見たことない場所だ…どこや…
スマホも圏外…山って言っても
家からそう遠くないのに…なんで?
最初こそ、クスクスとしていたほどなのだが、
あまりにも真剣にドッキリを仕掛けるもので、
ついに笑ってしまった。よくよく見ると、霊夢さんと呼ばれていた少女は小春に似ている。
すると、霊夢さん…というか小春かな?が、不機嫌そうに私を軽く睨んだ。こんなに演技うまかったのね。ちょっと意外。
「あんた、なに笑ってんのよ。馬鹿にしてんの?」
霊夢さん役口悪っ⁉普段の小春からは想像できない演技だ。ちょっと演技派すぎないかしら?
「だって、ふふ。小春でしょう?最初は気づかなかったけど、よく見たらメイクはしてないのね。もっとメイクすればよかったのに。ふふ。
ふ…?」
みんながキョトンとした顔をしていた。
「あんた、寝ぼけてんの?こはる?私は霊夢だって言ったでしょうが。バカなの?」
まだ…やるのかな…
「もういいって。帰ろう?元気ついたから。」
小春はさらに目を細めて言った。
「外でなさい。外‼そーと!」
「…わかったけど…それが終わったら帰ろうよ。もう夕方でしょ?もう空が赤いし…」
言い終わる頃にはとっくに小春はガララッと戸を開けていた。
「早いって…な…何してるの?危ない‼」
目の前で小春が浮いている…?
「言ったでしょ。私は空を飛べるって。」
「嘘…冗談でしょ⁉小春じゃないの?私…ド、
ドッキリだとばかり…本当なの?」
そうよ。小春たちのドッキリだとしたら私が山から落ちる演出なんてできっこない。
じゃあ…ここどこなの?幻想郷って何?
私…帰れるの?
振り向くと、霊夢さんが手招きをしていた。全てを受け入れるような、優しい目つきをしていた。
空は朱色の映える鳥居をくぐろうとしたとき、
霊夢さんが歩く足を止めた。
先程の優しそうな顔が嘘のように真剣な顔をして、鳥居に触れた。
ボソボソと、ここじゃない、などと繰り返した。
「ふむ…まぁ、なんでもないっぽいし。はい。さよなら。」
夕日を見つめ、眩しそうに目を細めつつ、いや、眠いのかも…そんな目で淡々と手を振る霊夢さん。
「えっとー?ど…どうすれば…?」
「あー?あんた、それもわからないの?ここ通りゃ帰れるわよ。」
呆れられた?めちゃくちゃめんどくさそう…
「帰れるならなんでもいいです。ありがとうございました。」
とりあえず礼をして鳥居をくぐる。
なんだか、バチバチとして、アニメでよくある稲妻のような虹色の綺麗なエフェクト的なもので視界が包まれた。
あまりに眩しすぎて、目を瞑らずにはいられない。
「きゃぁ…うっ‼」
掠れる声で悲鳴を上げたけど、音すらも光に吸い込まれるように消えた。
で…も、帰らなきゃ…とりあえず、くぐるの…
バチバチと音を立て続ける何かに呑まれないように歩きつづる…それだけ。
「う?」
少しして静かになった。光は見えない。帰れたの?ゆっくり目を開けよう…。
…え?
「ぁ…あんた…何者なの…」
口が開いて塞がらない。
「なんで…」
目の前には驚きを隠せない霊夢さんが立っていた。
それから、三回程鳥居をくぐった。
けど、どれも失敗だった。霊夢さんも、こんなことは初めてだと言った。
霊夢さんはまたすぐ涼しげな顔をして、歩き出した。
けれど、その顔に先程のねつ眠たさは消えていた。
「あの…ここについて…教えて欲しいんです。」
「ここ?幻想郷のこと?」
幻想郷。たしかに、青髪の女の子はそう言った。
「はい。」
「何から…説明すればいいのか。正直わからないけれど…ここ、幻想郷はあなたのもといた世界と陸続きで繋がっているわ。結界で限られてはいるけどね。私たちはあなたの世界のことを外の世界と呼ぶの。」
「えっと。パラレルワールド?」
少し考えて、んーと声を漏らし霊夢さんは続けた。
「それとはちょっと違うかな。陸続きではあるし、並行世界ではないかも。」
違うのか…なら、私が結界を通らなかった原因…そうよ、それはなに?
「結界を通らない人間は初めてだったわ。」
まるで私の心を見透かすように言った。
「それで…あんたの能力の何か関係があるかと思ったんだけど」
「私には能力の自覚はない…」
「そう。」
霊夢さんは心底困ったようにテーブルに置いてあった煎餅をパキッと折った。
「まぁ、考えててもしょうがないわ。夕飯作ってるからなんかあったら言って頂戴。」
霊夢さん…一見冷たく見えるけど優しいのかも。
「あ、手伝う…ます。」
「ありがとう。んで、その敬語もどき何?」
思わず小春に話しかけるように言ってしまった。
「あ、か、噛んじゃっただけ…です」
「敬語じゃなくていいわよ。敬語もどきはそれでうざいし」
「あ。毒吐いた…」
突発的にそう口走ってしまい、霊夢さんもこちらを向きにらんでいるような目つきをした。
怒られる…?
私がおろおろしていると、霊夢さんはふっ、とかすかに笑い、言った。
「さぁ、手伝って頂戴。」
私はコクリとうなづき、もうお茶がなくなっていたきゅうすをもって台所へ行った。
霊夢さんと作った肉じゃがはとても美味しかった。というか、ジャンクしか食べてなかったのもあるけどね。
にしても、ここは長閑ね…
夜9時ごろ、空には綺麗な月が浮かんでいた。
まだ、満月ではなかったが、後一日くらいで満月になりそうだと思うと、満月を見たくなった。
これと言った明かりは神社の提灯と森の中にちらほら何かが光っているだけだったから、星がたくさんあった。
「そこにいたの?なにもないけど…」
「えぇ。なにもないから…いいのかも。静かでいいわね、ここ。」
すると、霊夢さんは苦笑いをした。
「静か…じゃないの?」
「あー…うーん…ゔーん。」
かなり迷っているようだった。
「場合によってはね。どんぱちどんぱち。」
「こんなに静かな場所で?お祭り?」
「お祭り…騒ぎ。かもね。」
霊夢さんはまたふっ、と笑ってから、私に
「風邪ひくわよ」
とだけ言い、和室は布団を出しに行った。
目を奪われる程にその月が綺麗で、それからしばらく、動かなかった。
「まだいるの?」
「ええ、月があまりにも綺麗だから。」
後ろから霊夢さんが声をかけた。大きな白い袖で腕を隠すように腕組みをした姿は幼いはずなのにどこか威厳を感じた。本当に幾つなのかしら?
