ジリリリ ジリリリ
小うるさい、目覚まし時計の音が響いている。
「うーん…もう朝?」
その音に叩かれるかのように、私は目を覚ました。
いつも聞いているけど、この音だけは慣れない。
ガッチャン。
目覚ましを止めると、一瞬で静かになった。
外からは、小鳥の鳴き声が聞こえてくる。
「ふあぁ……」
小さくあくびをしながら横目に見た時計の時間は、朝の六時半。
ベッドから降りた私は、リビングに向かうことにした。
「ママ、おはよう」
「ひな、今日は早いのね。あと30分は寝ててもいいんじゃないの?」
リビングでは、ママが食事の支度をしていた。
食パンの焼かれているトースターからは、香ばしい匂いがする。
「今日は転校初日だよ、ママ。せっかくだから、早く起きたくて」
「あらそう?」
にこやかに言ったせいか、ママは意外そうな顔をした。
「新しい学校、楽しみ?」
「うん!」
今日は、新しいスタートをする大事な日……。
パパの仕事の都合で、この家に引っ越すことになった。
そして、新しい学校も……。
「そういえば、パパは?」
今頭に浮かべていた、そのパパが居ないことに気が付いた。
「パパも、今日は新しい仕事場だから、早めに行っておきたいって。ついさっき家を出たわ」
「ふーん……」
パパも、新しい街で同じことを考えていた。それがうなんだか、れしかった。
面白いです。これからも頑張って下さい!
続きが楽しみです!
「…次のニュースです。一週間後の夜、日本各地で
彗星の通過が見られるでしょう…」
「彗星…星が落ちて来るの?」
朝ご飯を食べながらニュースを見ていた私は、彗星がどうのというのは初めてだったので、なんだか怖くなってしまってママに聞いてみた。
「落ちるんじゃなくて、地球を通り過ぎるだけよ。ひな」
「へえ…」
ニュースでは、彗星が通り過ぎるときのイメージ映像っぽいのが流れている。
とても綺麗で、自分が感じていた怖さは全然ない。
私は安心しながら、この景色が見られることに胸をときめかせていた…。
「ごちそうさまでした!」
「はーい、しっかり食べたわね」
テレビを見つつ食べ終わった時間は、七時。
私は準備をするために、自分の部屋に戻った。
「…うーん」
自分の部屋に戻った私は、着替えたりとかの準備をしていた。
そんな時に、大きな問題に引っかかってしまったのだ。
「髪型、決まらないよ……」
新しいスタートなのだから、自分で髪形を決めてみたい。
…そう思ったが、
肩くらいまである私の髪は、ママがやってくれるみたいに決まってはくれなかった、
「どうしよう……」
時間はまだあるけど、このまま止まっててたら過ぎてしまう。
「やっぱり、ママに……」
考えてもわからない。ママに頼みに行った方が早いのかな……
……
「ダメ…自分でやらないと!」
髪型は自分で決める…最初に言ったこと、やっぱり投げ出したくない!
……そう思ってからは、準備がすいすいと進んだ……。
「ママ、行ってくるね」
準備が終わった私は、玄関で靴を履いていた。
「気を付けて行って……あら?」
いつも通り見送ろうとしていたお母さん。でも、私を見たからかちょっと驚いている。
「ひな……髪型、自分で変えたの?」
「うん!」
新しいスタートにするための、新しい髪型。
ママに最初に気付いてもらえて、とてもうれしかった。
「この子ったら、すっかり大きくなって…」
「ママ!?大げさだよ……」
私はまだ、小学四年生だ。
大きくなったと言われる歳じゃない…と、自分では思う。
「新しい学校、頑張ってね!」
「うん。じゃあ、行ってきます!」
私は、ママに笑顔で見送られながら、家を出るのだった…。
ましろ様の小説だ!!!
8:ましろ◆r.:2018/03/08(木) 05:59 「学校、どんなところかなぁ…」
一人で通学路を歩く私は、新しい学校にワクワクしていた。
見学させてもらったことはあるけど、すみずみまで行ったわけでもないし、どんな子がいるかもよく知らない。
「よーし、早く行っちゃお!」
楽しみすぎる私は、早く着きたくて走って行くことにした。
そして、走りだそうとするその時……。
「……ん?」
足が止まった。というか、自分で止めた。
「何か、聞こえる…?」
しゅー、みたいな、よくわからない音が聞こえてくる。どこからだろう……?
「あ―――」
音の正体は、意外とすぐに現れた。
「ほし……」
それを見た瞬間、私はテレビのニュースを思い出していた。
彗星が、地球を通り過ぎる。
一週間後と言われていたけど、それは今私の目の前に―――
シュンッ!
