莉愛の短編集

葉っぱ天国 > 短編小説 > スレ一覧キーワード▼下へ
1:莉愛◆8Q:2017/03/17(金) 21:31

私が書く短編集です。
感想など、文才ないですけどお願いします。

26:岬◆x.:2017/10/14(土) 21:39

1.美香子と舞子

私の名前は桜庭美香子。
27歳で独身。
特に特技も趣味もない。
平凡で、普通過ぎる。
凡庭凡子って呼ばれたりする。

「美香〜舞子ちゃんよ〜」

お母さんが呼ぶ。
舞子は、幼なじみの鈴木舞子。
隣の家で優しいんだ。
看護師だからカッコいい。
私の変なストレスのナース。

「ちょっと、美香子〜」

舞子の声がする。
ノソノソとベッドから出て、服に着替える。
だらしない髪の毛のまま舞子と会う。

「美香子、ヤバイよ!」

舞子の言葉は無視して、とりあえず髪の毛を結ぶ。
クシも使わずに適当に。
グチャグチャだよ。
でも普通。
ピコピコ跳ねてるけど気にしない!

「舞子ちゃんごめんね」

「いえいえ。それより美香子!」

もーう。
すると、綺麗な髪の毛の瑠未子を思い浮かべた。
私もあんな髪の毛ほしいな〜。
ちょっとブスッっとして、荷物を持って家を出た。

27:文楓◆bQ:2017/10/14(土) 22:08

大人チックな話〜
うちも短編小説版で小説書こうかな?

28:岬◆x.:2017/10/15(日) 09:36

ちょっと大人の物語書いてみたくて。
文楓ちゃんもきっと書けるよ!
書くなら、見るね。

29:みゆ◆x.:2017/11/04(土) 18:18

名前変えました。
ーーーーーーーーーーーーーーーーー
2.美香子が観たい映画

私は、舞子と映画館へ向かう。
電車を乗り換えて、田舎の町から、都会へ出た。

「美香子、ここだ」

舞子がスマホから顔を上げ、指差した大きな大きな施設。
町には考えられないよ!
ビックリしつつ入る。
暖かい暖房が効いていて、都会感が増していた。

「どの映画観る?」

パンフレットを手に取り、覗く。
いろんな人にチラチラ見られる。
私だろうな。
だらしない格好だし。

「美香子?」

「ごめん舞子!」

あわててパンフレットを見る。
恋愛映画観てみたいな〜。
都会のカッコいい大人が観てそう。
例えば、芸能人の鈴木博子とか。

「私が観たい映画は、これ」

舞子が指差した映画は、ホラー。
ゾンビが枠いっぱいに描かれている。
ホラーが苦手な私、無理かも。
だけど、舞子は言った。

「私は大丈夫。美香子の観たい映画観よう。いつも私の観たいのだし」

舞子…。
優しい…。
パンフレットの中にふたつある恋愛映画。
鈴木博子はどっちを観る!?
大人な恋愛映画か。
中学生のハードル高めの恋愛映画か。

「美香子は恋愛映画観たいの?」

コクコクうなずくと、舞子は受け付けで何かを注文する。
私のところに戻ってきた。

「どうせ、鈴木博子が観たい映画を観たいんでしょう?大人な恋愛じゃないかなって」

舞子が持っている二枚のチケット。
それは、大人な恋愛映画だった。

30:みゆ◆x.:2017/11/04(土) 18:24

3.恋愛映画は中学生?

ホールに入れば、私は呆然とした。
私は席取り。
舞子はジュースとポップコーンを買いに係を決めたんだけど。

「大人も来てる〜!」

「ちょっと髪の毛ヤバくない!?」

中学生ばっかりいる!
あわててホールを出て、チケットに書いてあるホールの番号と確認。
合ってるはずなのにっ!
どうして大人の恋愛に中学生っ?