「そろそろ寒くなるわ。家に入ったら?」
「そうしようかしら。ん?いい匂い」
居間の方から何か美味しそうな匂いがした。
「わかる?生姜湯を入れたの。もう秋だし、肌寒い夜にはちょうどいいと思って。」
「いただくわ。」
居間へ行くと、先程お茶が入っていたきゅうすから湯気が出ていた。生姜のいい匂いが部屋に立ち込めていた。
「飲みがてら話そうと思ったのだけれどね。あなたがいつ帰れるのか…正直わからないの。」
「そ…んな…」
「それで、明日人里…あなたが夕方にいた場所へ出かけて見てほしいの。」
人里…?あの村みたいなところよね。
たしかに、この近くを知っておくのはいいことかもしれない。
「わかったわ。ありがとう。」
少し体が冷えたかな。そう思い、一口生姜湯を飲んだ。冷えた体に温かさがよく広がった。
「力になりたいところなんだけど、幻想入り…
というのは幻想郷に来ることを言うんだけど、帰れないことはなかったの。原因もわからないし…」
眉間にシワを寄せた霊夢さんはどこか悔しそうに見えた。
「そう。」
やはりまだ混乱していてなにを話せばいいかわからず、少しの間沈黙が流れた。
その時、急に霊夢さんが生姜湯を一気飲みした。
突然のことに驚き、目を見開いていると、霊夢さんが叫んだ。
「あ”ぁー!なんなのよー…絶対あいつだわ!」
霊夢さん情緒不安定…?
「えっ…とあいつって?」
すると霊夢さんはあからさまにペテン師を見るような目で言った。
「服装と言い、喋り方と言い全てにおいて胡散臭いやつよ!」
胡散臭いの塊…
それからさらに幻想郷のことを聞き、夜も更けできたので、霊夢さんが和室にひいた布団で寝ることにした。
久しぶりの布団だったからか、少し緊張した。暖かさで包まれた体を休めると、冷静になった。
私…このまま帰れないの?嫌だよ…こは…
疲れた体が限界を迎え、思いまぶたが閉じていった。
翌朝、眩しく差し込んだ朝日が顔に差し掛かり目を覚ました。
昨日11時に寝たにも関わらず、起きたのは6時半だった。
けれど、隣を見ると霊夢さんはもうおらず、布団もきっちりとたたまれていた。
ほんと、何者なのかしら?
そのとき、霊夢さんはこちらへ戻ってきた。
「あら、おはよう。寝れたかしら。ご飯作ってるから支度したら来て頂戴。」
霊夢さんは真顔で言ったが、何故か目は優しく見えた。
「よく眠れたわ。こんなに目覚めがいい朝も久しぶりだし…」
「そう、ならよかったわ。じゃ、私は戻るから」
そう言ってまた台所へと戻っていった。
白米に焼き魚、漬け物、お茶と朝早くからたくさんのものが揃っていた。
どれも美味しく、すぐに食べ終わった。
そのあと、霊夢さんに案内され、また人里へ来た。
「いい、あんまり目立たないで。挙動不審もダメ」
「言っておくことがあるの。」
昨夜、唐突に霊夢さんがいった。
「言っておくこと?」
「この幻想郷には人間じゃない奴もいるの。妖怪…あちこちにいるわ。大体は安心していいけど、してはいけないのもいる。
だから、しばらくはあなたのことはあまり噂にはしたくないの。」
「妖怪…」
信じられる話ではない。…が、夕方たしかに霊夢さんは空を飛んでいた。冗談と決めつけるわけには行かなそうね。
神社から少し遠ざかったところで"鈴奈庵"と大きく書かれた看板を見つけた。
ここが私を助けてくれた小鈴ちゃんだったかしら…の家よね。
鈴奈庵に入るのかと思ったのだが、霊夢さんは鈴奈庵をスルーし、さらに進んだ。
道中、あからさまに人ではないような同世代くらいの女の子がたくさんいた。
人里を遠ざかり、疲れてきた頃、大きな屋敷の前で霊夢さんは止まった。
「相変わらず仰々しい屋敷ね。」
「本当…おおきい…ってえ?」
霊夢さんは大きな門をバンッと勢いよくあけ、中へずかずかと入っていった。
清楚な女性に案内され、着いた部屋の先はこの前私が寝ていた部屋だった。
そこには、青髪の少女…阿求…さん。ちゃん…
が座っていた。
「わざわざ出向いていただきありがとうございます。」
にこやかに美しい顔で微笑んだ。
「まったく、遠すぎなのよ。めんどくさいったらありゃしないわ。」
「あ…はは…それで、阿求さんは何故私を?」
「阿求でいいわ。それじゃ、本題に入りましょう。帰れないと言うのは聞いたと思うのだけれど…」
阿求が霊夢さんの方を向き、目配せをすると、霊夢さんはうなずいた。
「それでね、幻想郷で生活するうえで、妖怪に対する知識を教えようと思って呼んだの。」
「わざわざ?えぇと、ありがとう。」
阿求はふっ、と鼻で笑い、手をおでこにつけ、
「私にはありとあらゆる知識が詰まってる。なんでも教えてあげるわ。」
その瞬間、阿求はニヤリと笑った。
「あー、私は仕事だから帰るわ…」
霊夢さんが素早く立ち去った。
行ってしまうの?帰れるかしら?
霊夢さんが帰った理由はすぐにわかった。
霊夢さんは帰ったのではなく、逃げたのだ。
阿求の話が長いから。まぁ、ゲームの初期説明…だと思えばいいかしらね?
