ヒロアカ 【夢小説】

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1:アポロ◆A.:2016/04/29(金) 12:24 ID:eG2



お久しぶりの方はお久しぶり、はじめましての方ははじめまして。
 アポロです。大量の別の小説の更新溜まってますが全て書く気でいますので安心してください。
 ルールと注意です。

・荒らし、なりすましはNG
・原作に沿ったり沿わなかったり
・ここは私個人の小説ですのでリレー小説ではありません
・ここはみんなで書こう! と言う所ではないので私以外の小説の書き込みはNGです
・コメントは大歓迎です
・パクりや晒しに来たのなら速やかにUターンしてお帰りください。迷惑です。
・長編、短編を書き溜めていきます。
・女主、男主は恐らくチートかヘタレ。

固定ネームは『小原いおり』です。

プロフィール(女版)

小原いおり(16)

誕生日 …4/12
血液型…A型
個性……『剣炎』
身長……170cm
体重……52kg
髪型……肩上のショートカットに毛先が外に跳ねている黒髪。時々カチューシャをつける。
顔………イケメン、眼鏡着用
口癖……『大丈夫やろ』『くそが』
一人称…「こっち」「俺様」

備考

性格はクール。楽しいことは好きなのだがそれがあまり顔に出ず冷めていると思われがちである。クールだがそんなことはない。
 口数はまぁ少ない方である、全くしゃべらないわけではない。関西弁。
 身長が高く、胸さえ見なければ整った容姿と相まってイケメンになる。(胸はG)
 彼女の個性、剣炎は掌やから剣を取り出したり、空中にいきなり炎を出してそこから剣を取り出したり。炎単体では汗は炎に変換しないが爆豪に似ている。
 耳郎響香と居ることが多く、恐らくクラスで一番仲が良い。そのせいか男子からよく「発育が正反対」と言われる度にソイツ炎を飛ばす(主に峰田、上鳴)。
 耳郎と仲が良ければ必然的に上鳴電気ともよく喋る。
 とりあえず出席番号は切島鋭児郎の次。
 身体能力でさえ高いのだが個性も相まり半分チート。
 自分の個性に合わせて剣を使うために居合をしたり剣道をしたり、炎を使うために空手(威力重視)をしたり少林寺拳法(形重視)をしたりハイスペック。
 勉強は普通。


ではでは!

41:ぜんざい◆A.:2016/12/31(土) 15:08 ID:hYw



 時間になって、様子見と言うことで手錠を指にかけてくるくる回しながらビルの中に入る。一階、いない。二階、いない。三階、いない。となると最上階か。自然と浮かんでくる笑みを隠そうともせずに駆け出して一気に階段を駆け上がる。

 案の定、居た。



「やぁ雲雀くん。待ってうわあ!」
『無駄話しに来た訳じゃないよ。15分しかないんでしょ、僕は貴方を捕まえれば良い訳だ』



 これはトンファーが要るな。雰囲気でそう感じ取り、チャッ、と仕込みトンファーを構える。彼は驚いたように「仕込みトンファーかい?」と聞いてきた。答えるつもりもないので「うるさいよ」と呟き、ギャギャギャギャギャとトンファーを彼めがけて振るう。



「わっわっわっ」
『嘘臭い演技をやめなよ、本気で来ないと、本当に咬み殺しちゃうよ』
「君こそっ、本気を出したらどうだ。いっ?」



 トンファーで攻撃しながら彼と会話をする。彼がトンファーを腕で受け止めて、押し返したのでそれを利用してひらりと下がる。



『まあ確かに、本気はまだ出してないね』
「そうか、それなら来たまえ雲雀少年! 本気で!」
『あなたがそれに値するならね』



 雲ハリネズミのロールをブレスレットから呼び出し、小さな球針態をひとつ出させて雲の炎で増殖させる。ぼぼぼっと宙に浮きながら増えるそれを会話の隙に間髪入れずにトンファーで打ち込んだ。



「くっ」
『僕の個性とやらはとても戦闘向きなんだよ。負けないでね、まだまだ序の口なんだから』
「へえっ、序の口、ねっ!」



 まばたきの瞬間に彼は目の前に迫っていた。しまった、油断した。彼は思いきり僕の腹を殴って吹き飛ばす。背後の壁にぶつかってがらがらと崩れる。痛い。久しぶりだ、いたいと思えるのは。



「やれやれ、もう終わりかい?」
『まだに決まってんでしょ』



 のそりと起き上がって、ロールに告げる。



『ロール、カンビオ・フォルマ』
「!?(カンビオ・フォルマ……イタリア語で形態変化! あのハリネズミがなにか起こすのか!?)」



 さあ咬み殺してあげる。



.

42:ぜんざい◆A.:2017/01/29(日) 14:26 ID:JRA


 やっと固まった連載です。ヒバリさんのはまた気が向いたら。
フェアリーテイル(グレイ)→ヒロアカ転生。(本当に)若干だけグレジュビなので嫌な人はUターン。


 久々にチームで仕事に出た。いつものチーム+ジュビアで。
 内容はルーシィの家賃の為もあり高額だが人数が多くてすぐ終わった。そして、唐突だったのだ。俺がまばたきをした瞬間、周りの仲間は居なくて、その代わり、周囲にはやけに発展した世界。
 いきなり脳内に殴りかかるようにやって来る全ての情報。頭を押さえて膝をつけば周囲の、この世界の俺の友人が慌てて駆け寄ってくる。体を見れば幼くて、年齢で言えば4歳、情報では俺たちは4歳のようで、幼稚園なるものに通っているらしい。
 顔も幼い頃の面影がある。俺はどうやら異世界へと飛んでしまったようだ。この世界の俺には悪いがこの世界を満喫させてもらおう。
 頭痛が収まって友人に笑いかければ「心配かけさせるなってー!」と様々に声が掛かった。
 俺の名前は『氷造 グレイ』、したの名前がやけに馴染みがないが知ったこっちゃない。
 入ってきた情報によれば、ことの始まりは中国軽慶市、発光する赤子が生まれたと言うニュースだった。待て待てなんだよ発光する赤子って。あれか? トノみてぇな光魔法か?
 以降各地で「超常」は発見され、原因も判然としないまま時は流れる。いつしか超常は日常となって、「架空(ゆめ)」は「現実」に。世界総人口の約八割が何らかの特異体質である超人社会となった現在、混乱渦巻く世の中でかつて誰もが空想し憧れたひとつの職業が脚光を浴びている。
 超常に伴い爆発的に増加した犯罪件数、法の抜本的改正に国がもたつく間、勇気ある人々がコミックさながらにヒーロー活動を始めた。超常への警備、悪意からの防衛、たちまち市民権を得たヒーローは世論に押される形で公的職務に定められる。国から収入を、人々から名声を。……ってやつだな。
 ヒーローにも資格が要るらしい。そのヒーローを育てる機関は高校から。一番有名なのは数々の有名ヒーローを輩出してきた「雄英高校」らしい。人気ナンバーワン、敵(ヴィラン)に対する抑止力と謳われるオールマイトと言うヒーローもそこ出身だからか周囲は「高校は雄英行きてぇ」と言うやつは多い。
 もちろん単純な俺もヒーローに憧れ……と言うか人を守ることがギルドのように思えて、雄英を出てヒーローになりたいと思った。最後にもとの世界で見たのは、ジュビアの笑顔だったこともあるのだろうか。
 ぶんぶんと頭を振り、この世界でも魔法は使えるのだろうかと試しにギルドマークをイメージすれば、パキキ、と手のひらで氷がギルドマークとして出てきた。ふふん、やっぱり出来るな。



「まあ!!! グレイくん! 個性が出たのね!!」
『えっ』



 この世界では、個性と言うことになるらしい。
 幼稚園の先生に言われ、親に迎えに来てもらい、病院に行けば「個性はどうやら『氷造形』のようですね」と告げられた。……恐らく滅悪魔法も使えるだろうけど、今はやめとくか。



.

43:ぜんざい◆A.:2017/01/29(日) 14:50 ID:JRA



 それから数年。俺は中学三年生になった。
 この世界の勉強は……まぁ中の下みたいな。
 造形魔法はもう前の俺と同じぐらい扱えるようになっている。やっぱり馴染みが有るからか? あと、脱ぎ癖は治らなかった。……別に気にしてねぇけど。

 学校帰り、帰路に着くため商店街に差し掛かった時、いきなり前方で大爆発が起こり、俺の体は吹き飛ばされた。ごろごろごろと受け身をとる間もなく転がって壁に激突してようやくストップする。



『なっ、なんだぁ!?』



 慌てて人だかりの中に駆け込めばそこには俺と同年代ぐらいの学ラン着た野郎がヘドロみてぇなやつに捕まって悶えていた。なんか叫んでる。……若干ナツに似てない気もしねぇでもねえ。



「ヴィランはベトベトで掴めねぇし良い個性の人質(こども)が抵抗してもがいてる。お陰で地雷源だ、三重で手が出し辛ぇ状況!!」



 そう怒鳴った図体のでかいヒーローに駆け寄り、『あのヘドロ、どうにかすりゃ良いのか?』と指差して問う。



「おう、ヘドロを……なんだよガキかよ! あぶねぇから下がってろ……って服!!」
『おわあ!! 俺いつ脱いだ!?』



 俺の正面のヒーローが制服のまま上半身裸の俺に呆れているも、『任せてくれよヒーロー』と声をかけてばっと手を振るった。ばきばきばきとみるみる凍っていくヘドロに俺がにやっと笑うと「勝手に個性を使うな!」とヒーローから怒鳴られた。
 えー、と文句を垂れる俺にそのヒーローがガミガミ叱るなか、そのヘドロと少年に飛び出すように近付く緑髪の少年が見えた。
 そのあとオールマイトが到着してその凍ったヘドロを腕一薙ぎで吹き飛ばし、その風圧で上昇気流を巻き起こし、雨がぽつぽつ降りだした。すげー。
 ヘドロは無事ヒーローに捕まり、緑髪の少年はヒーローに叱られ、あの爆豪と言うヘドロに捕まっていた少年は教われながらも意識を保っていたタフネスを褒められ、俺は「個性は勝手に使ったのはいただけないが、協力感謝する」とお礼状を頂いた。いらねぇ。あと脱ぎ癖を注意された。しゃーねーだろ癖なんだから。



.