「美香子、席取りでしょ!」

舞子が大量のポップコーンを持ってやって来る。
ふたりで出直す!
髪の毛のことを言われたので、舞子に隠れながらホールに入る。

「ありゃ。中学生多い〜」

舞子もビックリしていて、中学生もなぜかビックリしていた。

「この映画って大人観る?」

「中学生だよね〜」

いやいや、大人ね!
最近の中学生はこんなの観るんだ。
どっちが大人でどっちが中学生か。
比べ物にならないくらいだよ。

「誰がどんな映画を観ようと関係ないんだし、楽しも?」

舞子に言われて、ポップコーンをほおばり、油の付いた手でジュースをズズッっと飲む。

「恋愛は大人だもんねっ!」

そう言いながら、ポップコーンをバクバク食べた。
男かと言うくらいの勢いで。

31:亜優:2017/11/17(金) 18:25

入れてもらってもいいですか

32:亜優:2017/11/17(金) 18:26

あの、誰か来てくれない?(-.-)

33:亜優:2017/11/17(金) 18:26

あの、誰か来てくれない?(-.-)
さみしいんだけど

34:相原梨子◆x.:2017/12/04(月) 21:13

>>31-33
すみません!
スレ主の名前変えた相原です。
どうぞどうぞ。
寂しい思いさせてしまってすみません!

35:相原梨子◆x.:2017/12/04(月) 21:21

4.中学生たちの会話

映画が終わって電気が付いたときも、すごく目立った。
舞子はちょっと恥ずかしがり屋なので、先にホールを出る。
私も追いかけた。

「美香子…。もう映画はコリゴリかも知れない。疲れたよ…」

「私も。ごめんね、舞子」

舞子は首を横にブンブン振る。
ポップコーンやジュースのゴミを捨てて、気を取り直してファミレスへ。

「いらっしゃいませー」

店員さんが案内してくれた窓側の席に舞子と座る。
よく外が見えた。
外からも私たちが見える。
あの中学生たちも、いた。

「あの人、映画いた人じゃね!?」

「髪の毛ボサボサだから覚えてるー」

「隣の人可愛いよね」

窓薄くない!?
声めちゃめちゃ聞こえるし。
舞子は可愛いけど、私は髪の毛ボサボサってことね。
ちょっとショック。

「大丈夫、美香子。ファミレス出たらさ、二つ目の映画観ようよ」

舞子、優しい。
ちょっと視界がにじむ。
きっと太陽が眩しすぎたんだ。

「美香子は何にする?私はステーキ食べちゃおうかな」

舞子はメニューの端にあるステーキを指差した。
気付かなかったけど、綺麗なネイルがしてある爪。
私とは全然違う。

「私もそれにする」

決めてなかったので、舞子と同じステーキを注文した。
私も、ちょっとくらい舞子に近付けれないかな…。

36:相原梨子◆x.:2018/01/04(木) 17:12

5.疫病神、瑠未子

ステーキを頬張っていると、隣の席に舞子以上の女の人が座った。
誰、この人。
女子力高すぎじゃない?
そんなことを思っていた相手…。

「あら?美香子と舞子じゃない。ふたりしてお出掛けかしら?」

私の苦手な人。
ストレスをためる原因の人。
瑠未子じゃん…。

「そうよ。瑠未子こそ、ひとりでステーキなんてどうしたの?」

「やだなぁ、舞子。私がお金持ちってこと忘れてる?」

瑠未子、ひとりでステーキなんて普通なのかもしれない。
なんて人なの…!

「あ、そうだったわね。失礼」

舞子は瑠未子から視線をそらして、ステーキを口に運ぶ。
とりあえず、早くここから出たい…。
すると、瑠未子が店員さんを呼んだ。

「このふたりと友達なんです。机くっつけてもいいですか?」

えっ、今なんと…?
瑠未子と一緒に食べるわけ!?
店員さんはあっさりオーケー。
机がくっついてしまった。

「ちょっとごめん。お手洗い行くね」

舞子が席を外す。
その時、私を見ている気がした。
私も席を外せばいいってこと?

「私もお手洗い…」

あわてて席を立つと、瑠未子に手を掴まれてしまった。
瑠未子は、ギュッと握ったまま離してくれない。

「何っ!?」

「どうして舞子を追いかけるの?っていうか、私が舞子のこと好きなの気付かないかな?」

「そりゃあ、私だって舞子のこと好きだよ!」

瑠未子はため息をついて、私の汚ない髪の毛をさわった。
そして、キッとにらむ。

「私、美香子みたいにひとりじゃないんだよ。カワイイし、清楚だから、付き合ってる。舞子だってカワイイのに付き合ってないでしょ?原因は美香子なのよ!?」

37:相原梨子◆x.:2018/01/04(木) 17:25

6.瑠未子と離れるためには?

