短編集です。いろんなジャンルの小説を書くと思います。
7:invincible:2020/01/09(木) 23:50完。
8:invincible:2020/01/19(日) 00:33 第3話「死と虐待」
私は、出てから1年も経たないうちに、また戻ってきてしまった。そして、もう二度と出てこれないだろう。私の肌はシワばかりでハリがなく、髪は真っ白だ。最初に入った時から随分と老けた。受ける刑罰も、罪状も最初の時と変わらない。だが、前と違って、刑罰を全うするほどの体力はもう残っていない。
私の人生の序盤は順風満帆だった。両親の期待を受けていたし、友人もそれなりにいた。だが、私の人生の中盤、終盤は殆どが刑務所の中での生活だった。たとえ出たとしても、出迎えてくれる人はいない。だが、都会に行って、生活するほどの活力も能力もない。私も人生がここまで狂い、どうしようもなくなったのは、1943年のあの瞬間からだった。
そんなことを考えているうちに、居室についた。刑務官は表情ひとつ変えず、私をその中へ乱暴に詰め込んだ。二段ベッドが並べられただけの部屋はひどく簡素だ。これなら、軍隊の方が全然マシだとつくづく思う。
居室に入って少し経つと、若い受刑者が隣に座って来た。彼は前に私が万引きで捕まった時からここにいた。その受刑者は私に話しかけてくる。
「よう、じいさん、また何かやったんですか」
「ああ、窃盗……」
「またか!」
若い受刑者は私の話を遮って、叫声をあげた。彼は悪い人間ではないのだが、ちょっとそそっかしい。
「違う。窃盗犯をぶっ殺した」
彼は声を出さず、じっと私を見た。彼の目は少し泳いでいる。
「なぜ?」
と声をひそめて問いかけてきた。
「駆けつけた住民にリンチされていたから、殺した。田舎は怖い」
彼は息を呑んだ。どうも、納得行っていないようだった。理由はわかる。ここワシントン州は田舎だが、その中でも格差がある。彼の住んでいた所は、比較的進んでいたからリンチなんて滅多になかったのだろう。だから、分かりにくいのかもしれない。しかし、田舎の中の田舎である私の故郷は民度がひどく低い。
「これで2回目だ。意識して人をころすのは」
と私が付け加えると、彼は、
「1回目はどこで?」
と聞いて来た。私は、咳払いをして、
「ああ……あれで、私の人生は変わった。本当は、墓まで持って行こうと思っていたのだが、君にだけ話そうかな。いいかね?」
彼はゆっくりと頷いた。私の目をじっと見ながら。
>>6
やっぱり人間お金がスキだ〜〜って心理が表されていて、その、スキッス(´・ω・`)(語彙力)
>>9
ありがとうございます