
久しぶりに泣いたな。
私、バカだな・・・
燐くんが本当に美晴さんのこと好きじゃないことぐらい分かってんのにな。
でも、燐くんは美晴さんといなきゃいけない・・・そんな気がしたんだ。


「♪〜」
私は昔から習っていたギターを使い、作詞するようになった。
燐くんは丸々1年会ってない。
燐くんのこと忘れよう、忘れようって頑張った。でも、優しく低い声、笑うとできるシワ、あたたかい手の温もりは、バカなぐらい鮮明に覚えてるんだ。
忘れたいけど忘れられないんじゃない、ただただ忘れたくないんだ。
理由付けして自分にいいよう思い込ませてるんだ。

そんな時ふと後ろから甲高い声がした。
「りん!!」
りん・・・?
あーなんて思い込みの激しい女なんだろう。
今でもりんという名前に反応して・・・
「待てよ、美晴。」
違う・・・思い込みなんかじゃない
優しく低い声、あれは燐くんだ。
振り返えって確認する・・・と
「沙夜ちゃん?」
「?!」
気付いてしまった。
美晴さんのお腹にいる命に。
いつか、やり直そうって言ってくれる日が来ると願ってた。
いつかまた、2人で笑い会える日が来るって。
そんなの私の思い込みにすぎないんだな。
「燐くん、美晴さん、おめでとう」
「ありがとう。今幸せなのは沙夜ちゃんのおかげだよ。」
「そんなことないよ!」
「燐ーー!早ーく!」
「俺、行くわ!」
「ん、またね。」
「おぅ。またな!」
・・・「またね」か。また会う時なんて来るのかな?

26:日向:2015/03/12(木) 15:36 ID:y/2

「はぁ〜」
大きなため息をついて机に顔を伏せていた。
「席替えすんぞ〜」
担任のダルそうな声が聞こえた。
席替えか〜・・・
くじ引きを引く・・・
1番?
黒板に書かれている席に着く。
窓側の1番後ろ。
・・・よいしょ
あ〜・・・ダル・・・
も、学校やめちゃおうか。
そう・・・考えてため息をついた時だった。
「あ・・・の!!」
「・・・は?」
隣にいる男の子が声を発した。
「お・・・れ、なんかが・・・隣で、ごめんなさい!」
「へっ?」
「いや、お、俺が隣で・・・嫌なんでしょ?」
「プッ!!ハハハハハ!!」
「?!」
一呼吸おいて言った。
「嫌じゃないよ」
「えと・・・ため息・・・」
「あぁ、アレはキミにしたんじゃないよ。」
すると彼はホッと胸をなでおろした。

こういうのを運命って言うんだ。
・・・多分。

27:日向:2015/03/12(木) 16:24 ID:y/2

「ねね、キミ名前なんてゆーの?」
「お、俺?」
「は?あんた意外誰がいんのさ?!」
「かっ・・・笠原・・・か、楓。」
笠原楓・・・ね。
笠原楓がジーっと私を見る。
「・・・あ?」
「いっ・・・キミは?」
「私がなに?」
「なっ・・・名前!!」
なにコイツ!
ウケんだけど!!
「沙夜!榛名、沙夜!!」
「榛名さん・・・よろしくお願いしますです。」
「ははっ!ですいらないっしょ!」

アレ・・・?
私、落ち込んでたんだよね?
おかしいな。なんで笑顔なんだろう?

28:日向:2015/03/12(木) 16:59 ID:y/2

今日知ったこと、笠原楓は野球部だってこと。
そして・・・
「はっ?!キミ、エースなのっ?!」
「え、うん。」
うっそ?!
こ、こんな弱虫野郎が?!
「野球て・・・単純なんだね。」
「・・・はっ?なな、なんで?!」
「キミがエースできんなら誰でもできんじゃない?」
すると笠原楓はだってと言い訳っぽく言った。
「投手俺しかいないから・・・。」
「・・・えぇ?!」
ちょちょちょちょ?!
はぁ!!?
「そんなんでよく俺、投手だからとか言えるねぇ!!」
「だって部員、少ないし。」
「少ないしって何人??」
「・・・え〜と・・・12人?13人?」
・・・コイツ、終わってるってか始まりすらないよ!!
「部員の数も把握できずよくエース気取れんなー!!」
「うっ・・・」

でもまぁ、楽しいしいっかな?

