文豪の文体に似せて小説を書く

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6:オリヴィア◆O.onU:2016/07/24(日) 08:08

通りすがりです。
文豪というよりは、レトロな雰囲気の文章って感じになってしまったけれど。

   *


 其れは不思議な夜であった。カフェーを出た私が歩いて居たら、薄暗い路地で見知らぬ少年が俯き泣いて居た。年の頃は十四くらいだろうか。私はそっとハンケチーフを差し出した。


「何故泣いて居るのかね?」

「失くしてしまったのです」

「何をだね?」

「とっても大切な物で御座います」


 私は途方に暮れてしまう。泣いている少年を置き去りにすると云うのは善良な市民として誇れるものではない。しかし少年の説明は抽象的が過ぎて、手伝うことも儘ならないのだ。


 ふと、自分の足に何かしらが当たった気がした。足元を見下ろすと、其処には硝子玉が輝いていたのである。金剛石のような光を放つ其れは、空から星が落ちてきた様だ。


「此れのことかね?」


 私は拾い上げて少年に尋ねる。顔を上げた彼は忽ち安堵の表情を浮かべ、大きく頷いた。今まで見えなかった少年の顔が見える様に為り、私は失礼にならない程度に彼を見つめる。


 満天の星空を映したような瞳はぱっちりと開かれて居り、癖の無い髮は絹糸の様に艶やかであった。まるで人の世とは別の世界の住人の様だ。


 其の考えもあながち間違いではないのかも知れない。硝子玉を受け取った彼は、何やら不思議な呪文を唱えたのだ。そうしたところ、忽ち眩い光が現れ、瞬く間に少年を包み込んだ。


「有り難う御座います。此れで僕は帰られます」


 そう言い、少年は私に小さな布袋を手渡した。其れが私の手に渡りましたところ、彼は光と共に消え去り居なくなったのである。私は家に帰るのも忘れて呆けていた。


めい:2019/02/27(水) 19:01 [返信]

なんか雰囲気がすごいです!(語彙力)
昔の文学っぽくて、綺麗です!


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