見たことない場所だ…どこや…
スマホも圏外…山って言っても
家からそう遠くないのに…なんで?
こちらの小説は小説(笑)というレベルです。
また!
東方2次創作、オリ主、オリジナル設定を含みます。
それらが嫌いな方は見ないことをお勧めします。
チート設定はなしです。おそらく。
原作に沿った小説にしていくつもりですが、原作未プレイ&少しの書籍のレベルです。
それでは!
その時は突然だった。予期せぬ事態。そのものだった。目の前が真っ暗だった。
稲田久遠、17歳。名前と母子家庭以外は普通な高校生。よく協調性がない、自由すぎると言われます。
この自由さは自他共に認める母さん譲り。
まあ、母が父と離婚したのは3歳の時で、
それからは父と会ったこともないし、会おうとも思わないから母に似るのは仕方ないことだと思う。
そんなに自由かな…と思いながら家に帰った。部屋にこもり、何時間かスマホをいじっていた時、下から母さんが私を呼んだ。
「久遠ー?夕飯できたよー」
眠くなりつつある体を起こし階段を下ると、
もう食器が全て置いてあったので、スマホをいじるのをやめ、席に着いた。
「今日トンカツ?」
キャベツと一緒にさらに置かれた揚げ物にソースをかけながら聞くと、
「そうそう、お肉安かったの。好きでしょ」
と、いつも通りの明るい声が聞こえた。
「好き」
一言、そう答えた。
「ごちそーさま、先風呂入っていいよ」
「そう?じゃあ、そうするか…」
23歳で結婚し、私を産んだ母さんは、3年後
父さんと離婚してからずっと女手一つで私を育ててくれた。
母さんとは仲が良いし、このまま仲良くしていきたいな…
「行ってくる〜」
朝食を食べ終え、靴を履きながら母さんに言うと、どこか寂しそうな顔で微笑んでいた。
「行ってらしゃい」
バタン、とドアが大げさな音を立てた。
木造ではないが、築10年程のアパートのドアだから音が鳴ること自体はおかしくはない。
カンカンと錆びた階段が鳴る。
珍しく静かな日で、いつもの騒がしさを取り戻したのは教室に入ってからだった。
いつも通り、昨日見たテレビの話をしたり、次の時間割を聞いたり…何も変わらないはずなのに、朝からずっと、なんとなく、
落ち着かなかった。
先生が急用だから、と私を呼んだのは空がよく澄んだ5時間目のこと。嫌な予感を胸に残しつつ、教員室へ先生の後に続く。
先生に受話器を渡され、耳に近づける。
「稲田夏江さんの娘さんでしょうか?」
聞いたことない声だった。すごく低い、男の人の声。
「はい、そうですが…」
すると、電話の向こう側の人は、落ち着いた声で、ゆっくりと、私に言った。
「落ち着いて聞いてください。これから言うことに取り乱すことなくお願いします。」
怖い。何のこと?てか誰?
「はい、あの、どなたですか?」
ああ、そうかと電話の向こうで小さな声がした。
「すみません、私、東町総合病院の医者の藤川と申します。単刀直入に言うとですね、
お母様がお倒れになりました。」
冷たく言い放たれた言葉に世界の音が消えるようだった。目の前は真っ白、音も聞こえない。
気がつくと呆然と立ち尽くし、持っていたはずの受話器を見ると電話線が伸び、足元まで伸びていた。
あぁ、そうか、ショックで受話器を落としてしまったんだ。
まずは母さんが心配。震える手で受話器を拾った。
「あ、あ…の母さ…母は…」
泣きそうになって震えた声で聞いた。
「今、検査をしているところなのでどうとは言えないですが、かなり…危険です。」
涙が溢れて止まらなかった。
何故朝会社に行く母を呼び止めなかったのか。自分が憎くて仕方なかった。
視界が冴えぬままだったが、先生に病院に連れて行ってもらうため、ゆっくりと車に乗り込んだ。
病院へ着くと先生は母さんと私を2人にしてくれた。
よくある6人部屋の中の窓際で、日が差し込んでいた。保健室のような薬品のような匂いの立ち込めた部屋で母さんは寝ていた。
母さんはただ寝ているだけのように見えた。
意識がないとだけ説明されたが、実感はない。
多分、私がいまどれだけ呼びかけても無駄なんだろうな…
私はしばらく、仰向けで眠る母さんを見ていることしかできなかったが、毛布が少しずれているのを見つけ、そっと毛布をかけ直そうとしたとき、母さんの手に私の手が触れた。
今まで倒れるほど働いていたのに気づかなかった自分を考えると涙がまた溢れた。
涙を拭いてもといた椅子に10分ほど腰掛けていると、静かにドアが開いた。
ナース服を着た年配のおばさんだった。
そのおばさんは私の前に来て、
「先生が呼んでいるわ、今すぐこれるかしら」
そう聞いた。
「はい…」
正直、話を聞くのがとても怖い…。
私は貴重品だけをバッグに詰め、母さんに行ってくると小さく囁き、部屋を出た。