29:日向:2015/03/12(木) 23:54 ID:y/2

「笠原くんいますか?」
「笠原ー!呼んでるー」
誰だろ、あの子。
「宮園さん!」
宮園と呼ばれた女の子は茶髪の天然パーマがかかったショートの可愛い子。
笠原楓と楽しそうに話してる彼女を見てうらやましいと思った。
・・・って!!
何思ってんのさ!!
しっかりしろ、沙夜!!!
話を終えて戻ってきた笠原楓に聞いてみた。
「さっきの子、誰?」
「えと、野球部の・・・マネジだよ?」
「ふーん」
わ、私ったら何を気にしてるんだろ?

明日は土曜日だからコイツに会えないのか〜・・・
そう思っていたらつい口が滑った。
「2日も会えんね。」
「・・・え??!」
・・・ちょちょちょちょ!!ちょっと!
!私、何いっちゃってんの?!
「わわわ、忘れて!!!」
「う、う、うん!」
あぁーー!
私最近変だ。

30:日向:2015/03/13(金) 00:14 ID:y/2

土曜日は案の定暇暇暇暇ーーー!!
時計は17:00
グランドでも覗きにいくか!

「♪〜」
やってんかなー?

カキーン!

・・・おぉ?!
いい音じゃん!
笠原楓は〜・・・居た!!
スーッと息を吸って叫んだ。
「笠原楓ーーーー!!!」
「?!」
部員みんな揃って私を凝視。
「はっ、榛名さん?!」
「そそ!榛名さん参上!」
すると、笠原楓の友達らしき奴が言った。
「お前、男みてーだな!」
「しっ、失礼な!!」
そして、私は言った。
「私ね、マネジ、やりたい!」
「・・・えっ?!」
「え?ダメなわけ?」
「えと?」
「も〜・・・宮園さんいるー?」
するとビクビクした宮園さんが近いて来た。
「いい?」
「うん、1人だとわりと大変だから」
「まじ?!ありがとー!!」

私、恋したかもしんない。
かも・・・ね。

31:日向:2015/03/13(金) 01:01 ID:y/2

部員は12人。
1番エース 笠原楓
2番 笹岡アユムくん
3番キャプテン 花元夏樹くん
4番 中山祐一郎くん
5番 田辺陸くん
6番 矢部忠司くん
7番 松田悠也くん
8番 佐々木徹くん
9番 濱田伊織くん
10番 山内錬太郎くん
11番 太田琉衣くん
12番 篠岡波流くん
みんないい人だ。

「あたしは、宮園知恵だよ。」
「榛名沙夜です。」
「沙夜ちゃん、よろしくね。あたしのことはちーって呼んでね。」
「ちー!!」
「えっ?!はい!!」
可愛い!!
「ぷっ!よろしく!」

32:日向:2015/03/15(日) 00:35 ID:y/2

「いけーーっ!」
「走れ走れ!!」
いやいやいや・・・あっつ!
暑いし熱い!
「マネジやるんじゃなかった〜」
「沙夜〜?」
「なっ!中山?!」
中山は最近よく絡んでくる。
「今〜、地味〜に言っちゃったよな〜?」
「言ってないし!!」
「あぁ?」
あぁ?って何さ、あぁ?って!!
「あ〜!!もう!!うっさい!!練習しなきゃ試合出さないよっ?!」
「ずっずるー!!」
こうして中山との会話が終わる。