44:ぜんざい◆A.:2017/01/29(日) 18:30 ID:JRA



 それから10ヶ月経って、雄英高校入試。この寒い季節はすごく過ごしやすい。
 会場に入ればボイスヒーロープレゼント・マイクはうるせぇし後ろの席のあのときの緑髪はぶつぶつうるせぇし眼鏡はエルザより頭固くてめんどくせーしと踏んだり蹴ったりだったのだが、実技試験の説明内容に入ったとたん、俺の周囲の空気の温度は下がったように感じられた。
 要するに、現れる機械の空想敵を戦闘不能にすりゃ良いって事だろ。……俺の会場じゃ点数を取れるのは俺一人になりそうだな。



**

 «ハイスタートー»。そんな間延びした声で聞こえてくるプレゼント・マイクに開始の合図だと理解して飛び出したのは俺一人だった。
 何呆然としてんだ、スタートって言われたらスタートなんだよ。こんなむちゃぶり、エルザとミラちゃんので慣れたわ。
 遅れてくる生徒に視線をやって再び前を向き、にやっと笑って右手に握り拳を作り、左の手のひらに乗せて呟く。



『アイスメイク……銀世界(シルバー)!!』



 人以外が全て凍る。この街みてぇなグラウンド全体を氷が覆って、全てを停止させた。そう全てのロボットを“停止させた”のだ。所謂戦闘不能。ロボット点は全て俺のものだ。
 だが、例外が一体居た。お邪魔ギミック、0ポイントである。



『おわっ!! くそでけぇ! ニルヴァーナみてえだなクソッ!』



 崩れ落ちてくる瓦礫を殴り飛ばしながら逃げるように駆け出そうとするが、これはヒーローの試験。撃破ポイントだけと学校側は言ってない。なるほど、そう言うことかよ。
 まだ敵が残っていないかと望みを駆けて出ていっていた奴がいたはずだ。
 慌ててUターンすればそこにはやっぱり0Pに怯えて固まっている女子が一人。その上から大きめの瓦礫が降ってきていて、ふっと息を吐き出しながら右手を振り上げた。
 途端その女子を覆うように現れた氷。慌ててその場に駆け寄ってその名もない女子を俵担ぎにしてその場から離脱した。
 ……まあ壊すってもの、悪くねぇ。



『おい! コイツ頼む!』
「はぁ!!?」
『任せたぜ!』
「ちょ、おい!」



 すぐそこにいた男子に気を失っている女子を任せてから再び0Pに向かって走り出す。そして地面に手をついて階段を造りだし、駆け上った。
 そのまま0Pの前に飛び出し、大きく息を吸う。この世界に来てまだ使用したことのなかった、これ。



『氷魔の……激昂!!』



 俺の滅悪魔法は0Pを粉々に砕いて小さな破片として周囲にぶわりと撒き散る。俺はというと階段も消してしまったので地面から引っ張り出すように腕を引き、滑り台のようなものを造り出して滑ろうとしたのだが、足が止まらなかった。



『うぇ!? う、おおおおおおおおお!!』



 鬼気迫る表情で転けないようにそれを駆け降りて、台から降りるときに足を滑らせ、ずてんと地面に顔面から挨拶をする。



『おわっ!!』
「「お前の服はどーなってんだ!?」」



 そんな叫びを聞いて自身を見ればパンツ一丁、ばさっと目の前にズボンやら上着やらが舞い落ちた。
 いつものことなのでそのまま服を脇に抱えて『あとちょっとで終わるから向こう行ってよーぜ、俺が全部ポイント貰ったから』とゲートへ向かう。
 背後から怒鳴り声とか聞こえたけど知らねぇ。だって自分が悪い。



.

45:ぜんざい◆A.:2017/01/29(日) 19:07 ID:JRA



 一週間後、通知が来た。もちろん合格か不合格かの通知だ。
 入っていたのは簡易モニターみてぇなやつで、起動したら目の前にオールマイトが現れた。それをドキドキしたように見守る両親と、頬杖ついて興味無さそうに眺める俺。結果は合格。



«氷造くん! 辺り一面を氷で銀世界に、女子を氷で助けたり、0Pのお邪魔ギミックを粉々に破壊したり、いや、ほんと……凄まじい戦闘センスだね! 素晴らしいよ! 110点、入試一位通過だ!! おめでとう! 合格だよ!»
「ぐれええええい!」
「俺たちは、俺たちはぁっ! えぐっ」
『おわ!! 泣くなよ親父!! お袋もうっせえ!』
「グレイ服!」
『いつの間に!』
「お前はいつからそんなに脱ぎ癖が……」
『っんな目で見んじゃねーよ!?』



 春。



「グレイ! Yシャツ着てる!?」
『着てるよ!?』
「ジャケット着てる!?」
『着てるって!』



 服関係でうるさい母親にうんざりしつつも笑って靴を履いて、玄関の取っ手に手を掛ける。



『じゃ、行ってくるな!!』
「服!」
『嘘だろ!』



.

46:ぜんざい◆A.:2017/01/29(日) 20:04 ID:JRA



 バリアフリーなのか偶然そういう作りなのか、俺三人分ぐらいの大きさの1-Aと書かれた扉を開けばそこにはほとんど揃っているクラスメイトがいた。あのときの眼鏡と爆豪は机がどうのぶっ殺すがどうの。物騒だなおい。俺もナツもエルザも言えた口じゃねぇけどさ。
 その二人の横を素通りしていけば、大きな事実が発覚した。俺、この爆豪の後ろの席じゃねぇか。
 若干ハハ、と乾いた笑いをこぼせば周囲から同情の視線をもらった。やめろ俺をそんな目で見るな。
 そしたら妙に小薄汚い男が入ってきた。担任の相澤というらしい。……ん? 担任!?
 そしていきなり始まった個性把握テスト。入学式もガイダンスも無いが、俺には楽で良かった。



「ヒーローになるならそんな悠長な行事出る時間無いよ。雄英は自由な校風が売り文句。そしてそれは先生側もまた然り。
ソフトボール投げ、立ち幅跳び、50m、持久走、握力、反復横跳び上体起こし、長座体前屈……中学の頃からやってるだろ? 個性禁止の体力テスト。国はいまだ画一的な記録をとって平均を作り続けている。合理的じゃない。まぁ、文部科学省の怠慢だよ」



 そして爆豪が中学の時の記録を聞かれ、67mと答えた。はん、俺80mー。
 まあ爆豪が「しねぇ!」と怒鳴りながら個性使って投げたら705.2mだった。やっぱり個性はすげぇな。
 まあ自由に個性を使えるって聞いてみんなが楽しそうだのと騒ぎ出したのが相澤の勘に障ったのか、最下位は除籍処分になった。マジかよおい自由な校風ここで出ちゃったよエルザ並みの強引さだって。



「生徒の如何は俺たち先生の自由、ようこそこれが雄英高校ヒーロー科だ」



 あれか? Plus Ultraって奴か? 面白そうじゃねぇか、そういう制限あった方が本気出せるぜ、相澤先生。


**

 50m走、ナツと競ったことが有るからか個性使わなくても5.01と速かった。眼鏡_飯田は3.04秒と早く、驚いた。個性はエンジンらしい。水を得た魚じゃねーかよ。
 握力……80kg。なんか540kg出してる触手の焼いたら美味そうなやついたな。障子だっけか。
 立ち幅跳びは氷で体を持ち上げてひたすら前進。
 反復横跳びはうおおお、と叫びながら結果はいまいち。
 ボール投げは……あれを使うか……。



『行くぜ!』
「「「脱ぐな!!!」」」



 バサッと上半身の服を脱ぎ捨てればクラスメイトから勢いよく突っ込みを貰った。んなもん知らね。グッとボールを握って、右手を氷で覆っていく。



『アイスメイク……魔王の前腕甲(ヴァンブレイズ)!!!』



 振りかぶれば氷で作った大きなガントレットのような形をした氷の肘の部分のピンがガチンと音を鳴らしてボールを押し出す。投げる力と押し出す力、ボールはギュンと目にも止まらぬ速さで奥へ飛んでいき、木々を薙ぎ倒しながら進んでいく。



「……氷造、6km」
『お』
「キロ出たああああ!」
「なんださっきのガントレット! くそかっけぇ! くそ!」
「ちょ、下品……」
「服さえ脱がなければね……」
『……(言いたい放題言ってくれやがって)』



 そのあと麗日ってのが∞を繰り出したので一気に霞む俺。なんなんだよもう。



.

47:ぜんざい◆A.:2017/01/29(日) 20:30 ID:JRA



 なんか個性使って大ケガしたやついたけど、結果的に除籍は嘘だった。何でも合理的虚偽のようだ。おいおい相澤先生、やめろって心臓に悪い。



**

 翌日、午前は必修科目、英語などの普通の授業。昼は大食堂で一流の料理が安価で食えるらしい。
 仲良くなった上鳴や切島と食堂にいけばごったがえすそこ。偶然空いてる席を見つけたので早速そこで座って飯を食い始めた。



『やべえうめえ!』
「それな!」
「旨いけどよ……! 氷造……服脱ぐのやめろって! 半裸じゃねーか!」
『がふッ! いつの間に!』
「無意識かよ! さっき脱いでたろ!」
『いや知らねえうめえ!』
「うるせえ!」



 がばば、と流すように口に含んでそしゃくして飲み込んで五皿ほど繰り返して満腹になったので『いや食った食った』と椅子に持たれかかる。



「……おま、その量はねぇわ」
「すげえな……ウェイ」
『え、お前ら食わねぇ?』
「あんな量は食えねぇよ!」



 そして午後の授業はヒーロー基礎学。わーたーしーがー!! 普通にドアから来た! と叫びながら入ってきたオールマイトから戦闘訓練をするぞと伝えられた。それに伴って渡されたのが戦闘服(コスチューム)。俺のはアルバレスの時の服だ(KC36巻表紙の服)。まあどうせ脱ぐし意味は成さない。



「格好から入るってのも大切なことだぜ少年少女!! 自覚するのだ!!!! 今日から自分は……ヒーローなんだと!」



 俺たちはコスチュームを着て、グラウンドへと出たのだった。



.

48:ぜんざい◆A.:2017/01/31(火) 20:14 ID:JRA



「始めようか有精卵共! 戦闘訓練のお時間だ!」
『(うるせえ)』



 オールマイトの怒鳴り声から開始した戦闘訓練。場所は屋内、対人戦闘のようだ。



『対人……? 得意分野じゃねーかよ』
「え、氷造、得意分野って……?」
『お前……耳郎だっけか? 要するにだな、敵をメタメタにぶん殴って気絶させて捕まえりゃ言い訳だ、負けるわけねぇ』
「氷造少年ってばクレイジー!!!」



 横槍を投げてくるオールマイトを鼻で笑ってルールを再度聞く。状況設定は「敵」がアジトに核兵器を隠していて「ヒーロー」はそれを処理しようとしている。ヒーローは制限時間内に敵を捕まえるか核兵器を回収すること、敵は制限時間まで核兵器を守るかヒーローを捕まえること。コンビ及び対戦相手はくじ。ただし、クラスは21人。一人あまりが出るので一チームだけ三人だ。俺は見事に三人ペア、Iチーム。
 最初のAチームVSDチームが対戦して、グラウンドのひとつの建物が大破する結果になった。勝ったのはAチームだが、勝負に負けた感じだ。だってAチームの緑谷ってやつ、ボロボロなのにDチーム無傷だし。
 そして第二戦、俺のIチームVSBチームだ。



「がんばろーね二人とも!」
『轟は俺に任せとけ!』
「うん」
「尾白くん氷造くん。私、ちょっと本気出すわ、手袋とブーツも脱ぐわ!」
「うん……(葉隠さん、透明人間としては正しい選択だけど女の子としてはヤバいぞ倫理敵に)」
『おう! 頑張れよ葉隠!』
「(なにいってんだよ氷造!?) 」



 ビル内でのそんな会話のあと。四階の北側の広間に俺と尾白、同じ階のどこかに葉隠、そういう配置についてすぐ、ビル内を冷気が覆った。咄嗟に俺は飛び上がって回避したが尾白は反応できなかったらしく、ビルが凍ったのと同時に尾白の足も凍り付く。

 次の瞬間には轟は扉の所にやって来ていた。



「……驚いたな、反応したやつが居たのか」
『馬鹿言え、おんなじ氷だろーが。所でお前……息が白いぜ、どした』
「普通は白くなるもんだろーが」
『俺はならねえ。個性(魔法)のために、半裸のまま雪山で人生の半分過ごしたからな』
「……ヘェ、そりゃすげーな。とりあえず上着ろよ」
『うおっ! いつの間に!』
<無意識!!!?>