「ーそれで、最後よ。…ねぇ、ちょっと?」
はっと顔を上げた。いい加減眠くなってきたのだ。
「え?えぇ。」
「はぁ…いい?つまり」
「わお…」
阿求は私を指差し、釘を指すように言った。
「幻想郷には人を喰らう妖怪もいる。私たちの知らない妖怪もいる。きっとそろそろ霊夢さんが戻ってくるから、夜間出歩くのは避けること‼」
「は、はい。」
あまりの勢いについ尻込んでしまった。
すると、また戸が開き、霊夢さんが戻ってきた。
「あー、話は終わったかしら?」
「ええ、今。釘をさしておいたので夜間の外出は避けてくれるでしょう。」
にこりとして阿求が答えた。
「さ、帰りましょ。ありがとね。さよなら」
「さよなら、また何かあったらぜひ。」
「あ、ありがとうございました…」
阿求が手を振ったので、私も手を振り返した。
霊夢さんの家へ帰り、一休みしていたとき、勢いよく、バンッと戸が開いた。
なんでもいいけどここの人たちは静かに戸を開けることができないのかしら?
「霊夢‼大変だっ‼」
この声…声の主を探ると、魔理沙、と呼ばれていた金髪の女の子だった。
「何?何があったの?」
霊夢さんが真剣な表情で聞いた。 すると魔理沙さんは私を指差し、言った。
「あいつのことで里が大騒ぎだ‼」
私?!
「わ…たしが?」
状況が飲み込めず、霊夢さんをみると、頭を抱え、めんどくさそうな顔をしていた。
「里は何か言ってた?」
「え?あぁ、やつが悪魔の末裔かも知れんとか、神のお告げのようなものかも知れんとかなんとかな。」
「…なんですか…それ…」
私が?悪魔の末裔?おかしい、おかしい。
ここの里って噂が回るのが早いのかも…
「まずいわね。混乱を招かないようにしていたつもりなのに」
「本当か?だとしたらその服は?」
彼女が指差したのは私のセーラー服だった。
すると、霊夢さんははっと顔を上げ、まずい、というような顔をした。
「それか…なんで変えなかったんだ?」
「だって…服でこんなことになると思わなかったんだもん。」
霊夢さんは少し不機嫌なそぶりでテーブルに突っ伏した。
「ふぅー広がったもんはしょうがないわ。鈴奈庵に行きましょう。まずはビラ作りからね。」
ビラ?霊夢さんが言っているのはチラシのことだろうか?だが、チラシで何をしようとしているのか…
「ビラで何を?」
「あら、気づいてないの?ここは噂が回るのが早い。つまり?」
「ああ‼そうか、ビラの噂が広まる」
魔理沙さんが食い気味で答えると、霊夢さんは澄ました顔をして、
「ご名答。」
とだけ答えた。
続きを楽しみにしています。
コメント失礼しました。
ありがとうございます!モチベ上がります〜
アドバイスなども有れば。コメント全然オーケーです!
そう言われた魔理沙さんは、
「ぐぅ…お前は良くも悪くもいっつもそうだ。」
と、目を細め、悔しそうな顔で言った。
「あんたが変わりすぎなのよ。別の意味でも変わり者だけど。」
「何を〜⁈」
仲良いんだなぁ。2人が言い合いをしているうちにあっという間に鈴奈庵に着いた。
2人を見ていると、不思議と飽きなかった。
「小鈴ちゃん?いるー?」
ガララッと引き戸を開け、呼び掛けた。
「いらっしゃい…ってなんだ。霊夢さん…に、魔理沙さんと…」
「あ、久遠です。小鈴ちゃん…」
「さう、久遠さん。よろしく。」
客だと思ったらしく、最初は落胆の声を漏らしたが、私を見た途端に、読んでいた分厚い本を勢いよく閉じて、興味津々な瞳で顔を覗いてきた。目が合うと、肌という顔をして
「あっ、ごめんなさい。それで、用は?」
と言った。
「こいつのことだ。」
「本当ですかっ⁉」
私のことだと分かると、さっきよりもさらに瞳を輝かせた。
「…仕事よ?またビラを作って頂戴。ほら、牛頭天皇の時みたいに。」
ご…ず天皇?ってなんだっけ…国語の先生が言ってたような…
「牛頭天皇は牛の頭をした神様だ。前に人里で牛の頭をした男がいるって噂が立ってな。」
「その時、霊夢さんが噂の鎮静を図るために、私にバラを作らせたの‼」
魔理沙さんに心を読まれてた気がした…
が、さらに食い気味で元気に小鈴ちゃんが答えた。
「心…読みました?」
すると、魔理沙さんは一瞬惚けた顔をしたあと、盛大に笑った。 ・ ・
「私には心を読むことはできん。私にはな。」
「読める人がいるんですか?」
「ん?ああ、地底にな。それに妖怪だがな。
そう言えば、妖怪の奴らにはまだ会ってないのか?」
たしかに、霊夢さんや阿求には聞かされたものの、見たことはなかった。
「ないわ。」
「まぁ、情報は伝わっているでしょうし、そろそろ会いにでも行かせようとは思っているけどね。」
「大丈夫なのか?お前は」
確かに怖い…けど、安全なのもいるらしいし…
「生き抜くためですから…」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「そろそろかしらね?」
高く、落ち着いた声が静かな空間に響いた。
「はい、文屋によれば外から来たことは間違い無いそうですわ。」
さらに、先程の声よりも落ち着きがあり、少し低い声の少女は知っていることを伝えた。
問いかけた少女は背の高い椅子に足を組み、大きな翼を広げ座っていた。
そして、静かに微笑み、呟いた。
「楽しい夜に…なりそうね…」
めっちゃ誤字った…
六行目の二文字目は、さうではなく、そうです。
あと、十行目、十二文字目は、肌ではなく、はっとです。すみません。
