文才上げるために書く短編集 (失踪する可能性あり)

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1:ムクロ:2015/11/01(日) 19:37 ID:3uI

短編を書くだけ。それだけ。ファンタジーもあればリアルもあり。シリアスもあればシリアルもあり。
ただし、文才を上げるために書くだけのスレなので失踪する可能性あり。
とりあえず、>>10を目指す。
>>10までいけたら>>50目指す。

2:ムクロ:2015/11/01(日) 19:59 ID:3uI

不思議。それがワタシの種類を表す言葉だ。
いつもいつも不思議なことばかり言うから、あだ名は不思議ちゃん。
今日も学校でそう呼ばれた。
けれど、このあだ名はとても不快だった。

「あれぇ?不思議ちゃんは今日は黒魔術の訓練じゃないの〜?」
「こんなところで何してるんだ?他のところが君の居場所だろう?」

もちろん、ただの戯れだ。いじめなどではない。現に、言ったのはワタシの友達だ。しかも、小学校に通っていたころからの友達。

でも、なんか不快。とっても不快。

足下にある水溜まりに、持っていた閉じた傘を突き刺した。
水飛沫が上がり、それが膝まで伸びたワタシの白い靴下を濡らした。
白い靴下に染みができる。

「あぁ〜あ」

やっちゃった。
でもいいや。洗えば落ちるだろうし。
そう思って浅い池から出て家に向かって再び歩き出した。

空は朝の黒かった空とはうってかわってとても綺麗な澄んだ青空。
でも青空というより水空。青というより水色の空。

空を見ていると、隣から声が聞こえてきた。

「あれぇ?また空見てるのぉ?」
「またって何、またって……不思議ちゃんが空しか見てないみたいじゃないの」
「ミキ、だってそうだろう?僕はクルの言葉が当たってると思うけどな」
「ちょっとルイ。不思議ちゃんが困ったようにしてるじゃないの!!」
「なんだよ、僕に歯向かうのか?」
「二人ともぉ、喧嘩はダメダメだよ〜」

もう、本当にコイツらは……。
いくら小学校からの付き合いだからってそこまで言うことないと思うんだけどなぁ。
唯一ワタシを庇ってくれたミキはルイと掴み合いをしていた。折角の可愛い服がしわくちゃになっちゃうよ、二人とも。

「喧嘩しないの。さっさと帰ろう?」
「でも、いいの?ルイったら……」
「いいの。それは帰ってからね。クル〜行くよ〜」

クルがいつも通り、通りすがりの人にちょっかいをかけているところに声をかける。
通りすがりの人も大変だな。クルのちょっかいに嫌な顔一つせず、素通りだなんて。

「はぁい〜」

フリフリのスカートを揺らしながらクルがワタシのところに来た。
そして、皆で家に向かう。
今日もワタシは一日不思議ちゃんでしたとさ。

「あ、アタシ今日エビフライ食べたいな」
「うん。クルもエビフライ食べたぁい」
「えー僕はハンバーグが食べたいよ」
「お母さんが決めることだから、分からないからね」

3:ムクロ:2015/11/01(日) 21:38 ID:3uI

認めたくなかった。

「だって、あいつ暗いじゃん」

アイツがアタシをそう思っていたなんて。

「あいつと幼馴染みとかマジ信じらんねー」

嘘だと思いたかった。

「でも、あいつの姉ちゃんちょー可愛くてさー」

昔から気づいてはいたけれど。

「あいつの姉ちゃんのユリ姉ちゃんのためにあいつと幼馴染みやってるっていうか」

でも、そこまで言わなくなっていいじゃん。

「ユリ姉ちゃん、すっげぇかわ……__」

あいつが私に気づく。
クラスメイトの机に座って、他の男子二名と喋っている幼馴染みの雄太を睨みつけた。

私は教室に入って、雄太の寝癖の一つもない頭に向かって持っていたゴミ袋を投げつけた。
ゴミ袋はドサッという音をたてて床に落ちた。ゴミ袋に当たった雄太は「なんだよ!!」と私を睨んだ。
私も負けじと雄太を睨む。
雄太と喋っていた男子はコソコソと夕暮れの教室を出ていった。

「……信じらんないのは私の方よ」

怒りと絶望で胸が締め付けられ、やっと出た声はとても小さかった。
雄太は「ハッ!!」と笑った。

「なんだよ!!本当のことを言っただけだろ!!」
「本当のことって……本当のことって何よ……」
「ユリ姉ちゃんは可愛いけど、お前は暗いってことだよ。そんなこともわかんねぇの?やっぱお前低脳」

