ここは明確スイーツ研究部!

葉っぱ天国 > 小説 > スレ一覧 1- 101- 201- 301- 401- 501-キーワード▼下へ
1:モンブラン:2017/01/27(金) 22:06

文才とかないですけど、
見てくださったら嬉しいです。

330:みぃ◆8Q 『終わる世界でキミに恋する』大好き!:2017/08/18(金) 17:20

19.突然お泊まり!?
制服のまま、近所のスーパーへ入る。
うぅ、寒い…!
買い物カートの上に真美。
下に実柚乃ちゃんのカゴを入れて、野菜コーナーから見る。

「実柚乃が作ろうと考えているのは、トゥボロのキャラ弁」

トゥボロの!?
トゥボローーー最近出来たテーマパークのキャラクター。
すごい最近新しくテーマパーク出来るよね。
真美たち、出来る度に晴奈ちゃんたちと行ってたけど。

「食べてみたいな、トゥボロのキャラ弁。実柚乃ちゃん、本当にありがとうね」

実柚乃ちゃんのスマホで調べながら買い物を済ませていく。
ええっと…。
真美の夜ご飯は何にしようかな…。

「真美ちゃん、夜ご飯決まらないの?…あ、そうだ!実柚乃の家においで!泊まってきなよ!」

「え!?」

泊まり?
真美、迷惑かけちゃうし、いきなりそう言われても、実柚乃ちゃんのお母さん困っちゃうし。

「いいでしょ?お母さんに電話するからね〜」

クックパッドを閉じて、実柚乃ちゃんはお母さんに電話。
ちょっ、えっ?
本当に泊まるなんてダメでしょ!

「いいって。泊まってって!」

「でも…」

「いいでしょっ!」

実柚乃ちゃんは、真美のカゴに入っている食パンを実柚乃ちゃんのカゴに移して、カゴを戻してきた。

「真美ちゃん、家帰って荷物まとめてきていいよ!実柚乃が買い物済ませとくから。そしたら真美ちゃん家行くから、それまでにまとめといてね!」

えええーーっ!
ここで断るのも断りにくかったから、家に帰って荷物をまとめる。
歯ブラシ、タオル、歯磨き粉、明日の制服、体操服…。
と、まとめているうちに実柚乃ちゃんが来た。

「もーしもーし、実柚乃だよーっ」

旅行バッグに荷物を詰めて家を出る。
カギをかけて、オーケー!

「突然ごめんねっ」

「うんん。さ、行こ!」

実柚乃ちゃんに手を引っ張られて、制服に旅行バッグの真美。
制服にスーパーの袋にスクールバッグという変な真美たちだった。

331:みぃ◆8Q 『終わる世界でキミに恋する』大好き!:2017/08/18(金) 17:32

20.お姉さんはお母さん!
実柚乃ちゃんの家はマンションで、マンションにしてはすごく広かった。
もしかしたらお金持ちかな。

「お邪魔しま〜す」

実柚乃ちゃんの家に入ると、実柚乃ちゃんのお母さんらしき人が顔を覗かせた。

「あら、実柚乃お帰り。その子が真美ちゃん?」

「はい。今日は本当にありがとうございます。多田本真美です。実柚乃ちゃんと仲良くさせていただいてます。よろしくお願いします」

ペコリと頭を下げると、実柚乃ちゃんのお母さんらしき人はニッっと笑う。
か、カワイイ〜。

「実柚可は、実柚乃の姉!み、ゆ、か。ね。よろしく」

お姉さんなの!?
実柚乃ちゃんは、玄関をスーッっと通っていき、実柚乃ちゃんの部屋に通してくれた。
大人っぽいな〜。
実柚可さん。

「真美ちゃ〜ん、今日は、実柚可のこと普通に話していいから」

は、はーい。
実柚乃ちゃんと同じで家庭科得意なのかな。
フライパン持ってたし。
それにしても、綺麗だな〜、ここ。

「実柚乃のお母さんが、実柚可。お母さんは亡くなったから」

そっか…。
実柚可さん、実柚乃ちゃんのお姉さんでありお母さんなんだ。
ジュワーっと音がして、ハンバーグが見えた。
今日はハンバーグッ!
真美が好きな食べ物だ!

「実柚乃先お風呂入るね〜」

パジャマを持って、実柚乃ちゃんがお風呂へ行くと、部屋はシーンとした。
キッチンへ行って、実柚可さんと並ぶ。

「真美が手伝えることありますか?」

「真美ちゃん、そういうときは、真美が手伝えることある?でいいの!」

笑いながらハンバーグにソースをかける。
うっわ〜、いい香り。

「お願いしたいところだけど、終わっちゃった。ハハハ〜」

実柚乃ちゃんも実柚可さんも、笑顔が素敵だな〜。

「実柚乃、ご飯出来たから早く出てきなさいよ〜!」

実柚乃ちゃん家中に、ハンバーグのいい香りが漂った。

332:薫◆4I (ノ ゜Д゜)ノdice4:2017/08/18(金) 18:27

真美ちゃんのお祖母さん、厳しいね……
私、ほっといてくれるよ。
でも、その分終わったら言い訳するな、自分の出来ることをやれ、って言われる。
でも、真美ちゃん偉いね!
自分に出来ることを頑張ってる!

333:みぃ◆8Q 『終わる世界でキミに恋する』大好き!:2017/08/18(金) 18:44

薫ちゃん、コメントありがとう。
真美ちゃんがちゃんとやってなさすぎて怒ってたね。
このことで、真美ちゃんは何を学ぶのか!
続くよ!

334:みぃ◆8Q 『終わる世界でキミに恋する』大好き!:2017/08/19(土) 09:57

21.ふーちゃんの願い?
実柚乃ちゃんの大きなベッドで、漫画を読みながらおしゃべりする。
最近、漫画にハマったんだって。
真美が漫画を読むのは初めて。

「八王子プリンスって言って、小説やドラマにもなってるんだよ!」

「ドラマ!?すごい作品…。八王子プリンスって、タイトルは聞いたことが…あるような…?」

うーん?
どこかで聞いたことがあるんだよね。
いつだろう。

「まあまあ、いつでもいいでしょ。一巻から読んで読んでっ!」

主人公の女の子が、八王子の男の子に恋する物語。
舞台は…私立学校。
八王子。
幼なじみの男の子に恋した!?
八王子の男の子って幼なじみだったってこと!?

「…真美ちゃん、気付くことない?」

「気付くこと?」

漫画をペラペラめくりながら、いろんなことを考えた。
主人公の名前が、若干実柚乃ちゃんに似てるとか?
ミキノだから。

「ミキノって名前は似てるけど、これ、ふみちゃんにめちゃめちゃ似てると思わない?物語」

ふーちゃんに!?
幼なじみに恋するところは…。
それに、真美と同じ立場の子出てきてるし、コヨも、実柚乃ちゃんも!
真美の立場の子の名前は、マコ!
ふーちゃんの立場はミキノだけど。

「この作品を書いているのは、ふみちゃんのお母さん。ふみちゃんは、お母さんの作品が大好きで、ずっと読んでるらしいの」

「あ〜。真美が聞いたことがあるのって、ふーちゃんからかも」

もしかしたら…!
どんどん読み進めていくと、最後にミキノちゃんとマコちゃんが仲直りしていた。
あとがきには、娘の願いの物語と書かれている。

「真美ちゃん、明日、仲直りしよう」

「うんっ!」

真美は、実柚乃ちゃんと一緒にベッドに潜り込んだ。

335:みぃ◆8Q 『終わる世界でキミに恋する』大好き!:2017/08/19(土) 10:09

22.隅木田くんからの電話
実柚可さんが、真美と実柚乃ちゃんを起こす。
時計を見ると…4時30分!?

「キャラ弁作るんでしょ?難しいんだから、早めに作り出さないと」

そ、そういうことですか。
体操服に着替えて、実柚可さんのエプロンを借りてキッチンに立つ。
 プルルルルプルルルル

「もしもし〜。あ、隅木田?はーい」

隅木田くん!?
実柚乃ちゃんに後から聞いたんだけど、実柚可さんって中2なんだって。
れっきとした彦宮生の。
知らなかったな。

「真美ちゃん、隅木田が電話」

え〜?
こんな朝早くから?
実柚乃ちゃん家にいるの知ってるの!?

「代わりました、真美です」

「実柚可の家にいるんだね。ビックリしたよ」

「どうしたんですか…?」

お願いします、悪いお知らせじゃありませんように。
祈りながら返答を待つ。

「受験勉強で明確ゼミやめるんだってね。明スイばっかりで。ごめん。真美ちゃんのおばあさんには、謝っておいたよ」

「いえいえ。真美の責任ですから」

隅木田くんは、ちょっとホッっとしたような息をついて、悲しげな声で言った。

「今日の明確ゼミで最後だよね。だから、それでパーティーを開くことになったんだ。その時、とりあえず一回目の闘いをする」

闘い…!
明確生に決めてもらう、アレだよね。
ゴックンとつばを呑み込む。

「出席できる?闘いにおいては、真美ちゃんは、作らない・食べない・教えないだから」

「出席します」

「じゃ、よろしく」

絶対、明スイが、勝つんだから!

336:みぃ◆8Q 『終わる世界でキミに恋する』大好き!:2017/08/19(土) 10:27

23.いざ団結神社へ!
先頭で、前田先生のとなり。
後ろが涼太くんと桜庭くんペア。
そのとなりがふーちゃんと実柚乃ちゃんペアが座っている。
ここは、バスの中なのです!

「前田先生ー、どこ行くんですかー」

「とりあえずは、クラスごと違う神社に行きますが、1組は団結を専門とする神社、団結神社へ行きます!」

そうそう。
昨日、ギリギリで前田先生と話し合って決めたんだよね。
もう、演劇会の練習も始まってるし、団結することって重要だよね!

「多田本さん、そろそろお菓子タイムにしましょうかね」

「はい。皆さんいいですかーっ?」

バスの中のマイクを使う。
よく、バスガイドさんが使うのだ!
カッコいい…。

「多田本さん?」

「はいぃ!皆さん、そろそろお菓子タイムにしたいと思います」

バスの中がドッっと盛り上がる。
お菓子の匂いがバス中に漂ったかと思えば、みんな交換。
めちゃめちゃハイスピードで食べる。
って、みんな楽しめてる!

「多田本さん、これどうぞ」

涼太くんが、ブドウ味のグミ。
桜庭くんが、イチゴ味のグミ。
実柚乃ちゃんが、手作りクッキー。
ふーちゃんが、ビスケットをくれた。
すっごく、楽しいな〜。

337:みぃ◆8Q 『終わる世界でキミに恋する』大好き!:2017/08/19(土) 12:20

24.みんなの願い
真美、実柚乃ちゃんは、団結神社でお守りを買った。
真美は、クラスが団結して、演劇会優勝出来ますように。
実柚乃ちゃんは、家庭科の時間、団結していい料理が作れますように。
っていう願いを込めて。
各神社全部、お守り買うことにしたんだ!

「今からは自由行動になりまーす。班長さんは、地図、カメラ、時計を取りに来てくださーい!」

いよいよだ!
地図、カメラ、時計をもらって、恋愛神社へレッツゴー!

「ま、まー、ちゃん」

「どうしたの…?ふーちゃん」

「恋愛神社へ向かうのは、時間的にもタクシーでいくのが効率的。タクシーで行きましょう」

えっ…。
ふーちゃんをマジマジと見ると「調べてきたのよ。さあ、行きましょう!」照れてる…。
実柚乃ちゃんがコソコソ言った。

「今がチャンスでしょ。仲直りっ!」

だよね。
やっぱり今だよね。

「ふー」

「ふみちゃん、行こっ」

涼太くんに話しかけられて、まっすぐ涼太くんの方へ。
あっさり手を繋いで…。
神社の長い階段を下ってく!

「カップルだね〜。まあ、ちょっと様子見るか」

実柚乃ちゃんも桜庭くんも境内を下っていったので、真美も追いかける。
ふーちゃん、願いは仲直りだよね?
なのに、逃げてない?
あたかも、仲直りしたくなさそうな。
真美は、ションボリ境内を下った。

※あたかも→まるでという意味です

338:薫◆4I 名前、変えようか迷ってる:2017/08/19(土) 12:37

ふみちゃんと仲直りできるといいね!
頑張って!

339:みぃ◆8Q 『終わる世界でキミに恋する』大好き!:2017/08/19(土) 19:51

ふみちゃんとねぇ。
仲直り出来たら、みんな嬉しいと思うんだけどなぁ。
コメントありがとう!

340:みぃ◆8Q 『終わる世界でキミに恋する』岬ちゃんみたいになりたーい!:2017/08/19(土) 21:44

25.恋愛神社で
 チャリン チャリン パンパン!
みんなでお賽銭箱にお金を入れて、手を叩く。
真美の願いは、中学生になったら、いい恋が出来ますように…!
神様、どうかお願いします!
お参りが終わって、お守り購入。
団結神社と一緒で、実柚乃ちゃんと色違いのお守り。
真美はオレンジ。
実柚乃ちゃんは黄色。

「ねえ、相川と多田本」

突然桜庭くんが前に出る。
ふーちゃんと涼太くんは、まだお守りを見てる。
バレないね。
なんかこの気まずいムード。

「杉田と涼太と俺に、避けてない?ふたりだけの世界すぎて困る」

「樹くんだって、青山野くんとふみちゃんとの世界に入り込んでる!」

実柚乃ちゃんと桜庭くんの言い合いに、ふーちゃんと涼太くんも気付いた。
ここは、やっぱり班長の真美が…。

「どうしたの、ふたりとも」

ふーちゃんがお守りを置いてこちらへやって来る。
このグループ、終わりかも。
ムードが気まずすぎ。

「実柚乃だって、ふみちゃんたちと仲良くしたいのに、3人で話してるから悪いんじゃん!」

「落ち着いて!まあ…みんなで仲良くさ、やってこっ」

みんなを見回すけど、実柚乃ちゃんと桜庭くんはピリピリ状態。
あ〜、どうすれば。

「実柚乃ちゃん、ごめんね。わたしたちがずっと。桜庭くん、ね…?」

ふーちゃんが割って入ってふたりに笑いかけると、この騒ぎは収まった。
真美だと仲直り出来ないのに、ふみちゃんなら出来る…。
もっと頑張らないといけないって証拠かなぁ。

「ごめんなさい、桜庭くん」

実柚乃ちゃんがボソッっと謝って、無事騒ぎは解決。
真美は、神様がいるところでお辞儀した。

「お騒がせして申し訳ございませんでした」

真美は、にっこり笑顔で輪に戻った。

341:みぃ◆8Q 『終わる世界でキミに恋する』岬ちゃんみたいになりたーい!:2017/08/19(土) 21:59

26.友情神社は友情専門!
またも、ふーちゃんの調べによって、友情神社へはすぐ行けた。
 チャリン チャリン パンパン!
ここでのお祈りは、もちろん。
このグループがいい雰囲気になれますように。
そして。
ふーちゃんと仲直りできますように。
お願いします!

