洋風喫茶の魔法使い。

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1:かてぃあ:2017/03/25(土) 16:06

私がお初に小説を書こうと思います。

元々投稿サイトの作品だったのですが、こっちで不定期更新します…。

感想ご自由にどうぞ〜

6:かてぃあ 三話〜:2017/03/27(月) 12:25

二人の1日目_________。いや、0日目が終わろうとしていた。
街の明かりのせいでそこまで綺麗な夕焼けは見えないものの、昼と夜の境界を示すグラデーションは、確かに夕方を意味していた。
「本、お好きなんですか?」
自分の足元の影を踏みながら、アンは聞いた。
「うん、好き。」
ユウの答えは素っ気なかった。ふとユウを見ると、その緑の髪が光を反射してキラキラと光っていた。
喫茶店までは10分ほど。特にしゃべることもなく歩いた。
喫茶店のドアを開けると、チリンチリンと音がなる。
ドアを押さえて、先にユウを中に入れてから、アンも入った。
本日の営業は終了したのだろう。元々冒険者の集まる場所だし、この時間からやっても意味はない。
「ただいま、マスター。」
奥で食器を拭いていたマスターに声をかけた。
「おかえり」
自分の手つきに合わせるようにゆっくりとマスターは答えた。
「お手伝いしましょうか。後、彼に部屋を用意してあげてください。」
「もう君は部屋に帰って大丈夫だよ。そこの魔法使いさん、コーヒーおひとついかがかな。」
マスターは手招きをした。
アンはそれを横目に自分の部屋に帰って行った。
「明日、朝5時起きだから」
ユウの声が聞こえた気がした。

_____________________
【ユウ視点】

『魔法使いはひとつの街に90日間しかいられない。』
だから、1日も無駄にすることは出来ない。そう考えていた。
だけどここのマスターの話は長い。だからキリの良さそうなところで今日から自分の仲間パートナーとなる少女を連れ出してきた。
だけど彼女は驚くような顔をして、今日は90日に入らないと説明した。
それといくつか、この街についても聞かされた。
そして最後に、名前をつけて___。と。
なんとなく、懐かしい名前のような気がして、アンとつけた。
それなのに、嬉しそうに「よろしくお願いします。」って。
この街も変わっているが、きっとこの子も変わっている。
結論から言うに、この子はよく喋る。
でも図々しいわけではなく、詮索することもないので、どこか心地よかった。
会話の内容は、他愛もないことだ。
そこに八百屋があるだとか、そこを曲がると酒場だとか。
そこで気になることを聞きつけた。
「そこをまっすぐ行くと本屋です。本の種類が豊富なのでオススメですよ。」
自分が犬なら、たぶん尻尾を振っていた。
この国では、あまり本を読むという文化はない。
だから、このように本屋がある街はなかなかない。
何かを悟られたのか、自由に本屋内を見て良いと言われた。
きっと、僕は単純だ。
この子とはうまくやっていける。そんな気がした。

7:かてぃあ◆R2:2017/03/28(火) 22:54

そういやこの話抜けてた…

8:かてぃあ◆R2:2017/03/28(火) 22:54

>>5>>6の間にこれが入ります。

「はい、私はアンです。よろしくお願いします。」
『アン』は笑顔で答えた。

〜・〜・〜・〜・〜・〜

その後、90日の内訳に今日は入れないこと、そして依頼は受けられないことを説明し、ユウとアンは街を散歩していた。
ユウはあまり喋らない方だし、アンも一度区切られたら詮索はしない。
そのため、会話も途切れ途切れだった。
まさに、今もどちらも話題がない状況だった。

「そういえば、まだ聞いてませんでしたよね。」
会話を断ち切るように、アンは口を開く
「ん?」
「あなたは結局、魔法使いなんですか?」
「んー、まぁ」
少し曖昧だが、確実にユウは頷いた。
「それ先言ってください。」
正直冒険者の役職が何であろうと関係ない。魔法使い以外。
説明すると、この世界では魔法使いは貴重な職業として扱われる。
なぜなら、一つの街に一人の魔法使いが必ずいなければいけない決まりになっているからだ。
アンにも理由は分からないが、管理とか色々あるんだろう。
だが現在、その数は少ない。国の中でギリギリで回しているのだ。
田舎の町には魔法使いがいないところもある。実はこの町も、都会だが王都から離れているせいか魔法使いがいないのだ。
そして、魔法使いは一人前になるために一度、王都に向かわなくてはいけないのだ。
その道は険しくここからでも10年はかかるだろう。
少し長くなってしまったが、問題はここからだ。
そのために、魔法使いのみの特別ルール『制約』が課せられている。
『ひとつの街には90日しかいられない。』もそのひとつだった。