低脳。
その言葉でついに私の堪忍袋の緒はプチンと音をたてて切れた。
全部切れた。涙腺も堪忍袋の緒も、全部。
私は泣きながら雄太に向かって暴言を吐いた。

「そんなこと言うアンタが低脳だ!!暗いってなに!?私は暗くない!!このクソ!!このチビ!!アンタのようなバカが私の幼馴染みなんて、信じらんない信じらんない!!死んじゃえばいいのに!!」

雄太はそれでキレたようで、私の頭を叩いてきた。二発くらい私の頭を叩いて、暴言を吐く。

「てめぇはホントにユリ姉ちゃんに似てないのな!!このブス!!お前みたいな低脳クソ野郎が幼馴染みなんてオレ不幸だよな!!」
「うっさいうっさいうっさい!!ねぇは関係ないでしょ!!ねぇのことを持ち出さないでよ、バカ雄太!!」
「ホントのこと言われて泣いてんのかよ!!泣き虫!!」
「昔は私より泣き虫だったじゃん!!」
「昔だろうが!!」

言い争っていると、「やめなさいよ!!」という声が廊下から聞こえてきた。
見れば、廊下には数人の野次馬がいて、その中には私が「ねぇ」と呼んでいる姉の百合がいた。

「なにやってんの!!ユウもモモカも大声あげて!!恥ずかしいと思わないの!?」

大声をあげてるのは、ねぇも同じなのに。
私はその言葉をグッと飲み込み、「ごめんなさい」とねぇに謝った。

「アタシじゃなくて、ユウにでしょ。ユウも謝って!!」
「……分かったよ。……ごめん」
「ちゃんと目を見て!!」

雄太が私の目を見て頭を軽く下げる。

「……ごめん」

私も雄太の目を見て「ごめん」と改めて謝った。

「うんうん。仲良しが一番。二人とも、もう喧嘩しないでよ?」
「「はい」」

昔からそうだった。
雄太が私のことをどこかで悪く言って、それを私が知って泣きながら雄太に暴言を吐く。雄太も暴言を吐いて子供っぽい喧嘩になる。
そしたら、ねぇが来て「謝りなさい!」と言う。私も雄太もねぇには逆らわない。
謝ったら、ねぇは「喧嘩しないでよ?」と一言言う。

昔とまったく同じ光景に、少し笑えてきた。

4:ムクロ:2015/11/01(日) 22:45 ID:3uI

「おやおや。リエルさんではありませんか」
「あらあら。サナリィさんではないですか」

目の前にいる金髪の女性に言葉を返す。
胸元と背中の部分が開いている、不埒なミニドレスを纏ったサナリィはワタクシに向かって大きめの炎の塊を飛ばす。
ワタクシはそれを綺麗に避ける。

「あらまぁ。避けれるのですねぇ。アナタのような者には避けれないと思っておりましたが__っと。危ないですわね」

ワタクシはサナリィの言葉を遮るように同じように炎の塊で攻撃した。
サナリィはその豊満な胸を揺らし避ける。それはそれは優雅に舞うように。
彼女は見た目だけ良い。だからその優雅な姿はとても美しかった。

「ふふ。ごめんなさい。アナタのような者にはこの程度の技で十分かと思ったのですが……珍しく、ワタクシが間違えてしまったようですわね」

沸点の低い彼女は顔を醜く歪めたが、それは一瞬のことで、すぐにいつも通りのいやらしい笑顔に戻った。

ワタクシは自分の白く清楚なワンピースの裾を摘まみ、お辞儀をした。

「それでは。そろそろお時間なので」

そして、そのままサナリィと同じ色の髪を揺らしてサナリィの横を通った。
途中、サナリィはワタクシの肩に手をおき、

「小娘が」

と、低い声で言った。

まったく。はしたないこと。
女性なのですから、低い声は出さない方がよろしくてよ。
ただ……小娘ですか。
いいじゃないですか、小娘。まだ若いということですね。
ワタクシが小娘というのなら、サナリィ、アナタは大娘ということになりますね。
双子と言えど、アナタは姉なのですから。
嗚呼。あんな不埒な姉を持って、ワタクシはなんて不幸なのでしょう。

5:ムクロ:2015/11/02(月) 17:58 ID:3uI

手に持っている白い餅にパクッと噛みついた。
餅という名前通り、もちもちしていて柔らかい。弾力もあり、中に入っているアンコも甘く美味しい。
ただ、つぶあんなのが残念なのだが。