私は春山瑠未子。
美香子へ対する考えはこうよ。
可愛くて、大人しくて、しっかり者。
私みたいでしょ?
なら、舞子もモテるはずなのよ。
なのに、年齢=彼氏いない歴。
おかしすぎるのよ。

「瑠未子、美香子はそんなのじゃないよ。私なんかがモテるわけないし」

「いいえ!私に似てるんだもの。モテるに決まっているわ!」

舞子が何と言おうと、舞子は舞子。
私と似てるなら、モテるなんて誰でも分かるでしょう?
なのに、どうしてモテないの?

「ねえ舞子〜」

お前だ、犯人はお前だ!
犯人の名前は美香子。
髪の毛はボッサボサ。
しっかりしてなくてダサい。
美香子が舞子の近くにいるから…。

「私、美香子みたいにひとりじゃないんだよ。カワイイし、清楚だから、付き合ってる。舞子だってカワイイのに付き合ってないでしょ?原因は美香子なのよ!?」

ええ、そうよ。
私が言ったことは間違ってない。
美香子が舞子を悲しませているの!


どうしてそんなこと言うの?
ひどいよ、瑠未子。
いくら私のことキライだからって。
付き合ってないよ、私は。
ひとりぼっちだけど…。

「どうしたらいいの?舞子が付き合えるようになるのは」

瑠未子から離れたい。
舞子が何だって言うの。
ちょっと舞子と近付きたいからって。
瑠未子はクスッと笑う。

「舞子と縁を切って」

はっ…?
それで利益は、何…?

38:相原梨子◆x.:2018/01/07(日) 14:14

7.瑠夢子さんとオズの国

もしかしたら、夢でも見ているのかもしれない。
ふと目の前に現れた女の人…。
瑠未子にそっくりだけど、あんな嫌らしさは見あたらない。

「美香子、無理しないで」

その人に言われて、振り返る。
声までもが瑠未子にそっくり。

「私の名前は、瑠夢子。瑠未子の妹」

瑠夢子さんなんていたんだ。
全然知らなかった。
舞子は知ってたのかな…。

「ごめん、瑠未子が。あの、あなたをオズの国へ案内するために来たの」

「何それ」

瑠夢子さんによると、オズの国は、ココロに傷を抱えた人が行く国。
私はすでに、瑠未子によるココロの傷が出来ているらしい。

「さあ、行きましょう」

「行かない!舞子がいるから…」


舞子、舞子っ!
飛び起きたここは、舞子の家。
ベッドで寝てたんだ、私。

「美香子大丈夫?私の名前呼んだり、イヤイヤって叫んだり」

やっぱり、夢見てたんだ。
瑠未子がいたので、瑠夢子さんのことを聞いてみた。

「その名前を出さないで!」

瑠夢子さん、いるんだ…。
だけど、この反応何!?
何かあるはず!
えーい、もう一回寝るっ!


瑠夢子さんだ!
ちょっと話を…。

「来ないで、美香子!…とりあえず、オズの国へ行くわよ!」

「舞子ーーーっ!」

39:相原梨子◆x.:2018/01/07(日) 14:21

8.最高のパートナー

夢に出てきたのは、呼んだ舞子。
瑠夢子さんを説得して、お願い!

「美香子の話を聞いた?瑠夢子」

呼び捨て?
舞子、瑠夢子さんのこと知ってたの!?
瑠夢子さんは、舞子から視線をそらして、首を横に振る。

「美香子は、イヤって言ったでしょ?私もイヤだから、やめてくれる?」

舞子…。
瑠夢子さんはゆっくりうなずく。
そうすると、ケムリのようになって消えていった。

「ありがとう。舞子…!…?」


起きると、瑠未子はおらず、舞子だけがいた。

「ありがとう。舞子!!!」

「うんん。親友で幼なじみだもの。当たり前でしょ!」

うんっ!
やっぱり舞子は、どんな私も受け入れてくれる…。

「最高のパートナーだねっ!」

             (おわり)

40:相原梨子◆x.:2018/01/07(日) 14:26

あとがき

こんにちは。
『ココロのヤマイ』いかがですか?
この物語は、以上で完結。
女の子の危険な友情を描きました。
コメント、アドバイス、感想。
お待ちしております!