「あれ?真美〜!」

境内からコヨが走ってくる。
コヨがいるグループは、美華ちゃんグループ。
よくあそこにいられるな〜。

「明確ゼミのパーティー楽しみにしててね」

ふと言われて思い出した。
今日、ひとつ目の闘いのこと。

「真美ちゃーん、行こ〜お守りー」

実柚乃ちゃんが言ってくれて、コヨをちょっとにらんで実柚乃ちゃんと一緒にお守りを買った。
今回の友情神社では、真美たちグループの絆ってことで、みんなオソロイのお守りを買ったんだ!
みんな紫で、可愛いの。
実柚乃ちゃんが選んでくれたの。

「ふーちゃんっ!」

境内を下ろうとしているふーちゃんを呼び止める。
コヨが、お守りを買うところからこっちを見てる。
真美とふーちゃんがいい雰囲気じゃないの、知ってるもんね。

「あの…この前はごめんなさいっ!真美のせいで…」

「まーちゃん…?」

頭をずっと下げていると、ふーちゃんが真美の肩を持ち上げた。
そして、にっこり。

「わたし、まーちゃんが悪いなんて思ってないよ。ただ、北山さんと遊びはじめて、北山さんに嫉妬してたの」

えっ…そうなの?
でも、真美はやっぱり悪いことしかしてないし…!

「仲直りって言うより、また、仲良くしてくれる?ねっ?」

「うんっ!」

こんなに真美は幸せになっていいのかな?
真美ばっかり。
ふーちゃんと境内を下って、みんなのところへ行く。
もう、実柚乃ちゃんと桜庭くんも悪いムードじゃない。
涼太くんとも、仲良く話してる。

「じゃあ、勉強神社へ行きましょう。電車で行くのが最適。勉強神社でお弁当食べましょ」

ふーちゃんのプランで、真美たちは勉強神社を目指した。

342:みぃ◆8Q 『終わる世界でキミに恋する』岬ちゃんみたいになりたーい!:2017/08/19(土) 22:23

27.秋の遠足の思い出
帰りのバスの中。
本当に思う。
今日は本当に良かったって。
お弁当は実柚乃ちゃんとオソロイで、おかず交換したこと。
グループ内で恋バナしたこと。
桜庭くんのこと、樹くんって呼ぶようになったこと。
他にいろんな神社行って、最後。
集合場所の勝利神社での記念撮影。
クラスみんなオソロイのお守り。
みんな寝てるバスの中、うっとりお守りを見る。
グループのお守り。
クラスみんなオソロイのお守り。
実柚乃ちゃんとオソロイのお守りの数々を。

「多田本さん、楽しかったみたいですね」

となりの前田先生がお守りを見ながら笑った。
前田先生の手には、3つのお守り。
恋愛神社と、幸運神社と勝利神社のお守りだ!

「先生も楽しかったみたいですね」

「ええ。みんな楽しそうだったもの」

前田先生と笑いながら、真美はまぶたを閉じた。


「みちゃん!真美ちゃん!」

はいぃっ!
揺すられて起きたときは、彦宮学園に着いていた。
実柚乃ちゃんが真美の顔を覗き込む。

「ごめんごめん!」

急いでバスを降りて、学年で集まる。
学年主任の小林先生が前に出る。

「秋の遠足はいかがでしたか?」

すっごく楽しかったです!
いろんな先生の話が終わって、解散となるとき。
真美は家に帰る決意をした。
実柚乃ちゃんにも悪いしね。

「本当にありがとう!荷物が実柚乃ちゃん家にあるから、実柚乃ちゃん家へは行くね」

「分かった。本当にいいんだね」

真美は大きくうなずいて、実柚乃ちゃんと実柚乃ちゃんの家へ。
向かった。

343:みぃ◆8Q 『終わる世界でキミに恋する』岬ちゃんみたいになりたーい!:2017/08/19(土) 22:41

28.意外な結末
荷物を持って、実柚乃ちゃん家を出る。家はスッカラカンだろうけど。
カギを開けると、すごくいい匂いがした。
ど、どうして?
キッチンへ行くと、いつものエプロンを付けたおばあちゃんがいた。

「おばあ、ちゃん…?」

「真美ちゃん、お帰りなさい」

どうして?
おばあちゃん、家を飛び出したんじゃないの?
キョトンとしていると、おばあちゃんは笑った。

「ちゃんと勉強しないといけないことが分かったかい?」

「うん。ありがとう」

涙もろいのおばあちゃんは泣いて、真美も部屋でずっと泣いた。
勉強しないといけないのが分かったのはもちろん。
おばあちゃんの大きな存在にもよーく気付いたしね。


 コツコツコツコツ
ヒールの高い靴を履くことになって、やや緊張ぎみ。

「多田本真美さん、明確ゼミ卒業!そして、明スイどちらに入るか闘い!」

梨歩佳さんの力強い司会で、パーティー会場のドアが開いた。
カワイイワンピースを着て、いざ入場だ!
真美は、お辞儀して入った。

344:みぃ◆8Q 『終わる世界でキミに恋する』岬ちゃんみたいになりたーい!:2017/08/19(土) 22:55

29.結果は?
明スイメンバーがスイーツを作るところから始まった。
どんな風になっているのかは黒い板で隠してあってね。
真美も、どんなスイーツを作るのか楽しみ。

「明スイを待っててくれる人は、こんな気持ちなんだよ」

梨歩佳さんがとなりでつぶやいた。
こんな気持ちなんだ。
じゃあ、すっごい楽しみだね。

「おおっ、露島先輩の方が完成しました!矢本先輩の方も…完成です!」

いよいよだ。
梨歩佳さんも審査員なので、会場の前に移動した。
ひとつは、シュークリーム。
もうひとつは、パフェ。
美味しそ〜う!
明確生が食べ比べて、結果は真美の発表になる。
えっと…シュークリーム派。
パフェ派、パフェ派、パフェ派…。
シュークリーム派、シュークリーム派、シュークリーム派…。
シュークリーム多くない!?

「結果は、シュークリームを作ったグループです!」

明スイの方を見ると、ガックリした様子。
負けたのっ?
コヨは、ギッっとにらんできた。

             (つづく)

345:みぃ◆8Q 『終わる世界でキミに恋する』岬ちゃんみたいになりたーい!:2017/08/19(土) 23:05

あとがき
               みぃ

初めまして!
『ここは明確スイーツ研究部!』略して明スイいかがでしたか?
今回は、いろいろありましたね!
ふみちゃんとケンカ。
コヨちゃんの出現。
新明スイ!?
おばあちゃんとの言い合い。
実柚乃ちゃんと桜庭くん…樹くんの言い合いなど。
皆さんはどこのシーンが好きですか?
今回も、皆さんに記念すべき10巻をお届けできて嬉しいです!

ちょっと雑談。
皆さんは親友いますか?
私はいません。
親友というのは、何でも打ち明けられる人。
そういうと…いるけど、その人は、私のことそう思ってないだろうし。
それなのに親友って言えるのかな?
親友がいるって心強いですよね。
それも、青春のひとつです。
青春を楽しみましょう!

ここでコメント!
薫ちゃん、いつもコメントをくれて本当にありがとう!
これからも真美ちゃんを応援してほしいな!

最後になりましたが、お礼。
ここまで読んでくださった皆さん、本当に本当にありがとう!
良ければ、コメントください!
これからもよろしくお願いします。

次回予告です。
学校のイベントは修学旅行!
だけど、第二回闘い!
真美ちゃんはどっちに入るの!?

次回もよろしくお願いします!

346:薫+*Mio+* ◆v. (ノ>_<)ノ ≡dice5:2017/08/20(日) 10:17

おおっ、完結!
真美ちゃんも、一難去ってまた一難、って感じだね。
明スイどうなっちゃうの⁉
次回も読むよ!(^o^ゞ

347:みぃ◆8Q 『終わる世界でキミに恋する』岬ちゃんみたいになりたーい!:2017/08/20(日) 10:38

薫ちゃん、ありがとう!
あとがきにも毎回出てるね(ごめん!)
感想もいつもすごい嬉しい!
次回もよろしくお願いします!

348:みぃ◆8Q 『終わる世界でキミに恋する』岬ちゃんみたいになりたーい!:2017/08/20(日) 10:42

『ここは明確スイーツ研究部!11』

人物紹介

多田本 真美
目立ちたくないを意識していた小学6年生。私立青山野学園を受験する。

坂宮 陽都
サッカー少年。
明確ゼミナールに通う小学6年生。
真美が好き。

矢本 拓斗
野球少年。
明確ゼミナールに通う中学3年生。

隅木田 優斗
勉強得意な少年。
明確ゼミナールに通う中学2年生。

349:みぃ◆8Q 『終わる世界でキミに恋する』レイよりトモLOVE!:2017/08/20(日) 13:18

1.放課後の児童会室
12月に入ったばかりの日のこと。
児童会メンバー全10名はずーっと悩みこんでいる。
わたし、多田本真美。
ここ、私立彦宮学園のれっきとした児童会長。
だけどね…。

「児童会長〜、無理〜」

児童会会計の戸部くんが投げ出した。
5年生なんだけど、やる気が全然ないから困ってるの。
真美たちが真剣に考えてるのに、ランドセルから漫画出してさっ!
漫画、持ってきちゃダメなのに。

「ちょっと、戸部くん!」

5年生の頼れる、児童会対応の河合さんは、この間まで入ってた華道部の部員なんだ。

「戸部くん、やらないなら帰って。すごく目障りで仕方ない」

5年生の児童会対応の、ちょっと冷たい横田さん。
メガネのレンズが光って見えて、真美もドクンとした。
他、児童会会計の古橋くん。
5年生のね。
頼れる6年生の、児童会書記の秀花ちゃん。
秀花ちゃんとペアの6年生の、児童会書記もうひとりは、野口くん。
落ち着いた様子の6年生の、児童会生活の柴田さん。
柴田さんのペアの6年生の、鈴木くん。
いつでも元気な6年生の、太田くん。
そして、真美。

「児童会長、これ」

横田さんが資料を渡してくれて、ザッっと目を通す。
文化祭の流れから演劇会の流れまで、きっちりパソコンで打ってある。

「ありがとうございます。横田さん。では、演劇会のお知らせプリントを作ってください。河合さん、横田さんと作ってください」

「分かりました」

修学旅行担当の6年生は…?
チロッっと6年生の方を見ると、みんな頭を抱えてる。
今週なのに…!
真美は、急いで6年生の方に入った。

350:みぃ◆8Q 『終わる世界でキミに恋する』レイよりトモLOVE!:2017/08/20(日) 13:31

2.修学旅行へ行ける!
柴田さんが、鈴木くんと仕上げていたプリントを掲げる。

「児童会長、これをしおりに印刷したら、しおりは完成しますよ!」

「ありがとう。じゃあ、鈴木くん。印刷してきて。柴田さんはこっち。秀花ちゃんたちと一緒に、電話かけて!」

手際よく行っていてちょっとホッっとしつつ、5年生の方も見る。
…って!
本当に戸部くん帰ったの!?
横田さんの目力強い!

「児童会長、お知らせプリント印刷終わりました!」

河合さんがプリントを見せる。
さすが河合さんと横田さん。
手際よくやってくれたね!

「では、学校に貼ってきてください。いつものところに。初等部だけでなく、中等部と高等部も」

「はいっ!」

うちの文化祭は、今年から初等部から高等部一緒に行うことになった。
この時、真美は全校の前でスイーツを食べるらしい。
彦宮生の第二回の闘いで、明スイが勝利したら、ね。
真美が、新明スイか、いつもの明スイに入るか決めるらしい。
第一回は負けちゃったけど、絶対勝てるよねっ?

「児童会長!電話かけ終わりました!全て計画通り進行出来ます!」

「ありがとう秀花さん、柴田さん。鈴木くんはどう?」

印刷室をチロッっと見ると、だいたい150枚ありそうなプリントの束を持っていた。
オーケー!
これで修学旅行へ行ける。
行き先は毎年変わって、今年は新潟県へ行くことになった。
学年全員で、スキーやったり、雪だるま作ったり、鎌倉作ったりね。
貸しきりなんだよ!
2泊3日で。
二日目の予定は、美味しいもの巡り!
これは、鈴木くんが行きたかったんだって。
秀花ちゃんも行きたいらしく、美味しいもの巡りに決まったんだけど。
学年主任の小林先生がめちゃめちゃ喜んでるんだよね。

「よーし!6年生も、文化祭の方やりましょうかね。演劇会のこと担当してください!」

絶対、絶対。
文化祭も演劇会も修学旅行も成功させるんだから!

351:みぃ◆8Q 『セカキミ』トモLOVE:2017/08/21(月) 18:24

3.離れない心
「ただいま〜」

ローファーを脱いで、先に児童会メンバーに配られたしおりをおばあちゃんに見せる。

「今回の行き先は、新潟県、美味しいものを巡りながら東京都へ。3日目はスカイツリーだよ!あと、キッザニアってところ」

「スキーだよねえ。ちょっと子供っぽいかもしれないけど、真美ちゃんが優樹さんにおねだりして買ってもらったシカのスキーボードならあるよ」

おばあちゃんは、物置からシカの子が写っているスキーボードを出す。
久しぶりに見たなあ。
真美は、ちょっとスキーボードをなでてみる。
汚れた感じが、使ってるってイメージだけど、一度しか使ってないんだ。
スキー場に行くのも二回目だし。

「さあさ、真美ちゃん。赤ちゃんの話だけどねえ。まあ何と双子だったらしいんだよ」

「ふっ、双子!?」

真美に、いきなり妹か弟がふたりも出来ちゃうの!?
嬉しーい!

「ひとりは女の子、ひとりは男の子だそうだよ。男の子の方は、もう名前は考えたみたいで、眞優くんだそうで」

眞優くん!!
カッコいい名前。
きっと、真美みたいな児童会長になれるはずだよ〜。

「女の子の名前も気になるねっ!」

「そうだねえ。やっぱりおばあちゃんの案は、真子かしらねぇ。野太いだろう?」

真子ちゃんかぁ。
それもカワイイけど。
 チュンチュン
外を見ると、真美が飼っている感じの鳥が鳴いている。
真由ちゃん。
名前がちょっとだけだけど、眞優くんと似ているかも。
眞優くんと来たら、『ま』を使うなら『眞』だよねえ。
真美が、本を見ながら考えているのは様々。
良ければだけど、真美の案も聞いてほしいな〜。
 プルルルルプルルルル

「もしもし多田本です…ああ、真美ちゃんですね。はい、はい…」

実柚乃ちゃんから電話がかかってきた様で、受話器を握る。
軽やかな、優しい声が聞こえた。

「真美ちゃん?実柚乃だよ」

「真美だよ!」

実柚乃ちゃんは、ちょっと間を空けてモジモジしながら言った。
あたかも、決意するように。

「秋の遠足で、真美ちゃんともっと仲良くなれて、実柚乃嬉しかった。真美ちゃんと離れたくないし、チャレンジしたいし、ずっとその気だったから」

スッっと息を吸い込んだかと思うと、実柚乃ちゃんは一言。

「実柚乃も青山野受けるからっ!」

「実柚乃ちゃんっっっ!」

絶対絶対、一緒に行こうね。
受験合格者票に、実柚乃ちゃんと真美の名前があるの楽しみにしてるから。

352:薫+*Mio+* ◆v.:2017/08/21(月) 19:51

実柚乃ちゃんも真美ちゃんも、頑張って!
双子なんて珍しい!
まゆう君……かな?あ、まやくんかも?(馬鹿でごめんね)

353:みぃ◆8Q 好きな人じゃない男の子とは楽なのにどうして好きな人は楽じゃないの!?:2017/08/22(火) 07:38

薫ちゃんありがとう!
双子だよ〜!
まゆう君で当たりだよ。
全然馬鹿じゃないからっ!
これからもよろしく!