あんこ餅をパクパク食べながら、私は隣に座る男の顔をチラリと見た。
東洋人特有の黒い髪に黒い目。肌は西洋人に比べれば黄色いが、それでもそこら辺の人よりは白い方だ。
顔もそこら辺の人よりは良いだろう。手足も細くて綺麗だ。男にとっては嫌なことだろうが、女っぽくて可愛いと思う。
この間見た人間が言っていた、「男の娘」ってやつだと思う。
推定年齢は14歳だろうか。若いな。

私はたびたびチラリと男を見ながら餅を食べ続けた。
おっと。そろそろ餅を食べ終わってしまいそうだ。あとで母屋の客室からとって来なくてはな。
そう思ってチビチビと餅を食べる。
アンコの入っているところを通りすぎ、もう皮だけだ。
アンコが甘く美味しかったものだから、ちょっと物足りなく感じる。これは味を楽しむのではなく、食感を楽しんだ方がいいな。
……って、あーあ。食べ終わってしまった。残念。

私は立ち上がって母屋の客室に向かおうとした。が、立ち上がった直後、男が衝撃的なことを言った。

「あ、食べ終わったんだ」

一体誰に言っておるのか!?
私はフラッとしてしまった。貧血気味なのだろうか……。
って違う違う!!そんなことじゃない、貧血じゃない!!
今私が面している問題は、そう……___。

「どうして私が見えておる!?」

叫んで男のほっぺたを引っ張った。
「ひたいひたい」と男は声変わりのしていない声で訴えてくる。
私はほっぺたを引っ張っていた手を引っ込めて、その場に正座した。

「痛いな〜、もう」
「もう、ではないわ!!どうして私が見えているのだ!!」

私は男を指差した。

「なぜお主のような、いかにも軟弱そうな者に見えておるのだ!!いや、軟弱とかは見える見えないの話ではないのだが……いや、ある、のか?関係あるのかもしれないな……」

最後の辺りはブツブツとただの独り言。
男は笑った。ふむ、可愛いじゃないか。ただ、残念ながら男だ。

「いやー、可愛いねー」

お主の方が可愛いと思われるが。

「あ、自分、名前は勝義っていいます」
「かつよし……?ふむ。勝義か。いい名前じゃないか。顔と名前は少しみすまっちな気がするが……まぁ、良いだろう。許す」
「ゆ、許すって……」

苦笑いされた。
なんかムカつくのでほっぺたを少し引っ張っとく。
女のような顔をした男__勝義は、私の頭にポンっと手を置いた。
そして、感嘆のため息を漏らして頭を撫で回す。

「うわー、ふわふわしてるー」
「座敷わらしとて、皆が皆、すとれぃとへあーではない」

そう言うと、勝義は「えぇ!?」と叫び、驚いたような顔をした。
なんだ?なぜ驚く?あ、私がただの子供だと思ったか!?

「バカめ!!私はただの子供でわはないわ!!」

そう言って、身に付けていたわんぴぃすから一瞬でお仕事仕様の赤い着物に変わる。
そして、金髪だった髪もお仕事仕様の黒髪へ。

「私は座敷わらしだ!!勝義、私に会えたことを喜ぶが良い!!」

暖かくなってきた春間近のこの時期。
雪もやっと溶けて、この温泉宿の主人も喜んでいる今日この頃。
私、座敷わらしと人間の勝義は、初めて言葉を交わした。

6:ムクロ:2015/11/03(火) 13:58 ID:3uI

「んじゃ、やろうか!!」
「やろうやろう!!」

「あははっ」と甲高い女子の笑い声が聞こえる。
この年頃ともなれば、そういうことに興味を持つことは普通のことだ。
だがしかし、本当に実践しないでほしい。ましてや、本物がいるところで……。

「え、えっーと!!は、花子さーん。遊びましょ〜!?」
「遊びましょ〜!!」

はいはい。無反応無反応。無反応が一番。
飽きて帰るまで無反応っと。

「……?」
「何も……ない、よね?」
「うん……」

先ほどまで元気があったのに、いきなり元気がなくなる。
うるさくなくて良いけど。

数分たつと、彼女たちは帰っていった。
見る限り、怯えてはいた。けれど、どこか楽しそうだった。子供はいつもそうだな。

私はフッと息をつき、三番目のトイレのドアを開けた。
そこにトイレはなく、広い部屋があった。
赤い絨毯に赤いソファ。焦げ茶色のテーブルにたくさんの本棚。そして、好きなことをしている怪談の仲間たち。
……ここに集まっているのは、学校で有名な怪談に出てくる者たちだ。
そして、私は特に有名なトイレの花子さんである。
ただ、おかっぱ頭だったのは、もう何十年も昔のことだ。