小説を書いているとあるあるなのが、最終章が短くなってしまう。
書いている方、ありませんか?
ああ、ネタ切れ…。
もう落ちかな…。
などなど、終わってしまうのです!
今回もそうですが。
これも改善しながら頑張っていきたいと思います!


ここまで読んでくださったあなた。
どうもありがとうございました。
他作品も目を通してください。
よろしくお願いします!

  大人な小説を書いてみた相原梨子

41:相原梨子◆x.:2018/01/09(火) 10:49

『キミ色に染まった世界で恋する』

登場人物

詩神 美海
お金持ちの家庭のひとり娘。
みんなは気楽だと思っているが、実はとても苦労している。

冴橋 来雅
美海の幼なじみ。
優しくて頼りになるイケメン。
モテているらしいが、自覚はない。

桜庭 涼
美海の秘密を知っている。
隣町に住むイケメン。
私立に通っている秀才。

42:相原梨子◆x.:2018/01/09(火) 10:50

作者からメッセージ

この物語は、本編『キミ色に染まった世界で恋する』のプロローグです。
見た上で、本編を読んでいただけると、ちょっとは楽しめると思います。
よろしくお願いします。

43:相原梨子◆x.:2018/01/09(火) 11:02

プロローグ

どうして私はこんな家に生まれてきたのか教えて…!
何度願っても答えは同じ。

「嫌味言ってるわけ?ウチらがお金持ちじゃないから。最悪」

そんなつもりで言ったんじゃない。
確かに『お金持ち』ってワードしか知らないあなたたちに聞いたら、きっとうらやましがるよね。
だけど、そんなの外だけ。
中では全然違うんだよ…!

「コラ!どうして泣いてるの、美海!やめなさい!」

おばあちゃんにほっぺたを叩かれる。
鈍い音が部屋に響いたかと思うと、おばあちゃんは私を睨み付けた。

「いい加減、いい子に育ってもらわないと手遅れになるわ。美海のために尽くしてるの。期待に応えて!」

ますます出てくる涙。
出来の悪い私が期待されてる。
理由は、ひとり娘で『詩神』家の人間だから。

「いい?美海。おばあちゃんやお父さんは、全てあなたのために働いたり、お金をかけたりしているの。美海が活用してくれなきゃ意味がないわ!」

「そっ、そんなことしてくれなくてもいいよ…!」

「バカ美海!引っ越しでもして、新しい環境に移ることも出来るのよ!」

イヤ、絶対イヤッ!
来雅と離れたら、何にも出来ないよ。
おばあちゃんに連れられて来たここは、詩神家の別館。
そこの一番狭い部屋に入れられた。

「あなたがいい子になるまで、別館で生活してもらうわね。あなたの部屋はここよ。いいわね?」

「はい…」

外から鍵をかけられ、何もないこの空間でただただ泣き続けることしか出来なかった。

44:相原梨子◆x.:2018/01/09(火) 11:14

美海が別館に!?
美海のお母さんからかかってきた電話に、思わず声をもらす。

「私、何も出来なくて…。来雅くんの部屋から、別館の一番狭い部屋が見えるでしょう?小さい小窓から。声をかけてあげてちょうだい」

「ああ、分かりました」

美海のおばあさんは厳しく、叩いたり叱ったりは当たり前。
俺も、美海と一緒にいて叱られたことがあった。

「じゃ」

美海のお母さんとの電話を切って、階段を駆け上がる。
部屋の窓を開けると、美海の家の別館に向かって話しかけた。

「美海、いるのか?」

「…」

いないのか?
ここの部屋じゃないか、あるいは部屋を移動したのか。
ドジな美海のことだし、寝てるか。

「来雅!」

あわてて後ろを振り返る。
な、何で俺の部屋にいるんだ!?