…その星は、私の横を通り過ぎた。
「な、なに……?」
落ちた…そう思って、近くを見まわしたけど、何もない。
「…なんだったのかな」
少し怖かったけど、何も起きてないからOKということにして、
私は走って学校に向かった。
――四葉小学校
今日から私が通う学校の、校門が見えてきた。
「ここが……新しい学校!」
どんな子がいるのか…友達になれるかな……
思うことはいろいろあるけど、とりあえず私は、校門をくぐった……。
…今私は、教室の前にいる。
転校生の紹介のタイミングで入ってくるようになってるのだけれど…
「まだかなぁ…!」
今か今かと、心の中ではすっごくドキドキして…今にもドアを開けてしまいそう。
そんな時はぶんぶんと首を横に振って、自分を抑えていた。
「……転校生の人、入って来て良いわよ」
見学の時に紹介された、木村という女の先生の声が聞こえた。
「…よし」
ワクワクが今にも飛び出しそうだったけど、私は落ち着いて、教室のドアを開けた――
「わぁ……」
小声だったけど、思わず発してしまった一言。
知らない子がいっぱいいて、驚いた。
――だけど、緊張はしない。
「朝露ひなです。これから、よろしくお願いします!」
静まり返った教室に、私の高らかな声が響き渡った。
「朝露さん、元気な自己紹介をありがとう!それじゃ、あなたの席は…」
木村先生は少し悩んだあと、何かひらめいたような顔をした。
「窓際の席……星川さんの隣ね!」
先生が指さした方の席には、女の子が座っていた。
あの子の隣に座るらしい。
「あそこか…」
とりあえず、その席に座ろうと歩き出すのだけれど…
歩いている間、クラスのほとんどからキラキラした目で見られていた気がする。
有名人になった気分…。
「あ、あさつゆさん…?」
席に座った直後、星川さんと呼ばれた女の子が話しかけてきた。
「朝露ひな!星川さんだったよね、よろしく!」
「ほ、星川あまの……。よろしくね…」
星川あまのさん……自己紹介をするときその子は、もじもじとしていた。
…恥ずかしがり屋さんなのかな?
「新しく入ってきた朝露ひなさんに、いろいろ聞いちゃうタイム―!」
休み時間になってから、誰かが言い出した。
一人が言ったら、何人も乗ってきた。
「は、はあ……」
そうして私は、フルーツバスケットの体形みたいに並べられた、椅子の輪の中にいる……。
「聞ける限りのこと、どんどん聞いちゃいましょぉー!」
そういってこの会場のリーダーをしているのは、学級委員の里見 文(さとみ ふみ)さんだ。
最初はさとみが名前かと思ったけど、名札を見ると苗字だった。
「好きな食べ物は!」
食べ物かぁ…お母さんの手料理なら、何でも好きだけどなー……。
ここは、カレーライスと答えた。
「カレーは、辛いの大丈夫?」
カレーの話題を続けてきたッ…!?
「甘口しか、無理かなぁー」
カレー屋さんに連れて行ってもらったことがある。
お父さんに一口、辛いカレーをもらった。
食べたことすら忘れたくなるくらい、辛かった。
「好きなスポーツは!」
食べ物の質問の次は、スポーツの話。
運動は苦手ではないけど…
「…かけっこ!」
走るのには、結構自信がある。前の学校でも、運動会は楽しみだった。
「さあ、次の質問がある人は…」
休み時間の終わりまで、質問攻めは続いた…。
「ん…?」
皆が椅子を片付けているとき、教室のドアが静かに開いた。
他の誰にも気づかれずに、教室に入ってきたのは……星川さんだった。
なんだか、焦っているようにも見える。
「そういえばさっき、居なかったな……」
皆が私に集まる中で、星川さんは何をしていたのだろう。
席は隣だし、聞いてみることにした。
「…星川さん!」
「はいっ…!?」
教科書を出していた星川さんは、びっくりしたような返事をした。
「休み時間中、みんな私への質問をしてたけど、星川さんは何してたの?」
「あ、それは……」
星川さんは、初めて話した時と同じようにもじもじとしていて、
何だか言いたくなさそうな感じだった。
「ごめんね、言えないなら無理しなくても…」
「ううん…」
もうやめておこう…そう思って話を切ろうとしたけど、星川さんは続けた。
「…ただ、人の多いところが苦手で……」
それだけ聞いた後すぐ、授業が始まった…。
あれから、星川さんとはそんなに話せなかった。
あっちの事情を詳しく聞くことはできなくて、なんだかもどかしかったけど……
今日はそのまま、下校時間を迎えた。
「せんせー、さよーなら!」
もはや小学校ではお馴染みなのかもしれない、帰りのあいさつの声が教室に響く。
クラスメイト全員で言うもんだから、結構騒がしい。
「朝露さん、放課後遊ばない?」
女子のひとりが、話しかけてきた。
慣れてない私をいきなり誘ってくれてうれしいけど、今日はちょっとダメだった。
「ごめん!用事があるの。ありがとね」
軽くお辞儀をした私は、そそくさとランドセルに荷物をまとめて、教室を出た。
理由は―――
「星川さん!」
「あ、朝露さん……!」
しつこいようだとは思ったけど、やっぱり星川さんのことが気になった。
先に教室を出ていたので、私も靴箱まで急いだのだ。
「ごめん、話があったから……」
「はなし……私に?」
星川さんは、自分なんかが見たいなちょっと驚いた顔をしていた。
「あ―――」
どたどたと、ほかの子の足音が聞こえてくる。
同時に……、星川さんの表情が固まった。
「星川さん?大丈夫?」
「うん……。は、話があるなら、一緒に帰りながら……」
向こうからの提案で、しかも突然だったけど、私たちは道が結構同じだったのだ。
そういうことで、星川さんと一緒に下校することになった……。