 轟にそう言われ、自身を見れば上着のコートを着ていなかった。まあ気にするほどのことでもねえ。



『ほら、やるぞ。負けるつもりねーから。わり、尾白。もうちっと我慢してくれ』
「……俺とやる気か」
『お前は俺の足元にも及ばねぇよ』
「なんだと」
『行くぜ!』



 バサッとノースリーブの様な上の服を脱ぎ捨てて『アイスメイク、ランス!』と氷の槍を浴びせる。それを大きく回避した轟はバキキッとアイスゲイザーの様な氷を地面から俺に向けてきた。
 ドゴン! と大きな音がして煙が舞う。



「氷造!!」
「……ふん、終わりだろ」



 いまだ煙の晴れないなか、轟が核兵器に近付いていく。そして右腕を伸ばしたとき、それは煙から伸びてきた手に掴まれた。



「なっ!?」
『おいおい、誰が終わりなんだ?』
「てめえ、っ」



 轟の右腕を掴んでいた左腕が瞬時にパキンと凍り付く。轟はバッと距離を取って俺を睨み付けた。



「……なんで」
『なんでって……俺に氷は効かねぇよ』



 轟を見て、凍り付いた左腕に目をやる。怪訝に顔をしかめる轟に俺はニヤリと笑って左腕の氷を口に持っていった。



『なんてったって、氷は俺の大好物なんだぜ』
「は!?」



 そのままばきばきと腕の氷を食いつくしてフゥと息を吐く。はくはくと口を開けては閉じてを繰り返すなか、俺は『ショットガン!』と地面の氷を操り轟に向けた。



「くそ……!」
『残念、捕まえたぜ』
「っ!」



 そのまま俺は轟に確保証明のテープを巻き付け、外で待機しているだろう障子のところにいくべく、窓に手を着いて階段を作ってかけ降りて奇襲を仕掛けてから意識を奪って確保。勝利、俺のチーム!!



.

49:マメツキ◆A.:2017/04/13(木) 00:57 ID:BSQ

ポケスペゴールド転生。記憶なし。個性は『ポケモントレーナー(孵す者)』。基本的に孵す者の能力を受け継いでいるのはトゲたろうとピチュぐらい。原作でゴールドが持っていないポケモンもいたり。

**

 俺の個性はポケモントレーナーと言う聞いたこともないものだった。周囲は翼が生えたり触手が生えたりとかっこいいものばかりなのに、なんで俺だけそんなヘッポコな名前なんだ、とむくれた時期もあったっちゃあった。でも、個性で出現した図鑑らしき赤い機械。手持ちと書かれた液晶パネルをタッチして出てきた六つの紅白のボールの中から現れたその『ポケモン』と言うのに一気に心を惹かれた。
 バクフーンの『バクたろう』
 ニョロトノの『ニョたろう』
 エテボーズの『エーたろう』
 ウソッキーの『ウーたろう』
 トゲキッスの『トゲたろう』
 ピチューの『ピチュ』
 姿形も違う種類も別なコイツらとは前世からの知り合いのようにすぐに仲良くなれたし、コイツらと居るときは酷く楽しい。攻撃技等を単身で持っているから危険っちゃ危険だが俺が指示しなければ人に向けたりはしない。咄嗟に出したりするときもあるけど。
 ポケモンは『進化』するらしい。バクフーンのバクたろうも最初はバクフーンではなく『ヒノアラシ』と言うひねずみポケモンでちっちゃかった。トゲキッスのトゲたろうも最終進化形態だ、一番最初はトゲたろうはタマゴのままボールから出てきてバクたろうやその時はまだエイパムだったエーたろうと温めてやっと孵ったトゲピーと言うポケモンだった。ニョたろうだってそうだ。
 いずれはピチュも進化するんだろうかと中学後半、年甲斐もなくわくわくとしている。

 中三のとある平日の朝、俺は昨日の夜更かしが祟って母さんに起こされるまでぐうすかと寝ていた。この10年そこらですっかり馴染んだバクたろうたちに母さんが俺を起こせと頼めばみんながみんな俺を起こしに来る。毎回俺はピチュの電気ショックで叩き起こされみんなが俺の髪を鋤いたり着替えを持ってきたりと騒がしい。
 俺は毎回そのタイミングで寝起きから抜け出し自分で着替えて部屋を出るのだ。他のポケモンを引き連れ、まだ幼くて小さいふかふかなピチュを腕に抱えて階段を降りる。足にまとわりつくようにみんな一緒に階段を降りているから少しばかり怖い。なんかこう、転げ落ちそうで。



『グッモーニン母さん』
「おはようゴールド。前髪爆発してるわよ」
『俺はこれがいいんだよ!』



 リビングに入ってピチュをフローリングに置けば颯爽と駆けていくソイツに呆れた笑いをこぼした。それについていく他のポケモンも。薄情なやつめ。がたりと席につきながら母さんにそう返し、俺はトーストをかじりながらテレビをかじりつくように眺めるピチュたち。あいつら意外にもテレビっ子なのだ。
 実は俺の図鑑……『ポケモン図鑑』にはまだまだいろんな種類のポケモンがおり、十数匹は家に放してる。流石に2m3mの奴は出してやれないので庭先で可愛がっているのだ。愛嬌があって本当にポケモン最高。



「ヨギ、ヨーギラ!」
「ん? ヨギたろうどした? 遊べって?」



 俺がそう聞けば嬉しそうにうなずくヨーギラスのヨギたろう。俺は『なら今日の連れ歩きはヨギたろうで決定だな』と告げればはしゃぐヨギたろう。周りからは不満の声が上がるも、勘弁してやってくれ。そこで母さんが俺に声をかけた。



「そう言えばゴールド、高校どうするの?」
『なに当たり前のこと聞いてんだよ、母さん』
「え?」
『雄英に決まってんだろ、俺はコイツらとヒーローになる。前も言ったろー?』
「バカね、聞いてないわよ!」
『えっ、マジで? ……まあ、よくあるこった! 気にすんな!』
「まったくもう……」



この話は俺、名前がゴールドで定着してきてっけど本名『小金 ヒビキ(こがね ひびき)』が最高のヒーローたちと最高のポケモンヒーローになる物語だ。

50:マメツキ◆A.:2017/04/13(木) 23:17 ID:BSQ



 小柄なポケモン達を引き連れ散歩から帰宅。そしてテレビをつけたピチュと他のポケモンに囲まれてテレビを見ていれば気になるニュースを発見した。
 今日の学校が終わった放課後、一人の俺と同い年のバクゴーとか言うやつがヴィランに捕まる『ヘドロ事件』なるものが発生したらしい。その彼と幼馴染みの緑の縮れ毛の少年も助けに入ったみたいだがヴィランには相手にされなかったようだ。その後、オールマイトの活躍で事件は終演を迎え、バクゴーはあのヘドロの攻撃を耐えたそのタフネスを評価されていた。俺はどっちかってェと緑の縮れ毛を評価したい。幼馴染みだからってそう簡単にヴィランに突っ込めねーだろ普通。



『やっぱオールマイトすげーな、バクたろう』
「! バクッ、バクフッ!」
『なんだなんだ、オールマイトにも負けねえっつってんのかバクたろう。うれしーなこんにゃろー!!! お前等なら出来るぜ!』



 近くにいたピチュやトゲたろう達を巻き込んで抱き混めばピチュから電気ショックをもらった。酷くね? まあテレビっ子なピチュの邪魔した俺が悪いんだけど。
 ……アイツも雄英、来んのかな。え、アイツって? バクゴーに決まってんだろ。



『……アイツ来たら同じクラスにゃなりたかねーなァ』
「ちゅぴ?」
『わかんなくていいんだぜピチュ。よくあるこった、気にすんな。いでっ』
「エテ! エテテ!」
『いだっ、いだだだ!! さっきから髪引っ張んな! いてえんだよエーたろう! 遊べってか!?』
「エテボー!」
『さっき散歩行ったろ!? もうすぐ晩飯だっつの! ウーたろう! 遊んでやれよ!』
「ウソキー」
『おい!』



.

51:マメツキ◆A.:2017/04/13(木) 23:58 ID:BSQ



 それから10ヵ月、とうとう雄英の入学試験である。今までの10ヵ月、血反吐を吐くぐらい勉強したんだ。中二では通知表オール1評価のこの俺が。この努力実らなかったら俺はもう引きこもる。泣く。駄目だ、引きこもるにしても遊ぶのが好きなエーたろうやポケモンたちに引きずり出されちまうし、泣いてるとキマたろうが俺を物理的に明るくしようと『にほんばれ』で眩しくなる。なんだこれ絶望的じゃんよ俺。これが八方塞がりってやつ? いや、多分違うと思うんだけど。
 俺の緊張が伝わったのか緊張で大人しい小型二匹……ピチュとヨギたろうを腕に抱えて試験会場へと歩を進める。珍しそうに俺と俺の腕の中の二つの生命体を見る周囲や珍しそうに周囲を見回す二匹にもう俺はどうすればいいのかわからないぜ。とりあえず二匹は本当にかわいい。トゲたろうも目付きが俺似じゃなくてしかも進化前ならチェキプリーとかわいい声をあげて笑っていただろうに。トゲキッスでけーんだよ。トゲたろう小さくなってお願い。

 試験会場内にて、指定された受験番号の席につき、プレゼントマイクの最早やかましいぐらいのハイテンションな説明をただひたすら大人しく聞く。眠そうな、と言うか寝たヨギたろうを俺の頭の上に、動き回ろうとするピチュを押さえるようにキツく腕に。ただひたすらに大人しく。俺は話を聞いた。スケボー乗りてえビリヤードしてえ。脳内は別に大人しくなかったわ俺。
 どうやら俺たちはこのあと、服を着替えて十分間の模擬市街地演習なるものを行うらしい。演習会場は受験用紙に書いてあった。
 演習場には仮想ヴィランを三種多数配置していて、それぞれの攻略難易度に応じてポイントが設けられるみたいだ。各々なりの仮想ヴィランを行動不能にし、ポイントを稼ぐのが俺たちの目的。他人への攻撃は御法度。シンプルでいいなこういうの。
 あれ、でもプリントには仮想ヴィランは四種って書いてあるんだけど。疑問に思ったその時、眼鏡の男がちょうどその質問をした。ついでに彼の後ろの方の緑の縮れ毛のかの少年に注意していたけど俺知らね。
 四種目は0ポイント、要するにお邪魔虫のようだ。なかなか粋なことするじゃねーの雄英。さあレッツPlus Ultra!

 結論から言おう、演習場めっちゃでけえ。やっぱし市街地言うだけあんなぁ、これ。
 プレゼントマイクの気の抜けたスタートーと言う合図と共にバクたろうの背に跨がり一番に演習場へと飛び込んだ俺はそんなことを考えていた。
 現れた有点ヴィランをバクたろうの時に火炎放射で破壊し、時に電光石火でたいあたりし破壊し、ブラストバーンで数体溶かし尽くす。最早破壊者な俺はバクたろうの背中でヨギたろうを頭に乗せていろいろとポケモンに指示を出していた。
 時々実力が足りなくて負けそうになっている人をピチュのボルテッカー、またはエーたろうのスピードスター、そのまたはキマたろうのタネマシンガンで助け、時々建物から足を滑らせ落ちてくる受験生をウーたろうに受け止めてもらったりとてんやわんやだ。忙しい。

 途中、0ポイントヴィランが超巨大だったことが判明したり、降ってくる瓦礫に押し潰されそうになっていた奴をギリギリでバクたろうからトゲたろうに乗り換え間一髪助けたり。
 まあ、充分に有意義な試験だったんじゃね? とは思う。

 後日届いた雄英からの合格通知に叫んだ俺は悪くない。嬉しかったぜ!