354:薫+*Mio+* ◆v.:2017/08/22(火) 07:42

まゆう君か、可愛い!(いや、かっこいいの方が妥当?)
馬鹿じゃないなんて……ありがと!

355:みぃ◆8Q 好きな人じゃない男の子とは楽なのにどうして好きな人は楽じゃないの!?:2017/08/22(火) 07:55

4.修学旅行で児童会長
一階に降りて、スカートの裾を整え、昨日準備した荷物を確認。
よし、オーケー。

「さあ、行くかい?」

「うんっ!行こ行こっ!」

大きなバッグに入っているしおりを車の中で見つめる。
女の子が、真美、実柚乃ちゃん、ふーちゃん、初香ちゃん、エリちゃん、さやかちゃん。
男の子が、涼太くん、樹くん、太田くん、数学くん。
数学が得意だから、コッソリ数学くんって呼んでるんだ!
正直、名前を知らないんだけど。

「おばあちゃん!絶対絶対お土産買ってくるから待っててねっ!」

おばあちゃんに伝えて、彦宮学園前の広場へ足を降ろす。
今から、もう修学旅行は始まってる。
しおりをギュッっと握りしめて、前田先生にあいさつ。

「おはようございます」

児童会ということで、ちょっと早く来たんだよね。
今来てるのは、柴田さんと真美のみ。

「児童会長おはようございます!」

「おはようございます!」

柴田さんとは、二回同じクラスになっただけで、クラブも一回同じクラブになっただけ。
あんまり関わってなかったんだよね。
だけど、仲良くできて嬉しいっ!

「スキーボード、新しいの買ってもらったの。児童会長は?」

「真美は、昔買ってもらったのを」

充分それで使えそうなので、綺麗に磨いて新品くらいにした。
そのことを柴田さんに言うと「さすが児童会長です」なーんて。
汚かったから磨いただけなのに。

「児童会長〜」

秀花ちゃんが車から降りてきて、ふーちゃんも降りた。

「秀花ちゃんおはよ!」

「おっはよー!」

ふーちゃんはひとりでいるけど、すぐいろいろな人が来て、ふーちゃんもどこにいるか分からない。
みんな、普通の車で来るけど、美華ちゃんはっ!
リムジンにコヨを乗せてる…!

「秀花ちゃん、読み上げて。柴田さんは人数チェック1、2組を」

すぐ指示して、真美は校長先生にあいさつ。
皆さん、今日は本当によろしくお願いします!

356:みぃ◆8Q 好きな人じゃない男の子とは楽なのにどうして好きな人は楽じゃないの!?:2017/08/22(火) 07:56

分からない。
カッコカワ?
馬鹿じゃないでしょ!

357:みぃ◆8Q 好きな人じゃない男の子とは楽なのにどうして好きな人は楽じゃないの!?:2017/08/22(火) 08:14

ー訂正ー
全150名。
1〜5組。
体育祭では、い組ろ組は組に組ほ組。
夢花見京香、と遊んでいる琴ちゃんは転校してしまったと考えてください。
理由はそのうち明らかに!

358:薫+*Mio+* ◆v.:2017/08/22(火) 08:42

うん、かっこかわだね!
修学旅行、新潟なんていいなぁ!
私も秋に行くよ!
でも、ほとんど行ったことある場所なんだよね〜

359:みぃ◆8Q:2017/08/22(火) 08:47

薫ちゃん、コメントありがとう!
カッコカワかな…?
いいのか悪いのか普通なのかwww
新潟ねぇ。
焦って決めたところ。
薫ちゃんは行ったことあるところに行くんだね!
真美ちゃんのヘタクソなスキーに、笑った男の子たち。
もう休みなのに、指示が聞こえなくてひとりまだ練習していく真美ちゃん。
真美ちゃんを助けに行くのは…?

360:薫+*Mio+* ◆v.:2017/08/22(火) 08:54

おぉっ、なんか良い展開を期待しちゃう!
私は東京に一泊二日。
なんか前は二泊三日だったのに、変わっちゃったんだよね〜

361:みぃ◆8Q:2017/08/22(火) 17:31

期待できる内容かもだけど、文才なくてガックリするかもだからやめといた方がいいかも。
私は奈良に一泊したよ〜♪

では、本編どうぞ!

362:みぃ◆8Q:2017/08/22(火) 17:46

5.意外な出来事
 ガタンゴトンガタンゴトン
電車が揺れていて、エリちゃんとさやかちゃんより身長が高い真美は、吊革にぶら下がってるんだよね。
通学中の学生や、通勤中の大人がパンパンで揺れるときガクンとなる。

「エリちゃん、あそこ見て!」

さやかちゃんが指差していた先は、露島先輩と、隅木田くん!?
ど、どうして!?

「何か話してるねぇ。高等部の王子様と中等部の王子様!」

「本当だね。さやちゃん行ってきたらいいじゃん。それが修学旅行」

ふたりが盛り上がっているのをボーッっと眺めながらも、隅木田くん達をジッっと見る。
するとっ!

「イヤァァァ!」

ウグッ。
つい叫んじゃった…。
同じ車両に乗っていた人達の視線がジリジリと集まってくる。
やだなあ。
頭を下げながら、しゃがみこんだ隅木田くんを見つめる。
露島先輩にほっぺたを叩かれた隅木田くん。
痛すぎて、しゃがみこんでるんだよね。真美分かるよ。
やられたことあるもん。
もう解決したけど。
そんなことを考えていると、次の駅へ向かうため、電車が発進してしまう。
絶対、助けてあげるから。
真美じゃ何にもならないかもしれないけど。
必ず何とかして見せるから!

「あのぉ、あのぉ」

エリちゃんのとなりに座っていた男の人が言った。

「座りますか?」

「いえいえ。絶対大丈夫です。わたしは立ってますから」

「いえ…」

男の人はカバンを持って立ち上がる。
何か、座らない方が失礼かな。
せっかく譲ってくれてるし。

「ありがとうございます」

椅子に座ると、ため息をついてエリちゃんの方を向いた。

363:みぃ◆8Q:2017/08/22(火) 18:01

6.乙女の恋
バスを降りて、新幹線で新潟県へ向かう。
真美は初香ちゃんのとなりで、将来の夢の話をしていた。

「初香はね、特に将来の夢ないけど、強いて言うならディズニーのダッフィー関係のお仕事だよ」

へぇ〜。
きっとだけど、初香ちゃんは優しいから、おっとり癒しタイプのダッフィー関係のお仕事は剥いてると思う。
真美の夢って…何だろう。
とりあえず、結婚して、子供産みたいだけかもしれないな。
とりあえず、ね。
子供は欲しいし、結婚はしたいし、結婚しなきゃ子供産めないしね。

「真美ちゃんは?」

「特に決まってないかな。ごめんね」

「いやいや、全然大丈夫!」

初香ちゃんはバスの外を見ながら、前の樹くんの頭をポンポンした。
好きなんだって、樹くんのこと。
付き合ってたこともあって、別れたらしいけど。
ま、初香ちゃんはカワイイし、樹くんも初香ちゃんにお似合いだよ。
ぜひとも付き合ってほしいなっ!

「何だよ初香」

樹くんは、他に好きな人がいるみたいで、初香ちゃんの気持ちに気付いてないらしい。
かなりアピールしてると思うけど。

「班一緒になれて良かったぁ」

「そう?俺と一緒になって?」

「うん!もーっちろん!」

乙女ってこういうののことか。
真美って乙女だと思ってないから、恋してる女の子を見ると、乙女!
って反応しちゃうんだよね。

「オソロイの何か買おーねー!」

「あ、ああ」

樹くーん、初香ちゃんの気持ちに応えてあげてよね〜?
すると、樹くんは真美を見た。

「真美が笑った顔ってカワイイよな」

「はぁっ?急に何言い出すの。ほら、初香ちゃんが笑った顔の方がすごくカワイイけど」

樹くん、お願い。
そろそろ気付きなさいよ!
でも気付かなくて、チラッっと初香ちゃんを見る。

「え、何それ樹くん。真美ちゃんはカワイイのに、初香はカワいくないの。正直、顔には自信あったのにぃ」

「初香もカワイイよっ!気にしなくていいって。顔に自信持てよ」

樹くん、気付いたかな。
真美はホッっとしながら、初香ちゃんの恋を眺めた。

364:みぃ◆8Q:2017/08/22(火) 18:44

7.乙女のお願い
『わぁーーーー!』
みんな、スキーボードを握りしめて、スキー場へ飛び込む。
樹くんは、雪を見た瞬間。
 ボフッ
真美の肩を抱きながら雪の中へ倒れ混んだの!

「ちょっと、樹くん!」

「わりぃわりぃ、ハハハッ!」

もーう。
すぐそういうことするんだから。
雪でも湿らない手袋で樹くんに付いた雪も払う。
本当にダメなんだからっ!

「真美ちゃん、こっちこっち〜」

班の女の子が手を振っている。
はいはーい。
スキーボードを持ち直して、初香ちゃんのとなりへ行く。

「真美ちゃんって樹くんと仲良しだから羨ましいな」

「初香ちゃんも仲良しじゃん。もっと仲良くなりたいよね。今日、みんなで目一杯遊ぼっ!」

初香ちゃんはうなずいて、エリちゃんの肩をポンポンつつく。
よーし。

「じゃあじゃあ、ガーッって上がってく乗り物で一番上まで行ったら、そこから一番早く降りた人が、好きな人と1日過ごせるね。いない人は、適当に選んで」

初香ちゃんの樹くんのとなりに立ちたいという願望も込めて、みんなで乗り物に乗る。
二人乗りだったので、初香ちゃんとふたりで乗る。

「真美ちゃんにお願いがあるんだ…。樹くんのこと、取らないでほしいの」

「あ、そういうつもりじゃないの。初香ちゃん応援してるし」

初香ちゃんはホッっとしたように笑って、スキーボードを直す。

「強く言ったように捉えないでね?」

初香ちゃんがボソッっと言ったのには気付かなかった。

365:薫+*Mio+* ◆v.:2017/08/22(火) 18:54

おおっ、なんか予想通りといいますか。。。
続きが楽しみ!

366:みぃ◆8Q:2017/08/27(日) 11:59

薫ちゃんありがとう。
予想通りでしたか!
続きは予想通りに回るかな…?

では、どうぞ。

367:みぃ◆8Q:2017/08/27(日) 12:36

8.闘いのトラブル
みんな木々の間を通り抜けながら気を引き締めて立つ。
好きな人はいないから、好きな人がいる人が、その人と過ごせるように。
真美は、乙女に協力するためにゆっくりしようかな。

「真美ちゃん、みんなでバトルするけど、実柚乃ともバトルしよう!」

「あ…うん、いいよ」

どうしよう。
初香ちゃんに協力しなきゃ。
でも、どうせ上手く出来ないし、比べるほどじゃないよね。

「いくよ〜、よおい、どん!」

エリちゃんが掛け声を出して、真美たちはスタートした。
実柚乃ちゃんは、器用に木々を通り抜けて、ダントツ1位で滑っていく。
負けちゃうな、真美。
せっかくの修学旅行で、上手く出来ずに終わるのはイヤ。
よーし、頑張るぞ!

「真美ちゃん速いよぉっ!」

初香ちゃんが苦戦しながら叫ぶ。
真美の後ろは初香ちゃんだけ。
みんな前。
すると。

「真美ちゃぁんっ!」

初香ちゃんは、坂が急なところでボードごと転倒した。

「初香ちゃん!」

真美は、近くの木に掴みながら、ゆっくり初香ちゃんに近寄る。
ギュッっとふたりで手を握りあって、ゴールしようとした…けど!
初香ちゃんが方向を決めてて、自分目線から見てたから。
真美は大きなトゲトゲがいっぱいの木に突撃しちゃったっ!

「あっ、真美ちゃん!」

でも、もう遅かった。
もう木はなく、雪ばっかりの坂。
真美と初香ちゃんの手は離れ、トゲトゲとジャンパーの裾が絡まって!

「初香ちゃ〜ん!」

「…」

ここからは、ちょっとした急斜面で、上手くスピードを調節出来ない初香ちゃんは、恐らくスピードを上げて滑り降りる。
つまり…。
ゴックンと唾を呑み込む。
ちょっとずつ雪の降る量が増える。
みんなは見えない。
微かに、前田先生の声が…。

「前田先生ーーー!」

「…」

どうしたらいいの?
全然取れないトゲトゲ。
誰もいない雪の中。
そして…寒い。
初めはそんなに寒くなくて、薄い方を着てきて、今は寒い。
お願い初香ちゃん。
一番下へ行って。
先生に伝えて、真美を助けて。
真美は、パサッっと雪の中に倒れた。

368:みぃ◆8Q:2017/08/27(日) 12:52

9.知っている真実
初香のせいだ。
ギリギリ、木の横を滑ったかと思えば、真美ちゃんが…。

「初香ちゃん、真美ちゃんは?」

「そろ、そろじゃない…?」

初香の声は強ばっている。
今、前田先生が呼び掛け中。
あとふたり帰ってきてない。
いや…三人。
真美ちゃんと樹くんと坂宮くん。

「はぁぁっ!」

坂宮くんが帰ってきた!
スキー場の小さな家で、暖炉、ヒーターに当たりながら待つなんて。
真美ちゃんがどこにいるのか知っているのは初香だけ。
でも、話したら疑われる。
何か知ってるならって。
初香が真美ちゃんを置いてきたこともバレちゃう。
そんなの怖いから、ヤダ!

「多田本さんと同じ班の子来て」

前田先生が家に入ってくる。
どうしてこの班だけふたりも…!

「多田本さんと桜庭くんのことについて、知っていることありますか?」

「はいはーい!初香ちゃんと一緒にいたのが見えましたー。実柚乃が一番に滑ったら〜、初香ちゃんが倒れて〜、真美ちゃんが助けてて〜、それからは雪が降って〜見えませんでしたー」

実柚乃ちゃん!
真美ちゃんのことは知らない設定なのに!
前田先生に見られてギクッ。

「実柚乃ちゃんの言う通りです。ですが、そこからは初香ひとりで滑れたので知りません。真美ちゃんは、体勢整えてました」

実柚乃ちゃんと前田先生にギロッっとにらまれる。
でも事実だし。
初香は悪くないしっ!
初香は、平静を取り持っていた。

369:みぃ◆8Q:2017/08/27(日) 13:11

10.仲間を守った行動
ハッ!
ゆっくり目を開ける。
まだトゲトゲが絡まってる。
立ち寝してたんだ、真美。
トゲトゲをまた取りながら、どうしようか考える。
前髪が微妙に凍ってる…!
風は強く、なぜか上の方は弱い。
一番上へ行って、練習しながら様子を見ようかな。
…真美は、最高に寒い雪山を上る。

「お〜い真美〜!」

「真美いるかーーー?」

この声は、坂宮に…樹くん?
上の方はだんだんはっきりくっきり見えてきて、雪も降っていない。

「真美!」

「早く帰ろう真美!」

右は坂宮。
左は樹くん…。
っと…!