翌日、霊夢さんに連れて行かれたのは阿求の屋敷よりももっと遠い洋館だった。
「えーと。ここが紅魔館。ここには吸血鬼がいるわ。おこちゃまだけど。あとは説明が面倒だから会ってきて」
眠たげな目で大きな門を指差した。
まだお昼を食べて30分経った頃だ。
昨日までの快晴とは違い、薄暗い雲が広がり、
紅魔館の赤が空に薄れたりして不気味に佇んでいるように見えた。
「あら?霊夢さん、あの人は?」
よく見ると、門の前で腕を組み、大きく足を開き、立っている少女がいる。
朱色の髪が緑のチャイナ服に映えていて、帽子には"龍"の文字が光っていた。
「あいつは寝てるだけだからいいのよ。門番の、紅美鈴てやつよ。」
「めんどくさいってのはその人のこと?」
「いや、もう何人かいるんだけど…」
その瞬間、霊夢さんが高くそびえる時計台を睨んだ。目を凝らすと、同じくらいの人が立ってあるように見える。
と思った瞬間にはもういなかった。
「霧で幻で見えたかな…」
一言呟くと、霊夢さんは冷静に言った。
「幻じゃないわ。現実よ。」
その瞬間、ザッと言う音が聞こえた。
目の前には今までいなかった少女が腕組みをして私の顔を見つめていた。
銀髪に青い目が綺麗に光っていた。
「ふむ…あなたが…」
私のことを分析でもしているかのようにその子はぶつぶつと呟き始めた。
「そいつよ。まぁ、後でわかると思うわ。」
「あら。噂?くしゃみしちゃう。」
銀髪の子は至って冷静で、冗談を言っているようには聞こえなかった。
(いや、冗談だろうけど)
「ついてきてください。」
先程の話はなかったかのように私を呼んだ。
「えっと、私。だよね、はい。」
急に呼ばれて驚き、変なところで噛んでしまった。
「私も行くわ。何するか分かったもんじゃないし」
「今日は随分用心深いのね?」
「あんたらが疑わしいだけよ。疑われない努力でもしたら?」
「その言葉そのままお返しするわ。さ、どうぞ」
銀髪の子は手慣れた手つきでドアを開け、私を案内した。その動きには一遍の無駄もないように感じた。
気のせいかしら…ね。
面白いです...!
更新楽しみにしときます!
頑張ってください!
ありがとうございます!これからもお願いします!
館内は紅かった。ただ染めたかのように紅い。
ただ、なんとなく窓が少ないような気がする。
疑問はたくさんあったが、2人とも真剣な顔でよくわからない会話をしていたから、入り辛くて、静かについて行った。
何回も階段を上がり、最上階の奥の部屋まできた。
より一層、窓が少なくなった気がする。
銀髪の子が、落ち着いた声で部屋の主に言った。
「お嬢様…。お客様がお見えです。」
お嬢様?たしかに、銀髪の子はメイド服を着ているし、絵に描いたようなメイドキャラだった。
すると、部屋の中から少し高い声が響いた。
「ええ。入って。」
「失礼します。」
銀髪の子がドアを開けると、真ん中に大きな椅子があり、こちらに背を向けで誰かが座っているようだった。
明日の背の隙間からなにか大きなものがのぞいている。
…羽のように見えた。
妖怪…なのかな。
「遠いところからよく来たわね。霊夢に…そっちは?」
すると、霊夢さんにまだ合図され、すぐ自分の名前を言った。
「く…おん…久遠です。」
見えないが彼女はおそらく妖怪だと気づくと、恐怖で声が掠れた。
すると、椅子がくるり、回転し、お嬢様と呼ばれた子はこちらに向いた。
…開いた口が塞がらないという体験を初めてした。
こう、彼女を一言で表すならば…
"幼女"
大きな椅子に足を組み座っていたのは10歳にも満たない程度の阿求よりは銀色に近い、水色みたいな髪色の子。
フリルの付いた白いドレスを赤いリボンで止めていて、背中からは翼がのぞいている。
「…あなたがお嬢様?」
「ええ、いかにも…ってあんた何よその顔は。私が吸血鬼に見えない?」
その子は私を睨んでいった。
「いや、そうではなく…その…幼いかなと…」
たどたどしく答える形になってしまったが、言いたいことはそれである。幼すぎる。
「はぁ〜…‼全く失礼な小娘だわね。」
お嬢様が私に言うが、小娘というのは心外だ。
どちらかといえばその子の方が幼い。
「いくらお嬢様でも…小娘って…」
すると、その子は驚いた顔で言った。
「…?私は500年はお嬢様してるのよ?」
「え"?」
この子が?10歳にも満たないようなこの子が…?
すごく失礼になった気もするけど…まあいいか…
すると、お嬢様は銀髪の子にヒソヒソと何かを言った。
次の瞬間、銀髪の子が言った。
「お嬢様がしかと説明をしてくれるそうよ。客間に案内するわ。」
すると、静かにドアを開け、お嬢様を一番に通した。
お嬢様はとても綺麗に歩くので、またびっくりされられた。
長い廊下を歩き、やっと着いたと思ったが、銀髪の子が開けたドアの先は暗い階段が続いていた。
銀髪の子は持っていた蝋燭に素早く火をつけ、静かに降りた。
また少し歩くと、大きな扉が待ち構えていた。
「さぁ、どうぞ」
そう言われてドアを開ける。
そこには大きな本棚がいくつもあり、360度、
本ばかりだった。
どの本も分厚く、重そうな本ばかりだった。
すると、少し進んだところに大きな本を読んでいる病弱そうな色白の、紫髪の女の子が静かにいた。
「パチェ。入るわよ。」
お嬢様はその子に一言、声をかけた。
…というかもう入っているんじゃ…
「…親しき仲にも礼儀ありって知ってるかしら、レミィ。」
レミィ、パチェ…それが名前?