「おっ、お帰り〜」
「お帰りじゃないわ!!アンタ、人に面倒なこと押し付けて〜!!」

マイペースな自己中心的な女の名前は闇子。私の親友である。……そのはすだ。
巷では知名度の低い子だったりする。
黒い髪に黒いワンピース。顔は可愛い。

「だって、皆は花子が出てきてくれた方が喜ぶでしょ?」
「だからって……いっつも私ばっかじゃないの!!だから闇子は知名度低いのよ!!」
「だ、だって〜私は面倒臭いのきら__」
「いいから代わりにやってよ〜!!」

私は闇子に近くにあった本を投げる。
闇子の額にその本は当たり、鈍い音が部屋に響く。
闇子の頭の中は何も入ってなくて、空洞なんじゃないの?

「はいはい、そこまで」

パンパンと手を叩いて喧嘩を終わらせようとする男は人体模型。
よく気持ち悪いと人間共に言われているが、どこが気持ち悪いのか私には分からない。むしろ、こちらの世界では1、2を争うほどの美形のはずだが……。

「じ、人体模型が言うなら……」

顔を赤くしながら闇子がそう言った。
私に近づき、「ごめんなさい」と言ってくる。
まったく。闇子はいつになったら人体模型に告白するのかしら。

「ふふ。二人は仲が良いわねぇ」
「そりゃあモナさん、私達親友ですもの!!」

闇子、私はあなたと親友をやめたくなったよ。

優雅に紅茶を飲みながら言ってきたのは有名な人食いモナ・リザさん。
皆「モナさん」と読んでいる。
最近の悩みは体重のことだそうだ。

「あ、モナさん、その紅茶……」
「ん?あぁ、この紅茶?」

モナさんの飲んでいる紅茶に気づく。
その紅茶、もしかして__。
私はモナさんから離れたところにあるソファに座った。
面倒事に巻き込まれたくないからだ。

「ベートーベンには内緒よ?」
「内緒とは……なんだろうね?」
「そりゃあこの紅茶は、ベートーベンの……あら?」

いつのまにかモナさんの後ろに立っていた男。それはかの有名な音楽家……の怪談化してしまった別人同然のベートーベンさんだ。
ちなみに、こちらのベードベンさんは体に悪いところがない音痴な方だ。

モナさんは「やべっ」と言った感じで紅茶をテーブルに起き、そそっと逃げて行く。

「モナさん、これは僕の紅茶じゃないのかい?」
「あ、あら?そうだったかしら?ごめんなさい。間違えたのだわ」

いきなり、どこからともなく、たくさんの楽器が出てきてモナさんを攻撃し始めた。ベートーベンさんの得意な攻撃だ。

「君はいつもいつも僕の茶菓子や紅茶を……!!」
「やめて!!やめなさい!!顔に傷がついたらどうするのよ!!」

苦笑いしかできない。

「あの人たちも仲が良いよね。僕は良いことだと思うな」
「そ、そうかな〜?私には仲が悪いようにしか……」
「闇子に同意」

これはいつも通りの光景だ。
私が仕事(ほぼサボってるけど)から帰ってきて、闇子と喧嘩して人体模型が出てきてモナさんが笑いながらベートーベンさんの紅茶を飲んで、それがベートーベンさんに見つかって怒られて。

こんなのを人間に見られちゃあ、怪談も怖くなくなっちゃうわよね。

7:ムクロ:2015/11/05(木) 19:33 ID:3uI

「あっーははは!!キサマなんぞに負けると思うか、勇者よ!!」

と、叫んでから勇者と戦った若いころもありました。ええ、ありましたとも。
けど、あれは若気の至り?ってやつであって、僕が悪いわけじゃないわけであって。
久しぶりに見た昔の夢を思い出しながら心の中で自分を必死に守ろうと言い訳をしていると、トントンと質素過ぎるドアが叩かれた。

「やあ」

手を上げて、人懐っこそうな笑みを浮かべる男。
彼こそ、この僕を倒した正真正銘の勇者だ。だがしかし、今は職業を変えてコックになっている。そんでもって今は僕の相棒である。