「真美ちゃ〜ん!初香よーっ!」

初香ちゃん?
バランスを崩しつつも姿を見せる初香ちゃん。
が…!
倒れちゃうっ!

「樹くん、初香ちゃんを!」

真美は初香ちゃんを樹くんの方に押して、体勢を崩して木々の間に転がり落ちていく!
初香ちゃん、これで樹くんと仲良くなれたよね。
坂宮、今までありがとう。
なんか亡くなる感じの感情。
どうしてこんなこと考えてるの。
そんな真美の手を掴んだのは。

「真美!」

坂宮だった。

370: 薫+*Mio+*◆v. 受験合格*プロジェクト!:2017/08/27(日) 16:27

やっほー!なんか久しぶりだね!
真美ちゃんと坂宮くん、どうなるのかな?
あと、みぃも勉強頑張ってね!

371:みぃ◆8Q:2017/08/28(月) 09:47

久しぶりだね!
コメントありがとう。
真美ちゃんたちの新たな恋行進だよ!
勉強、薫ちゃんも頑張ってね。

372: 薫+*Sena+*◆T. 受験合格*プロジェクト!:2017/08/28(月) 10:13

お互い頑張ろう!
恋も楽しみだし。

373:みぃ◆8Q:2017/08/28(月) 10:23

そうだね!
楽しみにしてくれててありがとう。

374:岬◆8Q:2017/09/10(日) 19:22

名前変えました。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
11.心配してくれた友達
何か、暖かい。
さっきまで寒かったのに。
ゆっくり目を開けると、心配そうな顔をした実柚乃ちゃん。
と…坂宮!
部屋の隅には班の子がいた。

「真美ちゃんっ?」

実柚乃ちゃんが声を上げて、みんなが近寄ってくる。
真美、ベッドに寝てるんだ。
ゆっくり起き上がると、ふーちゃんがおでこに手を当てた。

「ちょっとは暖まってきたね。まーちゃん大丈夫?」

やっぱり冷えてたんだ。
初香ちゃんが歩み寄ってきて、耳元でつぶやいた。

「後から話したいことがあるの。みんなが行ったら、ふたりで初香と話させてね」

初香ちゃんは起き上がって、エリちゃんやさやかちゃんとおしゃべり。
ふーちゃんと実柚乃ちゃんもふたりでおしゃべりしていた。
心が和むな〜。

「ふみちゃん、俺、前田先生に言ってくる」

涼太くんと樹くんが部屋を出ていき、坂宮が顔を近付けてきた。

「真美、ごめんな。助けに行くの遅れて。俺がもっと早く行けば…」

「うんん、いいの。ごめんね、迷惑かけちゃって」

坂宮に謝ると、首をブンブン横に振って、ニカッっと笑った。

「真美が元気そーで良かったぜ!」

そうだね、心配してくれてありがとう、みんな。
真美も坂宮に笑いかける。
前田先生が入ってきて、「大丈夫?」と声をかけられた。

「はい、すみません。勝手な行動してしまって。本当に反省しています」

前田先生に何度も何度も頭を下げると、優しい微笑みを向けた。
いつもはちょっと厳しい前田先生が。

「多田本さんが無事で、本当に良かったわ」

前田先生は涙を流してうなずく。
真美の頭をなでてくれて、ママみたいに笑ってくれる。
卒業の年が、前田先生で良かった。
本当にそう思って、ベッドに持たれかかる。
すると。

「前田先生ー、真美ちゃんとふたりで話したいことがありまーす」

初香ちゃんが言って、みんなが退出した。
何を言われるのかな?

「あのね…真美ちゃん…」

 ドクン、ドクン
何…言う、の…?

375:岬◆8Q:2017/09/10(日) 19:37

12.初香ちゃんの気持ち
「本当にごめんなさい!初香が勝手な行動したからっ!」

初香ちゃんが、ペコリと頭を下げる。
え…そういう話だったの?
すっかり樹くんのことかと。

「初香が、真美ちゃんの目線でも滑らなかったし、先生に本当のこと言わなかったから!」

初香ちゃんによると、ちょっと先生に聞かれたときにウソをついてしまったとか。
自分がしたって認めたくなくて。
何とか抜け出してきたらしいけど。

「最悪だよね、初香。ごめんなさい」

「いいよそんなの。気にしないで」

「気にするよ!初香のせいで、修学旅行台無しじゃん…」

初香ちゃんの目がウルウルしてきて、いつしかは涙でいっぱいだった。
真美が引っ掛からずに滑ってたら、こんなことなかったんだ。
チクチクも、早く取ってたら…!

「真美のせいだよ。初香ちゃんのせいじゃない!」

真美もだんだんウルウルしてきて、ふたりで泣いていた。
ベッドの布団は湿って冷たい。
初香ちゃんの心は温かい。
真美のこと、一番に考えてくれてる気がしたから。

「もうやめよう?この話。楽しもうよ、修学旅行!」

真美が初香ちゃんの背中をさする手を止める。
初香ちゃんはゆっくりうなずいて、一緒に食堂へ移動した。
エリちゃんやさやかちゃん。
実柚乃ちゃんとふーちゃんたちも晩ごはんを食べていた。
真美、お昼ご飯食べてないな。
お腹空いてないけど。

「あ、初香ちゃん、こっちこっち!」

エリちゃんが手を振って、となりに座る。
晩ごはんは和食かぁ。
温まるご飯だ。
焼き魚にご飯にお味噌汁。
お漬け物と、ほうれん草のお浸し。
どれも、『和』って感じ。

「真美ちゃん、おしゃべりしよ〜」

実柚乃ちゃんがにっこり笑って焼き魚の骨を取る。
って、取り方違うよ〜。

「実柚乃ちゃん、骨の取り方、こう」

真美がやって見せると、実柚乃ちゃんも真似してきれいに骨を取った。
ほぼ身のみだよ!

「ありがとう真美ちゃん!」

良かった、骨が残ったまま食べることなくて。
ホッっとしつつ、真美も焼き魚を食べる。
おばあちゃんの味がして、とても心が温まってきた。

376:岬◆8Q:2017/09/10(日) 19:49

13.乙女の恋バナ

その日、旅館の真美たちの部屋で恋バナが繰り広げられていた。
初香ちゃんの恋愛がメインでね。

「樹くんの好きな子って、絶対真美ちゃんだよね〜」

さやかちゃんが真美の腕をつついてきた。
ええっ、違うってば!
さやかちゃんにつつき返すと、初香ちゃんがしんみりして言った。

「初香も思った。真美ちゃんカワイイもんね〜」

「真美ちゃんも初香ちゃんも、みんなカワイイじゃ〜ん」

エリちゃんが、初香ちゃんを励ますように手を打った。
だけど、ふーちゃんが涼太くんの話を始めた。

「涼太が言ってたけど、樹くんは初香ちゃんのこと好きらしいよ」

「おおっ、涼太くんの話じゃん!」

エリちゃんが興奮しながらふーちゃんをからかった。
ふーちゃんは照れながらエリちゃんとやり取りをしている。
初香ちゃんは、さやかちゃんと興奮しながらハイタッチ。
恋してない真美と実柚乃ちゃんは、噂話。

「転校しちゃった京ちゃんと琴ちゃんも、涼太くんに告白して行ったよね」

「へ〜、そうなんだ」

京ちゃんと琴ちゃんって言うのは、元彦宮学園生徒。
早期受験で転校したんだ。
涼太くんに恋してたんだ、ふたり。

「ロマンチックだよね、転校告白」

「卒業するときに告白すると、結ばれるって噂あるよねえ。校門前で」

「そうそう!去年告白ラッシュだったらしいよ!」

恋バナに達していない話で盛り上がっていると、班の男の子がやって来た。
同じ部屋で寝るんじゃないのに!
真面目な涼太くんまで!?

「せっかくだし、修学旅行らしいことしてぇから、王様ゲームしよーぜ」

樹くんがいきなり言ってきて、急遽王様ゲーム開始。
みんな、パジャマ姿でね。
ちょっと恥ずかしかったけど、王様ゲームが楽しくて忘れていた。

377:__☆ユニコーン☆__:2017/09/10(日) 20:46

あの、読書板で読んだ本の感想を書いているのですが、岬さんのここは明確スイーツ研究部!を記してもよろしいですか?または紹介してよろしいですか?

378:岬◆8Q:2017/09/11(月) 21:37

>>377
いいんですか!?
私なんかの作品を!?
ありがとうございます!
ぜひどうぞ!
よろしければ、これからもご覧いただけたら嬉しいです。
よろしくお願いします!

379:__☆ユニコーン☆__:2017/09/11(月) 22:20

>>378
ありがとうございます。
今月中に掲載する予定です。
これからも楽しみにしています。

380:岬◆8Q:2017/09/12(火) 06:54

>>379
いえいえ。
こちらも嬉しい限りです。
これからもよろしくお願いします。
よろしければ、感想なんかもいただけたら嬉しいです。

381:岬◆8Q:2017/09/12(火) 20:55

14.王様の命令
まず、樹くんが割り箸を突き出してきて、みんなが引く。
割り箸の先が赤だったら、王様。
真美は…王様じゃない。
今回の王様はエリちゃんだった。

「何番まであるっけ?」

ええっと、真美、ふーちゃん、実柚乃ちゃん、初香ちゃん、エリちゃん、さやかちゃん。
男の子が…。

「絵理乃も入れて10人」

樹くんがにっこり笑った。
初香ちゃんが、まるで自分が笑いかけられたかのように微笑む。
恋してる感、ある〜。

「そっか、ありがとう。じゃあ、4番と10番は、今日同じベッドで寝る」

エリちゃん無茶だよ〜。
真美は5番だからニヤニヤしながら、当たったメンバーを確認。
実柚乃ちゃんと、さやかちゃん?
女の子同士なら大丈夫だね。

「次!」

また割り箸を引く。
真美は1番か。
当たらないといいけど。
王様は涼太くんで、ちょっと悩んで口を開いた。

「1番と8番、これから10分男子部屋で二人で話す」

え…。
8番は樹くん。
1番は…真、美…。

「1番誰ー?」

真美が渋々手を挙げると、初香ちゃんが思いっきり立ち上がった。
その拍子に、真美は体勢を崩す。

「ごめん、真美ちゃん。これじゃあ、あんまり動けないよね。初香が代わりに行ってあげる」

あ、行きたかったんだ。
真美は座り直して、初香ちゃんを見送ろうとした。
そしたら。

「おい真美。王様の命令は絶対。初香は戻ってろ」

別にいいのに〜。
遊びなんだからさ〜。
でも、仕方なく樹くんと男子部屋へ移動した。
入ってみると、物がゴチャゴチャ落ちていて踏み場がない。

「ごめん真美。俺のベッドここ」

一番奥じゃ〜ん。
樹くんが手を握ってくれて、ゆっくりベッドを移っていく。

「あのさ、真美」

樹くんのベッドに移ったところで、急に静かになった。
どこの部屋も騒がしかったのに。
先生かな…?

「真美隠れろ!」

樹くんの布団に隠れて、他の子の荷物を、別のベッドの布団の下へ。
寝ているように思わせる。
樹くんは適当にベッドに横たわる。

「寝てるかー?おぉ、ここの部屋は静かでよろしい」

藤本先生だ〜。
副学年主任の。
樹くんが起き上がってきて、真美の肩に手を置く。

「俺、真美が好き。付き合って…」

え…?

382:岬◆8Q:2017/09/12(火) 21:10

15.付き合うか
真美は、硬直して何も出来なかった。
樹くんのまっすぐな眼差し。
本気だろうな、きっと。

「あとさ…真美、自分のこと名前で言うの似合わねぇぞ」

ガーン。
マジですか。
初香ちゃんたちの真似してみたけど。
似合わないなんて…。
わたしに戻そっと。

「わたし、で、いい?」

「うん!」

樹くんがニカッっと白い歯を見せて笑う。
この人から、わたし告白されたんだ。

「でさ、どうなんだよ」

「樹くんは、わたしのどこがいいの」

上目使いに聞くと、樹くんは頬を赤らめて指を折って数える。

「秀才なところ。カワイイところ。笑顔が素敵なところ。一生懸命なところとか…。いっぱい」

「わたしより該当する人いるのに?」

「俺は真美がいいの!」

わたしがいい…、かあ。
樹くんを見つめて、うつむく。
きっと、ずっと考えてたんだろうな。
わたしの反応。

「ごめんなさい。わたし、受験や中学校のことで頭がいっぱいで…。樹くんに迷惑かけかねないし、初香ちゃんとか該当してるでしょ」

初香ちゃんの名前を出した途端、樹くんの顔色が変わった。

「俺、初香苦手なわけ。気付いてくれなかったわけ?さすがの児童会長様も無視ですか」

「樹くん…?」

急にタイプが変わったような樹くん。
冷たくなった?

「児童会長様は自分のことで頭がいっぱいだから、俺のことは捨てたんだ。オーケー、分かりましたー」

「捨ててない!どうしたら捨ててないことになるの?」

「付き合うこと」

気持ちじゃ届かないの?
行動にひとつひとつ移さなきゃ、届かないの?

「どうする?」

「…わたしが、捨ててないこと証明したら、別れてもいいの?」

「うんいいよ。でも、長いよ?」

ゆっくりうなずいて、付き合う決心をした。
必ずすぐ分かってもらって、別れる。
勉強集中!
執着はしないでね。
祈るような気持ちで、10分終わりのベルの音を止めた。

383:岬◆8Q:2017/09/12(火) 21:20

16.ピリピリ関係
わたしは女子部屋に戻り、今あった報告をした。
付き合うことになったのも、樹くんが言っちゃってね。

「真美ちゃん初香を裏切ったんだね、もういい。樹くんと別れたら許してあげる」

究極の選択。
樹くんと、いち早く別れたい気持ちは山々。
だけど、樹くんを捨てたこと、樹くんに捨てられたことになる。
初香ちゃんの敵になりたくない。
でも樹くんの敵にもなりたくない。
どうしたらいいの!?