「レ、レミィさん…ここって?」
すると、みんなが目をパチクリした。
と、思った時にはみんなが爆笑していた。
「…な。なんですか。」
「レミィはあだ名よ。貴女、名前も教えてないの?」
パチェと呼ばれた子は目を細め、本当に?とでも聞くようにレミィ…さんを見た。
「忘れてなんかないわよ。タイミングがなかったの。さて、私はレミリア・スカーレット。吸血鬼よ。レミリアでいいわ。」
「十六夜咲夜、紅魔館のメイドです。
咲夜、とでも呼んでください。」
「パチュリー・ノーレッジ、レミィの友だち。パチュリーでいいわ。」
1人ひとり、丁寧に挨拶してくれた。
すると、霊夢さんが声を出した。
「さて、パチュリー、なんかわかったことでもあるの?」
「気が早いわね。霊夢。」
レミリアは、にこりとして言った。
すると、パチュリーは訂正する等に静かに言った。
「どちらかと言えば…短気…かしらね。」
いつも見てます!見ててとても楽しいです!お話を作るのがすごく上手です…!
31:依夢◆1s:2019/11/02(土) 20:45 ID:mws 最近コメントが多くて本当に嬉しいです!
みなさんありがとうございます〜。
「ああん?あんた何様なのよ?」
霊夢さんが気怠げに言い返した。
そういえば霊夢さんってたまにヤクザっぽいような…。
気のせいかな。うん。
「そう、それでね、わかったことなのだけれど、一人で調べてみたの。彼女の能力がこの幻想入りにどのように関わっているのか。」
「本当に?何かわかったの?」
パチュリーはふるふると首を振った。
「なによ。じゃ、もう帰るわよ?」
霊夢さんが体の向きを変えようとするのを咲夜さんがそっと止めた。
「何?」
それに答えたのはパチュリーだった。
「わからなかったのは、彼女がいなかったから。今日連れてきてもらったのは他でもない。この為よ。」
「…何を。すればいいの?」
帰れるなら、なんでもする。
「ノリ気ね。そういうの嫌いじゃないわ。」
そう明るく言ったのはレミリアだった。
「そうね、まず、幻想入りした時の状況が知りたいわ。」
「あっ、はい。えっと、気を失っていたから、結界を破った瞬間は覚えてないわ。」
すると、パチュリーは私の目を見て言った。
「だったら、その前のことは?何してたとか…」
その瞬間、思い出した。
「母さん。」
「貴女の?」
「そう…か、あさんが…じ、事故に遭って、落ち着いた精神状態じゃなかったから、友だちと一緒に帰ってたの。」
「…そう、それは…」
みんなが黙り込んでしまったようで、少し話づらくなってしまった。
「え、っと。そしたら、目の前で事故が起こって…知らない人だったけど、気が動転して、森まで行ったの。落ち着いたら帰るつもりだったの…けど、雨で滑りやすくなってて」
「その森がちょうど境界のところだったのかも…」
「大方、そう見て間違いはないわね。けど、能力だとして、それがどう働いたのか…」
霊夢さんが言ったあと、みんなが考え込み、場が鎮まったとき、咲夜さんがいった。
「…幻想入りには気づかなかったのよね?」
「え?ええ、そうだわ。」
「それよ!気づかなかったことにあるんだわ。」
急にパチュリーが大きな声を出した。
「どういうこと?」
レミリアがパチュリーに聞いた。私も意味がわからなかった。
まじでごめんなさい。今更読み返して気づいた…
久遠のお母さんは事故と、過労で眠ったままになる可能性がある、と言う設定です…本当にごめんなさい!
そして、今読んでくれている方、コメントしてくれる方、本当に嬉しいです。ありがとうございます!これからも頑張ります。アドバイスも欲しいです。それでは。
調子いいのでまた書きます〜
「ムキュウ…わからない?おそらく、彼女の能力は意識がない時に発動するってことだわ。」
霊夢さんがしばらく考えたあと、言った。
「要は極度の鈍感?バカ?」
「その可能性もなくはないけど…」
「なくはないんですか…?!」
パチュリーはうん、とうなづくと、さらに続けた。
「仮定だけどね、幻想郷の結界を破るのには抵抗があるはず。強い結界ならその分だけ抵抗は増える…。外との結界なんて、並の強さではない。」
咲夜さんも、レミリアも、みんな静かに聞いていた。
「そうだわ。帰るからと言って鳥居をくぐるときも、すごく拒まれた感じがして、通れなかった。」
すると、パチュリーはうなづき、続けた。
「やはり…ましてや博麗の結界。貴女はその抵抗に気付くことができないくらい気を失っていた。てことになるわね。」
すると、静かに聞いていた霊夢さんが言った。
「じゃあ、結局鈍感なんじゃないの。…ん?来るのにそれくらいの気絶が必要ってことは…帰るのにも…」
「同じくらい意識を何かに集中させるか、また気絶させるかね。」
そんな…やっと糸口が開けたと思ったのに…
気絶…同じ高さから落ちたとして、うまく気絶できるかどうか…下手したら…どこにも帰れなくなる…
「そ。そんな、それじゃ、一生帰れないじゃない‼」
「落ち着いて。頭に血を昇らせたまま話しても解決しないわ。」
咲夜さんが落ち着いた声で言ってくれたからか、それから少しして落ち着いてきた。
「なにも、完全に帰れないわけじゃないし、力は貸すわ。私のできる限りになるけど…」
「…ありがとう。来てよかったわ。」
「大方、能力は結界を破る程度…になるかしらね。」
レミリアが言ったが、語弊があるだろう。
「そんな大層なことはできないわ。無意識のうちだし…」
「あら?そんなの承知の上だわ。幻想郷じゃ、能力は自己申告よ。」
なんだ…それ…
「そんなのでいいの?まぁ、いいか…」
すると、パチュリーがまた口を開いた。
「ねぇ、貴女は能力もある。もしかしたらきっかけが今回だっただけで、来るべくして来るものだったのかもしれない。」
「運命ってやつね。あんた、ほんと珍しいわね。私珍しいもの大好きよ。珍しいってだけで魅力…でしょ?」
レミリアは言い終わると、キャラキャラ笑った。
先ほどまでのお嬢様の威厳も何処かへ消え去っていた。
紅魔館からの帰り道、霊夢さんは急に言った。
「あんた、無意識のうちしか使えないなんて、能力の意味あるの?」
グサっと胸に刺さる言葉を平然とこの人は…
「まぁ…そうですよね〜」
最初こそ、能力がある、他の人とは違うんだとも思ったが、それが原因で帰れないんじゃ、意味がない。
「そういえば、あんた初めてここに来たとき、私を誰かと勘違いしていたでしょう?」
「あ。そうだ…」
「それは誰?」
忘れてた…そうだ、私…
「親友…ここに来る前も一緒に帰ってたの…」
霊夢さんは、少しバツが悪そうに下を向いた後、冗談っぽく言った。
「じゃっ、相当の美人だわね。」