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52:マメツキ◆A.:2017/04/15(土) 02:40 ID:KgU



 やって来た朝。今日も今日とて俺の図鑑ではなくボールに入れている手持ちたちに叩き起こされ、髪を整えられ、トーストを口に突っ込まれた。意識が半分覚醒してきた俺は真新しい制服の袖に腕を通す。俺よりも母さんになついたポケモン達を母さんの頼みで家に起き、俺はボールに入りたがらないピチュを腕に靴を履いた。



『……いってきまーす』
「はーい、いってらっしゃーい」



 母さんの返事を聞き届け、俺はピチュを頭の上にのせて眠気の抜けきらない頭で駆け出した。目指すは雄英、1年A組。俺の新しい学年とクラスである。


**

 やって来たぜ雄英。自分のクラスの扉の前に立つと、個性で大変な思いをしている人に対するバリアフリーなのかドデカイ扉がでかでかとあった。でけーなおい。
 頭から肩へと移動してきたピチュの毛並みに首筋がくすぐったくなるもガラ、と扉を開けた。
 一番に目に飛び込んできたのはあの爆豪とやらと試験会場で質問していた眼鏡が机に足を乗せるな別にいいだろ云々言い争っていた。ウルセーのツートップかよ。うちの子に影響が悪そうだからやめて。
 そんでまぁ、うちのピチュってまだ幼い訳よ。他に比べたら。な? 分かるだろ? いきなり怒鳴り合う場面を見せられたら……な? 察するだろ?



「チュピッ!? ちゅぅぅう!!」
『いだああああっ!』



 案の定驚いたピチュから電気ショックをいただいた訳だが。10まんボルトじゃなかっただけ良かった、成長したなピチュ。
 同じクラスの奴等はいきなりの放電と俺の叫び声にギョッとしたように俺を見つめた。だがしかしそんなもん気にする暇はない。



『こらピチュてめっ、電気ショックはねーだろーが!? いてーよ静電気のがマシだわ!!! なんだぁ!? 昨日テレビのチャンネル勝手に変えた俺への嫌がらせか!?』
「ぴちゅっ! ピチュピッ!」
『やっぱりかテメー! いだっ、つねるなつね……いたいいたい!!! ごめんごめん俺が悪かった……なんて言うわけねーだろこの電気ネズミ!!!』
「!? ピチュ!!!」



 お互いに頬を引っ張りあって『うふわのひぃへぇほけほんはなへめーふぁ!(器のちぃせぇポケモンだなてめーは!)』「ひぃふぅ! ひぃふひぃふ!」と何やら変顔大会になったところで眼鏡に「何をしているんだ君は!」と爽やかに声を掛けられた。



『あー、にらめっこかな? ってか、お前さん誰よ』
「ぼ、俺は私立聡明中学出身、飯田天哉だ! よろしく!」
『おーよろしくなー、俺 小金 響。気軽にゴールドって呼んでくれな』
「ゴールド?」
『俺のあだ名な。ガキん時からずっとそう呼ばれてっからよ。むしろその呼び方じゃねーとしっくり来ねえっつーか。まぁクラス一緒だし頼むわ』



 飯田は淀んで居たものの「……そうだな、呼ばれなれた方が反応しやすい。うん、わかったぞゴールドくん」とちゃんと返してくれた。いい人だコイツ。な? とピチュを見れば机を伝って再び俺の肩へと戻ってきた。くそー、かわいいなコイツ。あざといな。



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53:マメツキ◆A.:2017/04/15(土) 17:20 ID:KgU



 飯田と言い合っていた爆豪がこれでもかというぐらい睨んで来たがそれを目線を合わせないようにスルーし、砂藤とかかれた席の後ろの席に腰を下ろした。俺だけぽつねんときれいに揃った席から飛び出ていて少しさみしい。学校側が仕組んだアレ的な何かか。アレってなんだ。
 周囲からちらちらと俺に視線が飛ばされているのに気づくと同時にあぁ、とピチュに視線を落とす。アレだけ大きく言い争い? のようなものをしたんだ。気になるだろう。ピチュも居心地悪そうにしているので腰のベルトからボールを取り外して向けてみると珍しく自分からボタンを押して赤い光に包まれ入ってきてくれた。かわいいやつめ、とか思いながらベルトに戻す。

 席に座って先生を待っていれば緑の縮れ毛もやって来て、飯田が挨拶に行った。緑の縮れは緑谷出久というらしい。まんまか。そして赤らんだ頬が特徴的な少女、麗日お茶子も登場。三人はその場で話し込んでいたが後ろからやって来た小汚い男に注意された。なんと彼、相澤消太が俺たちの担任らしい。マジかよ。
 そして早速だが、と言われて渡された体操服。やって来た運動場。どうしよう訳わかんねえ。

**

 どうやら運動場では個性把握テストを行うようだ。麗日が「入学式は!? ガイダンスは!?」と先生を問い詰めるも、先生は素知らぬ顔してヒーローになるにはそんな悠長なものに出ている暇はないだのなんだのかんだの。
 そしてちょっとしたデモンストレーションのあと相澤先生から言い渡された『最下位は除籍処分』。なんだこれ絶望。


 とまあごちゃごちゃあったものの、最下位除籍処分は合理的虚偽、わいわいと騒ぐクラス。そこそこに仲が良いやつもできた。意外と爆豪は取っつきやすい。人を近寄らせない雰囲気をかもし出しちゃ居るし口も悪いけど、まあ悪いやつじゃなかった。上鳴ってのと切島、瀬呂とかとも仲良くなれたし結果オーライ。そんなこんなで日々は過ぎていき、ヒーローコスチュームも手渡されオールマイトのヒーロー基礎学も無事終了。展開がはええって? よくあるこった、きにすんな。
 女子? 女子とはあんま喋れてねーよこんちくしょー。



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54:マメツキ◆A.:2017/04/15(土) 18:00 ID:KgU

「今日のヒーロー基礎学だが、俺とオールマイト、そしてもう一人の三人体制で見ることになった」

 と相澤先生に切り出され、何をするのかと思いきや、災害水難なんでもござれ、レスキュー訓練だった。おおお、と気分が上がるなか、ピチュが自力でボールから飛び出して肩に乗った。ふっさふさの毛並みが首に当たってくすぐってぇな。
 俺のヒーローコスチュームはフード付きの赤い上の服。腹辺りにポケットが有るものだ。下は黒と薄い黄色の七分丈のズボン。キャップ帽の鍔が後ろになるように被り、その上からゴーグルを装着すれば準備万端。(スペゴールドの完成)
 先日のオールマイトの授業でコスチュームがぼろぼろになってしまった緑谷は体操服だ。
 バスにて。俺は向き合うタイプの席で切島と梅雨ちゃんの間に座って会話に混じっていた。

「私、思ったことをなんでも言っちゃうの緑谷ちゃん」
「あ!? はい!? 蛙吹さん!」
「梅雨ちゃんと呼んで。あなたの個性オールマイトに似てる」
「!?」

 梅雨ちゃんの言葉にひどく動揺した緑谷だが、切島が「待てよ梅雨ちゃん。オールマイトは怪我しねぇぞ。似て非なるアレだぜ」と隣で補足する。『確かになー』と同意していれば、膝の上のピチュもうんうんとうなずいた。

「しかし増強型のシンプルな個性はいいな! 派手で出来ることが多い! 俺の硬化は対人じゃつえーけど如何せん地味なんだよな」
「僕はすごくかっこいいと思うよ! プロにも充分通用する個性だよ!」
『それな! 俺は体に影響が出る訳でもねーからよ、ほとんどポケモンに頼りっぱだぜ』

 緑谷にピシッと指を指せばだよね! とにこにこしている。向かいに座っている芦戸が「かわいいよねー、その個性!」とピチュを見つめながら言った。

『だろー? コイツは生まれてからまだ数ヵ月だから体もちいせぇんだよなー。強いけど』
「生まれてからまだ数ヵ月? 小金くんの個性ってその子じゃないの?」
『緑谷、ゴールドって呼んでくれよ。慣れてねぇんだよな……。
えっと、まぁそうだけどちょっとちげーよ。コイツはタマゴから生まれたんだ、別になにする訳でもなくずっと抱えてたら生まれてきた。
 俺の個性は『ポケモントレーナー』、この図鑑から六体を出してこのボールに入れとけばすぐ出せるんだ』
「へえ、じゃあ他にもたくさんいるのね」

 梅雨ちゃんがそういったので頷けば、上鳴に「ポケモンってなんだ?」ともっともな疑問をぶつけられた。どうやらこの話にはみんなが興味があるらしく、視線が集まる。

『ポケモンってのはなー……ポケットモンスターの略称で、まだまだ謎が多い生き物なんだよ。ある条件が揃ったり強くなれば進化ってのをして姿形を変える。そもそもタマゴすらどうやって産むのかまだはっきりしてねえ。俺の図鑑に表示されてるポケモンは約700種類。タイプは確か……16ぐらいあったかな。技の種類も豊富で中には全ての産みの親とか言われるやつもいるんだ。不思議な生物なんだよなー。俺もよくわかってねーし』

 なーピチュと頭を撫でれば噛み付かれた。いってえ!

「そのピチュはなんの種類なの?」

 緑谷にそう聞かれて、『コイツは電気タイプのネズミポケモン、“ピチュー”って種族なんだ』と返す。

『進化形は“ピカチュウ”って奴で、最終進化形は“ライチュウ”らしいんだ』

 図鑑を見ながらそう言えば、撫でてみたーいと芦戸に言われ、ピチュを手渡す。

「なぁゴールド! 今手持ちにいるやつ他に何が居るんだ!?」
「あっ、俺も見てえ!」
「俺もー」
「私もー!」

 上鳴や切島、瀬呂、麗日、葉隠にねだられ先生に聞けばそこまで大きくないやつなら一体だけいいと許可が降りた。なら俺の相棒だな。

『俺の相棒、バクたろうだ!』

 ボールから出したのはバクフーンのバクたろう。コイツは今最終進化形で最初はヒノアラシだった、と図鑑を見せながら説明する。

「思ったんだけど、どうしてニックネームがバクたろうなの?」

 梅雨ちゃんの疑問に『コイツな、背中が爆発してるみてぇに火ぃ吹くんだ。俺もよく前髪爆発してるねっていわれてっから』と頭を撫でていればネーミングセンス……とちょっと遠い目をして言われた。なんだよ、かっけーだろ? なになにたろうって。

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55:マメツキ◆A.:2017/04/25(火) 23:34 ID:iBo

短編
【魔法先生ネギま!のネギ先生が雄英でプロヒーローとして英語教師していたら】


 今日からこのA組に副担任として誰かがやって来るらしい。もちろんプロヒーローなのだろうが、雄英に来るとなるとそれなりにビッグネームな筈。
 相澤先生に副担任を教えられたA組総員は誰だろうと扉の方を凝視した。
 現れたのは赤毛のイギリス人の、小柄な少年。10歳は言っているだろうと思われるが判断しかねる。小さな丸眼鏡に襟足の髪を後ろで小さく束ねる少年なのだが、その場にいる全員が彼を知っていた。数々の大事件や強敵ヴィランを瞬殺、おまけに女性の心をも瞬殺する名の知れたプロヒーロー『ネギ・スプリングフィールド』。ヒーローネームは本名のようだ。愛らしい外見のネギは教鞭に立ち、ガチガチに緊張している様子で口を開いた。



