カゴノナカ

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1:梅っ子:2016/12/10(土) 13:44

このカゴからは出られない。

12:梅っ子:2016/12/15(木) 23:07

>>11

【あ、間違って>>9ってしていた…!正しくは、>>10です(・_・;】


(( _ _ ))..zzzZZ


「シアーナ!起きて!大変なの!」
「…ん。リーファ?どうしたの?」
「ご主人様が…右の手首を自ら切って自殺を図ったようなの!ど、どうしよう。」
他の奴隷はこそこそと耳打ちをしていた。私は五感すべてが優れていて、体の丈夫で強い一族に生まれた。耳打ちの内容は丸聞こえだった。
「…今なら抜け出せるよ…ね?」
「…ご主人様…情けない…から抜け出せるに決まってる。」
とりあえずカゴの中から出たい一心の奴隷が多くいた。カゴの中から出たら、もしご主人様が助かったときに私たちは即死刑だ。大事なご主人様の情報を売っているかもしれないから。
「ねえ、シアーナ?聞いてる?今は、私なんかより優秀なエルフが手当てに当たっているの。でもいつまで魔力が持つか…、多分ご主人様、助からない。私たちせっかく仲良くこんな奴隷でもなれたのに…また奴隷商人が来て、また売りさばかれて…また大事な人と、引き裂かれるの?そんなの…ひどいよっ。」
リーファは泣き始めた。まるで売り買いされる自分よりも、売り買いによって引き裂かれる仲の方が悲しいらしい。私は涙を拭うリーファの両手をとった。
「リーファ。私たちはね、カゴノナカ。ずっと出られない。そう教わってきたよね?」
そう、ずっと教わってきた。
「でも…。」
「リーファ、カゴノナカがさ…もしも地球だったら、もしも宇宙って意味なら…私たちはね自由なんだよ。」
「カゴノナカが宇宙…?」
「宇宙がカゴって事…!その宇宙から出られなくてもいい。でも、こんな小さな世界では息が詰まりそう。ねえ、みんなも聞いてよ!」
ざわついていた奴隷たちが口を閉じる。
「私はシアーナ!よく拷問部屋に行っていたバカ!でも今だけこのバカの言葉を聞いて!カゴノナカからでられないって、私たちずっと言い聞かせられてた!でもそのカゴノナカってどのカゴなんだろう!?私は宇宙がカゴだと思うわ。私は宇宙から出る事はできないと思うし、何よりもこんな息が詰まるところで一生を過ごすなんて…出来ないよ!」
涙が今にも溢れそうだ。でもまだ。まだ早い。もう少しだけ。泣くな。
「シアーナ、十分よ。」
リーファが私の前に立った。
「リーファ…?」
「みんな!シアーナの言うとおりよ!私もカゴはこんなところではないと思うの!きっとみんなもそう思っているはずよ!ご主人様は自殺を図るほど追い詰められていた。私たちも一緒よ!ご主人様の最後を見届けてから出発しましょう。自由な世界へ。」
リーファの言葉を聞いてみんながまたざわつき始めた。悪い意味ではなく、いい意味で。すごく顔が生き生きしていたのだ。みんなの顔が。生きる事。死ぬ事。それは案外近くにあって気づいていないだけなのかもしれない。

13:梅っ子:2016/12/16(金) 22:00

まだ、10歳にも満たないような子供の奴隷が一言放った。
「ご主人様は、優しくなったのに死んじゃうの?」
男の子はくいっと首を傾げた。
「シアーナ、私もうわからないわよ…。」
「私は…誰がなんと言おうとこんなところから出て行ってやるんだから!お父さんやお母さんそして妹の事を忘れた事なんて一度もない!それに、拷問の数々も命令も全部許せない!みんなはカゴノナカからでられない!って言葉に惑わされているんだよ!」
息を切らす。言葉がうまく出ない。下手な言葉しか並べられない。
「…シアーナ!もういいの。私はここに残る。」
「リーファ!?なぜ…」
「私は戦う事はできないし役立たずどころか足手まといになってしまうもの。シアーナ、大好きよ。でもあなたにはついてはいけない。あなたと私は大きく違うんだもの。」
そんな事ない。リーファは私がここへ連れてこられた時から一緒で、冷静で落ち着いている言葉が何よりも好きだった。リーファがいない日なんて考えられなくて、リーファの大きな胸が温かくて少し日に焼けた黒い肌も好きで、何よりもリーファが好きだ。私は戦う事になってもリーファを捨てる事ももちろん他の奴隷を連れて行って捨てるなんて事はしない。
「…勝手にすれば。私は一人でも行く。リーファのこと、私も好きだったよ。じゃあね。」
私は大きく地面を蹴った。出口に向かって。突き進んだ。