「小窓ね、古いから外れやすくなってて。それを外して出てきたの!来雅のお母さんいなかったから、セーフ!」

確かに、お母さんいなくて良かった。
お母さんは、美海は幼なじみなのにすごく嫌う。
近づいちゃダメとも言う。
俺は、正直美海のこと好き、だけど。

「お願い、来雅。助けて」

「別に構わんが」

すると、美海は地図を取り出して机に広げた。
何をするつもりなんだ。
ちょっと呆れつつ、だけど一緒にいられて嬉しい気持ちで地図を見た。

「ママの実家へ行きたいの。来雅も来たことあるでしょ?地図の見方が分からなくて〜」

45:相原梨子◆x.:2018/01/09(火) 11:27

電車に体を預けてスマホを操作する。
こんなところまで来ていいのか?
そう思っているとスマホが鳴った。

「もしもし」

「お母さんだけど、来雅、今美海ちゃんといるの!?」

どこからの情報だ…。
隣にいる美海を横目で見て「ああ」とつぶやく。
お母さんは呆れた声で続けた。

「どこにいるの?今から来雅を迎えに行くから」

「来なくていい。すぐ帰るから」

お母さんとの電話を切り、カバンの中にスマホを入れる。
すぐにスマホが鳴ったけど無視した。
ちょっとしつこいな、お母さん。

「いいの?来雅のスマホ鳴ってるよ」

いいんだ。
これで電話に出たら、美海を裏切ることにもなるし、美海が辛くなる一方だ。

「ねえ、来雅。電話が来雅のお母さんじゃないかもしれないよ」

はぁ〜。
スマホを見ると『美海のお母さん』と書かれていた。
うっ、マジか。

「もしもし、来雅です。あの、電話出なくてすみません」

「いいのよ。それより、美海が部屋にいなくて大騒ぎしているの。来雅くんの家に行ったらしいけど、帰ってきてもらえる?」

これも断らないと。
美海のために。
そう思っていると、美海が俺のスマホを手に取って耳に当てる。

「もしもし。美海だけど」

「ちょっ……み!……さい!……」

美海、叱られてるな。
少し話して、美海は電話を切る。
そして、にっこり笑って見せた。

「ごめんね、来雅。だけど、ママに話したから。ママなら何とかしてくれるから。実家へ行くのはやめないよ」

美海、強ぇ。
詩神毛の女って強い人多いし、美海は優しい時の方が多いけど、怖い。

「ちょっと来雅?降りるよ」

ギュッと美海が手を握る。
おい、みっ、美海…。

46:相原梨子◆x.:2018/01/09(火) 11:38

実家に行って、事情を伝えた。
ママのママだから、もうひとりの優しいおばあちゃんに。

「悲しかったし、怖かっただろう?ここで休みなさい。もう大丈夫。来雅くんもありがとね。休んでいきなさい」

良かった、ここに来られて。
おばあちゃん大好き…!
すると、玄関のドアがガラガラと開いた音がして、ひとりの男の子が入ってきた。

「みっ…。う…。お、おばさん。回覧板持ってきたよ」

何、この子。
なんか不思議な子だな。
私がずっと見せられてきたアルバムに写ってる気がする。
けど…そんなことないよね。
似てるんだ、きっと。

「ありがとう。いつも元気ねえ」

ちょっとナイショ話のような話をして、身をひるがえしてきた。
おばあちゃんも様子がヘン?
あの子って、何者なの…?

「美海ちゃん?どうかしたの?」

「う、うんん。何でもないや」

どういうこと?
頭がモヤモヤする。
ねえ、あの子はどこで見たの…?

「あら、電話」

おばあちゃんは受話器を取る。
…?
顔をしかめて、ちょっと会話をして電話を切っていた。
もしかして、詩神家から!?
背筋がゾクゾクする。
やめて、お願いだから…!

「大丈夫だって、もう。家に帰りなさい、美海ちゃん」

「待って、おばあちゃん。誰からの電話なの?本当に大丈夫!?」

おばあちゃんはにっこり笑って、頭をなでてくれた。

「おばあちゃんはウソをつかないわ。信じて」

…じゃあ、信じてみるよ。
おばあちゃんのこと。

47:相原梨子◆x.:2018/01/09(火) 11:53

家に帰ると、私は来雅とふたりそろって叱られてしまった。
来雅まで巻き込んじゃった…!

「ごめんなさい、来雅」

「いいんだ。美海だって、ひとりで叱られるよりいいだろ?」

ホラ、すっごく優しいんだ、来雅は。
おばあちゃんは、私を見下ろして、バチンと叩いた。

「ちょっ、おばあさん!」

「どの口が言うっ!お前が美海を悪い子にしているんだろう!」

違う、違うの…。
私が元から悪い子なんだって。
どうして分かってくれないの?
おばあちゃん、嫌い!