「えっ、と……知っている人もいるようですが……は、はじめまして、ネギ・スプリングフィールドです! これから副担任としてA組に付き添う形になりました! よ、よろしくお願いします!」



 勢いよく御辞儀をした彼は思いきり額を教卓へぶつけ、「あぅぅ……」と額を押さえて涙目で唸る。それにしばし唖然としていたA組だが、大きく歓声をあげ、先生へと質問を次々へと投げ掛けた。



「ね、ネギ先生って呼んでいいですか!?」
「あ、はい、構いませんよ」
「先生ちっさいですね!」
「あー、えと、まだ10歳なもので……」
『10歳!?』
「あれっ、公表してなかったかな……?」



 あせあせとノートを捲るネギにさらにヒートアップするA組。



「先生の個性ってあんまはっきりしてないですよね!? 何の個性っすか!?」
「あ、はい。『魔法』ですね。僕は同じこの魔法の個性を持つ師匠に戦い方を学びました。僕がよく使う魔法は『雷』や『風』『光』と言ったものが多くて、もちろん敵に向けるものも多いですが、強制武装解除魔法や、自分自身に魔法を乗せてと言ったものが多いですね。
 皆さんが一番よく知っていると思われるのは『雷天大壮』か『雷天双壮』です」
「あー! あの何か握り潰してる奴!」
「はい、それですね。魔法の発動呪文を唱えたあと、それを敵に発射するのではなく自身の手のひらの上に固定し握り潰して体内に取り込んでいます。これは『闇の魔法(マギア・エレベア)』と言う師匠の編み出した技で、長い間師匠と地獄の修業をし、ようやく資格を認められて一ヶ月不眠不休で命のやり取りをしてやっと取得できました。雷天大壮、双壮はこれを僕がアレンジしたものです」
「地獄の修業?どんな?」
「……」



 芦戸が聞くとネギ先生は笑顔のまま硬直しだんだんと顔を青くさせ激しく震えだした。それを見て周囲が「そんだけ怖かったってことか!?」「ごめん先生!」「もういい! もういいよ!」とフォローを入れる。そこで相澤先生は問うた。



「そんなに簡単に強さの秘密、暴露していいんですか?」
「あっ、はい、全然構いません! 絶対出来ないので!」
「……出来ない?」
「以前にも同じ個性を持つ方が数人僕のあとに師匠のものに来たのですが、まず、師匠の修行が厳しすぎて凍死寸前の方や圧死、脱水死、焼死寸前などが多発しまして……。
 二つ目は師匠と手合わせがあるのですが、下手すると命を落とします。僕も何回か師匠に掌抵を喰らってそのたびに内蔵がぐちゃぐちゃになりました」
「!?」
「三つ目、マギア・エレベアの取得には上記の手合わせを無事生き延び、認められたものが巻物を渡されます。ひとたびそれを開けば最後、思念体の師匠に精神世界へと引きずり込まれ、取得するか死ぬかしか脱出方法はありません。ここまで行けたのは僕が初めてだったみたいで……」



 「あれ?」とネギ先生が声をあげた静かになった教室でその話を聞いてA組は静まっていたのだった。


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56:ぜんざい改めマメツキ◆A.:2017/06/16(金) 00:18 ID:EAo

×絶チルでバレットくんがヒロアカ世界で生まれていたらなパラレル。
 個性は『鉛』。鉛を自由に操作することができる。主に銃を使用(超高威力)。備え付けの遠隔範囲を把握出来る眼は半径1kmまでならどこでも見れる。
 原作通り二次元オタクかつ軍事オタクかつ実況民。ヒーローにあまり興味なし。なりたいとは思う。
 容姿や口調もそのまま。黒髪に白いバンダナ。目上には陸軍で使用されるような「〜であります」等の敬語。呼び方は相澤の場合『相澤教育指揮官殿』と呼ぶ。敬礼はオプションですがなにか? 同級生にはわりと普通。原作と違い額のバーコードは消されてない。

※マメツキは洗脳とかよく知らんのでリハビリとかスッ飛ばしてる。(ごめんなさい)

**
相澤side

 俺は今、逃走中のとあるヴィランを追いかけていた。大量爆発テロを起こし、銃での暗殺を以前から行っていた組織をある司祭で捉えたのだ。ほとんどをプロヒーローたちで捕縛し、残るはこいつのみ。だが、追い掛ける背中には銃は握られておらず、こいつの個性は火薬。爆発テロは分かるが、暗殺はよくわからん。そう怪訝に思っていた時だった、男が叫んだのだ。



「バレット! もう構わん! 殺れ!」



 男がそう怒鳴った瞬間、俺はその場を飛び上がる。ドゴッと音がして、俺は壁の突起に合金布を巻き付けぶら下がり、そこを見れば今まで居た場所にあるのはひしゃげた地面と煙を出してそこへ埋まる鉛玉。狙撃されたのだ。しかも的確に。飛んで避けなければ脳天を貫いていたはずだ。
 まだ残っていたのかと舌打ちをかまして飛んできた方を見ればその方面は避難所で銃を構えているやつなど居ない。そして視界の端できらりと何かが光り、俺は再びその場を飛び退く。それはどごんと例に漏れず正確にもと居た場所へと撃ち込まれた。背後からだった。先程とは間逆の場所からの狙撃に二人も腕のいいのが居たのかと眉を寄せれば、叫んだ先程の男は笑い声をあげた。



「……なにがおかしい」
「はっ、ははは! いや、なに、ね? すごいだろう、その狙撃」
「……はあ?」



 そう会話しつつも飛んでくる弾を避け、あいつの口からペラペラ吐かれる言葉を整理する。



「俺たちの組織は昔弧児のちっせえガキを一人拾ってな! そのガキの個性が中々に良いもんだったから洗脳して一から育て上げて狙撃の名手にしたんだ! すごいだろう? 16歳のくせに恐らく狙撃の世界じゃ右に出るものはなしだ! 洗脳の個性持ってるやついてよかった!」
「……だとしても、もう終わりだけどな」



 狙撃は止んだ。大方オールマイトがとらえにいったのだろう。焦り出すそいつに捕縛布を巻き付け、任務完了。

 他のプロヒーローが集まる場所へと向かえば、オールマイトが気を失っている様子のバンダナを巻いた黒髪の少年を抱いていた。



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57:ぜんざい改めマメツキ◆A.:2017/06/16(金) 00:49 ID:EAo


 オールマイトに事情を聞けば、俺のクラスの生徒と同じ年のこの少年が狙撃を行っていたらしい。手慣れた様子だったらしいので今までの暗殺は彼が実行してきたのだろう。



「中々の強さを持つ子だったよ。拳銃を握り潰したと思ったら背中からライフル取り出すし、それを潰してもベルトポーチに弾があるらしくてね。指で銃の形を作って撃ってきた。彼の個性は弾、もしくは鉛の操作だろうね。突然糸が切れたように倒れたから驚いたよ」



 俺が思うに洗脳の溶けたショックだろうと予想し、『コイツはあの組織に幼い頃から洗脳を受けてたようです』と進言すれば周囲はざわめいた。この場合は強いレベルの洗脳だろうから、ほとんど彼らの操り人形になっていたのだろう。可哀想にとは思うが罪は罪。処罰の対象だろう。
 やって来た校長が告げた。



「どっちにしろ、起きるまでは絶対安静だから、雄英で厳重に警戒して寝かせようか」



 どうしようもなく胃が痛くなった瞬間だった。

**

 この子供が気を失っている間に着々と事は進められ、俺たち雄英教師は昼は交代で監視、夜も監視だが身体検査等もおこなった。
 それでわかったのは、彼のバンダナに隠れた額にはバーコードがあったようだ。そして個性。オールマイトの予想通り、『鉛』を操るものだったよう。
 目が覚めた瞬間、襲ってくるかもしれない。そんななんとも言えない不安の中、体育祭が終わった。一年の優勝は爆豪勝己。俺のクラスの問題児の一人だ。
 そうして雄英がバタバタしているうちに、眠っていた彼がようやく目覚めたのだ。
 この場にいるのは俺とオールマイト、そして校長の三名。どうして俺かと言うと、一度戦ったからだそうだ。胃がいたい。
 一応しっかりと意識があるらしい彼は言った。とても不思議そうな顔をして告げたのだ。



「ここは、どこだ」



 記憶は霞が掛かったように思い出せないらしい。ひどく不安がる彼はくしゃりとベッドの上で前髪を握る。思い出せない、なぜだと自分に問い掛けながら、俺たちの問いにひどく申し訳なさそうに「すみませんが、思い出せないのであります」と何回も返すのだ。
 ただ、自分の事はわかるらしい。名前は『バレット・シルバー』、個性は『鉛』。出自はわからない。彼自身、自分をあまり知らなかった。ただ、二次元だどうのと言っていたのでオタクだろう。緑谷とは恐らく別の種類だが。そして銃の使い方、個性の扱い方は体が覚えていた。そして驚くべきはそのからだ。長い間眠っていたはずなのに、リハビリもせず普通にたち歩きが出来る。



『あの……俺は、自分は、何をしでかしてしまったのですか』



 この状況を察したらしいバレットが俺たちに聞く。あらましを全て話せば再び頭を抱えるのは目に見えているので、あの場にいたプロヒーローで決めた、記憶がなかった場合の対処を校長が言い渡す。



「……それはだんだんと知っていけばいいのさ、バレット・シルバーくん。まあ、そうだね。唐突に記憶が戻って暴れられても困るからさ、雄英の生徒として学校に通ってもらって、監視することになったのさ」
『……っそれは』
「もちろん衣食住は完璧に取り揃える。君も高校生だ、その様子じゃ学校に行ったことなんてないだろう? いい機会だからさ」
『そういうことではないのです上官殿! 俺みたいな奴を学校に入れるなんて、この部屋の監視だけで充分であります。衣食住も、最低一ヶ月は食べなくても生きられます』
「それじゃ困るから言ってんだ」



 俺の言葉に体の向きごと変えて目線を合わせてくるこいつに軍人かよとも言いたくなるが、俺の発言の理由は、ゆっくりと思い出してこの学校に馴染めば暴れる気も起きない、そして穏やかに情報を得られると言うことを言いたいからだ。それを伝えると、バレットは渋々頷く。
 恐らくバレットは明日から1-Aの生徒だろうか。胃がいたい。

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58:マメツキ◆A.:2017/08/01(火) 23:06 ID:fVg

うちの子転生トリップ。環境はちょいちょいアレンジ加えつつも生き写し。記憶は無し。技は体が覚えてる的な。トリップするのは志賀 暁くん。個性は『絶対領域(テリトリー)』。自分が把握している空間内なら物を入れ換えたり酸素を無くしたり無重力にしたり重力をかけたり空気を固めて射出したり応用でかまいたちや空気を熱して爆発させたりできる、わりと良い個性。自分を浮かすことも可能。欠点らしい欠点は無いが半径500m圏内までしか発動出来ない。

