私の憂鬱な日常を憂鬱な非日常に塗り替えた者がいる
それは、自称天使と名乗る死神だった――……
ジャンルはミステリーと言っても、大したトリックは無しです
殺人も起きません
定期更新では無いので更新が遅いです(完結しないかも)
>>02登場人物
「貴方……私と……私の父と……一体どういう関係?」
曖昧な答えを許さない、強い口調で問い詰めた。
「別に何も?貴方との接点も、君の父上との関わりは無い」
「何故あの時……」
「あれは譫言だ。気にするな」
あれだけ意味深長な発言だったのに、あっさり譫言で片付けた。
嘘……嘘よ……
「貴方、何のためにこんな事をしているの?」
「金に目が暗んだ……というような馬鹿馬鹿しい理由ではない」
彼女は帽子を深くかぶり直した。
「警察をからかって楽しんでいる愉快犯?」
「それも違う。一つだけ言っておこう……これは私の意思ではない、とね」
彼女は静かに言い残すと、マントを翻した。
「……っ」
「それではさようなら」
目を開けると、もうパラグライダーで彼女は飛んでいってしまった。
漆黒の闇夜に身を潜めて……
W章 〜heat up!〜
翌日、何も収穫が無いまま平穏な日々が続いた。
色々彼女に尋問したい事は沢山あるが、中々問い詰めることが出来ない。
学校のテストも刻々と近づいてくる。
「何かニュースやってないかなぁ」
適当にチャンネルを変えていると、異変に気づいた。
「うわ、どのチャンネルも同じニュースばっかり……!」
『今朝、ハリブッドスターの最須田芽亜さんが誘拐されました。
返して欲しければ身代金1億を出せ、とのこと。このことに関して警察は……』
「最須田芽亜が誘拐!?」
「どうやらそのようだな」
ワトソンは顔を顰め、テレビの画面を食い入るように見つめた。
NEW character file
最須田 芽亜 Mosuta Mea ♀
DATA
ハリブッド映画によく出演する中学生女子。
何者かに誘拐された。
名前はシャーロックホームズに登場する
『メアリー・モースタン』より
>>49
いぇいぇ('`*
考えてる小説が大人だね!!!!感動
れ-ちゃんって呼んでも良い??
これからも読ませてもらうね('-'*
タメで良いよ!!
じゃあれーちゃんで!>▽<ノ
ありがとう^^
学校ではそのニュースが大騒ぎになっていた。
愛凛は週刊誌を机に広げ、その周りに女子が集まっている。
「まじかぁ、芽亜ちゃん好きなのにぃーっ!無事でいてくれぇ!」
男子女子共にぎゃあぎゃあわめいている。
璃香は友達の広げた週刊誌をチラッと見た。
「……えっ……?」
そして食い入るように見入った。
「ねぇっ、この写真の背景、近くの廃工場の倉庫に似てない?」
「「「「ええぇっ!?」」」」
私は隣にいた愛凛に言ったつもりが、大勢の人が寄ってきた。
「確かに似てるけど……」
「廃工場の倉庫なんてどこも同じようなもんだし」
半ば男子は呆れたように言った。
「璃香、大体なんで君が廃工場倉庫の壁なんて知っているんだ?」
ワトソンが少し不審そうに聞いてきた。
「前、友達の猫がそこに迷い込んじゃって……その時に見たわ」
私は答えた。
「ともかく、もしその可能性がとすると……」
「えぇ、ちょっと確認するだけなら……」
私は放課後廃工場の倉庫へ足を運んだ。
廃工場の倉庫は施錠されていたが、簡単に針金でピッキング出来た。
「ふふ、私って天才ー!なんか怪盗みたい」
(※璃香が天才な訳ではなく、壊れかかっていたので案外誰でも出来る)
「でも前猫を探していた時は鍵なんて……」
重い鉄製の扉を開けると、中には鉄パイプや部品が散らばっていた。
殆ど埃をかぶっていて、長年放置されているようだ。
「誰もいないみたい……やっぱりここには……」
「んーっ!」
「「!?」」
背後から濁り曇った高い声が聴こえる。
「まさか……っ!?」
鉄パイプとドラム缶の後ろには――……
瑠香やっぱり天才ですよ!
60:レモンπ:2015/04/21(火) 00:34 ID:CS2 ミリーさんありがとうございます!
瑠香は一応天才なんですねw(死神見えてる時点で)
これからも瑠香とワトソンの活躍にご期待下さい!
「んーっ!」
茶色いガムテープで口を封じられ、呻いている少女。
ドラム缶の狭間に括りつけられていた。
縄できつく縛られ、身動きがとれない状態だ。
「やっぱりあの動画は……っ!」
「もたもたしている暇はないぞ、誘拐犯が戻ってくる前に縄を解け!」
ワトソンが璃香を促す。
「大丈夫?」
縄を解き、ゆっくりガムテープを剥がした。
彼女の口の周りに酷い跡が残っている。
かなり長時間ガムテープを貼られていたと思われた。
「はぁっ……はぁっ……ありがとう……あなたは一体何者?」
彼女は涙目になりながら瞬きし、璃香を見た。
この少女――只者ではない……?