「はっきり言って、かなり深刻な状態です。
お母さんが体調不良を訴えたりしたことはないかな。」
黒縁のメガネをかけたおじさん先生は白髪混じりの頭をぽりぽりとかいて聞く。
「一度も…」
「そうか…お母さん、一応ただの疲労ではあるんだけど…かなり厳しくて、今のところは眠ったままになってしまうんだ。これから…目覚めなければ、脳死の可能性も…」
それからも長々と説明されたが、先生の声はほとんど聞こえていなかった。
疲れてたなら言って欲しかった。手伝えることがあったはずだった。
無心になりつつ部屋を出ると雨が激しく音を立てて降っていた。
時計がちょうど下校の時刻を指していたので、付き添ってくれた先生は車で送ってくれた。
道中、何も話さず、車から降りると会釈だけして家に入った。
次の日、憂鬱になりながら教室の扉を開けた。
クラスメイトの視線が一気に集まって、先ほどまでの話し声は一切聞こえなかった。
重々しい雰囲気が一瞬にして充満した。
逃げられるのならば今すぐ逃げたかった。
今まで感じたことのない空気に恐怖を感じて、後ずさりしてしまった。
その時、誰かにぶつかった。
「っ!小春…」
振り向くと、友達、遠野 小春が私の肩を軽く
抑えて、倒れないようにしてくれていた。
はっとし、小春にお礼を言い、体勢を立て直すと、
「いいけど、あんた大丈夫?…できることあったら言ってよ!あんた何でも隠すんだから!」
小春は少し頬を赤く染め、照れているようだった。
心配してくれていることを知って、また少し涙が出た。
そっと涙を拭って小春を見て、改めて思った。
友達でよかった。
小春は、その日一日隣にいてくれた。
心強くなって、とにかく感謝しかなかった。
帰りも流石に悪いからいいと言ったのに、
無理してでも久遠ん家まで付いてくから!
と言われ、現在に至る。
「ねぇ、ほんとに平気?今更だけど…」
すると、小春はわざとらしいほどに笑顔で
「わたしがいたいからここにいるの!悪い?」
呆気にとられた。小学校からずっとつるんではいたが、こんなに心強さを感じたのは初めてだった。
「ありがとう…」
小春がホッとしたような笑みを浮かべたので、嬉しくなった。
「帰ろうか。」
そう言って小春が私の手を掴み、歩き出したとき、急に立ち止まった小春にぶつかった。
「小春?どうし…あ?」
目を疑った。小型のトラックがこちらに向かってくる。まだ少し距離があったが、かなりスピードが出ていて、ぶつかれば命の保証はなさそうだった。
逃げなければ。でもなんで?
あ、足が…動かない…
小春もかなり驚いていて、冷静ではなさそうだった。
私が動かなきゃ…急にそんな感情が湧いてきた。
そのとき、ギィィィ‼という嫌なタイヤの音とともにドンっと鈍い音がした。
何かと何かがぶつかる音だった。
目を開けると、小型のトラックは電柱に激突し、電柱は折れ、トラックの前には女の人が倒れていた。
駆け寄ると、まだ意識があった。
女性はかなり苦しんでいて、あ、あ、と声にならない声を絞り出しているように見えた。
母さんもこんなに苦しんだの?
目の前のことの集中すべきなのに母さんのことばかりが頭をよぎって仕方がなかった。
小春は必死に救急車に説明していたが、
私は耐えられなくなり悲鳴をあげ、どこかへ走り出してしまった。
気がつけば、家の近くに佇む山に来ていた。帰らないと…でもほぼ無意識にここまで来ている。
ここはどこだろう?小春はきっと私が逃げて困ってる。戻らないと…その焦りが良くなかった。
急に視線が上を向き、足がもつれ、土砂の中に落ちていった。
携帯の入ったバッグは落ちた崖の上。
あ。死ぬ。
直感的に思った。こんなとこで死ぬのかな…
目を閉じてはいけないと思うほどに、目が霞んでもうどうしようもなかった。
「う…あ?」
目を覚まし、ガバッと体を起こすと、私は仰々しく、なんとも言えない威圧感のある広い部屋に寝かされていた。
(もしかしたら誰かが気づいて、助けてくれたのかも…)
そんな考えが過った。
すると、奥に見える襖がすーっと音も立てずに開いた。
「あら、起きていたの?」
そう私に尋ねる少女は、お姫様のような着物を着て、花柄の羽織袴(って言うのかしら?)を着た、多分私よりも年下の子。
…だよね?幼い感じだけど…すごく美人。
「ええ、今さっき。あの、ここは?あなたが助けてくれたの?」
美人な少女はニコリと微笑んで
「ここは私の屋敷。あ、えーとそうね。実質あなたを助けたというか、見つけたのは…」
あの子、と指をさした方にちょこんと座るのはこちらもまた私よりも年下に見える赤毛の女の子。
「ありがとう…ん?赤毛?というか…青毛?いや、紫?」
てか、"私の屋敷"て言った?