「そろそろ寝ましょう」

ふーちゃんが落ち着いた声で言って、みんな散らばった。
実柚乃ちゃんとさやかちゃんがくっついているとなりのベッド。
わたしはずっと悩んでいた。
どうしてもひとりで抱えられないけど、誰にも言うことが出来なくて。
恋愛要素あるもん。
先生には言えないし。
勉強に集中したいのに。


翌日。
美味しいもの巡りへ行く準備。
初香ちゃんとピリピリしたまま行う。
嫌だな〜、最近。
トラブルばっかりで。
わたしの周りにいるとトラブルしか起きないじゃん。
ムスッっとしていると、エリちゃんが耳打ちしてきた。

「樹くんと付き合うことになったのって、無理矢理だよね」

キョトンとしながら見つめ返す。
クスッっと笑われて、初香ちゃんを指差した。

「初香ちゃんも気付いてるよ。反省してるから、聞いてあげて」

エリちゃんって本当にいい子だね。
初香ちゃんも、本当はおっとり優しい子かと思ってたけど、結構意志を貫くんだね。
ビックリしつつ、初香ちゃんととなりに並んだ。

384:岬◆8Q:2017/09/12(火) 21:29

17.尊敬されるか
わたしが、昨日の男子部屋でのことを話した。

「ごめんなさい真美ちゃん。初香も気付いてたのに、カッっとなって」

わたしは首をブンブン横に振る。
でも、初香ちゃんはボソッっとつぶやいた。

「別れるまでの道のりはどうでもいいよ。失恋した。あきらめる」

初香ちゃん…。
あっけなく終わった初香ちゃんの恋。
エリちゃんが知ったら…。
樹くんが初香ちゃんのこと分かってあげていたら。

「いいんだよ、もう。本当にごめんなさい」

初香ちゃんの笑顔を見てから、東京へのバスへ乗り込む。
となりは実柚乃ちゃんだった。

「樹くんとカップルおめでとう!」

「おめでたいことじゃないよ。わたしだって、樹くん苦手になったもん」

実柚乃ちゃんはキョトンとしている。
そうだよね。
苦手な人と付き合うなんて。
軽く、昨日あったことを話すと、実柚乃ちゃんは普通に納得。

「実柚乃も樹くんヤダ〜。多分、実柚可も嫌いなタイプ」

実柚可ーーー実柚乃ちゃんの姉で、秋の遠足ではお世話になった。
優しくて、姉兼母なんだよね。

「実柚乃ちゃんと実柚可さんって似てるの?」

「実柚可とは似てないと思うな」

そうかな〜。
家庭科上手い。
優しいところとか。
お手本になるところ。
すっごく似てると思うけどな〜。

「実柚可と似てたら、実柚乃、超カッコいいじゃん!」

実柚乃ちゃん、実柚可さんのこと尊敬してるんだ。
仲良しそうだし。
わたしも産まれる赤ちゃんに、尊敬してもらえるかな。

385:岬◆8Q:2017/09/12(火) 21:39

18.初等部のプリンセス
翌日もすぐ終わってしまい、気付いたら家に帰っていた。
旅館の『和』より落ち着く空間。
おばあちゃんがお料理して待っていた。

「お帰りなさい、真美ちゃん」

ボストンバッグの中から出すものを出して、彦宮学園へ向かった。
隅木田くんに、いろいろ聞くために。
中等部に足を踏み入れると、ちょっと気が引き締まった。

「すみません。隅木田先輩っていらっしゃいますか?」

隅木田くんを呼んでくれて、生徒会室から出てきた。

「お疲れのところすみません。露島先輩と何かあったりしましたか?」

隅木田くんはにっこり笑って紙を見せてきた。
明スイで回ってるプリント。
明後日の彦宮学園中等部家庭科室にてスイーツの練習。
露島先輩たちの練習は高等部。
と書かれている。

「真美ちゃんも良かったら来て」

プリントをもらって、明後日の勉強時間を削る。
明スイでいるためには、行くしかないのだから。
プリントを握りしめて走っていると。

「初等部のプリンセス。高等部の王子様だよ」

つ、露島先輩…。
プリンセスって何なんですか…。
後ずさりしながらも、露島先輩を見る。

「練習来るみたいだね。これで俺たちが勝ったら、プリンセスは俺のもの」

「きっと明スイが勝ちますよ」

露島先輩は、ジッっとわたしをにらんで苦笑いした。

「君は出られない。よって、自信を持つ権利もないだろう」

確かにそうだけど。
言い返せなくてタジタジしていると、露島先輩は笑いながら高等部へ戻っていった。
…不思議な先輩。
わたしは、怖くなって急いで家に向かって走った。

386:岬◆8Q:2017/09/14(木) 21:05

19.カップルじゃないカップル

その日。
わたしはゆっくりと初等部家庭科室へ向かった。
結構執着してくる樹くんと。

「陽都と何かしないでね。終わったらすぐ呼んでね。そしたら一緒に…」

何もかも一緒にやればいいんでしょ。
もう。
どうして付き合ったんだろ。
素敵な恋したかったのに。
早く認めてもらうしかないか…。

「分かってるから」

「あ、真美冷た〜い」

「分かってるよ」

樹くん、執着しすぎ。
出来たらもっと楽な恋で…。
ちょうど隅木田くんが家庭科室から出てきて、一緒に入る。
わたしは見学しているだけ。

「隅木田先輩。真美が見てるだけなら、となりで俺もいますね」

「何で?」

隅木田くんはちょっと怒っているように思えた。
すると、樹くんは淡々とした口調で言った。

「真美の彼氏だから〜」

「本当?真美ちゃん」

わたしはコクンとうなずく。
認めたくない事実。
あんまりこんなこと思ってばかりじゃダメだな〜。
早く認めてもらうためには。

「真美ちゃんいい?」

「はい」

隅木田くんは苦笑しながら椅子を空けた。
みんながそろうまで、樹くんとふたりきり。
ここにいることがイヤ。
バカみたい。
わたし。

「俺のこと好きじゃなさすぎ」

樹くんがとなりで手を握りながらつぶやく。

「カップル感なさすぎ」

なくていいよ〜。
下を向きながら心の中でぼやくと、樹くんはため息をついた。

387:岬◆8Q:2017/09/14(木) 21:20

20.別れるか
わたしは、樹くんの方を向いて宣言するように言った。

「だって、わたしたちが付き合った理由覚えてないの?」

樹くんは、「もちろん覚えてる」と、首を縦に振った。
なら分かってるじゃん。

「認めてもらうためでしょ?樹くんを捨ててないってこと」

強い眼差しを樹くんに向けると、樹くんはほったらかしにして、矢本くんのルービックキューブを組み立て始めた。

「樹くん!?」

「何だよ真美」

「わたしは、好きっていう意味ではないんだよ!」

樹くんは、わたしの頬を一回パシンと叩いた。
頬をなぞる。

「どうして叩くの!」

「好きじゃないのに付き合ったカップルなんて好まねえ」

それとこれとは別でしょ!?
好まないなら、さっさと別れればいい話じゃん!

「叩いた理由はムカついたから。何かヘン?」

ムカついたなら、別れたら縁切れるのに。
わたしは、樹くんにずっと怒ってるんですよっ!

「何事!?」

矢本くんが家庭科室に駆け込んで来ると、樹くんはルービックキューブを元に戻した。
聞かれてたらどうしよう。

「樹、お前、陽茉理にもやっててさ、多田本にもやって。楽しいわけ?」

陽茉理ちゃんにもやってたの?
樹くんって、あこちゃんと付き合ってから、わたしと陽茉理ちゃんとも付き合ってたんだ。
晴奈ちゃんが言ってた。
樹くんは危険って。

「お前出てけ。多田本と別れろ!」

矢本くん…。
わたしは、ゆっくり席を立って矢本くんの後ろに立った。
大きな背中。
守られてる気がして、心強かった。

「ああ、いい。真美には捨てられたことにする」

捨ててないっ!
でも、別れれてちょっとホッっとした気がする。

「すぐ闘いあるだろ。そんな時期に、アイツと仲良くなるなよ」

矢本くんの手が、わたしの頭の上に乗っかる。
言う通りだ。
わたしは微笑み返して、明スイの勝利を目前とした。

388:岬◆8Q:2017/09/14(木) 21:29

21.繊細な動き
明スイは、パフェを作るらしい。
いろんなスイーツが乗せられるから。
露島先輩たちも。
お題がパフェってことに気付いたのはさっき。

「マカロン、ソフトクリーム、アイスにチョコレート」

隅木田くんが使うスイーツを読み上げる。
きっと、彦宮生は明スイの味知ってるはずだから、スイーツにも馴染みがあるよね。
祈るような気持ちで見る。
かき混ぜたり、練ったりする、ひとつひとつの動作が細かい。

「繊細なんですね」

隅木田くんに向けて微笑むと、にっこり笑った。

「大事なメンバーを賭けられてる。適当なスイーツなんて作れないよ」

わぁー、キュン!
隅木田くん、ちゃっかり女の子の心を落とすんだよね。
カッコいい!

「おい隅木田、俺の真美にそういうこと言うなよ!」

坂宮、悪いけど、わたしはわたし。
いつ坂宮のわたしになったの…?
樹くんといた時より、気を使わないところとか。
すっごく好き。
わたしの居場所。

「おい真美!」

坂宮に呼ばれて、ハッっとする。
わたしは、またみんなを見た。

             (つづく)

389:岬◆8Q:2017/09/14(木) 21:35

あとがき
                岬

こんばんは!
『ここは明確スイーツ研究部!』略して明スイいかがですか?
皆さんのおかげで11巻完結。
本当にありがとうございます!

ここでコメントコーナー。
コメントをくださる皆さん、本当にありがとうございます!
感想・アドバイス・質問お待ちしておりますね。

ここで宣伝コーナー。
皆さんが、『*レインボーハッピー*』の作品を自分の作品に入れてくださっています。
ぜひチェックをお願いします!
詳しくは『*レインボーハッピー*』のスレをご覧ください。

雑談は控えて、12巻の予告。
文化祭で、いよいよ闘い2回目。
児童会長の真美ちゃん、文化祭を無事成功出来るか!?

これからもどうぞよろしくお願いします!

390:岬◆8Q:2017/09/14(木) 21:40

『ここは明確スイーツ研究部!12』

人物紹介

多田本 真美
目立ちたくないを意識していた小学6年生。明確ゼミナールに通っていた。

坂宮 陽都
サッカー少年。
明確ゼミナールに通う小学6年生。
真美が好き。

矢本 拓斗
野球少年。
明確ゼミナールに通う中学3年生。

隅木田 優斗
勉強得意な少年。
明確ゼミナールに通う中学2年生。

391:岬◆8Q:2017/09/15(金) 21:23

1.文化祭
12月の寒い寒い日の昼。
私立彦宮学園の6年1組は、学級委員長を中心に話し合い。

「カフェとお化け屋敷、展覧会の案があります」

黒板には、『文化祭6年1組』と書かれており、出し物を考えていた。

わたしの名前は多田本真美。
本校の初等部児童会長。
6年生で、付き合った歴3日だよっ!

多数決かぁ。
やっぱりカフェかなぁ。
学級委員長の七井さんが言って、手を挙げる。
七井さんが黒板に書き込むのが聞こえて、すぐみんな顔を上げた。

「カフェが1番人気です。よって、6年1組の出し物はカフェに決定です」

落ち着いた表情で言い、周りがワッっと沸き立った。

「俺、外で呼び掛ける〜」

「わたしは料理したの運びたい!」

「実柚乃はもちろん作るから!」

得意気に実柚乃ちゃんが胸を張る。
実柚乃ちゃんは、家庭科が得意。
期末テストでも、実柚乃ちゃんに叶う人はいない。
ずっとずっと1位だから。

「実柚乃がひとりで作ればよくね?」

「でもひとりじゃねぇ」

「補助で誰か入ればいいじゃん」

実柚乃ちゃんを中心に、みんなが囲って、勝手に話を進める。
実柚乃ちゃん、嬉しそうだけど…。

「みんな、落ち着いて!ゆっくり決めましょう」

七井さん、ナイスフォロー!
心の中で拍手する。
みんなが席に着いて、静まった。

「料理をするのは相川さんに任せていいですか?」

みんなが、「賛成!」「6年1組の料理の魔王登場だ!」「絶対人気出る」「実柚乃ちゃんしかいない!」って。
実柚乃ちゃん大人気。
照れながら、ちゃっかり輪の真ん中。

「では、相川さんで。補助で3人着きましょう。誰かいますか?」

「はいはい、推薦。杉田と涼太と絵理乃〜」

エリちゃんは、目を真ん丸にしてキョトンとしている。
ふーちゃんこと杉田ふみちゃんは、付き合っている涼太くんを見る。
みんながそれに賛成。
あっさりメンバーが決まった。

「相川さんを中心に、杉田さん、尾原さん、青山野くんお願いします」

辺りから拍手が巻き起こる。
どんどん決まっていくぞ!
この調子なら、結構良くなるよねっ!

392:岬◆8Q:2017/09/15(金) 21:39

2.児童会室事件
結構決まった。
わたしは、料理を運ぶ仕事。
朝ね。
昼からは自由タイム。
初香ちゃん、エリちゃん、さやかちゃんと回るんだ!
料理を作る担当の実柚乃ちゃんたちは、ずっと仕事で無理だけど。

「真美ちゃん、妹ちゃん産まれたら見せてね〜」

さやかちゃんがうっとりしながらつぶやいた。
エリちゃんは初耳だったから、「真美ちゃん家今年子供産まれるの!?」なーんて驚いてて。
初香ちゃんは黙ったまま。

「初香ちゃんどうしたの?」

エリちゃんが心配そうに顔を覗き込んだ。
修学旅行から、初香ちゃんはちょっとわたしから避けてる気がする。
きっと、3日間樹くんと付き合ったから。
初香ちゃんの好きな人とね。
無理矢理付き合って、別れたの。
ヘンでしょ。

「樹のことはいいじゃん、ねっ?」

エリちゃんが初香ちゃんの背中をトントンと叩く。
初香ちゃんからしたら、そんなに軽いことじゃないよね。
ごめんなさい。

「わたしも反省してるよ。あんなことしなければ…」

「いいよいいよ、気にしてない」

え、絶対気にしてる。
気の毒に思いながら、初香ちゃんたちと別れた。
家の方に歩いていると、秀花ちゃんが走ってきた。

「真美ちゃん!」

「何?」

「児童会室が荒れてるよ!」

どういうこと!?
今来た道をダッシュで走る。
足の早い、ふーちゃんの双子の妹、秀花ちゃんは、わたしを置いて学園へ!
待ってえええ。

「秀ー花ちゃ〜ん」

返事しないほど遠くにいる!
はぁっ、はぁっ。
やっとのことで学園に着くと、露島先輩が初等部を歩いていた。
イヤな予感。
それは的中し、児童会室いっぱいに、『初等部児童会長学園出てけby露島』と書いてある。
わたし…退学…?

393:岬◆8Q:2017/09/15(金) 21:57

3.退学をまぬがれる方法って?
初等部より、高等部の生徒会長の言うことの方が権利がある。
よって、退学取り消し確率はほぼ0。

「プリンセス」

露島先輩だ。
高等部の生徒会長。
その後ろは、俣野コヨ。
ふたりで、新明確スイーツ研究部を立ち上げようとしている。

「どうしてここにいるの?」

「露島先輩こそ」

一歩前に出ると、コヨが思いっきりにらんできた。
まるで、「露島先輩の前に立つな」とでも言っているように。

「もう、君の居場所はない。制服を捨てなさい。新児童会長はコヨ」

コヨも露島先輩に並ぶ。
どうしてわたしが退学になるの?
グッっと耐える。

「わたしが退学する理由は?」

「いても意味ないでしょ。公立とか市立行きなよ」

「今更ですか」

露島先輩はにっこり笑う。
秀花ちゃん助けて。
わたしを、意味あるって言って。
チロッっと秀花ちゃんを見ても、こちらを見ていない。
露島先輩を見ている。

「いいか、児童会。わたしに着いてこいよ」

コヨが児童会長…!?
学園の雰囲気は児童会長って言う。
彦宮学園の雰囲気がコヨに!?