「…霊夢さん。」
「ん?」
「冗談言えたんですね。」
その言葉を聞いたあと、霊夢さんは本気だ、とでもいうようにと言った。
「え?」
「…え?」
霊夢さんが和ませてくれたおかげで、少し気持ちが軽くなった気がした。
翌日、霊夢さんに誘われ、山に行くことになった。
「こんな深い山の中来たことないわ。山ですら、中学校の林間学校でハイキングした程度だし…」
緑が永遠と続く大きな山…外の世界では見たこともない。
パニックになっていたけれど、ここの自然は本当に綺麗だった。
そういえば、山の中にもちらほらと明かりがあったのを見た。
きっと、山の中にも誰か…妖怪かもしれないがあるんだ。
「そこらで休んだっていいけど、もうすぐ着くんじゃないかしら。」
霊夢さんは慣れた足取りでスタスタ山の中を歩いて行った。
都会で山などないところで育った私にはついて行くのも一苦労だった。
霊夢さんは山の中腹辺りまで来たのだろうか、
途中で足を止め、一点を指差し、行った。
「あれ、何か見えるかしら。」
指差す先には、魚が泳ぐ、綺麗な透き通った川が流れていた。
「綺麗…」
「まぁ、こんな山の中までわざわざ川を汚しに来る奴もいないでしょうね。尻子玉も抜かれるし。」
気怠げな口から、放たれた最後の一言を聞き流しはしなかった。
…しり…こだま…ってなんだっけ。
古文に出てきたような。…河童だ。
「か、河童がいるの?」
「あら、ご名答ね。」
今更ながら、しっかり古文や国語を勉強すれば良かったと思っている。
「でも、河童みたいなのなんて、どこにもいないわ。」
頭がお皿な人どころか、人影すらない。
「いや。いるわ。」
その瞬間、霊夢さんの目つきが変わった。
「いるんでしょ‼出てきなさい‼」
霊夢さんの声は辺りに響いた。
山彦も聞こえて…ん?いや、聞こえてる…
近づいてくる⁉
「ありゃ。バレてたのかい。」
茂みから現れたのは水色のワンピースに帽子をかぶったツインテールの小学生くらいの、レミリアよりも幼いような女の子だった。
「当たり前でしょ。あんなんで隠れてるつもりなの?」
霊夢さんはその子の言葉にかえした。
にしても、古臭いような喋り方をする子だ。
「こいつが河童よ。」
「この子が⁈だって、河童って、もっとなんていうか…」
私がおどおどしていると、その子が口を開いた。
「人間てやつは偏見でしかモノを言えなんだ。人間は進んでいるが、そこは直すべき場所だよ。」
その子はやれやれ、とでも言うように首を振り、手を組んで仁王立ちになった。
「まだ、いるんでしょ?」
「あぁ。山彦だよ。おーい!」
その子が呼びかけると、奥の茂みがガサッと音を立てた。
「見えてるわよ。」
霊夢さんが言うと、おずおずと、犬耳の生えた子が出てきた。
「だ、誰だっ‼」
犬耳の子は、私を指差していった。
「そうか、自己紹介がまだだったわ。私は、稲田久遠。人間よ」
なんだか、ここにも慣れたような気がする。
「くおん…?どこかで聞いたような。そうだ、お前、幻想入りしたって言う!」
河童の子は驚いたようで、目を見開いて大声を出した。
「まぁ、霊夢が一緒なら危害はないと言うことだろう。よし、私は河城にとり。河童さ!」
キメ顔で帽子のつばを横へ流し、にとりはにっと笑った。
「幽谷響子、山彦…だっ。」
響子ちゃん。は人見知りなのか、恥ずかしがり屋なのか、もしくはただの怖がりなのか、だんだんと声が小さくなっていった。
にとり…お値段以上って感じかしら。
「んで、なんでこんなとこに?」
にとりはかなり私に(早すぎるけど、)親近感を持ったようで、にっこり笑顔で近づいてくれた。
「ああ、いつ帰れるのか、わからないから、色んなとこに挨拶に行こうと思ってね。」
霊夢さんは穏やかな口調で言った。
「んじゃあ、守谷神社に?」
「そう。正直、気乗りはしないわね。胡散臭いし。」
「祟られるかも?」
響子ちゃんがいたずらっぽく笑って言ったとき、にとりが思い立ったように、ポッケから何かを取り出した。
鉄のようなモノでできていた。
「今さっき作ってたんだ。新しい胡瓜をな。一口どう?」
「ありがとう。…美味しい。」
噛み心地が良くて、美味しかった。
「今なら一本300円、三本買えば750円」
にとりはにかっと笑った。
「相変わらず商売?」
霊夢さんは呆れたように言った。
それを見て、思わず、
「お値段以上…」
と呟いてしまった。
案の定、みんなはきょとんとしていた。
山を更に登って行くと、山道を抜けた先には、
大きな鳥居が立っていた。
霊夢さんと同業者なのだろうか、鳥居の先には神社と思われる建物が立っていた。
と言っても、正直なところ、霊夢さんの神社よりも大きかった。
こんなこと言ったら怒られそうだわ。
「やっとついたわ。守谷神社。」
「やっぱり神社なんですね。」
「ええ。宗教ぽさが強いけど。」
霊夢さんがまたスタスタと歩き出したとき、上から微かに風が吹くような音が聞こえた。
「…気のせいか。」
辺りを見回しても、何かが見えるわけでもなく、そう思ったとき、後ろから声が聞こえた。
「気のせいではないわ。」
びっくりして振り向くと、緑色の長い髪をなびかせた、奇抜な形の巫女服と思しき服を来た少女が立っていた。
霊夢さんは、はぁ、とため息をつき、呆れていった。
「もっとちゃんと出迎えることができないのかしら。」
「あら。だったら神社に出向こうか?」
「それも迷惑になりそうだからやめて。」
「あら、ひどーい。ん?その子は。」
その人は私をみて言った。
「稲田久遠です。もしかしたら噂で聞いてるかも。」
私が答えると、納得したような顔で、にっこりと笑った。
「それで、ってことね。私は東風谷早苗、巫女よ。正確にはかぜはふりって言う役職だけど…。」
「へえ。やっぱり巫女なのね。この世界の巫女ってことは、何かできるの?」
興味本位で聞いてみると、早苗さんはうーん、と考えていった。
「そうねぇ、能力の話なら、奇跡が起こせるわ。」
「じゃ、じゃあ、早苗さんの能力で帰れるんじゃ⁉」
期待を込めて霊夢さんの方を向くと、
静かに首を振っていた。
「残念ね。奇跡と言っても良いこととは限らないのよ。それに、呪文詠唱が必要らしいわ。その奇跡に見合った時間だけね。」
「そう。」
「ごめんさないね、力になれなくて。あ、でも、レットスネークカモン‼くらいならできるわよ」
早苗は笑って腕を蛇のような形にして言った。
ノリがわからず、無言になると、早苗さんは恥ずかしそうにして、そそくさと言った。
「あ、あれ?まぁいいわ。立ち話もなんだし、神社に案内するわ、諏訪子様と神奈子様も会いたがっていたから。」
様付け?偉い人なのかな?