僕は「やあ」と返して、ベッドから出た。
「ふわあ」と欠伸をすると、元勇者のリイは笑った。
まぁ、元魔王である僕がこうして欠伸というマヌケそうなことをしているのに笑いが隠せないのだろう。
僕が全盛期であったのなら、リイに切りかかっていただろう。
だが、今は全盛期でもないし、僕はもう、そこまで若くないのだ。
戦う気なんて毛頭もなかった。昔の僕と今の僕じゃ、性格が劇的に変わっていた。

「今日は市場で極東にある島国のソースを手に入れたんだ」

リイが嬉しそうに言ってきた。
極東にある島国……あぁ、聞いたことがある。
100年以上鎖国をしている国で、その国だけで流通している調味料や香辛料は滅多に市場に顔を出さないのだとか。
しかも、その調味料や香辛料はとてもとても美味しいらしく、こちらの国々では同じようなものを作り出すことが出来ないでいた。
数が少ないながら質が素晴らしく良いなどなど……。そんな噂くらい、コックの相棒を持つ僕はたくさん聞いていた。

「へぇ。それはそれは。で、どういうものなんだ?」
「あぁ、名前はしょーゆと言ったかな。これはとても凄いんだ!!早速このしょーゆに合う料理を作りたいと思う!!」

興奮気味にそう言うと、リイは僕の部屋から出ていき、キッチンがある下の階におりていった。

本当に元勇者なのか……と半ば呆れながら、僕は昔の敵の後を追った。

誰だったか。『昨日の敵は今日の友』などと面白いことを言ったのは。
本当、その通りだと思った。

8:じゃじゃん:2015/11/05(木) 20:25 ID:Icg

どれも素敵なお話ですね♪読んでてとても楽しいです。
特に私は3のお話が気にいっています(*^▽^*)

9:ムクロ:2015/11/07(土) 14:22 ID:3uI

>>8
ありがとうございます!!
>>3の話ですか……!!
推敲してなかったものですので……ちょっと恥ずかしいです(*´ω`)

10:ムクロ:2015/11/07(土) 14:45 ID:3uI

僕のクラスには、変わったやつが一人いる。

「しょうがないから達哉が手伝ってやろう!!」
「いや、いいです」

身長は小学生高学年レベル。言葉使いも小学生高学年レベル。頭は平均的。顔はいわゆるショタ顔、つまりは小学生高学年くらい。
どっからどう見ても、一部の女子が喜びそうなこの高校生ショタ野郎の名前は斎藤 達哉。
ことあるごとに僕に話しかけてくるやつである。

高校生ショタ野郎我らが達哉くんは、今日はどうやら僕の手伝いをしたいらしい。
今僕はクラスの皆から集めたたくさんの地理のプリントを持って職員室に向かっていた。
20枚程度の薄っぺらな紙。手伝ってもらわなくたって大丈夫だ。
なのに、だ。我らがショタは手伝いたいのだと。
しかもなぜか上から目線。生意気だ。
性格は顔に出るってか。なるほど。だからショタ顔なのね。

「手伝わせろっ!!無視するなーっ!!」
「はいはい。あとでアイス奢るからね〜」
「舐めやがって!!」
「舐めたくもない」

なぜこうも僕につっかかってくるのだろうか。
そういえば、休み時間に達哉が誰かといるのをあまり見かけない気がする。
見かけたとしても、一部の女子が熱心に話しかけているだけで、友達って感じではなかったはず。

もしかして、僕と友達になりたい、とか?
……いやいや、まさか!!そんなわけないだろう。

「手伝わせろーっ!!」
「もう職員室近いしいいよ」

うんうん。そんなわけないだろう。
この生意気なやつがねぇ……。ハハハ。

心の中で乾いた笑いをしていると、達哉が僕の制服の裾を掴んだ。
こういうところも実にショタっぽい。
僕は「なに?」と振り向いた。
達哉は顔を照れたように赤く染め、小さな声で言った。

「達哉が手伝ってやる」

子供っぽい。実にショタっぽい。
僕は達哉の粘り強さに負けたことにして、プリントを半分持たせてやった。
達哉はパアアァと効果音がつきそうな明るい顔になり、満足げに頷いた。

「お前は見るからにひ弱そうだから、このプリントを持っていけなかったんだろ!!」

なんとまぁ酷い解釈だ。

「達哉は見るからに強い。だから手伝ってやろう!!感謝しろよーっ!!」
「はいはい」

子供って疲れるなー。ハハハ。
僕はまた心の中で乾いた笑いをして、歩を進めた。


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