**

 俺の家は大手製菓会社で、兄が一人いる。出来の良い兄貴はいつも褒め称えられ、ただ平均値なのに何故かさげすまれる俺。兄貴の個性は『記憶操作』、俺は『絶対領域(テリトリー)』、このどちらが会社に貢献するかなど目に見えていた。もちろん兄貴の記憶操作である。交渉ごとで自分たちが良い方に傾く交渉が兄貴がいれば100%できる。両親や召し使いがどちらを贔屓にするかなど、目に見えていた。
 俺も兄貴も容姿に優れていた、とは思う。ただ、外面だけは良い天才肌の兄貴と、普通な能力で無愛想な俺。人気がどちらに傾くかなど火を見るより明らか。クソみてぇな性格した女遊びの激しい兄貴でも、記憶操作なんて個性が有るから無敵で、でも記憶操作は俺だけには絶対効かなかった。から、夜な夜な隣の部屋から聞こえる媚声にうんざりしていた中学校生活。
 いつも比べられてきたひとつ上の兄貴が嫌いだった。



「……雄英、落ちた」



 俺が中二の冬。オールマイトに憧れて雄英を志望した兄貴が、入試に落ちた。他のヒーロー科も全滅。何でも出来た天才肌の兄貴が、落ちた。
 こんな俺でも人が死ぬのは辛いし、何より親や周囲を見返すために来年は雄英を受けるつもりだった。両親に「大丈夫だ!」「就職でも構わない、お前は社長になるのだから」と慰められている兄貴を横目に、俺は鼻を鳴らしてソファから立ち上がった。暴力の被害は受けたくない。まあ、遅かったのだが。



「何鼻鳴らしてんだよただの出来損ないごときが! 落ちた俺を笑ってんじゃねぇよ役立たずの癖によ! 志賀家の汚点が! 恥さらしが!」
「っ……!」



 どかっばきっと鈍い音が響くリビングで、親とも呼べない俺を産んだ奴等が、喧嘩とも呼べないただ一方的に殴られる俺を冷めた目で、しかし怒りを込めて睨んでいた。いつの間にか抜かしていた俺より身長の低い兄貴が、俺をひたすらに殴る。顔、腹、肩、腕、足。
 兄貴が俺に当たるのは良くて、俺は兄貴に当たるのはダメなのかヨ。
 もう、死にたい。それなのに死ぬことを許さない世界がただひたすらに憎たらしい。

 そんな中。
 俺は再び出会う。



「……あ?」
「ん……?」



 彼女に、出会う。
 ライトグリーンの髪の、今度は一卵性異性双生児ではない、天才の弟の姉でもなんでもないただの鉄の個性を持った『鉄我 星奈』に、出会う。



.

59:マメツキ◆A.:2017/08/01(火) 23:45 ID:fVg


 以前の鉄我 星奈との中学校のテラスでの偶然の出会いから数ヵ月。雄英入試ももう目前に迫っているこの寒い季節。猫好きや甘味好きと言う共通の『好き』を持った俺たちが打ち解けるのは速かった。星奈チャンはどこか懐かしい感じがすると彼女にぽつりと言ったのは昼休み、テラスで持ち寄ったスイーツなどの食べ比べをおこなって居たときだった。



「……何て言うか、私も分かる。暁は、すごく懐かしいんだよね」
『俺も俺も。なんでだろーネ』
「さぁ。あ、あっ、あっ! 暁おまっ、ショートケーキ食べた!? 食べたな!? 私のとっておき!」
「俺の好物はショートケーキだからァ。目の前に置いとくのが悪い」
「おまっ、暁、っんバカ!」
「うわっ! 俺のマカロン!」



 急速に減っていく机に大量に乗ってたホールケーキやクッキー、飲み物などの甘いもの。しばらくそんな感じで、不意に星奈チャンが手を止めたので、俺もピタリとゼリーに伸ばしかけていた手を止めた。



「そう言えば、暁は高校どこいくの?」
「雄英ィ。兄貴落ちたし、見返したいし、それ以前に自分を省みずに助けるヒーローってかっけェジャン?」
「へー、暁は雄英なんだ。一緒だね。体作りは一年生からやってるよ」
「え、マジで? 俺も全部一緒」
「やば、シンパシーやば」



 ニッ、と笑って見せる星奈チャンに「一緒かァ」と笑うと「受かったらだけどね」と意地悪く笑われた。まあ、その前に。



「多分俺、雄英受けるっちゃ受けるけどォ、受かったら多分家勘当されると思うんだよネェ」
「え、なんで?」
「ほら、兄貴が落ちたジャン? 俺が受かると兄貴のやつ絶対癇癪起こして親に勘当しろ! とか言うからァ。親も多分勘当したがってるからすると思うんだよネェ」



 もし受かったあとどーしよっかなァとゼリーをパクつきながら思案していると、「ウチ来れば?」と星奈があっけらかんと言い放つ。ゼリーが変なとこ入って蒸せたのは多分当たり前だ。



「ウチ来れば? って、簡単に言ってくれちゃってこの絶壁女……。家だけシェアハウスってことォ?」
「……いや、違うけど。ホントは今殴りたいけど、この話終わってからね。私めっちゃ我慢してるから」
「星奈チャンの魅力は胸じゃなくて足じゃナァイ?」
「ホントにぶん殴りたいけどあとでね」



 ここまで煽って殴りに来ないのは、わりと大事な話らしい。手に持っていたゼリーカップとスプーンをテーブルに置き、真面目な雰囲気を作る。



「あのさァ、シェアハウスじゃないってどういうことォ?」
「……あっ、シェアハウスっちゃシェアハウスなんだけど、そうじゃなくて、えーとね」



 必死に言葉を捻りだそうとする星奈チャンに、俺の頭にぽんと全く別の、俺の願望と言うかなんと言うかな案がひとつ浮かび上がるも、これは夢を見すぎかと思いつつ、ふざけるように口角を釣って言ってみた。



「なァに? もしかして婿に来いとかァ? それなら俺も途方にくれずに済むケド」
「あ、そうそれ」
「は?」



 本気で唖然として、頬杖をついていた顔をぱっとあげる。あんぐりと開けた口をした俺はさぞや滑稽だろう。さらりとなにいってンのこの子。
 星奈チャンはハッとしてから意味を理解しぷいっと顔を背けて腕をあげて「見ないで見るな」と呟いてるけど、赤い耳が覗いてるから、本気だろう。そこに思い至って、体温が急激に上昇したのが分かる。



「あのさァ、不意打ちとか……不意打ちとかやめてくんない……?」
「なんで二回言うのよ、バカツキ殺す。で、どうなの」
「……ここまで来て言えとか言うかヨ、フツー。……マジでわかんねェの? 星奈チャン」
「……分かるけど、聞きたい」
「乙女かヨ……しゃーねェな」



.

60:マメツキ◆A.:2017/08/02(水) 00:36 ID:fVg




「うちの中学からじゃ、あのヘドロ事件の爆豪? って奴と緑谷ってのが雄英行くみてェ」
「どっから仕入れたのその情報」
「先生に聞いたんだヨ」
「教えてくれるんだ……」



 以前のプロポーズ紛いから数日。いつもの場所に集まるくせにギクシャクしていた時期からようやく抜け出し、うちの中学から雄英行く奴を先生に聞いてきた。爆豪、個性が『爆破』の過激な人物だ、最近は落ち着いてきているらしい。幼馴染みで無個性の緑谷と両とも酷く仲が悪いらしい。
 爆豪とは去年同じクラスだったらしい。先生に聞いた。ほとんど授業サボりまくりだったからなぁ……。

**

 そしてやって来た雄英一般入試当日。俺と星奈チャンは二人並んで校門を潜った。



「でっか雄英流石!」
「せっちゃんホント語彙力無いよネ」
「うるさい」



 俺はというと。入試を受けるまでが大変だった。親兄弟から猛反対を受けたのだ。出来損ないなんかに、お前に掛ける金が無駄だ。そんなことを言われても、彼らの目の奥に「こいつがもし受かったら……」と言う恐怖が映っていた。そこに俺が「勘当したけりゃしたらァ?」と挑発すればそのあとは売り言葉に買い言葉。入試結果を待つまでもなく勘当された。そういうわけなので、早いかとも思ったが星奈チャン家に挨拶に行くと泣くほど大歓迎された。実際泣かれた。ご両親の薙斗さんと聖さんからダダ泣きされながら娘をよろしくされ、なんか新築の家まで用意してくれるそうだ。金のことを相談すると全部受け持ってもらえるらしい。星奈チャンのご両親人気ヒーローでびっくりした。そりゃ金あるわ。俺も個人資産あるけど。



「それでは志賀さん、勘当された今のお気持ちをどうぞ」
「とても清々(せいせい)した清々(すがすが)しい気持ちです」
「クソ良い笑顔!」
「褒めんなヨ」
「褒めてないから」



 半目になって呆れ、スタスタ歩き去る星奈チャンの後ろ姿を眺める。彼女のハーフアップの髪を括っているリボンは俺の髪と同じ紺色。俺のピアス空けまくりの左耳で一番シンプルなピアスの色は、星奈チャンの髪の色。左の薬指の指輪をあまり見せないように学ランのズボンのポケットに左手を突っ込んで俺もそのあとを追った。後ろで「どけデク!」とか聞こえたが誰の声だろうな。


**


 プレゼント・マイクの説明会も終わり、実技がもう始まっている。俺の座る席が爆豪の隣だったことに驚いたが、それ以上に驚いたのは爆豪が俺を覚えていたことだ、多分だが。あのとき「……は?」と口をあんぐり開けていたのを見た、記憶力良いんだろうな。多分俺たちが受けることを知らなかった様だ。案の定人見知りを発動した俺は「ん」と頭を下げただけに終わる。隣の星奈チャンに無愛想だとくつくつ笑われたが初対面にどう接すれば良いか全然分からん。とりあえずげんこつ落とした。
 とりあえず、入試に集中しようと俺は背後に迫った3P敵を重力で押し潰した。65p目だ。敵pが65、この入試はヒーローの素質を見るためのものだろう。なら、敵を倒すだけでなく救助も必要な筈。下の人に当たりそうだったビルの落下物を消し飛ばしたり、別個で人を抱き抱えて避けたりと大忙しだ。そこで現れたお邪魔虫の0p敵。クソでかい。



「うわあああっ!?」
「なんだあれ!? でかすぎだろ!」
「逃げろ逃げろ!」



 逃げ行く人の波に逆らって、転けてる奴に手を貸したりしつつ0p敵のところに辿り着く。トントンと靴の足先を地面に叩き付けたり肩を回したりしていると、後ろから叫び声が聞こえた。



「おい! アンタなにしてんだよ! 逃げろよ!」
「……あ? ああ、俺? ダイジョーブ大丈夫ゥ、すぐ」



 終わるからァ。そう呟いて0p敵を睨むと、ぐしゃごしゃとえげつない音を立てながら、ぺしゃんこに潰れた0p敵。少しふらつきもするが、全然動ける。さて、そろそろ終わりか。

 そこで終了の合図。あとは結果を待つのみだ。


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61:マメツキ◆A.:2017/08/02(水) 01:12 ID:fVg


 一週間後、鉄我邸にて。新築は四月に入ってかららしい。星奈チャンや俺、薙斗さん聖さん四人とも各々そわそわしながらリビングにいた。
 俺と星奈チャンの筆記はギリギリ合格点。お互いA判定もらってたからここは心配してない。あとは実技。俺は確実通ってると思うが、星奈チャンは分からない。教えてくれないから。