カゴノソトだ。カゴノソトにでられたんだ。
「こんな鎖…!」
腕の力で鉄の塊を足から取り外した。中々の力だなと自分でも思う。リャンシー族は砂漠の武道族王者である。砂漠の暑さに耐え、砂漠で暮らすのに真っ白な肌が特徴だ。それに五感が優れていて第六感と呼ばれる声。声はどんな動物も従わせてしまう声と言われている。試した事はないが。
「…リーファ、なんで来てくれなかったの…?」
やけにリーファの死ぬ姿が生々しく想像させられた。

14:梅っ子:2016/12/17(土) 09:05

なんで、リーファが…?
「そんなのおかしい…!さっきだって私あんな事言おうなんて思ってなかった…!」
まさか…洗脳の力を持った誰かが私やリーファを陥れたとしたら…?マズイことだ、本当に。ご主人の宮廷へと体の向きを変える。死なないで、リーファ。
「…絶対に、シアーナのところへは行かせないわ!後ろの奴隷も絶対に…!」
リーファは両手を広げ、足を力強く地面に突き立てて声を荒げていた。
「はは、できるのかな?君なんかに。シアーナという奴はさっき出て行ったバカか。事情を把握できず哀れなやつだな。それと、君は見たところエルフではなくエルフヒューマンに見えるのだが?」
「…だから、何よ!」
「…ん?弱いって言ってるんだよ。僕にこんなに簡単に詰め寄られちゃってさ。恐怖を隠しきれなくて肩も…」
するっと男はリーファの方を愛でるかのように撫でた。
「こんなに震えちゃってさ。弱いって言っているようなものじゃん。可愛いねぇ〜。」
リーファは相手の肩を力強く押す。
「離れ…てっ!そんな茶番には付き合わないわよ。私はこの子たちを守る事だけが目的なんだから。」
「…はは。僕ね、君みたいな正義感あふれた子、すごく嫌いだよ?僕はそんな子絶対に抱けないね。」
「抱いて欲しいなんて言ってないわ。そんないかがわしい事をあなたとできるわけないでしょう!さっさと消えなさい!」
リーファは声を精一杯出していた。私はただこの状況を見ているだけ。
「…あー、言う事を聞いてくれないものから、あそこの子少し人質にしちゃおうっと。」
あ、目が合った。バレタ。謎の変な男と。

15:梅っ子:2016/12/17(土) 22:18

「あー、やっぱりそうだ。君、あのエルフヒューマンの言ってたシアーナって子じゃん。なになに?戻ってきたの?助けるために?あーあ。すご〜く足手まといになっちゃうのに…。」
馬鹿にされている。見たところ18歳から20歳ほどだろう。男に両腕を片手で掴まれた。やたらと力がこもっていて腕がちぎれそう…!
「…く、そっ!離せ…!」
体を大きく使って逃げる事を試みるが、敵わない。
「…はは。僕の方が大人だし男だし、女の子の君が力で勝るわけないでしょ?あれ、でも君エルフヒューマンの子に見放されて逃げていくときの脚力半端なかったよね?もしかしてリャンシーの子?」
「…ッ、だったらなに…」
「はーい、注射打ちまーす。」
どこから取り出したのか、注射器で私の右の二の腕から体内に液が流れ込む。
「…あっ!?」
脚がカクンと折れた。もちろん骨折ではないが、力が入らない。手を使って起き上がろうと思ったら手も動かない。
「…痺れ、薬…!」
「そーだよ?リャンシーの子と前戦ったことがあってね〜。力が強すぎてね。それを思い出してさ。コレねー君たちのご主人にも使ったんだよ?その後に手首を切ってさ。もー、暴れる暴れる〜。ウザくて殺しちゃった。」
「…そんな理由で!」
リーファが叫ぶ。
「んでもさ?君たちだってあの男を好いていたわけじゃあなかった。しかも立場はご主人様と奴隷。神とドブネズミじゃん。」
くそ、なんで動かない。肝心な時に、どうして。
「面倒臭いなあ。じゃあ君たちぜーんぶ僕の奴隷にしてあげるよ。もちろんリャンシーのシアーナちゃんもね。じっくり飼いならしてやるよ。」

