『ヒナタ』
雨降る夢の中に、君が出てきた。
君はびしょ濡れで、私もびしょ濡れだった。
君は険しい顔で、私の目をまっすぐに見つめていた。
──どうしてそんなに悲しそうな顔してるの。
いつも、太陽みたいな笑顔を浮かべているのに。
そう訊ねたつもりなのに、声が出ない。
『落ち着いて聞いてほしい』
君は私の手を握った。
その手は小さく震えていて。
君を安心させたい。
君に笑ってほしい。
そう想いを込めながら、握られた手をぎゅっと握り返した。
雨の音と、早い鼓動の音が交わって耳に響く。
『ヒナタはもうすぐ───
死ぬんだ』
呼吸が止まった。
どうして?
なんで君はそんなこと言うの。
気づけば頬には涙が伝っていて、雨に溶けながら滴り落ちていった。
そしてまた気づけば、君はいなくて。
雨が降る夜に、なぜかぽっかりと浮かぶ満月が私を照らしていた。
「わっ……雨降ってきた!」
依吹と合流し、3人で屋台を回っていると、雨がポツポツと降ってきた。
「傘持ってる?」
「ごめん、持ってない」
依吹の問いかけに首を振る。
「どんどん強くなってきた、どっかの屋台入ろ」
そして、私たちは屋台の下で雨宿りすることにした。
降り止まない雨を眺めながら、一気に下がった温度に身を震わす。
雨はどんどん強くなってきて、一向に止まない。
せっかくの夏祭りなのに…とため息が洩れる。
「あれ?止んできた?」
しばらくして、依吹が声をあげた。
顔を上げると、さっきまで地面に打ち付けていた雨はさっきより遥かに弱まっていた。
「今のうちに、帰ろっか」
「そだね」
3人で歩き出すと、どんと誰かと肩がぶつかってしまった。
「あっ、ごめんなさい」
慌てて謝ると、フードをかぶったその下から、顔がちらりと見えた。
わ……天使みたいな子…。
透き通る金髪に緑がかった薄茶色の瞳。
ハーフさんかな。
「ごめんね」
鈴を転がしたような綺麗な声と共に、女の子はスタスタと歩いていった。
「雨月ー?」
依吹の声でハッと我に返る。
もう雨は完全にやんでいて、空気が洗われたような気がした。
「ごめん、行こっか」
そう言いながらも、さっきの女の子のことが頭から離れなかった。
あの女の子……
肩が、氷みたいに冷たかった…。
雨にうたれたからかな。だけど、そんな程度じゃない。
服の上からでも分かるくらいに冷たかった。
…気のせいか。
「うわっ、また降ってきた!」
光がそう叫んだ。
さっきやんだ雨が、また帰ってきた。
帰ってこなくていいのに。
そう思いながら、無意味に空をにらみつける。
「なんだよ〜、せっかくの祭りだったのに!」
光が嘆きながら走り出した。
慌てて私と依吹は後を追った。
「……え?ねぇ、あれってさぁ…」
ふいに、依吹が雨模様の空を指差しながらつぶやいた。
「ん?」
彼女が指差す方に目を向けると、そこには、
ぽっかりと満月が浮かんでいた。
どうして?
ドクンと、心臓が大きく音を立てた。
「雨が降ってるのに、満月なんて、おかしいね」
───それが、私が聞いた最後の言葉だった。
時雨さん、こんばんは。猫又と申します。
その夜、雨が降る。ここまで読ませていただきました。
読んでの感想としては、1つ1つの文章力やストーリー構成は素晴らしいものの、
やはり情景描写の不足が目につきました。
全体を通して、「いつ」のことなのかわからない部分が多いこともそうですが、
人物の描写に関しても、光の性別が >>4 の「俺」という発言で初めてわかるなど、
ちょっと全体的に説明不足かなと個人的に思いました。
物語を書いているとつい自分が分かっているので説明をはぶき読者に伝わらない現象が起こります。
なので「いつ」「どこで」「だれが」「なにを」「なぜ」「どうのように」「どうしたのか」
特に「いつ」「どこで」「だれが」の入れ方について、少しアドバイスさせていただきます。
〇「いつ」
これが無くなると物語が進んでいるのか戻っているのか分からなくなるので
シーンが移り変わるときに書かなくてはいけません。
「放課後の騒がしい時間」とか「朝の登校時間」
隠したいときには「いつか分からない」とかでもいいので、
書いておくと読者は安心します。
とりあえず、時間が変わったら書いておくことをお勧めします。
〇どこで
キャラクターたちがいる場所が変わったら書きましょう。
詳しく書く必要がないなら、
「『通学路』。私と〇〇は話しながら帰る」
とかでも大丈夫です。
物語は読者の脳内で進みます。
場所が変わったらきちんとお知らせしてイメージさせましょう。
〇だれが・どのように
だれがやったのか、主語が抜けてしまうと伝わらないのはもちろんですが、
初登場時に「だれの詳しい説明」(性別もそうですが、服装や表情などの第一印象の説明)のないキャラは読者をおおいに混乱させます。
第一印象は大切です。いつのまにか居た。みたいな書き方はしない方がキャラが立つと思います。
と長々書いてきましたが、
要するに、自分の頭の中にある物語をそのまま読者に伝えるのはテクニックがいるというお話です。
すぐに習得するのは難しいので、まずは「自分の物語を全く知らない人が見る」ということを意識して書いてみましょう。
表情やしぐさなど人物への文才は十分に感じる作品でしたので、
あとは説明するタイミングを少し考えてみるといいと思いました。
個人的な意見ですが、何か参考になればうれしいです。それでは〜