「榛名!」
「んー?」
「コレ、よろしく」
「おん!」
グランドの整備
「榛名〜!」
「なーん?」
「コレ片しといて!」
「はー?もー!!わかったわ!!」
野球ボール磨き
「榛名〜!」
「榛名っ!」
「榛名ーーー!」
・・・
「あーーーもーー!うっさい!!」
「「「はっ?!」」」
「何かあったらすぐ榛名〜榛名〜って!!ちーもいるっての!!」
すると嫌味が飛ぶ
「だって宮園は女の子じゃーん?」
「そーだそーだ!」
はー?
「わっ私やって女の子やん!!」

こんな風に笑える日が来るなんて思っていなかった。

33:日向:2015/03/16(月) 15:59 ID:y/2

「笠原楓発見!」
「あ、榛名さん」
笠原楓は静かに外を眺めていた。
「ねぇ、榛名さん?」
「んー?」
「そろそろさ、フルネーム呼び、やめない?」
あー・・・ね
「んぢゃ、なんて呼べばいい?」
彼は一瞬考えて言った。
「楓・・・かなぁ?」
「か・・・えでね!」
「うん。じゃあ呼んでみて?」
え?!
なんか・・・キャラ変した??
考えていると
「早く!」
と急かされた。
「かっ、楓!」
「っ!!」
・・・何この沈黙!!
すると楓がこの沈黙を破った。
「お、俺も・・・さ、下の名前・・・で呼んでいい?」
「もち!呼んでみ!!」
ドキドキしつつ耳を傾けた。

「沙夜」

楓の声は燐くんの声とは反対で男の子にしては高いけど落ち着いててまるで子守唄みたいな声だった。
「はは!なんか変な感じ!」
「まー慣れるっしょ?」
この時私の中で何かが動いた。

34:日向:2015/03/16(月) 16:19 ID:y/2

・・・いつだって幸せの次には必ず辛くて切ない出来事が訪れる。

「今日は転校生を紹介します」
転校生?いきなりー!!
音を立てたドアから入ってきた人を見て固まった。
・・・な、んで?
「神崎隣くんです」
「神崎です。仲良くしてください。」
隣くん?あの、隣くん?
み、美晴さんは?
私の中で一つの疑問が生まれた。
・・・赤、ちゃんは??
「神崎の席は〜っとあそこだ。」
先生が指差したのは楓の後ろ。
楓が言った。
「沙夜?元気なくね?」
「そそそ、そんなこと、なっ、ないしっっ!!」
ガタン
「久しぶりだな、沙夜ちゃん。」
「そ、そだね」
隣くんと私を見て楓が不思議な顔をした。
「り、隣くん、美晴さんは?」
「んー、別れたよ。」
「はっ?!赤ちゃんは??」
「天国?にいるよ。」
流産・・・しちゃったの??
「で、でも何で別れちゃったの??」
「辛いんだって、俺といたら、赤ちゃんを思い出すって」
そんなの・・・神様は残酷だ。
隣くんはたったの、たったの16歳なんだよ?
最近まで義務教育を受けていた男の子だよ?
重すぎるよ・・・。

隣くんいわく、美晴さんの親後さんに反対され、堕ろしたらしい。
美晴さんは泣いていた、ずっとずっと謝っていたんだって・・・。

「はぁ〜」
「ため息?らしくないねー?」
「ちーはのんきでいいよぉ・・・」
「失礼な!ちーだって悩んでるよ?」
「何々??」
「こっ、恋?とか??」
「っ!!」
思いきって聞いてみた
「相手は??」
「や、矢部くん」
「たっ忠司?!」
「しっ、しーー!!」
「ごめんごめん!」
みんな、恋してんだなー

35:日向:2015/03/19(木) 20:34 ID:y/2

「沙夜?」
「あぁ、楓!何?」
「最近無理してる?」
「何が?」
「心から笑ってないよね?」
「そっ!そんなことないよ!!」
「ん・・・そか。」
嘘だよ。
心から笑ってないよ。私、初めっから笑えかった。
そりゃ、本当に本気で笑ってたこともあったよ。
でも私多分・・・絶対明るいキャラになりきってる。
この間までおとなしめな子だったのに・・・いつからだろ?