なんか緊張してきた…
「ささ、座っててください!聞きたいことがたっくさんあるんですからね〜」
そういうと、早苗さんは慌ただしく奥へ入っていった。
「巫女さんって1人じゃなかったのね。」
私が問うと、霊夢さんは置かれていた煎餅をヒョイっととり、食べ始めた。
「何よ、モグモグ、一緒にしないでよね、私は怪しい宗教家ではモグモグ、ないわ。」
我が物顔で煎餅を食べ続ける霊夢さんの後ろにある襖が静かに開いたとき、霊夢さんの頭にお祓い棒が降りかかった。
「ったいわね。何様なのよ…」
頭を撫でながら後ろを振り向くと、小さな女の子がいた。
「神様だよ‼」
「でた。怪しいA。」
「あらあら、失礼なあだ名をつけられたものだねぇ、諏訪子。」
青髪のショートカットの女性が、小さな女の子に話しかけた。
「あんたは怪しいBだから。」
霊夢さんは冷静にツッコミをくらわせた。
ん?諏訪子ってことは、早苗さんが様付けしてた人?
じゃ、今話かけてたのが神奈子様?
「えっ…と、あんたが幻想入りしたって人間かい、ふーん。」
諏訪子様は私をまじまじとみた。
「そう…稲田久遠って言うの。」
「くおん…ふぅん、そう。そう、あなたに会いたかったのさ。」
にこりとして諏訪子様はいった。
「最近、これと言った事件はあれっきりだったしな。」
「地獄でのこと?焼き鳥要員が増えたまでよ。まぁ、もう地獄には行きたくないかな。」
霊夢さんは神奈子さんの問いかけに冷徹と思わせるまでの真顔で答えた。
「いやー、お疲れ〜。地獄なんてとこに早苗は行かせないよ。」
「す、諏訪子様…‼」
「いろいろ手伝わせたいし。」
ブラック企業…いや、ブラック神社?
「そういや、スキマ妖怪にはもう会った?」
諏訪子さんは、霊夢さんに聞いた。
「んー?いやぁ、まだ。あいつどこにいるかわかんないのよ。ほんと、出てきて欲しい時に来ないやつだわ。まぁ、いても胡散臭いだけだし、てかどうせ見てるんじゃない?このやりとりも。」
「ストーカー?」
「ん?あははは、そんなんじゃないわよ、能力はそれじみてるけどね。」
…なにそれ、怖い.
私こんなとこで生きていけるんだろうか?
テストで大分来れなかったです、すみません〜
これからいつも通り書いていくかと思います!
それから、結構な時間神社にお世話になり、霊夢さんの神社にかえったのは黄昏時だった。
霊夢の神社の階段はとても長い。
縦にしっかりと伸びる道は夕日に続いているような気がした。
「ふぁぁあ…朝か…」
なんだか早めに起きた朝だった。
霊夢さんは早いから流石にもう起きていたけれど。
散歩でもしよっかな…。
ふと思い、神社を出ると、はぁはぁと息を切らし、懸命に手を合わせる男がいた。何かをぶつぶつ呟いているように見えた。
「…あ、あの?」
その人は私に気づくとはっと振り返り、叫んだ。
「助けてください‼」
「えっ⁉」
あまりのことにびっくりしてしまった。
しかし、冷静になった男の人はん?という顔をしている。
「? あ、あの、巫女様は…」
「霊夢さんなら…」
…さっきの拝み方…、どう考えても尋常じゃないわ…
「霊夢さん、呼んできますッ‼」
「れ、霊夢さん‼仕事です‼」
朝食を作っていた霊夢さんは目つきが変わり、
手を止め、さっと向きを変え、聞いた。
「どこ?」
「お、表…」
あまりの気迫に息をするのを忘れそうだった。
…もしかして、結構前に聞いた"異変"てやつかも…
サボってすみません。さてさて、続きです。
「あなたね。用件は?」
「た、大変なのです‼まずは、これをみてくだせぇ。」
男の人は未だ焦っているようで、肩で息をしているような状態。
そんな男から渡されたのは一枚の新聞だった。
霊夢さんはまじまじとその紙を見ると、顔を上げていった。
「殺生…石?なんなの?」
「殺生石でございます、巫女様もご存知では?」
殺生石…?歴史の先生から聞いたな。たしか…
「殺生石っていうと、外の世界の伝説でしょう?こっちの世界に関係はないはずだわ。」
たしかに、関係はなさそうね。
「ですが、たしかにあるのです‼まずは人里へ来ていただきたい。」
「久々の仕事…かしら。準備を整え次第行くから、あなたはもう帰っていいわ。」
男の人はそう言われると、霊夢さんに頭を下げて、長い階段を下っていった。
なんだかんだ、霊夢さんの仕事を見るのは初めてだわ。
「そういえば、こっちの世界にも新聞ってあるのね。」
「ええ。まぁ、書いてるのは天狗だから、事実でしょうけど、100%信用はしないほうがいいわね。」
「天狗が…読ませてもらってもいい?」
「ええ。どうぞ。」
ざっと目を通すと、正直、よくわからない。
というのが本音である。
が、殺生石と書いてあるのは読める。
殺生石…。鳥羽上皇が愛した玉藻前という女性は実は妖狐で、正体を見破られた為に那須へ逃げるけれど、そこで倒されたのよね。
最終的に玉藻前は石となった。
けれど、その石はそれから毒を吐き、人をころし続けたっていう…。
「逸話。ってか伝説…よね。」
「伝説が具現化したものが幻想となるのよ。ここはそんな妄想から生み出された妖怪がたくさんいるわ。」
「妄想も幻想ってことかな。」
準備を済ませ、人里へおりるため、霊夢さんと一緒に階段を下りることにした。
「殺生石はどこ?」
人里まで降りてきた霊夢さんは、手当たり次第に石のことを聞こうとしたけれど、毒を吹く石だ、殺生石だなんだという噂を気にしているのか、人通りはまばらだった。
…というか、霊夢さんは毒とか気にしてないのかしら?
