その夜、夢が降る

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1:時雨◆82:2019/10/01(火) 17:42


『ヒナタ』


雨降る夢の中に、君が出てきた。


君はびしょ濡れで、私もびしょ濡れだった。


君は険しい顔で、私の目をまっすぐに見つめていた。


──どうしてそんなに悲しそうな顔してるの。


いつも、太陽みたいな笑顔を浮かべているのに。


そう訊ねたつもりなのに、声が出ない。


『落ち着いて聞いてほしい』


君は私の手を握った。


その手は小さく震えていて。


君を安心させたい。


君に笑ってほしい。


そう想いを込めながら、握られた手をぎゅっと握り返した。


雨の音と、早い鼓動の音が交わって耳に響く。


『ヒナタはもうすぐ───


死ぬんだ』


呼吸が止まった。


どうして?


なんで君はそんなこと言うの。


気づけば頬には涙が伝っていて、雨に溶けながら滴り落ちていった。


そしてまた気づけば、君はいなくて。



雨が降る夜に、なぜかぽっかりと浮かぶ満月が私を照らしていた。


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