「何者……って……普通の中学生、宝務璃香よ。さぁ、ここから早く出ないと!」
ドラム缶に座り込んだ芽亜に手を差し伸べ、立ち上がらせる。
璃香は芽亜の手を引いて、廃工場から駆け出した。
「と……とりあえず交番に行こう!」
2人は廃工場から400m程離れた交番に向かった。
「すみません、あの……!」
交番の担当者は警察かと疑うかのごとく、いびきをたてて熟睡している。
愛用のアイマスクとクッションを持ち込み、寝る前提での出勤だ。
「あの!」
「う……わ!」
璃香が怒鳴りつけると、鼻提灯が割れて飛び上がった。様に見えた。
「は……はいなんでしょう……って貴方は……!」
警官は眠い目をこすり、芽亜を凝視した。
「悪いな、どうやらまだ寝ぼけているようだ……」
「違います!本当に最須田芽亜です。監禁されていたのを助けてもらったんです」
芽亜は警官と璃香を交互に見ておどおどしながら言った。
「本当か!?すぐに警察庁と親族に連絡致します!」
その後、2人は事情聴収を受けた。
若い女性の刑事が2人に暖かいココアを差し出し、優しい口調で言った。
コトンとマグカップの置く音がした。
「では、本題に入るわね。まずは最須田さんから」
「はい」
「貴方は犯人の顔を見ましたか?体格などの特徴を覚えている限り言ってもらえないかしら?」
穏やかで、話しやすそうなトーンだ。
芽亜は躊躇う事なく全て言った。
「顔は……覆面をしていたのでよく分かりません。声も変声器かなんかで変な声で……
体格はガッシリした男の人です。背も高いです」
「ありがとう。次に、貴方はいつ、どんな風に監禁されたの?」
「撮影の帰り、車まで行こうとしたら背後から口を塞がれて……短い距離だったのでボディーガードをつけて いませんでした」
女性刑事は頷きながら手帳にメモをとっていた。
それと同時にワトソンも紙に何かを書き込んでいる。
「次に宝務さん」
「あっ……はい」
私は少し戸惑いがちにおどおどしていた。
堂々と、ハッキリ話せばいいものを……
「何故、貴方は廃工場に監禁されていることを知っていたのですか?」
「テレビで見た監禁動画の背景……壁にスプレーで『☆』の落書きがあったんです。それがここの廃工場と同じ落書きがあったので、ちょっと様子を見に……」
刑事は少し警戒した様に顔を顰めた。
中学生にしては、鋭い洞察力と行動力ね――……
「それで、案の定最須田さんが監禁されていました」
最後の方は小声になって掠れてしまっていた。
「ありがとう。他に変わったことは?」
「あ……私一度前に廃工場に行ったんです。その時は鍵なんてかかって
いなかったのに、今日来たら鍵がかかっていました。でも壊れかけていたので私でもピッキングできるくらいでしたけれど」
ピッキング――……!?
ますます刑事は璃香を不審に思った。
前回V章後に番外編の告知をしましたが
W章後に変更します
番外編は森亜恭二がメインの才能開花!
〜4.5章 教授の憂鬱〜
閲覧して頂ければ幸いです^_^
刑事は事情聴取を終え、自分のデスクに戻った。
「あの……本当にありがとう」
芽亜はおずおずと頭を下げて言った。
「別に、大丈夫だから」
私は頭を上げるようにはにかんだ笑顔で言った。
それから芽亜の元に数十人のボディーガードが来てリムジンに乗せられた。
「よければ宝務さんもご一緒に……」
「いえ、結構です。私は自分で」
これ以上芽亜と関わると厄介だ。
私は逃げる様にその場を立ち去った。
それから数日後、廃工場は閉鎖されて警察が立ち入っている。
テレビで私の事も放送され、学園でも騒ぎになっていた。
「ちょっと璃香!最須田芽亜を助けたって本当!?」
「あぁ……うん」
曖昧に頷きながら、群がる人集りを避けようとした。
「宝務が言ってた背景って、本当だったんだなー」
誰かが関心したように言う。
「でも璃香無事で良かったー」
「うん、でもまだ犯人は捕まっていないみたい」
現場には証拠もあまり残っておらず、捜査は困難なようだ。
「璃香、何か引っかかる事がある。もう一度あの廃工場に行こう」
ワトソンが警戒したように呟いた。
「無理よ、警察が封鎖して入れない。姿が見えないワトソン一人で行けば?」
「……あぁそうする」
ワトソンは璃香に背を向けて言った。
ワトソンは一人で例の廃工場へ向かった。
工場にはkeep outの黄色いテープで封鎖され、立ち入りが出来ない。
正面にはかなりの数のパトカーも停まっている。
即に何人かの刑事や鑑識が出入りしており、アメリカの警察も立ち入っていた。
「エライ騒ぎだな……ん?」
ワトソンは廃工場の正面玄関を見た。
砂で薄く今にも消されそうな、足の痕跡。
幸い警察の保護が適切だったので、足跡は消えずに残されていた。
「おかしい、足跡が一つしかない!工場に入った痕跡はあるのに出た足跡が無いなんて」
もしも彼女を監禁するなら、足跡は二つ残るはず。
しかしここには一つしか存在しない。
仮に担いで連れてきても、廃工場を出た時の足跡が残るはずだ。
璃香達が駆けつけた時には誰もいなかったため、後から廃工場を出たと考えるのが自然。
「つまり……廃工場には別の出口が有ると言うことか!」
ワトソンは廃工場へ入っていった。
事件当時からドラム缶やその他の配置は一切変えられていない。
ワトソンは睨みつけるように周りを見回した。
「怪しいところは……ここなんか……どうだ?」
羽を器用に使い、深緑色の煤けて潰れた古いドラム缶を押しのけた。
「ビンゴ!分かりやすいな」
ドラム缶の下に穴があり、かなり深く大きい。
大人一人は祐に入れそうだ。
ワトソンは口角を釣り上げ、ニヤッとした。
そして穴の中へ飛んでいった。
「なるほど……ここから廃工場へ出られるな」
穴は廃工場の下水道管に繋がっている。
下水道管からは泥の付いた足跡が残されていた。