〈注釈〉
・気まぐれに小説を書くだけ。
それ故更新はまちまちです。
・私が文の練習をするための小説スレですので
アドバイス頂けるとすごくありがたいです。
勿論、感想を頂けるのも嬉しいです。
・男女四人出てくるけど恋愛要素ないです。
ほのぼのした日常を書きたいので。
「というか今更だけどそれ何だ?」
「あっ、花瓶!!大丈夫だよな…?」
朝陽が要の持つ袋の方へ指をさす。要はこの世の終わりのように青ざめた顔で袋を空ける。無論、花屋で厳重に新聞紙で巻かれた花瓶は無事である。しかし、ああも派手に動いてしまっては割れていると慌ててもおかしくはないだろう、と要は自分で自分をなだめる。その様子を朝陽は少し不思議そうに眺めていた。
その間、彩夏は髪の毛にささる桜をそっと引き抜く。手を石鹸でしっかりと洗ってから押し花の方法について調べる。勿論あの気まぐれな少女のためだ。
一方の貴結はさっさと手を洗って、いつものように桜の木の下で本を開いた。紅茶がなくてどこか心許ない。要を待つ事も考えたが、気まぐれな割に短気な彼女は待ちきれず立ち上がって自分で紅茶の材料を取りに行く。何やらパソコンとにらめっこしている彩夏、ほっと一息ついている要、何かに気づいたらしい朝陽の表情を見てまた何かあったな、とは思うが深くは追求しない。お気に入りの茶葉とティーポット、ティーカップをトレイに乗せて、静かに外へと戻った。
要はさっき拾った桜の枝を拾って、花瓶に挿す。ただ飾るだけで、少しでも長く咲いていられるような工夫も何もしていない。下手に手を出した方が寿命を縮めるような気がしたからだ。それでも今は落ちた枝の花が綺麗に咲いている。
一方、彩夏の方もため息をつきながらも、貴結の思いつきを実現させようと調べた方法で押し花を作ろうとしていた。不器用な彩夏は慣れていないこと故になかなか上手くできず、三十分ほどかけてやっとできた。これで数日待てばできるらしいが、本当にできるのかどうか少し不安だった。
夜になって、食卓に全員が集まる。リビングの机には買いたての花瓶に桜が飾られていて、どこかいつもと違う室内のようだ。
「で、つまりのところその遠藤とやらはリア充ってこと?」
「ほぼなんも分かってねーじゃねぇか!!」
「彩夏は人の話を聞かないからね」
「一番話を聞かない奴に言われたくないと思うぞ」
要が呆れた顔で貴結のじっと見る。その間にも貴結の取り分と朝陽の取り分は見る見るうちに減少していく。
「ごちそうさまーっ」
貴結と朝陽の声が綺麗に重なる。じゃあ私はお風呂に入ってくるわ、と貴結は自分の食べた食器を片付けてリビングから去っていく。朝陽の方はじゃあ一人でやるかー、とゲーム機を取り出してゲームの準備を始めた。
風呂から出た後も、貴結はこの季節になると木の下で本を読みたがるようになる。彩夏と朝陽はひたすら寝る前までゲームを続けて、二人ともほぼ同時におやすみーっ、と部屋へ帰っていく。
「貴結、お前まだ寝ないの?」
「ええ、要はもう寝るの?」
「ああ、おやすみ」
「おやすみなさい」
三人が寝静まった後、貴結はずっと本を読み続けたりゲームをしたりしている。彼女のゲームのうまさがここに起因していることは誰も知らない。
午前一時から二時頃まで起きているにも関わらず、貴結は四人の中で一番早く起きる。朝は少しだけ庭の掃除をしてからまた木の下で本を読む。故に三人とも貴結の寝ている姿を見たことがないどころか、部屋にいる姿すら見たことがないのである。
「ほらほらー、朝陽は寝過ぎだぞー」
「彩夏ー、起きなさいよ」
彩夏と朝陽は早く寝るわりに起きるのが遅い。二人は勿論、要ですら何故そこまで貴結が早起きできるのかはわからない。
「なんで貴結はあんなに遅く寝て早起きなの?」
「あんなにって、別に知らねーだろ…」
疑問を抱く彩夏の横から朝陽がひっそりと口出しする。
「じゃあどうしてあなたたちはそんなに長時間寝ていられるの?その疑問と一緒よ」
特に理由なんてないわ、眠くなったら寝て、目覚めたら起きる。ただそれだけの話よ、とだけ言ってまた食器を片付けてどこかへと行った。