「…やはり。そうなのかもしれないわ。」
「でも、どうやって? 向こうに行くのと同じようにこっちに来るのだって難しいんでしょ?」
よくわからないことを話し合っているようだった。
「あなた、ここがどこかわかるかしら。」
先ほどの柔らかな笑顔とは違い、真剣な顔で聞く。てか、どこかって…家の近所の山で転んだはずだから…
「え、と…学校の近く…よね?」
青髪の女の子はさらに真剣な顔をした。
何か変なこと言った?
赤毛の子はすっと立ち、青髪の子に、たしかにこう告げた。
「今すぐ霊夢さんを呼んでくるわ」
れい…む?珍しい名前…キラキラネーム?
そういえばさん付けしてたかな。年上かも…
「あ…の、ここは…というか聞きたいことがありすぎるんだけど」
青髪の子は丁寧に
「あとで全部聞きます。まずは霊夢さんを待ちましょう」
そう言うと、また柔らかな表情に戻ったので、内心キレられたわけではないのかと安心した。
そのとき、ドタドタと足音が聞こえた。
シャッと襖が開いて、金髪の小さな女の子が来た。この子が霊夢さん?にしては洋風…
彼女の格好は、黒を基調としたベストとスカートで、かなりゴシックな雰囲気だった。
先程の二人とはかなり違う服装…
「んんー?お前が外の…もごっ!」
その子の口を押さえたのは赤く、珍しい形の服を着た落ち着いた子…とさっきの赤毛ちゃん。
「魔理沙、外の野次馬を追っ払ってきて。」
野次馬?そんなのがいるの?何のために?
「はぁ、まあしょうがないな。あとで私にも話せよ!」
魔理沙と呼ばれた女の子は頬を膨らませながら外へ行った。
「今日は。私を知ってるかしら。」
エゴサ?いや…にしては淡々としすぎてるような…って質問されてるんだった。
「あ、全然…知らない…です。」
青髪の子と霊夢さん?は私の顔を覗き込んで、顔を見合わせた。
「私は博麗霊夢。里のはずれにある神社の巫女よ。私も知らないのは余程の引きこもりか、外の人間…てことになるわね?」
「はい。それにしても、彼女は人里の外で倒れていました。故意にここへ来たのではないのかもしれません」
霊夢さんは溜息をついて、誰かを睨むような目つきをしていた。
「とにかく、私の神社で話しましょう」
霊夢さんが突拍子もなくそういった。
てかここ家の所持者多くない?みんな同い年か年下に見えるけど…何者?
「あの、みなさん何者ですか?」
「私は霧雨魔理沙。ただの魔法使いだ。」
急に元気な声でそう言ったのは、先程霊夢さんに野次馬を追っ払って来いと言われた金髪の子。魔理沙?霊夢よりは洋風だけど、漢字なのかしら。
「戻ったのね。さっきも言ったけど、私は霊夢よ。んで、」
「あっ、私は本居小鈴。鈴奈庵ていう貸本屋の娘なの。だから、あなたに関することが見つかるかもしれないわ」
貸本屋?よくわからないけど、一番幼く見えるけど…
「私は稗田阿求。ここ幻想郷の書記よ。」
ひ…えだの?言っちゃなんだけど難しい名前ね。てか私も言った方がいいよね?
「私は稲田久遠…」
「久遠?なんか仏教的な名前ね。こっちは巫女だっつってんのに。」
え、これ私が悪いの?
「おい、霊夢仕事を持ち込むなって…これも仕事か」
完結しちゃったわ。
「そうだ、久遠さんについて考えたのだけれど、やっぱりここの住人とは違う服装だし、外の世界からなんらかの拍子でこっちに来たっぽいわ。」
服装…たしかに和と洋が混ざってるにしてもかなり古い感じの着物を着ているし…
タイムスリップかしら…?でも、だとしたら青髪って変よね?綺麗な色ではあるけど、平安時代とかにこんな髪色の人がいるわけがないわ。
「ここは、どこなの?幻想郷って何?」
「ここから先は私の神社で話した方がいいわ。もしかしたら結界に原因があったのかもしれないし」
「それがいいと思います。野次馬も減ってきたところですし。しかし…今までの記憶にはないわ。」
「記憶って、そんなに記憶力があるの?」
私の言葉にみんながハッとしたようだったが、私だけよくわからない空間に取り残されていた。
「幻想郷にいる妖怪や人間には能力があることがあるの。私の能力は見たもの、聞いたことを忘れない程度の能力」
「私は魔法を使う程度の能力だ。」
「私はどんな文字でも読む程度の能力」
「私は主に空を飛ぶね。」
みんなが口々に言うけれど、どんな冗談?
思わず、首をすくめて笑ってしまった。