「私ちょっとポスト見てくるわね!」



 意気揚々と唐突に出ていった聖さんに返事も出来ずに見送ると数秒後来たのゲシュタルト崩壊起こしながら二通の手紙を持って入ってきた。



「雄英から! 手紙!」
「うわあああああっ、緊張する!」
「俺まず自分の部屋で見ます、もし落ちてたら落ちてるとか薙斗さんと聖さんに見せたくねェんで」
「二人とも自分の部屋で! 部屋で見てきて! 心臓持たない! どうしよう薙斗!」
「お、おおおお落ち着け聖! 深呼吸だ! そら、ひっひっふー、ひっひっふー」
「「それじゃない」」
「落ち着くのはもしかして俺か!?」



 どたばた騒がしくも暖かい風景を横目に、俺は与えられた広い自室で封を切る。雄英卒の薙斗さん聖さんもこうだったのだろうか。中には小型プロジェクター。ここで合否が、決まる。



「……頼むヨ」
『私が投影された!』



 しょっぱなオールマイトとかビビった。どうやらオールマイトが今年から雄英教師になったらしい。うわ、うわーテンション上がる。



『素晴らしい成績だったよ志賀少年! 敵ポイント68p、そして聡明な君なら気付いていただろう! 我々が完全審査性のレスキューポイントが50! 総合118pと雄英高校トップの成績で、合格だ!』
「っしゃあああああああ!」



 大声で叫んだあと、ダダダダと荒々しく階段を駆け降りてリビングのドアを開けて雪崩れ込むと、薙斗さんが腕を広げて構えていて、そのまま俺より数センチ身長の低い彼に突っ込んだ。薙斗さんはグッと俺を抱き締めて叫ぶ。



「合格おめでとう暁!! お前の叫び声は下まで聞こえたぞ!」
「うわああああっ、うわ、うわー! ヤベェ超嬉しい受かったァ! 嫁も出来たし合格出来たしナァニ!? 俺もう死ぬのォ!? クソ嬉しいあざっす薙斗さん!」



 うわー言い続けて薙斗さんから離れると、星奈チャンが飛んでくる。「受かった、受かったぁ……!」と泣きそうになって笑ってるので俺も笑った。



「晩飯食べにいくぞー! 合格記念だ! 焼肉だー!」
「マジかあざっす!」
「焼肉ー!」
「薙斗が食べたいだけなんじゃ……」



 血縁関係のある家族とこうまで賑やかに騒いだことはなかった。血が繋がっている訳でもない俺を暖かく迎え入れてくれた薙斗さんと聖さんがとても好きだ。愛されたことのなかった俺が、報われた気がする。


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62:マメツキ:2017/08/02(水) 11:21 ID:fVg

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志賀くんです

63:マメツキ◆A.:2017/08/02(水) 12:40 ID:fVg



 俺は雄英のA組で既に席についていた。一人だけ出席番号も関係無く一番後ろの一人席。これは辛い。
 緑谷や丸顔と教室に集まるなか現れた薄汚い男、相澤先生。担任らしく、みんながみんな担任!? と目を剥いていた。そして渡される体操服とグラウンドに来いとの指示。
 早速グラウンドに出ると、個性把握テストを行うと告げられた。丸顔が「入学式は!? ガイダンスは!?」と聞くと、彼曰くそんな悠長なことしてられないよと告げられた。マジか。



「雄英は自由な校風が売り文句。そしてそれは先生側もまた然り。中学の頃からやってるだろ? 個性禁止の体力テスト」



 なるほど。それで個性を把握するのか。爆豪がデモンストレーションで叫びながらボールを投げると700m超えが出て、みんなが面白そうだのさすがヒーロー科だのと騒ぐ。ただ、そのどれかの言葉が相澤先生の地雷を踏んだようで、最下位は除籍処分になるらしい。どうやら雄英はこんな風に困難をぶつけてくるらしい。いい性格してるわ。

それから。

 把握テストも無事に終わり、最下位除籍は合理的虚偽だと告げられ、ショックを受けているクラスを見た俺。今はというと、新築一戸建ての家のソファででろんとだらけていた。



「……あー、疲れたァ」
「お疲れー。A組入学式出てなかったねー、何かあったの?」
「B組出たのォ? 俺んとこそんな悠長なことしてられねェっつって個性把握テストやってたわ」
「うわー」



 ドン引きした星奈チャンが持ってきたケーキに飛び付くと、私のとこの先生はすごく親身だったよ、と星奈チャンに言われたので羨ましいと返しておいた。



**



 翌日からの通常授業。とても普通に必修科目と英語の授業。昼は大食堂で飯。とりあえずランチラッシュが最終的に白米に落ち着くよねとか言ってる隣でケーキ盛り合わせ頼んだらすんごい残念そうに見られた。また白米食いに来よう。

そして午後の授業はおまちかねのヒーロー基礎学。今日の講師はオールマイトで、戦闘訓練をするらしい。コスチュームを渡され、グラウンドベータに集合だと言われた。

 俺のコスチュームはとても個性に寄せてある。目に見える範囲にしか発動出来ない個性、だからスコープと言うかゴーグルを身に付け、黒い手袋を装着し、コートにワイシャツ、あとベルトポーチ。とてもシンプルだ。
 さて、始まるのか。ヒーロー基礎学。



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64:マメツキ◆A.:2017/08/03(木) 01:15 ID:fVg



 一クラス21人、奇数なので一人余る。今回、初の戦闘訓練は屋内対人戦闘だった。ツーマンセルでヒーロー、敵に別れてビルでの演習。核(ハリボテ)を敵がビルのどこかに隠し、ヒーローが探す。戦闘になってテープを巻けば巻かれた方の負け。
 ここで冒頭でも言った奇数人。一人余る。オールマイトはそれを見越していたようで、俺にB組に入ってくれと言った。拒否る理由もなかったのでこくりと頷く。
 第一戦、ヒーローチーム緑谷、麗日VS敵チーム爆豪、飯田。



「っはー、あの相性最凶最悪の幼馴染み同士が対戦相手とかやべェこえェ。オールマイトせんせェ、これやべェことンなるんじゃナァイ?」
「ん? 志賀少年、君も二人を知ってるのかい?」



 ぎゅるんと方向をモニターから俺に変更したオールマイト先生が首をかしげる。……君も、ってことはなにかしら、どちらか二人と繋がりがあるってことか。あーあー通じるとかバレたらヤバイんじゃねェ? とか眉を潜めるも、「まーネ。中学一緒だったし」と手をひらひらさせる。正直あまり関わりはなかったからよく知らねェけど。
 隣の赤髪が「中学での爆豪と緑谷ってどうだったんだ?」と俺に質問し、視線が俺に集まった。興味津々かヨ。



「んー、つっても、俺そんなに詳しく無ェんだよなァ。緑谷とは同じクラスになったことねェし、爆豪とは二年の時に一緒みてェだったらしいけど俺授業サボりまくりで面識なかったし、成績が学年トップしか取ってなかったのとプライドエベレストってくらァい。でもまあ、噂になるぐらいには知ってたヨ、有名だったしネ。関係最悪最低ド底辺、仲の悪すぎる幼馴染み」
「ド底辺……。はー、やっぱり爆豪の奴色々やべーんだ。入試一位は伊達じゃねーな!」
「はーん、爆豪一位だったんだァ。初めて知ったワ」



 とまあこんな感じで会話も赤髪、切島とした。爆豪たちの訓練も終わり、次は俺たち。葉隠、尾白VS俺、轟、障子。障子の六本腕かっけェ。戦闘用のビルに行くと、敵チームの二人は既に隠れているようなので、意気揚々とビルに入ろうとしたら轟に止められた。



「なァに? ツートンカラーの火傷チャン」
「……外出てろ、危ねぇから(火傷チャン……)」
「なんかあんのォ?」
「……おう」
「じゃあ任せた」



 あっさり身を引くと、ちょっと二人とも目を見開いて驚いていた。……ひどくナァイ? 争ってめんどくさくなるのは嫌なんだヨ俺。
 俺がビルを出るのと入れ違いで轟がビルに入り、その瞬間ビルがぱきんと凍る。障子の隣で「涼しい」と呟くと障子に変な目で見られた。

 結局俺達の完全勝利で終了。味気なかったな……。



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65:マメツキ◆A.:2017/08/03(木) 02:01 ID:fVg

 翌日、学校への登校中、門の前で人だかりが出来ていた。聞こえてくる内容を聞く限りオールマイトの授業の様子を聞きに来たんだろうな。

「うわー、やだなー。記者わんさといるじゃん」
「オールマイトいる世代に雄英入った宿命じゃネ? ……俺もわりと困るケド」
「ああ、あんたの元実家大手製菓会社取締り代表だからね。知ってる人は暁のことも知ってるんじゃない?」
「こーいうこともあんのォ? あーもーどうしよォ辛い死にたい」
「生きてよ私が困る」
「うん俺生きる」

 そのまま二人で、俺は顔を見られないようにその場を駆け抜け、校舎に入る。雄英バリアーなるものが門に設置されているので入ってこれない筈。

「あー冷や冷やしたァ」
「アンタは本当にね」
「ん」

 うんざりしたように頷き、下駄箱手前で俺たちはまた放課後に、と別れたのだった。
 教室に入って席につくと、相澤先生が入ってきたのでシーンと静まり返る教室。今朝のホームルーム、先生が言うに学級委員を決めてもらうらしい。普通科なら雑務って感じで誰もやりたがらないが、ヒーロー科での学級委員長は集団を導くって言うトップヒーローとしての素地を学べるからなっておいて損はない。現にA組の面々も諸手をあげて主張している。
 俺は別にやりたい訳でもないし、導くって言う素地はまた今度機会があるだろう。やりたい訳でもないが。
 飯田が挙手ではなく投票で決める方が良いと自分自身腕を聳え立たせながら告げる。やりたいならやめときゃ良いのに。蛙吹、もとい梅雨ちゃんが短い期間で投票もクソもないわ、みんな自分に入れると飯田に言うも、飯田はそれで複数票とった方がよりふさわしいと言い張るので投票となった。とりあえず面白いから飯田に入れよ。

**
 厳正な投票審査の結果、緑谷、八百万が委員長になった。
 そして昼。俺は食堂にて以前「白米!」と言い張るランチラッシュの目の前でケーキを頼んでしまったのでとりあえずハンバーグ定食大盛りを頼んだ。リベンジというかなんというか、相手も俺を覚えていたようで、「味わってね!」と言われる。とりあえずサムズアップしたあとケーキ盛り合わせ頼んだら気前よくケーキ一切れサービスしてくれた。ランチラッシュいい人!
 片手のトレーに大盛りハンバーグ定食、もう片手にケーキ盛り合わせのトレーを抱えながら席を探していると、切島と爆豪を発見した。見た感じ、爆豪が一人で食べてたところに切島が来たってところか。

「切島チャン、ここあいてんの?」
「お、志賀か! 空いてる空いてる!」
「邪魔すんネ」

 とりあえずハンバーグ定食を机に起き、席についてからケーキ盛り合わせを置く。切島の真ん前で俺の斜め前に座る爆豪はすごい顔して俺のこと睨んで来たけど、気にせずに早速ケーキに手をつけた。