「こっちは制約とか色々大変なんですか……………ら。」
何気なくユウを見ると彼の目が、あるひとつの看板に釘付けになっていることに気がついた。
「あの…ユウさん?」
「……!えっと、なんか言った?」
動揺したような目でユウはアンを見る。
「いや…。そんなに気になるなら見ます?本屋」
「別に見なくて良いし」
ユウは辺りをキョロキョロと見回した。喫茶店からの道のりを覚えようとしているように見えた。
「一人で来ようったって無駄ですよ。最初の一週間はどんな所にもお供するようにとマスターから言われてるんです。気になるなら見ましょうよ。」
ほぼ無理やり。アンはユウを引っ張った。
強引なのはさっきの仕返しだと思おう。そう心で思いながら。
30分ほど色々なるならところを見てから、ユウは戻ってきた。
さすがに本屋の中でつきまとうのもしつこいので店の外で待っていたのだ。
まるで公園で遊ぶ我が子を待つ母のような気分だった。
ユウが出てきた頃には、もう日が落ちかけていた。
そんな時間が経っていたことに驚きつつ、
「もう、帰りましょうか。」
アンは、そうユウに言った。

9:海兎◆Pw:2017/03/28(火) 23:34

 こんにちは。私海兎と申します。
面白そうなので読ませていただきました。
が、すごいですね。

 名前のなかった少女の、
アンの世界が広がるサマがありありと『見え』る……。
これほどまでに清らかでいて繊細な、かつ芽吹くような出会いを描いた作品は、
正直。そうそう味わえないと思います……。

 続き。楽しみにしてます。では、

10:かてぃあ◆R2:2017/03/29(水) 19:27

>>9

ご愛読(?)・感想ありがとうございます。

今日の更新で書き溜めていた分が終わるのでこれからは不定期になりますがよろしくお願いいたします。
(ちなみに少し短いです…)

11:かてぃあ◆R2:2017/03/29(水) 19:28

喫茶店の階段を二階に上がると、冒険者が滞在する宿屋がある。
そしてその上…、三階には、少女達の暮らす部屋があった。
二人一部屋で、もちろんアンにもルームメイトがいた。
自分の部屋の前に言って
「ただいま」
と、アンが言うより先に
「おかえりー!」
金色の髪をポニーテールに束ねた少女が部屋から出てきた。クララという名前だった。
「新しい仲間パートナー決まったんだって?ねぇねぇ、お話聞かせて。」
アンの手を引っ張る形でクララは部屋に入った。
本日何回目かの出来事だ。
部屋に入るとクララは手を離し、自分のベッドに寝転がる。
「で、どんな人なの?新しいお名前は?」
クララは女の子っぽいと言うか、キラキラした印象の子だ。
「魔法使いだって。新しい名前はアン。」
部屋着に着替えながらアンは片手間に答えた。
「へぇー。じゃあアンちゃんかぁ。よろしくねっ」
可愛い八重歯を見せるように、クララは笑った。
「うん。」
部屋着に着替え終わると、アンはベットに寝転がった。
「でさー。」
クララはアンに向きなおった。
「イケメンだった?」
「は?」
「あ、うん。なんかごめん。」
クララはアンと反対側を向く。
「うーん、でも悪い人そうじゃ無かったかなぁ」
小さい声で言ったつもりなのに、クララはこっちを向き直って
「あんまり男の人好きじゃないアンちゃんがそんなこと言うの珍しいね〜」
と、驚いた顔をした。もうアンちゃんが定着している。
「人を感情が無い人みたいに言わないでください。」
「あ、うん」
「……………」
「……………」
しばらく沈黙が流れると、クララがガバッと起き上がって
「アンちゃん、お風呂行こう!」
じぃーっとアンを見つめた。
「いいよ。最近お風呂先行くこと多くなったね。」
少女達のお風呂や食堂は24時間開いていて、好きな時間に行くことができる。
「だってクララ最近太って来ちゃったんだもん。先お風呂入ると満腹に感じて食べる量減るらしいし、この時間空いてるし。」
「はいはい。じゃあ行くよ。」
アンが風呂の支度を進めていると
「もー、そっちから言ったんでしょっ?」
クララが頬を膨らませた。


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