「退学しないようにするには…どうしたらいいんですか」

露島先輩は待ってましたと言わんばかりにニヤリと笑った。

「明スイを抜けて新明スイに入る」

何それ、話が違う。
闘いで勝つって話だったじゃん。

「答えは明日。待ってるよ」

露島先輩とコヨは身をひるがえして帰っていった。
シーンと辺りが静かになる。

「児童会長!」

秀花ちゃん、まだ児童会長って呼んでくれてありがとう。
児童会メンバーがすがりつく。

「児童会長がいなくなったら学園は潰れます!合併案も来てるんだから」

合併ね。
となりの私立御立川学園との合併。
絶対拒否してるけど。
そんな中、わたしなんかに時間をかけられない!

「合併案は任せて。児童会の仕事をしてください。わたしは帰ります」

みんなに伝えたもんね。
今日は用事あるって。
青山野学園の校長先生が、彦宮学園の児童会長が希望してるから話したいってことで。

「いいから仕事、仕事!」

みんなは、渋々仕事に取りかかった。

394:岬◆8Q:2017/09/15(金) 22:10

4.わたしの決断
翌日の朝。
露島先輩と隅木田くんを前に話す。
わたしが決めてきたこと。

「ごめんなさい、隅木田くん。露島先輩の方へ入ります」

露島先輩は、ニヤリと笑みを浮かべて隅木田くんをからかった。
きっと、負けたって言って。
退学したくないから。
我慢も大切だよ。
昨日、青山野学園の校長先生と話していて、推薦で入れることになった。
推薦取り消しはごめんだから。
卒業まではとりあえず。

「すみません!」

隅木田くんは、身をひるがえして中等部へ戻っていった。
露島先輩とふたりで児童会室へ向かう。

「真美ちゃんカッコいいねぇ。俺のことは露島くんと呼んでよ」

馴れ馴れしい。
先生に怒られたらイヤだな〜。
露島くんは、コヨの仲間。
わたしもコヨの仲間になるんだ。

「コヨの従姉妹のコンも、よく手伝ってくれる。覚えとくといいよ」

コンさんもコヨの仲間か〜。
敵ばっかりな感じ。
露島くんと別れて6年1組へ行く。
合併は見事無しになった。
わたしの迫力でね。
英雄だよ、わたし。

「真美っ、おはよ!」

コヨが馴れ馴れしく抱き付いてくる。
きっと聞いたんだろうな。
露島くんから。

「ごめんね、ずっと仲良くしなくて。今日から大親友ね!」

こんな簡単に親友になっていいの?
コヨの中の親友って何?
ちょっとひきつった顔を伸ばしながらコヨと話す。

「よろしくね!」

うん…。
明スイに戻る方法はあるかな。
もう言っちゃったけど。
図々しいよね、わたし。

「闘いは無しだね!」

いや、やるよ、コヨ。
文化祭までに、必ず抜けるから。

395: 薫+*Mio+*◆v.:2017/09/16(土) 12:16

いやぁ、なんか凄いことになってるね……。
それに、中学推薦ってすごっ!
私、普通受験だし、かなり難しいと思うのに……。
それと、明スイ戻れるように真美ちゃん頑張ってっ!

396:岬◆8Q:2017/09/16(土) 12:58

薫ちゃんありがとう!
校長先生に気に入られたからね。
真美ちゃん頑張ってるし。
読んでくれてありがとね!

397:岬◆8Q:2017/09/16(土) 13:09

5.コヨといて
今日はコヨと勉強会をすることになった。
もう美華ちゃんたちといなくなって、わたしや初香ちゃんのところに来たコヨ。

「真美〜、わたしも青山野受ける〜」

「いいよいいよ。コヨの行きたいところ行けば」

コヨは、樹くんみたいに執着。
1日だけでも疲れちゃう。
初香ちゃんもね、コヨに言ったの。

「初香たちにも仲良くして」

ってね。
だけどコヨったら、「真美とふたりがいいの!」なんて意地張ってる。
わたしは初香ちゃんたちがいいよ〜。

「コヨ、コンさんってどこに住んでるの?」

「コンなら、家」

コヨと一緒に住んでるんだ。
従姉妹ってところだから、似てるのかもしれないよね。
新明スイはヘトヘト。

「露島くんから聞いたかもだけどさ、明日、学食で話し合いね。活動の」

「了解しました」

コヨといるようになってから、学食でご飯を買うようになった。
お金かかるんだよ〜。

「真美の家楽しみだな〜」

コヨは、わたしの腕をギュッっと握った。

398:岬◆8Q:2017/09/16(土) 13:27

6.作るスイーツは?
家に帰って、コヨを迎える準備をしていると。
 ピンポーン

「はーい」

最近、おばあちゃんは帰宅。
亡くなったおじいちゃんのことでいろいろあるんだって。
パパもママも帰ってきてないから、基本ひとりなんだ。
パパは出張。
ママは入院中だから。
妊娠してるからだよ。

「真美ちゃん、露島だよ」

つ、露島くんかぁ。
ゆっくりドアを開く。
後ろにはコヨ。

「コヨと勉強するのに俺は入れてくれないの?」

「すみません。どうぞ」

露島くんにも上がってもらって、さすがにわたしの部屋は無理になり、リビングを使うことにした。

「勉強よりさ、活動方針の話し合いもしよーよ」

露島くんに圧され、ノートを持ってきた。
明スイノート。
どんなことがあったのか書き留めたいから、新明スイでもこのノート。

「俺とコヨは明確ゼミ入ってるけど、真美ちゃんは元だよね。気にしなくていいから」

は、はい…。
露島くんが言うには、わたしたちは第2代目明スイらしい。

「明確ゼミで、2代目明スイのパーティーを行う。よろしくね」

パーティーかぁ。
わたし、キライじゃない。
でも、イヤだな。
逆らうことも出来ず、先に進む。

「作るものは、パン」

パンって、あれでしょ!?
もっちもちふっわふわの!
あげパン食べたい、チョココロネ食べたい!
パン食べた〜い。

「真美ちゃん喜んでるね」

あ、バレた。
2代目に入って一番嬉しい。
って、こんなことより、抜ける方法を考えないと。
まずは隅木田くんと話すこと?

「大丈夫?真美」

コヨに笑いかける。
大丈夫じゃないけど。
露島くんは、またも先に進む。

「明明後日行う予定。パンは何パンを作りたい?」

「はい!あげパン、チョココロネ、カレーパンに明スイパン!」

露島くんとコヨは笑い、わたしのノートに書き込んだ。

「じゃあ、あげパン俺。チョココロネコヨ。カレーパン真美ちゃん。明スイパンみんなでいい?」

わたしは力強くうなずいた。
スイーツのことなら、持ってこい!
パンってスイーツじゃないかもだけどね。

399:岬◆8Q:2017/09/16(土) 13:56

7.再び闘いへ
コヨと別れ、隅木田くんと電話する。
抜ける方法について。

「ごめんなさい隅木田くん」

「いいよ、露島先輩が悪いんだから」

隅木田くんと約束して、近くの公園で話すことにした。
わたしの初恋相手と。

「あ、隅木田くんこっちです!」

ベンチに腰を降ろし、しんみりした感じで切り出した。

「文化祭で、しっかり闘いたい。明スイに戻りたいから」

「露島先輩には、僕から申し込むよ。真美ちゃんは動かないで」

わたし、動かしにくい駒だよね。
チェスで表すと、ポーン。
マヌケな感じがするから。

「文化祭のはやるつもりだから」

隅木田くんの強い眼差し。
きっと助けてくれる。


翌日。
露島くんに呼ばれて高等部の生徒会室へ向かった。
やや怒ってる顔。
隅木田くんに言われたのかな。

「文化祭、闘いたいって言われた。どうせ俺たちが勝つから乗ったよ」

おお、隅木田くんありがとうございます!
でも、明後日はやるよね。
パン食べたいし〜。

「じゃあ、明後日はよろしく!」

「はい!」

よかった、なんか。
ヤバイ感じじゃなかったから。
コヨと、ふたりで廊下を歩いていると。

「コヨ」

「あっ、コン!」

コンさん!?
コヨが駆け寄って行った先は、コヨに似ている顔の女の子だった。

400:岬◆8Q:2017/09/16(土) 14:24

8.ママがっ!?
この子が、コンさん。
コヨがコンさんを紹介する。

「俣野コン。漢字で書くと、紺色の紺って書くよ」

「初めまして、多田本さん。コヨの従姉妹のコンです。高等部2年。露島くんと付き合ってます」

あ、付き合ってるんだ。
だから仲良くしてるってこと?
まあいいけど。

「初めまして。多田本真美、初等部児童会長です。コヨさんと仲良くさせていただいてます」

コンさんととりあえず別れて、コヨと教室へ向かう。
初香ちゃんたちとは、もういられなくなっちゃった。

「ちょっと、真美来い」

坂宮が呼び出して来て、わたしは図書室へ向かった。
コヨは、先に教室へ行ってね。

「絶対連れ戻すから待ってろよ」

隅木田くんに聞いたんだ。
坂宮は、わたしの手を優しく包み込むように握った。

「パフェ、何度も練習してるから」

わたしのために…?
明スイのみんな、ありがとう。
思わず涙ぐむ。
すると。

「多田本さん、病院へ行ってください。お母さんが…」

藤本先生が呼びに来て、わたしは病院へ向かった。
呼ばれて行ってを繰り返してる。
そんなことを思いながら、藤本先生の車に乗った。

「多田本さん大変だよね」

「はい。…あの、お母さんがどうしたんですか?」

藤本先生は車を運転しながら、となりのわたしをチロッっと見た。

「すごく苦しいみたいです。多田本さんを呼んでるって聞いたから」

娘であるわたしが、ね。
いたら、元気出るかな。
出たら嬉しいけど。

「笑顔でいてくださいね」

はい。
わたしは、病院の門をくぐった。

401: 薫+*Mio+*◆v.:2017/09/16(土) 14:37

真美ちゃんのお母さん!
大丈夫?
それと、400おめでとう!

402:岬◆8Q:2017/09/16(土) 15:44

薫ちゃんありがとう!
どれもこれもみんなのおかげ。
皆さん、本当にありがとう。
コメントサンキューです!

403:岬◆8Q:2017/09/16(土) 19:30

9.コウスケくん
ママの部屋に藤本先生と行く。
笑いながらね。
おばあちゃんはいなかったけど、パパは来ていた。
出張先から飛んできたんだ。

「真美ちゃん?お母さんね、あなたの名前をずっと呼んでたのよ」

看護師さんがかがむ。
ママは寝ているけど、すごく汗をかいていて、苦しそうな顔。

「ありがとうございます」

看護師さんは部屋を出ていき、パパとわたしと藤本先生だけになった。
何話したらいいんだろ。
あたふたしていると、パパと藤本先生が話し始めた。

「真美は、ママの手でも握ってあげなさい」

パパがママの手を布団から出す。
わたしは、坂宮に握られたように、優しく握った。
ママ、お願い。
赤ちゃんを産んで!

「あぁ、遅れてごめんなさい」

「お母さん!」

「おばあちゃん!」

パパのお母さんじゃないよ。
ママのお母さん。
だけど、パパはおばあちゃんのことをお母さんって呼ぶんだ。
そうやって呼ぶ人多いらしいよね。

「真美ちゃん、優樹さん、すみませんでした」

おばあちゃんは、軽く藤本先生にあいさつして、布団をめくった。
わたしのとなりに座り、ママの手を握った。

「ちょっと行くね」

わたしは、部屋を出た。
すると。

「おねえちゃん、おかあさんがいなくなっちゃったの〜」

小さな男の子が、制服のスカートの裾を引っ張った。
お母さんがいないの!?
迷子かな。

「かんごしさんには言わないで!おかあさんにおこられるから〜」

困ったな〜。
看護師さんに言わずに捜す。
…って、お母さんに怒られる理由って看護師さんに言うから!?
どういうことだろう。
迷惑かけたからとかかな。

「僕、俣野コウスケ〜」

俣野?
初めの文字が『コ』?
ドクンとする。
コヨもコンさんも、初めの文字は『コ』だから。

「コウスケくん、おねえちゃんはいるかな?」

「いるよ!コヨおねえちゃんと、コアおねえちゃん。おねえちゃんと同じお洋服だよ〜」

やっぱりコヨだ!
コアさんは知らないけど。
ともかく。

「おねえちゃんは、真美。コヨおねえちゃんと仲良しだよ」

「えっ?コヨおねえちゃんと仲良しのおともだちなの?」

「うん、おともだち」

コウスケくんは、にっこり笑って上を向いた。
考えてる感じ。
コヨのこと思い出してるのかな。

「おかあさんとはどこではぐれたのかな?」

「ここ〜。僕がトイレ行ったらいなかったの〜」

コヨのお母さん、コウスケくんのこと見ててあげてねっ!
そんなことも言えず、立ち尽くす。
どうしよっかな〜。

「あ、僕、おねえちゃんと遊びたい。おかあさんが来るまで遊ぼ〜」

コウスケくんに連れられて、保育園くらいの子が遊ぶようなスペースへ移動した。

404:岬◆8Q:2017/09/16(土) 19:42

10.コンさんの秘密
コウスケくんは、思ったより元気っ子だった。
休憩せずに、ヒーローごっこをして遊ぶから。
わたしは悪者でね。
コウスケくんが剣でやつけるの。

「ごめんね〜、コウスケくん。おねえちゃん疲れちゃった。他のことやらない?」

「え〜?コヨおねえちゃんはずっとやってくれるのに〜」

さすがコヨ。
運動神経抜群だったからね。
体育祭、無我夢中に適当に走ったら一位のわたしとは違う。
たまたまみんなが運動苦手なだけだったし。

「コヨおねえちゃんより体力なくて」

「じゃあ体力付けよ〜」

そういうこと〜?
わたしはコウスケくんに引っ張られて、悪者になる。
そう言えば、どうしてコウスケくんは病院にいるんだろ。
ふと思って聞いてみる。
すると。

「従姉妹のおねえちゃんが病気だから来たんだ〜。知ってる?コンちゃん」

「知ってるよ、コンさん!」

思わず身を乗り出す。
すると、コウスケくんに身を沈められた。

「後から〜。まずはヒーローごっこ!おねえちゃんいいでしょ〜?」

「いいよ」

「やったぁ〜!」

コウスケくんはぴょんぴょん跳び跳ねながら剣を構える。
わたし、お絵描きが好きだったって聞いたな〜。
コウスケくんは好きかな?
遺伝子とかで、コヨは美術苦手だから好きじゃないかも。
わたしは、クスッっと笑って構えた。