「お前は帰りなさい。もう、絶対美海に会わないことを誓いなさい。美海はこちらへ」

「イヤ、イヤ、イヤ!」

「美海っ!」

また、バチンと叩かれる。
来雅は帰っていいよ。
一緒にいたら、来雅まで…。

「美海はまた泣くのか!」

「う、うわぁーーーん」

おばあちゃんは来雅を無理矢理家の外に出し、私を別館の二番目に狭い窓もない部屋に閉じ込めた。
物もないし、窓もない。
電気もないから、何も出来ない。
私、どうしてここの家に生まれてきたの?
もっと強くてたくましくて、いい子はいるはずでしょ?
お願いだから教えて。
そして、私を救って。
こんなところにいられない。
やりたいことをやってみたいんだ。

「美海?」

「あっ、ママ…!」

「ちょっと。彩美さん?」

はっ…お、おばあちゃん。
せっかくママが来てくれたのに、見つかちゃったじゃん…!

「彩美さんって、美海にいい顔したいだけの母親だったのね」

48:相原梨子◆x.:2018/01/09(火) 12:58

違うよ、ママは優しいの!
何ですぐそうなるの…!?

「美海、おいで」

おばあちゃんに言われるままに来たここは、あんまり使わない部屋。
緊急話し合い室。

「全員集まったようね。…彩美さんが、美海を悪い子にしてるから、別館で幾日か生活して、反省してもらうわ」

「だから、違うって!ママは悪くないから!私が全然ダメなだけ!」

「美海は何も分かってない。美海を育てたのは彩美さん。美海がダメなのは、彩美さんがダメだからです!」

こんな風になってまで、私を守ってくれてありがとう、ママ。
だけど…。
私のせいでこんな風になるなんて、私イヤだよ…。

49:相原梨子◆x.:2018/01/09(火) 13:00

ありがとうございました!

これでプロローグは終わりです。
読んでくれてありがとうございました!本編は小説板にこれから建てます。
呼んでね!

50:相原梨子◆x.:2018/01/11(木) 15:16

『キミ色に染まった世界で恋する
             番外編』

登場人物

詩神 美海
お金持ちの家庭のひとり娘。
みんなは気楽だと思っているが、実はとても苦労している。

冴橋 来雅
美海の幼なじみ。
優しくて頼りになるイケメン。
モテているらしいが、自覚はない。

桜庭 涼
美海の秘密を知っている。
隣町に住むイケメン。
私立に通っている秀才。

51:相原梨子◆x.:2018/01/11(木) 15:20

今までのあらすじ

突然目の前に現れた男の子、涼にお出かけに誘われた美海。
涼の幼なじみで、涼に恋している真子に出会い、美海が涼に対する気持ちを伝える。
一方の涼は、美海が大好きで好きなものや趣味なども知っていた。
何度も告白した結果、友達から始めることになったけど…?

52:相原梨子◆x.:2018/01/11(木) 15:52

ー第1話ー

「どうしても一緒にいたい。そんな人がいるんだ。だから、ごめん」

告白されて断る俺。
その時頭に思い浮かんだ顔…。
詩神美海だった。

「じゃあ、これだけ教えて!一緒にいたい子ってどんな子?」

「可愛くて、優しくて、いい子」

告白してくれた子がクスッと笑う。
そして、肩をツンツンつっついてきた。
ちょっと恥ずかしくなる。
これを、美海がやってくれたらな…。

「外観はどうなの?私、そうなれるように努力するから」

「一目見て、可愛い」

「だぁかぁらぁ!」

何を答えればいいんだよ…。
ちょっと苦笑する。
告白してくれた子は「涼くんって天然かもーっ!その子にも、強引にしてそうかも〜。気付かなくて〜」とつぶやかれた。
美海に引かれる…っ!