「森…ね。そう、ありがとう。さ、行くわよ。」
一通り情報収集を終わらせたと思われる霊夢さんは、スタスタと歩き出した。
森に行くのかな。
それからはまた人里を外れ山へ上り、かなり大変な道のりだった。
「はぁ、はぁ…い、石はまだなの?」
息を切らして聞くと、霊夢さんは眠そうにあくびをしてから言った。
「ふぁぁ。もう少しだと思うけど。」
それからまた10分くらい歩いた時、見覚えのある人影が目に映った。
金色の髪を風になびかせ、大きな魔女帽をかぶった小さな少女。
魔理沙さんだった。
「魔理沙?あんた、こんなとこでなにしてるのよ。」
霊夢さんは食い気味に聞くと、魔理沙さんは私たちに気付いて、こっちこいよ!と元気な声で叫んだ。
静かな森に魔理沙さんの声が響いて木霊していた。
「私だって妖怪退治が仕事だからな。あと、阿求もいるぜ。」
そう言われ、魔理沙さんの影に隠れていた阿求がペコリとお辞儀をした。
「まあいいか。んで、殺生石ってのは本物なの?」
霊夢さんは目を細めて聞いた。
そうか、毒を気にしていないんじゃなくて、石そのものを信じていないんだわ。
「ああ、まあ、殺生石と言えばそうだが、偽物なんだ。な?阿求。」
「ええ、厳密に言うと、これは伝説上の殺生石じゃないわ。殺生石の伝説は知ってるかしら。」
「えっと、確か、実は妖狐だった女性が逃げた先で退治されて、石に変身したけれど、その石が毒を吹き続けて人を殺し続けたっていう…」
「そう。よく知ってるわね。でもね、この話続くのよ。」
続き?そんなのあったかしら。それに、伝説上の殺生石じゃないとするってことは殺生石がいくつもあるってこと?
「続きは聞いたことないわ。そんなのあるの?」
「あるわ。まあ、資料も欲しいし、続きは鈴奈庵でいいわね。」
そう言うと、阿求はサッと白いハンカチで石を包み、籠の中に入れた。
「ちょ、ちょっと!それ毒じゃ…?」
「大丈夫だ、この籠に魔法をかけたからな。まあ、パチュリーの本の呪文だがな。」
「盗んだのね。」 「盗みましたね。」
霊夢さんと阿求が同時に言い、魔理沙さんは大袈裟にたじろいだ。
魔理沙さんは、私の方を向いて、違うんだって!借りただけだよ!死ぬまで。と、弁明し始めた。
ふっ、とわらって、私は言った。
「盗んだんですか。」
とにかく、話はそれからだ、と阿求に言われ、今は森を抜け鈴奈庵の前にいるのだが、風情のある引き戸に出でいる札には、 "本日 臨時休業" との文字。
しかし。そんなものはいとも気にせず、霊夢さんはガラガラと無造作に、引き戸を勢いよく開ける。
「お邪魔するわね、小鈴ちゃん。」
「おーい、いるか〜?」
霊夢さん、魔理沙さん2人の掛け声に小鈴ちゃんは気がついたようで、奥からパタパタと軽い足音が聞こえてきた。
「すみません、今日は臨時休ぎょ…って、霊夢さんたちか、どうしたんですか?」
威勢はいいけれど、礼儀正しい、元気さを感じる声も、その客が私たちだと気づくと、一気に落胆した声になる。
これは、友達だから気が抜けると思われていると喜べばいいのか、ただ単にがっかりされたのか、正直どんな反応をすれば良いかまだわからない。
「ちょっと用事よ、小鈴、ここに殺生石の伝説が書いてある本があったでしょ。それを貸して頂戴。」
阿求に言われ、小鈴ちゃんはどこだっけ?なんて呟きながら沢山の本や雑誌が並ぶ棚を漁り始めた。
適当に棚に手をかけ、本を見てみると、違和感を覚えた。
いや、その本が変だった、というわけではなく、この幻想郷に似つかわしくない、そう感じる本。どちらかと言えば、
"外の世界" にあるような…
「そりゃあ、外来本だな。外の世界から流れてきたもんだ。」
ふと、後ろから元気な声が投げられた。
そっか。だから見たことあるような雑誌なんだ。改めて店内を見回すとなんだか知っているような本が沢山あるような気がする。
「それにしても、鈴奈庵が休業なんて、何があったの?」
霊夢さんはパラパラと小説のような本を斜め読みしているようだった。
「え?ああ、ほらね、今それこそ殺生石で世間は賑わっているでしょ?それでお父さんが今店を開いても誰もこないだろうって。」
やはり、ここでも石を警戒しているようだった。
その時、小鈴ちゃんが言った。
「あったわ!これよ。」