16:◆NA:2016/12/18(日) 20:59

【とんでもないクズ君が出て来てる…。ウッザァァァ!!(笑)】

17:梅っ子:2016/12/18(日) 21:06

「そんな勝手なこと…私たちは認めないわ!」
リーファは必死に反抗する。
「えー、でもさ殺したやつから利益を得ないと僕殺し損じゃん?だからこの破綻寸前の宮廷と軍と奴隷をもらおうって言ってんの。」
「意味わからないわ!こんなに小規模な宮廷…宮廷とも呼べないし、軍も軍人様たちはそんなに強くもない!」
リーファは言った。涙をこぼしながら。
「何で、また傷つかなければならないの?私たちは心を思いっきり解き放てる場所で生きたいだけなのに…それしか望んでいないのに…」
「リ…ファ…!」
「はいはい。所詮奴隷の言葉だしねえ。ご主人様は僕がこの場で3分間…蘇生させてあげるよ、ゾンビとしてね。そして僕がここの主人になる事を認めさせる。それで文句ないだろう。ご主人様に言いたいことがあるなら、その時に言いなよ。蹴り飛ばしたいならすればいい。切り刻みたければ切り刻めばいい。3分間の間あいつは僕が魔法をやめない限り…無敵になるからね。なにをしようと切り傷は数秒で完治してしまうよ。痛みは本人に届くと思うけどね。」
そう言って男はご主人様の近くに小さな円を描き始めた。…魔法陣か。本も見ずにあんな複雑な魔法陣式を組み上げるなんて…。男は5分ほどで二つの魔法陣式を組み、描き上げた。本当に正確な意味を成す魔法陣なのだろうか。
「…その魔法陣、なにも見ずに描き上げたみたいだけれど本当に正確なもの?もし違うなら…」
リーファがそこまで言うと割り込むように男は口を挟んだ。
「まあ見てなって。僕は失敗なんかしないから。んで?このご主人の名前なに?名前僕が知ってないと術をかけられないんだ。」
「…ヴァラシュ様よ。」
「はい、ありがとう〜。ではでは、コホン。」
男は軽く咳払いをした。それと同時に先程までのようにノラリクラリチャラチャラした印象がなくなるほど目つきが変わった。さっきまで髪の色も目の色もなにも私は気にしていなかったが、全て黒く漆黒の闇を纏ったような闇そのもののような印象を与える見た目だ。
「ヴァラシュ、汝の魂を肉体へ引き戻そう。僕…ゾルヒの力で。さあ、一時の生命を与えよう!蘇るがいいヴァラシュ!」
魔法陣は輝いて黒い煙を発生させた。失敗…?
「…ん、ここ、は、俺の家、か。奴隷どもは…?」
「ヴァラシュご主人様!」
「ご主人様!」
「ご主人様!!」
奴隷が歓喜の声をあげてご主人様の周りを囲んでゆく。
「…リーファ、ナターレ、ミル、ライン、ヴァン、ストーア、ハヤテ、フーラ、ゴルザ、ミレミ。…お前たち…が俺を救ってくれたのか?」
「…いいえ。ご主人様。」
リーファが残念そうにひどく残念そうに首を振った。
「あの者です。あなた様を死に至らしめ、殺した張本人です。」
リーファはゾルヒをピンと指差した。
「私たちがしっかりしていなかったばかりに…」
「はいはいはーい。待ってよ奴隷。僕が先に話するからそこどいてー。はあーい!僕が君を殺したんだけどー、覚えているかなあ?まあそれでなんだけどそこの奴隷のリーファちゃんたちを僕にくれない?なぁーに、君との生活ほど不自由な思いはさせないよ。君の死を先延ばしにしてあげるから、奴隷全員の命と君の命の交換しよう?」
「俺の…命と?」
ご主人様は嬉しそうに返答をした。

18:梅っ子:2016/12/19(月) 19:01

>>16
【ゲスが増えました(笑)ご主人様に加え、まさかのご主人様を殺した犯人のゾルヒ君…!すごーく、変な名前にしたかった!今回もまたコメントをくださってありがとうございます。少しのコメントでも書く元気が湧いてくるので嬉しいです!】