「まあ、私はそんな涼くんが好きなわけだから考えといてね!」

その子は友達の元へ走っていく。
俺の名前は、桜庭涼。
好きな人はもちろん美海。

「ねーねー、涼くん好きな人がいるんだって〜!」

「え?マジ!?こないだいないって言ってたのに〜!」

「最近、放課後全然いないよね〜。もしかして放課後デート〜?」

「ちょっと、そんなこと言ったら、涼のこと好きなのに失礼でしょっ!」

いやいや、多分本人の俺の前で言われる方が失礼だって。
美海は、嫌がってるし…。
これが強引なのかな…。

53:相原梨子◆x.:2018/01/15(月) 20:49

来雅と帰り道を歩く。
私は、部活用具が入っているカバンを手で支えながら蹴って歩いた。

「美海、ちょっと離れて。お母さんがいるから」

来雅がトンと私を前に押す。
私はスタスタと早く家へ帰り、来雅は後ろから家へ帰る。
幼なじみの来雅のママは、私のことを嫌っている。
来雅といることを怒られるんだ。

「お帰りなさい、美海。相変わらず幼なじみと仲良しね」

家のドアを開けて出迎えてくれたのはおばあちゃん。
我らが詩神の怖い人。
詩神医療会社の事務所で、副社長を勤めている。
ちなみに、パパが社長。

「ただいま」

おばあちゃんがいるなんて、何事?
そう思いながらリビングへ行く。
本館のリビングは、パパかおばあちゃんがいればお客さんがいることが多い。
もしかしたら、今日もいるかも。
だけど、リビングにはパパもお客さんもいなかった。

「美海、今日おばあちゃんがいるのは、あなたの未来の相談よ」

未来…?
スクールバッグをすみに置いて、パパがいつも座る席に腰かける。
おばあちゃんはお客さんの席に座った。

「美海には、詩神医療会社の社長になってもらいたいから、いい学校に入ってもらわないといけないの」

社長って言葉は嫌い。
勉強が苦手でスポーツが得意な私は、できたらスポーツのサポート系の仕事がしたいと思っていた。
だけど、詩神のひとり娘の私が社長にならないと、詩神が倒産するんだ。

「中学校は公立のままでいいから、高校は私立か国立、都立に入る。大学は都内のいいところに入ること。今の段階で崩れたら引っ越し。いいわね?」

「はい…」

今はスポーツでカバーしている内申点だけど、そろそろヤバい。
40点以上の内申点がないと引っ越しになってしまうんだ。

「学校の方に、臨時順位付きテストの実施を協力してもらったわ。一桁だったらいいけど、一桁じゃなかったら引っ越しにしますからね」

「はい…」

「何、その力のない返事は。詩神の人間として恥ずかしくないの!?」

恥ずかしくない…。
社長になんか、絶対ならない。
詩神なんてほっといて、スポーツ関係の仕事につくんだから…。

54:相原梨子◆x.:2018/01/27(土) 17:21

翌日の部活の時間。
パパの事業パートナーの娘である、木下先輩に出会った。

「こんにちはー、詩神さん。相変わらず、木下より規模の大きい詩神」

規模の大きい詩神?
そんなに変化したの?
私、全っ然知らなかった。
すると、木下先輩は耳元でそっとつぶやいた。

「もしかして、詩神さん何にも知らない感じだったりするー?詩神に限って絶対ないよねー?」

「しっ、知ってますよ!」

こんなこと言っちゃったけど、聞かれたら何て答えよーっ!?
木下先輩相手に、意地張っちゃった!

「なんか、詩神さんってウチの姉に似てるとこがあるね」

「木下先輩、ひとり娘じゃないんですか?」

「うーん、ひとり娘なんだけど、訳あって姉が出来たみたいな。あんまり聞かんどいて」

木下先輩のお姉さんか〜。
きっと、かっこいくてキリキリしたお姉さんだろうな。
ひとり娘の私からしたら、兄弟姉妹がたくさんいるのって羨ましいな。

「詩神さん、ラケット」

学校の卓球ラケットを差し出してくる木下先輩。
まだ、持ってないからな…。
ラケットを受け取り、1年生の列の一番後ろに着く。

「詩神さんって、部長と仲良くていいね。羨ましい!」

前にいた子が振り返ってくる。
名前、知らないんだけどな。
その子はすぐ前を向いてしまった。
胸元の名前の刺繍が見えない。
瑠夏なら知ってるかも…!