「コウスケくんいいよ!」

すると、コウスケくんは体当たり。
わあっ。
思わず寝転がり、コウスケくんが剣でバシバシ叩いた。
痛い、痛いよ〜。
コヨすごいな、耐えれて。

「おねえちゃん立って〜」

立とうとしても。
ち、力が入らない…!
どういうこと!?
コウスケくんがブスッっとしている。

「ごめんねコウスケくん」

た、立てないっ!
すると。

「コウスケ!」

「おかあさん〜」

あ、コウスケくんのお母さんが来た。
あの人がコヨのお母さん。
もしかしたら、コヨはお母さんの遺伝子かも。
顔そっくりだし。

「迷子でした。気をつけて見てあげてください」

「ありがとうございます」

わたしは、苦笑いしながら足をさすった。

405:ルナ◆3es:2017/09/16(土) 19:45

もう少しで400だね……
頑張ってね………

406:岬◆8Q:2017/09/16(土) 19:50

11.優しいお母さん
「痛いっ!」

コウスケくんたちが振り返った。
まだスペースで足を押さえている。
足が動かない。

「おかあさん、おねえちゃん、全然動けなくなったんだよ〜」

「えっ、大丈夫ですかっ!?」

コウスケくんのお母さんが駆け寄ってくる。
足をパッっと見て、カバンから1000円札を取りだし、言った。

「ヒーローごっこですよね。コウスケが出すぎた真似を。すみません。これで病院で治してもらってください。本当にすみません!」

やっぱり、コヨの遺伝はお母さんじゃないかも。
すごく優しいもん。
コヨはちょっと意地っ張りだからね。

「あの、いいですよ」

「いいえ、どうぞ!」

わたしは渋々受け取って、お母さんを引き留める。
もうそろそろ行きたいよね。
コンさんのところ。

「わたしは、お宅のコヨさんと仲良くしている多田本真美です」

「あなたが真美さん!?コヨが楽しそうに真美さんの話をしているのよ」

コヨ…。
コウスケくんのお母さんは、「真美さんは本当に素晴らしい子ね」と言い、コウスケくんと帰っていった。

「あの、すみません」

看護師さんを呼び止め、足を見せる。
1000円札も出してね。
ごめんなさい、コウスケくんのお母さん。
使わせていただきます。

「大変ね。おんぶするわ」

看護師さんが治療室へ運んでくれて、包帯をグルグル巻いた。
コウスケくんは怒られないけど、わたしが怒られるかも〜。
わたしは、怯えながらおんぶしてもらってママの部屋へ行った。

407:岬◆8Q:2017/09/16(土) 19:51

ルナ、ありがとう!
さっき400行けましたっ!
本当にコメントしてくれてありがとう。ガルトの件ごめんなさい。

408:ルナ◆3es:2017/09/16(土) 19:52

ごめん。もう400行ってたね。
おめでとう。

409:ルナ◆3es:2017/09/16(土) 19:52

>>407
良いよ。でも、たまには来てね。

410:岬◆8Q:2017/09/16(土) 21:05

ルナ、ありがとう!
行けるときは行けるよ!
本当にごめんなさい。

411:岬◆8Q:2017/09/22(金) 21:39

12.コン先輩の部屋へ
やっぱりと思ったけど、おばあちゃんにはこっぴどく怒られた。
根に見えてたけど。

「菜和が大変なの分かるでしょ。真美ちゃんまでケガして〜」

は〜い、分かってるって〜。
ケガしたら、お世話じゃないけど、めんどくさいことになるってことだよね。
知ってるんだから。

「すみません、看護師さん」

呼び止めて、コンさんのことについて聞いてみる。
先輩だし、コンさんじゃなくて、コン先輩、かな。

「病気の女の子よ。病名までは言えないわ。個人情報だから」

コウスケくんの言った通り、病気なんだ。
だけど明スイ続けてるんだね。
スイーツを好きっていう気持ちがすごく伝わってくる。
ちゃんと彦宮学園に通っていること、きっと、ずっと通いたいんだろうな。
楽しいこと、見てたいと思うし。

「行ってもいいですか」

今はちょうど起きているらしく、看護師さんに押してもらい、コン先輩の部屋へ向かった。

「失礼します」

「どうぞ」

コン先輩は、いつにもましてぐったりしていて、かわいそうだった。
コヨも悲しいんだろうな。

「真美ちゃん?」

わぁー、名前で呼んでくれた。
コン先輩に笑いかけ、にっこり。
クスッっと笑われて、椅子を引っ張り、座るよううながされる。

「わざわざありがとう。真美ちゃん、車椅子なの?」

「いえ、先程、コウスケくんと遊んでいてケガしたもので」

コン先輩は、キッっと目を見据えた。

412:岬◆8Q:2017/09/23(土) 07:24

13.俣野家の秘密
コウスケくんと、何かある!
急に眉が動いたコン先輩。

「コウスケくん、従兄弟ですよね」

「本当の、従兄弟ではないけど」

…えっ?
コウスケくんも?
コヨは知ってるけど、まさか、コウスケくんまで。

「コヨとも無関係だったのよ。コウスケは、事故で両親を失い、養護施設へ行ったの。それで、叔母さんがコヨと一緒に引き取ったの」

コウスケくん、小さい時から、つらい思いしてたんだね。
いきなり知らない子たちを迎えるコン先輩。
認めたくなかったんだろうな、自分の従兄弟だなんて。

「コヨ、隅木田くんの従兄弟で、誇りらしいのよ。裏切りたくないって」

露島くんと、明スイやるの、ためらってるのかも。
それなら、わたしがやめさせなきゃ。

「お話ありがとうございました。必ずコヨがしたいことさせてあげます。お大事に」

「待って!!」

部屋を出ようとすると、コン先輩が声を上げた。
えっ?
コン先輩に渡された手紙。
コヨへの手紙だった。

413:岬◆8Q:2017/09/24(日) 16:35

14.エプロン作り!
ここは家庭科室。
カフェのエプロン作ってるの。
わたしたちは接客だから、メイドみたいなエプロン着るの。
実柚乃ちゃんをはじめ、料理組は、家にあるエプロン。
メニューがおおまかに決まったところで、実柚乃ちゃんが来てくれた。
さっすがだよね。
料理だけじゃなくて、お裁縫まで一流なんだから。
ミシンなんて、先が見えないくらい早いんだもん。

「あ〜、ダメダメ。コヨちゃんの左手危ないでしょ〜!」

実柚乃ちゃんがミシンを止めて声を上げる。
コヨ、初香ちゃんにはちょっと冷たいけど、実柚乃ちゃんだと笑顔。
どういうことかな?

「ゆっくりここまで縫ってごらん」

「実柚乃ちゃ〜ん!」

すぐ、向こうで初香ちゃんとさやかちゃんが呼ぶ。
コヨは、思いっきりにらむっ!
思わず身がすくむ…。

「さや、ミシン苦手〜」

「実柚乃ちゃん助けて〜!」

コヨは、ミシンをハイスピードにして縫った。
ぐちゃぐちゃ、汚いよー!

「真美、これ初香にあげてきて」

「ダメでしょ、これじゃ。ちゃんと、一着作ってみない?」

コヨは、ムスッっとしながら初香ちゃんたちを見る。
しょうがないなあ、コヨ。
リッパーで糸を取って、0からやり直す。
これは、コヨが着るんだよっ!

「ありがとう実柚乃ちゃん!初香ひとりでも出来そう」

「いやいや〜、実柚乃も、力になれて嬉しいな〜!」

わたしは、実柚乃ちゃんたちを見ながらコヨに差し出した。

「だいたい縫ったから、続きからは、コヨが縫うんだよ」

「は〜〜〜い」

もーう。
もっとやる気出してよーーーっ!

414:岬◆8Q:2017/09/24(日) 16:47

15.文化祭開催
「ただいまから、第46回、私立彦宮学園の文化祭を開催致します!良い思い出を作りましょう!」

わたしが放送を入れて、文化祭は始まった。
放送室から6年1組へ移動する時も、いろんな教室から呼び込まれる。
そのたびに断っててさ。
本当に悪いよ〜。

「あ、真美ちゃんよろしくね!」

午後から仕事の七井さんがピース。
真美ちゃんって呼んでくれるのがすごく嬉しい。
七井さんにし返して、6年1組に入った。
家庭科室がとなりで助かったよ〜。
エプロンを家庭科室へ持っていき、準備室で着替える。

「実柚乃ちゃんたちよろしく!」

「任せといて!あとから試食品出すつもりだから」

おお〜!
こっちも盛り上がってるね。

「真美ちゃん早く!」

「今行く!」

教室へ向かうと、すぐワッフルふたつが来た。
ええっと、5番机だね。

「お待たせいたしました!ワッフルになります。ではお楽しみください」

料理を、家庭科室から運んでくれる樹くんにもらう。
次はソフトクリーム。

「お待たせいたしました!ソフトクリームです!お楽しみください」

あ〜、みんなにっこり笑顔じゃん。
わたしも笑っていると、樹くんに呼ばれて家庭科室へ。

「試食品!外で真美ちゃんが呼び込んで!」

実柚乃ちゃんに渡されたワッフル…。
美味しそうだけど、食べるのはまだ。
任された責任を背負い、家庭科室を出た。

「ね〜、カフェだって。混んでる。向こうの5年2組の注文の多い料理店にする?」

カップルが悩んでいる。
一般の人も来てるじゃん!

「ここのワッフル美味しいですよ!一口いかがですか?」

カップルは食べた途端、すぐ列に並んでくれた。
よーし、呼び込むよっ!

415:岬◆8Q:2017/09/24(日) 16:59

16.やけど事件!
そろそろ教室に戻ってもいいかな。
わたしは、紙皿をゴミ箱に捨て、教室に戻った。

「ちょっと運んでくれる?」

陽茉理ちゃんにパンケーキを渡されて、お客様の元へ運ぶ。
急にどうしたのかな。

「お待たせいたしました。ふわっふわのパンケーキです。お楽しみくださいませ」

あれ、莉保子ちゃん。
わたしに気付いて、莉保子ちゃんはお辞儀する。

「カワイイエプロンですね。カッコいいです、真美先輩」

「いえいえ」

莉保子ちゃんは、パンケーキにこぼれ落ちるくらいのハチミツをかける。
ポトポト音がしそう。

「じゃあいただきますね」

わたしはその場を離れ、陽茉理ちゃんを探す。
大変なことなら何とかしたいし。

「あっ、真美ちゃん」

エリちゃんに呼ばれて、家庭科室へ行く。
すると、手を冷やす実柚乃ちゃん。
注文カードがたくさん貼られた紙。

「どうしたのっ?」

「実は、実柚乃やけどして。明スイの真美ちゃんなら代わってくれると…」

なるほどね。
わたしがお客様が食べるスイーツを。
よーし、任せて!

「エリちゃんは保健室へ連れてって。さあ、作るよ!」

陽茉理ちゃんのことは、ちょっと置いといて、わたしの実力見せてやる!

416:岬◆8Q:2017/09/24(日) 20:29

17.救世主あらわる
大量の注文カードを全て作り、ちょっと休憩。
午後からは、実柚乃ちゃんの代わり、七井さんが入ってくれる。
なんってったって、実柚乃ちゃんに続いて2位だし。

「ふみちゃん、これ」

接客担当の晴奈ちゃんが注文カードを5枚持ってくる。
陽茉理ちゃん大丈夫かな。
見てないけど。

「まーちゃんどうする?」

みんながわたしの指示を待つ。
ワッフルが多いね。
なら、わたしとエリちゃんがワッフル担当。
ソフトクリームが涼太くん。
ふーちゃんは、サンドイッチ。
それを言うと、みんな散って作り始めた。

「おい、樹。これ」

涼太くんが、素早く。
でもていねいにソフトクリームを作っていく。
コーンやカップ様々。

「次は…」

「サンドイッチお願い」

涼太くんがふーちゃんの隣に立ち、どんどん野菜をサンド。
裏返す時になったらササッっと。
ワッフルを裏返して、チョコレートソースをたっぷりかける。

「晴奈ちゃんよろしく!」

チョコレートワッフルがひとつ終わったから、注文カードをゴミ箱へ。
これでも、まだまだたまる注文カード…って量多っ!

「樹くん、接客グループからひとり呼んできて」

呼ばれてきたのはコヨ。
コヨも混じって、スイーツ作り。
さすがだけど、スピード早い。
ミシンとは大違い。
めちゃめちゃ美味しそうだし。

「桜庭、これ」

コヨが樹くんに渡すと、また次々にスイーツを完成させてゆく。
ボサッっとしていると…。

「真美ちゃん集中」

あ、はい!
エリちゃんに注意されて、唾を呑み込む。
コヨに負けないくらい頑張るぞ!
わたしは、またワッフルを裏返した。

417:岬◆8Q:2017/09/24(日) 20:39

18.初美先輩
「真美ちゃん、終わり!」

初香ちゃんに呼ばれて、わたしは制服に着替えた。
ここからは自由時間。
初等部から高等部まで回れる。
ご飯もどこかで済ませなきゃ。

「一緒に回ろ!」

コヨはまだ残るから、4人でいろいろ回ることになった。
まずは昼ごはん。
初香ちゃんオススメ店へ行く。
中等部の…2年7組!?
『お笑いカフェ』。
ここもカフェなんだ。
並んでおらず、普通に入れた。

「さあさあ、お客様やってきました」

おっ、お笑いって本当じゃん。
ご飯を食べながら爆笑する人たち。
面白そうじゃん!

「ここ、お兄ちゃんがやってて」

初香ちゃんは椅子に座り、みんな分のスパゲッティを注文した。
わたしが注目した生徒は、あの子。
楽しくなさそうに立っている。

「初香ちゃん、あの子…」

「ああ、初香のお姉ちゃん。双子だから。でもタイプが違う。初美っていうの」

初美先輩か〜。
ボサッっと立っていて、やる気がなさそうな感じ。

「お姉ちゃん、ダメだよね〜」

何とも言えないけど、何かイヤなことでもあるのかな。
初等部児童会長だけど、ほつんとけないかも。
気づけば、わたしは屋上にいた。

418:岬◆8Q:2017/09/24(日) 20:47

19.関係ない
「初めまして。初香ちゃんと仲良くしてます。多田本です」

初美先輩はコクンとうなずいた。
名を名乗らないタイプね。
わたしは、穏やかな感じで聞いた。

「イヤなことありませんか?初美先輩ですよね」

「別に関係ないでしょ」

初美先輩はムッっとして言い返す。
でもひるまない。
わたしも負けじと言い返す。

「初美先輩がイヤなことあったら、初等部ですけど、児童会長であるわたしが悩みます」

初美先輩は一瞬ひるんだ。
そして、何事もなかったかのように少し笑った。

「北山先輩とでも呼んで。名前を馴れ馴れしく呼ばないで」

…。
北山先輩は、わたしをギッっとにらんで屋上のドアに手をかける。

「待ってください!」

わたしは北山先輩の手をとり、目を見開いて語りかけた。

「そのまま学校にきてほしくないんです。楽しいところであってほしい。だから…!」

「ほっといて。初香が何とか…関係ないものは関係ない」

…、どうして。
北山先輩が出ていった後の風は、いつにも増して寒く感じた。

419:岬◆8Q:2017/10/02(月) 12:49

20.お化け屋敷
わたし、初香ちゃん、さやかちゃん、料理担当だけど、休憩で特別にエリちゃんの4人が来たところ。
ここは、中等部3年1組。
お化け屋敷です!

「いってらっしゃ〜い!」

受付の先輩に見送られてお化け屋敷へ入る。
エリちゃんと手を繋いで、後ろには初香ちゃんとさやかちゃん。

「真美ちゃん怖いよ〜」

「大丈夫、わたしも怖いけど」

エリちゃんと背中をさすりながら歩くこと30秒。
って言っても、進んだのは1歩。
なのに!