(( _ _ ))..zzzZZ


「俺の命が助かって、奴隷も今より豊かな暮らしができるんだろ?」
「ああ。そうさせてもらうつもりだ。あ、忘れていたが、軍やこの建物も頂くからな。」
ゾルヒは頷いて、付け加えた。
「ははは。構わねえよ。こんな弱い軍なにに使うか知らねえが、こいつらはとにかく弱いぜ。考えて使えよ。まあなんていうか…俺って人生の勝ち組だな。命拾いっていうんだよな?こういうの。おい、奴隷のクズども!この男に逆らうなよ。俺の命も危なくなるんだからよお。」
かん高くご主人様…ヴァラシュは大笑いした。
「な…ヴァラシュさ…ご主人様!何故そのような…!?」
軍人が叫んだ。
「たかが奴隷なんかの命、軍人たちの命なんかよりも俺の命のが大事って話だよ!こんなことも理解出来ないなんてクズ中のクズだな。腐った飯よりも最悪だ。」
ヴァラシュはまだ笑う。澄ました顔で。もう少しで2分15秒そこらだろうか。早く、3分間立って仕舞えばいいのに。
「おい、それは俺の話を飲み込むってことでいいのか?」
「ははは。いいに決まってんだろ!奴隷はまたいくらでも、募り直すさ。軍人たちもな。じゃあなクズどもが。」
「どこか行くのか?」
「ああ。生き返ったことだしな。」
「待て、死ぬまでの期間を教えてやろう。おお、結構長いな。…50秒後だ。死ぬのは。じゃあ、伝えたいことも伝えたし、行けよ。」
「じゃあなゴミ奴隷たち!50年後に俺の死体の目でも潰せるといいなー。なんてな。」
そう手を振ってヴァラシュはあっさりにも逃がされた。
「んーじゃあ、残り20秒。僕、50秒としか言っていないのにバカな男。」
ゾルヒはニタリと笑った。その笑みだけで全てが終わってしまう気さえした。

19:◆NA:2016/12/19(月) 19:05

【ゾルヒ君もご主人様もゲスいよぉ…。確かに、コメントをくれると書く気力が湧きますよね!私も小説書いてるのでそうです。(笑)】

20:梅っ子:2016/12/19(月) 23:24

>>19

【◆NAさんも書いていらっしゃるんですか…!私はぱぱぱーっと考えたのをそのまま式なので、会話ばかりなんですけど…。◆NAさんの小説の題はなんですか??時間があるときに是非読ませていただきたいです!】


(( _ _ ))..zzzZZ


「ねえ?リーファちゃん。君が一番ご主人様想いだったみたいだからお願いをするね?ご主人様…じゃなかった。元ご主人様の残りカスこっちに持ってきてよ。まだその辺にあるでしょ?」
「…リーファ、ダ…メ…ッ!」
リーファ、行かないで。ここでいうことを聞いてしまえばこいつのいいなりになってしまう。リーファはヴァラシュご主人様の奴隷の中のリーダー的存在。それが崩れれば他は崩れるほか道はない。
「分か…りま、した。」
リーファの手を見るとカタカタと震えていた。肩も、足も。引きずっている。すべての出来事を。リーファは、ご主人様の首元の服をつかんでずるずると引きずってきた。もはや持ち上げることもままならないほどの震えということか。
「おお、ありがとう〜。じゃあ消しちゃおうか。これ。」
パチンとゾルヒが右手の親指と中指で音を鳴らす。同時にゾルヒは興奮が抑えきれないようなゾクゾク体に染み込んでくるような笑顔を見せて言った。
「フレイア!」
その言葉は宮殿に響いた。ご主人様は炎に包まれて一瞬で骨も残らず灰になった。
「…リーファ!」
体からそれでも痺れは抜けなくて。カゴからも出られなくて。もう一度やり直したい。人生をもう一度最初から。無理な話だ。手から炎を出す魔法は使えても、今と昔を行き来することができる魔法は存在しない。どうすれば…

21:◆NA:2016/12/20(火) 16:22

【『明日なんて来なければよいのに』
 です!文才無いので下手ですが…。
 あと名前コロコロ違いますが(笑)】

22:◆NA:2016/12/20(火) 16:23

【すいません!
 『明日なんて来なければ良いのに』
 です。】


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