「沙夜ちゃん!」
「ちー?何?」
「今日ね野球部員でお昼一緒に食べるの!だから沙夜ちゃんも食べよ?」
「うん!!もち!」
「じゃあ、笠原くんと屋上に来てねっ!!」


キーンコーンカーンコーン
「楓!行くぞ!!」
「え?!どこに??」
「昼飯食いにだよ!!」
「はっ?」
「いーから来い!!」
バタバタする楓を引っ張って行った。

ギギー
錆び付いて重たい扉を開けるとみんなはもう来ていた。
「榛名と笠原遅い!!」
「だって楓が!!」
ギギー・・・
「りっ?何で??」
「よぉ!俺も混ぜろ!」
「はぁ?」
いきなり入って来たのは・・・燐くん。
「はぁじゃねーよ」
「はぁ?」
「俺も一緒に食うんだ!!」
「ダメだし!!ねぇみんな??」
するとみんな口を揃えてこう言った。
「大歓迎〜!」
最悪!!!

食べてる最中、燐くんが言った。
「沙夜ちゃん、笑うの下手だね」
「は?」
「そんなの心から笑ってませーんって言ってるもんじゃん。」
「そんなん・・・」
誰のせいだと思ってんの?
「何?」
「別に・・・」

「なぁ!」
「あ?」
「あ?じゃねーよ!」
はいテンションで声を掛けてきたのは花元。
「んで?何??」
「神崎と榛名、何でそんな仲いいんだよ??」
言葉が詰まった。
燐くんが言った。
「席が、前後だから」
「まじでか〜??」
「マジだから。」
そんなの・・・
「そんなの!本当のこと言えばいいじゃん!!」
「沙夜ちゃん?」
「何しらばっくれてんの??」
「沙夜ちゃん、やめっ!」
「私達、付き合ってたの。でもあることが理由で別れたの!」
沈黙を矢部が破った
「あることって?」
「おい!!」
花元が止めるのを無視して言った
「燐くんの元カノに別れろって圧力掛けられた上、燐くんは元カノのこと忘れてなかったの」
「沙夜ちゃんっっ!!」
「それで子供できて、親に反対されて堕ろして、彼女に振られて、何が目的か知らないけどここにきたんだよ。」
・・・私、何いってんの?

私はその場から走って逃げた。

36:日向:2015/03/25(水) 13:06 ID:y/2

翌日
「みんな!昨日はごめん!!!」
「えーと・・・」
みんな驚きを隠せない様子
「あのね、最近の私変だったんだ。」
「変?」
矢部くんが聞いてきた。
「うん。」
「えと、沙夜ちゃん、もっと詳しく説明いいかな?」
ちーが落ち着きを保ちながら聞いてきた。
「私ね燐くんと知り合う前は暗くて、全然笑わないし、喋んないし、人に興味がなかった。」
燐くんとの出会いを思い出す。
「そんな時、燐くんに出会った。無視っても話しかけてくるし、その場所に行かなくてもずーと私を待ってるし、台風の時だっていたんだ。燐くんは、そんな奴。」
・・・あ!私燐くんの紹介しちゃってんじゃん!!
「ま、まあ、だんだん燐くんと会話するようになっていった。いつの間にか笑えるようになった。」
・・・それで
「あぁ、これが恋かーって思った。」
そうだったなー。なんて思い出しながら話した。
「んで、色々あって付き合うことになった。」
美晴さんのことも全部話した。
「そんでね、みんなに出会って気づいた。」
みんな、なんて言っちゃってるけど本当は『楓』だったりするんだよね。
「あれは、恋じゃなかったんだ。憧れだったんだ。」
「えーとそれで、つまり?」
「今!!」
「今、何?!」
「恋してるんだ!!」
明るくなれたのも、たくさん笑えるのもよく考えたらぜーんぶ楓に出会ってからなんだ。
「誰に恋してんの?!」
「ひーみーつ!」
「けーち!」

私は恋してる。
恋すると人って変わる。
確か初恋って実らなかったっけ??
ま、そんなん私がかえてやるよ!!


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