「おーい、詩神さん、挨拶!」

「すっ、すみません!」

木下先輩に声をかけられて、あわてて姿勢を倒す。
挨拶する時の卓球部の姿勢。
身を起こすと、顧問の先生が練習内容を発表する。
だけど、私は上の空。
絶対ないんだけど、お姉ちゃんがいた感じがするんだよね。
夢で見たのかもしれないけど。

「じゃあ、部活スタート!」

顧問の先生の声が体育館に響いて、ラケットを手に卓球台に着いた。
いつもやってくれる相手は木下先輩。
相手側のところに木下先輩も着く。

「まずはフォアね」

一般的に赤いラバーの面でラリー。
だけど、なぜか『お姉ちゃん』というワードに引っ掛かった。
木下先輩のお姉ちゃん…。

「詩神さん、ごめんっ!」

木下先輩が打ったスマッシュが、見事に鼻の頭に当たる。

「ごめんね、詩神さん!痛くない?ヘンなところとかある?」

「大丈夫ですぅ…」

ウソ、めちゃめちゃ痛い!
木下先輩のスマッシュって言ったら、部内一だからっ!

「大丈夫だったら続けるよ!」

木下先輩は、フォアサーブを繰り出してくる。
私も安定した状態で打ち返す…。
すっごく見てくれてるな、木下先輩。
さっき、木下先輩がスマッシュを打つ前に私が打った時のこと。
あの時、ちょっと打ちにくくて、場所も動かされたんだよね。
だけど、動かずにラリー出来るようにしてくれてる。
木下先輩のお姉ちゃんも、きっとすっごく優しい人なんだな…。

55:相原梨子◆x.:2018/01/28(日) 20:53

ー第2話ー

部活が終わると、いつも通り涼くんが校門前で待ってくれていた。
家に向かって並んで帰る。
すると、涼くんが新しく出来た商店街を指差した。

「放課後デート?」

「ええええっ!」

涼くんは私の手を握って商店街へ入っていく。
寄り道って初めてだなぁ。
初めてが放課後デートだなんて…。

「あれ、美海?」

「ママっ!」

商店街の一角、お肉屋さんでお買い物をしていたママ。
ママは、ゆっくり隣にいた涼くんに視線を流した。

「この子は誰?」

「友達の涼くんだよ」

涼くんは目を見張る。
おばあちゃん(優しい)と知り合いの涼くんなら、ママのこと知ってるはずだもんね。

「おばさん!」

「涼くんだったのね。全然気付かなかったわ」

ママは、ちょっと涼くんとおしゃべりしてから別れた。
私と親子って言うより、涼くんと親子って感じがするんだけど。
…ちょっと嫉妬しちゃう。

「あれ〜?涼くんじゃな〜い?」

涼くんの名前が出たのでそちらを振り返ってみる。
知らない女の子の集団がいた。

「美海…逃げるぞ…」

「どうして?知り合いだったら、ちょっとくらい…」

最後まで言い切る前に、涼くんに手を引っ張られて走る。
こんなスピード無理だって〜。
めちゃめちゃ速いスピードで駆け抜けて行く涼くん。
運動は得意だけど、こんなスピードはさすがに無理っ!

「ちょっ…!追いかけるよ!」

女の子集団の子たち追いかけてきてるし〜!
どこまで走ればいいの〜!
ずいぶん走り、商店街の一番はしっこのところまで来た。
女の子集団の子たちは見えない。
涼くんが向き直る。

「ごめん、美海。絶対美海にだけは会わせたくなかったんだ…」

「誰だったの?」

涼くんは少しためらった。
だけど、顔を埋めながらつぶやいた。

「告白してくれた子」

「だ、だったら、余計向き合わなきゃいけな…」

「無理なんだよ!美海が…好きな人が目の前にいるのに、他の恋愛関係の女の子なんて目に入らないっつってんの」

え…っ?
涼くんは顔を赤らめる。
私まで恥ずかしくなってきたっ!

「あっ、涼くん見っけ!」

さっきの女の子集団の子たちだ!
だけど、仕方ないと言ったように、涼くんは動かなかった。

「例の女の子ってこの子なの〜?」

「めちゃくちゃ可愛くない!?」

誉められてるんだろうけど…。
告白したんだろう子がかわいそう。
ちょっとうつむいている。

「ねえねえ、何て言う名前〜?」

「友達になろ〜よ〜!」

「私は詩神美海です…」

ますますうつむく子がいることがイヤ。
私が来たことで、こうなっちゃったことがイヤ。
私は、その子に近寄った。

「あなたが…涼くんに告白した子?」

その子はコクンとうなずく。
私は、その子にそっと言った。

「気にしなくていいと思うよ。気持ちが言える人ってカッコいいね」


新着レス 全部 <<前 次100> 最新30 ▲上へ
名前 メモ
画像お絵かき長文/一行モード自動更新