ヤンデレ小説書いてけ

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12:鈴谷雀:2016/04/04(月) 21:59 ID:COo

ああ、そうだ、隠し味を忘れていた。髪だ。

急いでコンロで私の毛先をじりじりと炙らせると細かく潰し、
それをココアパウダーと共にマカロンの生地の中に入れた。
パウダーの色と似たのか、頭髪らしきものはパウダーと完全に紛れている。

一見すると入れてないようにも思えるが、ボウルの中からは微かに確かに、香ばしい匂いが漂っていた。

一人ぼっちのアパートで自画自賛は気恥しいが、我ながら悦い匂い。
しかしまたかき混ぜようと再度自動泡立て器を掴むと、腕がミシミジ鳴り、二の腕は細い金切り声を上げた。

「……休憩」

ついぞの香りで幾分かは和らいだと思われたが、ただの錯覚だったらしい。
メレンゲの角に気が行ってしまったか、これまでの疲労がここぞとばかりに乗りかかってゆく。
好きらしいから作ってやっているが、あんなにちっちゃいのに手間がかかる面倒なやつ、何がいいか分からない。

そう毒づき、シンクの端にてうつ伏せになろうとすると、淵に飾られた紫陽花の造花が彼女の視線を捕らえた。


あれは……そう、一昨日か、
自分の誕生日だった一昨日、
友人は前触れもなくここを尋ね、あの花を差し出した。

花びらの紫紺の、キツいけど魅力的な感じが私に似ているだとかで、
造花は「花が枯れると悲しいから」だったか。

その友人の言葉通り毅然とした佇まいをしてはいるものの、
まだ柑橘系の甘やかで清涼感の濃い、友人の部屋の匂いを花弁の奥底から放ち続けていた。
果たしてそれは私そっくりなのだろうか、友人そのものであるまいか。


愛される香りだが少し図々しくて、でも憎めなくて、それがまた愛おしい、友人だった。


だからお返しに作ろうかとは思ったが、
脳裏の自分は、それでは足りないといち早く感じていたかもしれない。
友人の香りは心地いいのなら私の香りも心地よいものであって欲しい……
そんな夢見がちさであったが、そうならば至福であった。故に試さずにはいられなかった。

「――よし」

呼吸を早め、スウっとまた新たな空気を吸うと、勢い良く立ち上がり、放置されていた泡立て器を握った。
紫陽花の花は依然として友人をまとう。
それはどこか、友人が自分を見守っているようにも思い、彼女はまた腕を奮い始めた。


千字未満は長々しくない、ゼッタイ。
某診断メーカーにて「紫陽花」、「外道」、「マカロン」のお題にて作成しました。
外道は・・・ま、ヤンデレということで・・・そういうことで・・・
若干長々しくなり失礼しました、この場をお借りして拙作を公開できたこと、感謝申し上げます!


ちょけ◆ww:2016/04/06(水) 12:02 ID:ZYQ [返信]

こういうの好き。


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