「ヒエ〜!何よ〜う」

エリちゃんったら、何もないところで叫ばないでよ〜。
後ろのさやかちゃんは爆笑。
心が緩んだ瞬間!

「ギョエーーーーー!」

お化け出たあ〜!
追いかけてくるし、リアル過ぎるよ〜!

「エリちゃんと真美ちゃん早く!」

初香ちゃんが意外にも声を上げる。
みんなで走り抜けながら、またお化けが現れ。
追いかけられを繰り返して、光がだんだん大きくなり…!

「出れたあ〜!」

ハイタッチしながらお金を払う。
めちゃめちゃリアルだった!
中等部まで行くと、こんなに迫力あるんだね。
高等部だったら、もっと迫力ありそうだな。

「絵理乃さ、またすぐ戻らないといけないから、高等部行っていい?」

露島先輩がいるじゃん。
コン先輩も。
わたしたちは、高等部へ繋がる廊下を走った。

420:岬◆8Q:2017/10/02(月) 13:37

21.コヨに対する気持ち
高等部のバッヂを胸に付けている先輩は、歩き方が大人。
中等部もそこそこだったけど。
初等部はやっぱり子供。
大人びた先輩が多い廊下に、一際子供っぽい子。
初等部1年生のバッヂだ。
注意しようとも思ったけど、文化祭だから、やっぱり楽しみたいよね!

「どこ行く?」

さやかちゃんが指差した教室は、3年5組。
ここには、さやかちゃんのお兄ちゃんがいるらしい。
露島先輩とコン先輩もいるとか。

「何のお店かと言うと。私立彦宮学園お土産屋!」

へ〜、面白そう。
教室に入って、お土産物を見る。
先輩の手作りじゃん。
わたしは、みんなオソロイのストラップを買って、もうふたつ色違いのストラップを買った。
コヨとオソロイなの。

「それ同じのふたつもいる?」

さやかちゃんがストラップを見ながら尋ねる。

「コヨにお土産。オソロイで買って」

「あの子に買ったの〜?」

そうだった、さやかちゃんたちは、コヨに嫌がらせされてるんだ。
初香ちゃんとエリちゃんは、優しいから表に出さないけど。

「コヨちゃんって、真美ちゃんにだけ仲良くするよね。意味分かんない」

やや怒り気味で言いながら、エリちゃんと別れた。

421:岬◆8Q:2017/10/02(月) 14:16

22.演劇会スタート
さあ、演劇会だ!
文化祭も終わって、多目的ホールで初等部は演劇会が始まる。
中等部は、グラウンドにてフォークダンス。
高等部は、体育館にて蓑島菜奈ちゃんのライブが開催される。
高等部に入れば文化祭の後に必ずライブに参加出来るの。
蓑島菜奈ちゃんっていうのは、元彦宮学園生徒で、歌手になった子。
東大卒なの。

「真美、こっちこっち」

コヨに手招きされて、多目的ホールの裏側へ移動する。
6年1組から演技がスタート。
物語はオリジナルで、『6年1組仲良し物語』という。
わたしと実柚乃ちゃんが台本を書いたの。

「コヨは、転校してきたから、転校するまでの物語の間はナレーターだったよね」

 プーーープーーープーーー

「第一回、6年1組仲良し物語。6年1組による、友達関係の物語です。では、開幕です!」

アナウンスが入った途端、となりにいたナレーターのコヨが舞台に出た。

「初めまして。わたしの名前は俣野コヨです。こちらに転校してきました。来たときから、仲良しクラスだなと思い、それを演技します。どうぞ!」

まず、ふーちゃんがひとりで出て、紙を掲げながらマイクの前に立つ。

「わたしが、前期児童会長杉田ふみ!これから頑張ります!」

ライトが消え、すぐ現れたのは、初香ちゃんグループに美華ちゃんグループ。それに、わたしと晴奈ちゃんグループ。
まだ、初めは晴奈ちゃんたちと一緒だったから。
わたしもたくさんセリフあるし、頑張るぞ〜!

422:岬◆8Q:2017/10/02(月) 14:29

23.完結・感動・涙
「晴奈ちゃあ〜ん!」

4人でキャッキャしておしゃべりしながら、美華ちゃんのセリフを待つ。
だけど、いっこうに美華ちゃんの口はおしゃべりをやめない。
優佳ちゃんがセリフを静かに教えてあげて、やっとセリフを言う。

「ちょっとあなたたちうるさいわ!」

「そうよそうよ。美華ちゃん、もっと言ってやって!」

「もっと静かにしたらどう?」

優佳ちゃんと穂乃佳ちゃんも負けじと威張り散らす。
怒られた晴奈ちゃんグループと初香ちゃんグループのわたしたちは、ムッっとしながら言い返す。

「みんながおしゃべりして悪い?美華ちゃんたちだけのクラスじゃないでしょ!」

ライトがクルクル回り、赤、青、黄色と色が変わる。
実柚乃ちゃんが描いてくれた黒板アート風のバックもいい感じ。

「美華ちゃんたちも静かにしてよね!スマホの音うるさいし!」

効果音の音楽がチリチリチリチリ!
リアルにケンカっぽくなってきた。
すると。

「仲良くしなさーーーい!」

ふーちゃんの怒声が響きわたり、多目的ホールは、シーンと静まりかえる。
このリアクションいいねえ。


あのあとも、うまいこと演技は終わって、打ち上げが楽しみ。
これだけの完成用なら、打ち上げやる価値があるねっ!
わたしは、感動して涙が出た。

423:岬◆8Q:2017/10/02(月) 14:47

24.結果発表!
1年生の演劇も終わり、いよいよ明スイ対決がスタート。
本当の明スイはパフェ。
コヨによれば、新明スイはマカロンらしい。
洋菓子だな〜。

「皆さん、この場をお借りしまして、初等部児童会長多田本真美さんが、明スイのままか、新明スイかと対決をさせていただきます。第二回戦です。第一回戦は、見事新明スイ勝利。ここで明スイが勝たなければ、新明スイ決定となります!」

露島くんがマイクを置いて、明確ゼミの時と同様、モザイクのかかる板。
調理器具が並べられたキッチン。
5、4、3、2、1。
調理開始!
となりでは、実柚乃ちゃんが何を作っているのか当てている。
調理器具と、音で。
それで分かったらすごいよね。

「この音…、新明スイはマカロン?」

あれっ?
もう分かっちゃったの?
実柚乃ちゃんは、調理器具にも着目。
新明スイは、確実にマカロンだと決定させた。
一方明スイ。
調理器具がたくさん使われていく。
この時点で、実柚乃ちゃんはパフェだと判断。
お見事です…!


調理は無事終わり。
わたし以外と生徒がスイーツを食べている。
実柚乃ちゃんは、どちらがどちらか分かったから、明スイに入れてくれた。
もちろん、明スイの方が美味しいって言ってたし。
ありがとう…!
きっと明スイが勝てる…!

「結果が出ました!」

結果発表はわたし。
結果の紙を裏返す。
…やった、明スイ勝ちだ!

「隅木田先輩率いる明確スイーツ研究部の勝利です!」

よ〜し、明スイ最強。
次も絶対絶対勝つんだから!

424:岬◆8Q:2017/10/02(月) 14:57

25.打ち上げは恋の予感
文化祭の翌日。
土曜日だったので、打ち上げでカラオケに行った。
中等部以上は土曜日も授業あるんだよね〜、かわいそ。

「学級委員長からお言葉!」

樹くんがマイクで叫ぶ。
七井さんにマイクが渡り、七井さんは曲を入れた。
『ありがとう』という曲。
テレビに映し出された歌詞とは全く違う歌詞を歌う七井さん。

「6年1組は最強〜!
みんなで力を合わせたら何でも出来るから〜!」

『ありがとう』が終わると、わっと部屋が盛り上がる。
ここからはカラオケ大会。
点数が一番高かった人には商品。
彦宮学園生徒が持てたらの誇りのバッヂをプレゼント。
これも美華ちゃんの力。

「初香、俺が一位だったら付き合ってくださいっ!」

樹くん、だいたん…!
初香ちゃんの顔はどんどん染まる。
『愛してるぜ』を熱唱した樹くん。
点数は…えっ、99,8点!?
3時間みんなで歌ったけど、樹くんを越す物はおらず。

「では、お先に〜!」

仲良くふたりで帰ったのでした。

             (つづく)

425:岬◆8Q:2017/10/02(月) 15:08

あとがき
                岬

こんにちは!
『ここは明確スイーツ研究部!』略して明スイ、12巻、いかがですか?
文化祭に演劇会に対決。
豪華三点盛りでしたね〜!

皆さんは、対決したことありますか?
運動会とかありますよね。
わたしもありました。
ミニ合唱コンクール、体育大会と、中学校のクラス対抗は全部勝ってます。
看板は負けちゃいました。
(ただいま中1)
だけど、わたしは運動音痴。
みんなが強いから勝てただけ。
わたしは何もしてないのです。
歌は得意ですよ〜。
れっいとしたソプラノです!
皆さんも、対決エピソードありましたら教えてくださいね。

ではでは、最後になりましたが。
ここまで読んでくださったあなた。
良ければ書き込んでください。
コメントをくださった薫ちゃんをはじめとするあなたたち。
本当にありがとうございました!
これからもよろしくお願いします。

次回は、持久走大会&期末テスト&第三回戦です!
果たして勝てるのか!

では、次回会いましょう!

426:岬◆8Q:2017/10/02(月) 19:15

『ここは明確スイーツ研究部! 13』

人物紹介

多田本 真美
目立ちたくないを意識していた小学6年生。彦宮学園の初等部児童会長。

坂宮 陽都
サッカー少年。
明確ゼミナールに通う小学6年生。
真美が好き。

矢本 拓斗
野球少年。
明確ゼミナールに通う中学3年生。

隅木田 優斗
勉強得意な少年。
明確ゼミナールに通う中学2年生。

427:岬◆8Q:2017/10/02(月) 19:32

1.持久走大会企画
ある12月の寒い寒い日のこと。
そろそろ持久走大会と期末テスト。
ただいま、学校はテストの空気。
おしゃべりの声ひとつ聞こえない。
みんな、教室、学食、相談室、どこを使ってでも勉強してる。
慣れてきた小1の子すら遊んでない。

わたし、多田本真美。
ここ、私立彦宮学園初等部6年。
初等部の児童会長です!
持久走大会の企画は、我らが児童会。
だけど、活動してくれてるのは、5年生の莉保子ちゃんーーー河合莉保子ちゃんだけ。
ひとりで企画してるの。
えらいよねえ、本当。

「児童会長いらっしゃいますか?」

莉保子ちゃんが訪ねてきたのは、わたしがコヨーーー俣野コヨと学食でご飯を食べながら勉強していた時のこと。

「あっ、お勉強の時間中すみません。持久走大会のことですが。企画が完成したので、拝見願います」

コヨは、莉保子ちゃんにも優しい。
実柚乃ちゃんーーー相川実柚乃ちゃんにも優しいの。
後は、だいたいムッっとする。
わたしと仲良くするからだとか。
莉保子ちゃんは先輩後輩関係だから。
実柚乃ちゃんは縛らないから許すんだって。

「オーケー。莉保子ちゃんありがと」

「いえ、お勉強の時間本当にすみませんでした。俣野先輩も、頑張ってください。失礼します」

コヨは、莉保子ちゃんに手を振りながらカレーのスプーンを握る。
そして、カレーをパクリ。

「本当にいい子だよね、莉保子」

うん、いい子だとは思うよ。
コヨも、わたしと同じ私立青山野学園を受験するらしい。
縛りすぎだよ〜。

428:岬◆8Q:2017/10/02(月) 19:58

2.コヨとの関係
コヨと一緒に帰りながら、ふと敵関係かどうかと考えた。
初めて会ったときは、何度も敵だと言われた。
今は新明スイーーー露島先輩とコヨがやってる、研究部に入ってるけど。
すぐ抜けれるんだから。
対決で、明スイーーー隅木田くん率いるスイーツを研究する集いが勝つから。
明スイが勝てば、いつもの生活が戻るもん。

「コヨって、わたしのことどう思ってる?」

「えっ?大〜好き!」

敵だとは思ってないんだね。
明スイが買ったら、敵って思われそうだけど。

「ねえコヨ。そこの神社でお参りしない?期末祈願のお守り買って」

わたしの家から駅の方へ歩いて、コヨの家の方へ歩いたところ。
神社の境内に足を傾け、一段一段かけ上る。

「わたし、黄色のお守りがいい!」

コヨの要望で、オソロイの黄色を買うことにした。
神様がいるところで手を打ってから、お守り売り場でお守りを買った。

「これでわたしたちはずーっ友」

コヨと笑い合いながら、境内を下る。
制服の上にセーターを着て、ガウンを着ているのに寒い。
マフラーも、手袋もしてるのに!

「真美、寒いから家帰ろ。わたしの家で一緒に勉強しよ〜よ〜」

ひとりで勉強した方がはかどると思うんだけど…これで縁切りたくないし。
コヨのことだから、明スイが勝ったら縁切りそうじゃん。
ふたりでいられる間は、コヨといたいかも。

「いいよ」

わたしは、お守りをスクールバッグに付けながらコヨの家へ向かった。

429:岬◆8Q:2017/10/02(月) 20:15

3.俣野家
「お邪魔します」

すると、出てくれたのは、この前見た活発な男の子ーーーコウスケくん。

「あっ、おねえちゃ〜ん。遊びにきてくれたんだね!遊ぼ〜」

違う違う、勉強しに来たの!
コヨはコウスケくんをなだめてくれたけど、勉強時間をちょっと削って、20分遊ぶことにした。

「何したい?」

「ヒーローごっこ!俺がヒーロー。おねえちゃんがオバケ。コヨおねえちゃんが…妖精のコヨセイ!」

コヨセイっ!?
ネーミングセンスあってカワイイ。
もしかしたら、優眞くんもこうなるのかな。
わたし、お世話しきれない…。

「おねえちゃん、こっちこっち!」

コウスケくんの方へ突進。
すると、100円ショップに売ってそうな剣で叩いてきた。

「コウスケ、もっともっと!」

コヨが、妖精として仕方なさそうに応援している。
コウスケくん、そろそろやめよ〜。


「ごめん真美。コウスケが」

「うんん。コヨって何人兄弟なの?」

「4人。姉のコノカ。妹のコマナ。コウスケ。みんな実の兄弟」

みんなカワイイ名前。
コヨが、コノカさんはいないけど、コマナちゃんを呼んでくれた。

「何か用?」

つっ、冷たい子。
眼鏡をかけていて、比較的冷静。

「俣野コマナです。公立に通ってます。姉が私立でお金使ってるから、わたしは何もできない」

「初めまして。多田本真美です。コマナちゃん、よろしくね」

コマナちゃん、コヨのことにらんでるじゃん。
コヨがコマナちゃんに視線を配った瞬間、すぐ部屋を出ていった。


続きを読む 全部 <<前100 次100> 最新30 ▲上へ
名前 メモ
画像お絵かき長文/一行モード自動更新