「一番に手ぇつけんのがケーキかよ! 定食だろ普通!」
「俺も思った、自然と手がケーキの方行ってわりと俺今びっくりしてる」
「男子高校生にケーキ!」
「男子高校生だってケーキ食うケドォ!? ってかもう日本人の主食は甘味で良いと思うんだよネ、スイーツ万歳」
「甘党!」
「糖尿病が心配」

 隣でげらげら笑う切島を気にせずハンバーグ定食ほったらかしでケーキパクついて、不意に爆豪のどんぶり見たらラーメン真っ赤でビビった。思わず「うーわ赤い、赤い赤い赤すぎる」と呟くとあぁ!? と凄まれた。こわ。

「それ辛くナァイ? 普通に食ってるケドぜってェ辛いやつだロ」
「うるせークソ甘党」
「とても正論」
「切島チャンが裏切った、ダト……?」
「ぶはっ! はははっははははは!」

 笑いすぎじゃね? とかジト目で切島を見つつ、食べ終わった盛り合わせの皿を端に寄せ、ハンバーグ定食に取りかかる。大盛りでもちょっと足りないかも知れない。そこで食べ終わった爆豪がガタッと席を立ち、颯爽とどっか行った。

「アイツマジ無愛想だわー」
「それナー」

 げらげら笑いながら食べ進めると、皿がいつの間にか空になっていたので立ち上がると切島にまた教室でなーと見送られた。これが友人……!
 このあと教室で一人でホールケーキ食べてるとどっか行ってたらしい爆豪からすごい目で見られ、切島に爆笑されて「一切れくれよ!」と笑いながら言われたのであげた。もちろんホールケーキは完食した。満足満足。

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66:マメツキ:2017/08/03(木) 09:45 ID:fVg

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星奈チャンです

67:マメツキ◆A.:2017/08/03(木) 10:41 ID:fVg



 今日の昼になにやら放送があったらしいがケーキに夢中だった俺は全く知らず、どうしてか緑谷が非常口うんたらかんたらの飯田を委員長に推薦した。いいんじゃね?

 翌日の昼。今日のヒーロー基礎学だが、相澤先生とオールマイト、そしてもう一人の三人体制で見ることになっにらしい。何をするのかと言うと、災害水難なんでもござれ、レスキュー訓練。
 訓練場に着くと、スペースヒーローの13号に増えるお小言をいただき、個性は人を助けるためにあるのだと言われ、少し感動する。13号……かっけえ。
 以上! ご清聴ありがとうございました! と紳士的に礼をすると、ステキーぶらーぼーと声が上がる。かっこよかった。
 しかし、相澤先生が広場の方を見て、叫ぶ。



「一かたまりになって動くな!」
「え?」
「13号! 生徒を守れ!」



 命を救える訓練時間に俺らの前に現れた。



「なんだありゃ!? また入試ん時みたいなもう始まってんぞパターン?」
「ちげェ、切島、あれは……」
「動くな! あれは敵だ!」



 プロが何と戦ってんのか。何と向き合ってんのか。それは、途方もない悪意。
 黒い霧から現れた大勢の敵。侵入者用センサーはあるものの動かない。それは敵にそういうことができるやつがいると言うこと。バカだがアホじゃない。用意周到に画策された奇襲。轟曰く。
 そして先生が飛び出した。あの人強いみたいだから。俺がぼうっとしてると腕を引っ張られて避難だ、なんだと言っていたが、次の瞬間には俺は黒い霧に体を包まれ、その場から姿を消した。
 みんなが騒然とするなか腕を引っ張った本人、切島が黒いもや霧に怒鳴る。



「なっ、てめ、志賀をどうした!?」
「彼は第一にこの場から離脱していただきました。以前拝借した書類で見ましたが、この場では彼の戦闘能力はどうやら群を抜いているようなので、一番の驚異と判断させていただきました」
「はぁ!? 訳わかんねえ!」



**

 俺が飛ばされた場所は倒壊ゾーンだった。うじゃうじゃいる敵に溜め息を吐きながらなんで俺こんな戦いにくいとこで一人なのとか呆れながら拳を握ると、後ろでドサドサっと誰かが来る音がした。切島と爆豪である。



「あれェ、爆豪チャンに切島チャン? もしかして飛ばされちまった?」
「……俺たちだけじゃねえ、他もだ」
「とりあえず、この敵どうにかしねぇとな!」



 そうして始まる対人戦闘。訓練ではない。本物の戦闘を俺たちは開始した。


.

68:マメツキ◆A.:2017/08/06(日) 23:22 ID:B5.



 粗方敵を倒した所で、爆豪と切島が先生のところに駆け付けるようなので着いていくことにした。
 三人で瓦礫を駆けながら目的地へと向かう。とりあえず、俺の個性、テリトリーの応用であるテレポートをこの時すっかり失念していた。俺のばか野郎。
 その時気付かずに呑気に二人の横を走っていた俺は、不意に切島に問い掛けられる。



「なあ、志賀の個性って結局なんなんだ?」
「ん?」
「おいおい睨むなよ不良みてぇ」
「目付き悪いから勘違いされるケド睨んでねーヨ。それに元ヤンにンなこと言っちゃいけません」
「え、お前中学時代元ヤン!?」
「中三の始めまでナ。昔の話だから掘り返すのやめろヨ。ブン殴るぞ」
「滲み出る元ヤン」
「やめろっつってんだロ、っの馬鹿がヨ」



 切実な顔で返すと切島に引き気味に頷かれた。引くなよ泣くぞ。とりあえず、個性はなんなんだってことだよなぁ。



「あー、俺の個性だっけ?」
「おーそうそう! 動かずに空間爆発させたりねじ伏せたりしてるからさー検討つかねんだよな!」
「まァ使い道幅広いしナ、俺の個性は。俺の個性ね、『絶対領域(テリトリー)』っての」
「テリトリー……縄張り的な?」
「ちょっと違う。俺のは、俺が視認してる、もしくは理解している場所で自由自在に無双出来ンだヨ。例えばちょっといじくって空間を爆発させたりとか酸素奪ったりとか重力重くしてプレスしたりとか。重力無くして体軽くしたりとか空間ねじ曲げてものともの入れ替えたりネ」
「無敵かよ!」
「いや、視界塞がれたら終わりだからァ。遠くで操るには遠くまで見えてないとダメだしィ……あ」



 ようやくここでテレポートを思い出した俺は切島の腕を掴んで先を行く爆豪の首根っこを捕まえそのまま広場に飛ぶと爆豪から叱咤の嵐。一言いえ! だの最初からそうしろ! だのとめっちゃ罵られた。とりあえず黙らせるために拳骨した俺は悪くない。めっちゃ怒鳴られた。やかましい。



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69:マメツキ◆A.:2017/08/13(日) 17:52 ID:xhA


 走る途中、横から俺たちに向かってくる塊を視界に止め、咄嗟に爆発させて軌道を逸らす。
 見えた姿は、女。とりあえずその女には見覚えがあった。爆豪もそうらしく、「お前、」と目付きを鋭くさせた。



「……クソ女」



 チッと舌打ちして、不思議そうな顔をする切島とぐずる爆豪を先に行かせる。標的は恐らく俺だ。目にハイライトの無い、黒髪のアホ毛の飛んだショートカット、世間一般で可愛いの部類に入る顔。中学が一緒で、星奈チャンと出会ってからからっきし絡んで来なくなった、欠片も興味の無い女。時雨 都。多分分類するなら嫌いな部類だろう。
 彼女はギッと俺を睨む。その瞳に蕩けるような舌が痛くなるような甘い熱があるように思えて仕方ない。思わず身震いしたのはご愛嬌だ。



「……久しぶりね、志賀」
「もう一生見ねぇ顔だと思ってたんだが、吐き気がするわァ。てめェ、敵に堕ちたかヨ」
「そうなるのかしら? まぁ当然よね、二回も同じこと繰り返してるんだもの。せっかく、今回は『無双』の鉄我 星奈が居ないからチャンスだと思ったのに、この世界に存在するなんて」
「なに言ってんだ」



 はー、と溜め息を吐いた時雨は熱の籠った視線を俺にちらりと向けて、「また盗られた」と爪先の石を蹴る。そして再び俺を見てきょとんとして告げた。



「……あれ、前世の記憶思い出して無い……? じゃあ、二人がまた出会ったのは、運命だって言うの……!?」
「てめェ何言ってんだ……」



 本格的に気持ち悪くなって身動ぎすると、時雨が「動かないで、暁!」とその瞳に俺を写す。名前を呼ばれて逆立ってよだつ身の毛に、あとずさると時雨がどさりと何かを放った。



「……は、」
「暁のだぁい好きな、鉄我さんだよ」



 大声で星奈チャンの名前を叫びながら、彼女を抱えて距離を取る。意識は無い。呼吸はある。制服のまま。昼休みにでも拉致ったかこいつ。



「はあぁ、欲しい、欲しいの。暁が、欲しい」
「俺はお前みてェなブスいらねェヨ!」



 星奈チャンを腕に横抱きにして抱えながら空気を固めて銃弾を撃つ。彼女の肌にかするそれに舌打ちして、蹴りを食らわすと、時雨は星奈チャンを避けて俺の鳩尾をその手に握る剱で貫通させた。ずるりと引き抜いた血のつくその剱を舐める女はもう狂気に染まっていた。



「がっ、」
「ふふ、熱いなあ、美味しい……」
「時雨、てめ、」



 ふと、星奈チャンが目覚めた。俺の存在に驚いたようだが、時雨の剱を見て目の色を変えた。俺から飛び退いた星奈チャンは鉄のガントレットを作り出し、殴り掛かった。



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70:マメツキ◆A.:2017/08/15(火) 00:59 ID:xhA


 星奈チャンも時雨に見覚えがあったのか、腕を振り下ろすと同時に怪訝な顔で声を張り上げた。



「何で、私ここに居るわけ!? って言うか、時雨さんあんた敵にっ……!」
「うるさいうるさいうるさいうるさい! この鉄女が! 高校に入ってから急に胸が大きくなったからって良い気になって……!」
「ねぇそれ今全然関係無くない!? 関係ないよね!?」



 時雨の振るう剱を飛び上がりながら避けた星奈チャンはバッと腕で胸部を隠す。顔が真っ赤だ超かわいい。流石俺の嫁。
 脳内わりとフルスロットルしてるが、俺は今腹を押さえて悶絶中だ、風穴空いてんだぞコルァ。とりあえず個性で傷の進行を止めてはいるが、腹を貫通してるからヤバイ状態。痛くて死にそう。正直泣きたい。



「はあぁ、鉄我さんと無駄なことしてたから、もうおしまいにしなきゃ……」
「はぁ!?」



 そう眉をしかめた星奈チャンに時雨が入り口の方を指差せば集まったプロヒーローたち。誰かが読んでくれたのだろう。よかったよかった。
 そう気が緩んだのも束の間、時雨が再びターゲットを俺に絞った。



「最後にもう一回!」
「……!」
「っだめ!」



 俺に向けられた手のひらに危険を察知した星奈チャンが俊敏に俺に飛び付いて、なんの個性かは知らないが時雨に吹き飛ばされる。
 ぽーんと吹っ飛ぶ俺たちの最後に見た時雨は歪な笑みを浮かべていた。さて、勢い任せに飛ばされて入り口まで宙を浮きながら空中散歩してるわけだが、これ高さかなりあるから落ちたら大事故だぞ。やべーやべーと考えるうちに、俺の視界に入る錆びた赤。あ、腹……。
 宙を舞う血を目撃した俺は、そのまま意識が飛んでしまった。



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