あの日の君を今でも憶えている。

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24:理空◆LJ2:2017/01/06(金) 23:40

「だから、その心残りを少しでも減らしてみる、っていうのは、どうだろう」
考えながら言うと、美月ちゃんが「え?」と言う。その顔を見ながら続けた。
「思い残しを、少しでも減らそう。例えば、園田くんにもう一度会いたいとか、話をしたいとかさ」
「あーくんと、話……」
美月ちゃんの目が、きらりと動いた。
「そう。あとは、えーと、えーと。ああ、なんでもいいよ。やりたかったこととか、したかったこと。思いついたこと何でもしよう。私、協力するよ」
「え? 陽鶴ちゃんが、協力?」
「うん。美月ちゃん、私と一緒にいないと動けないんでしょ?てことは、私も一緒に行動しないといけないんだよ、きっと。私に、美月ちゃんに協力してあげなさい、って神様が言ってるんだと思う」
園田くんでも、両親でも、誰でもなく。
私だけが彼女を見ることができるというのは、もしかしたらそこに何かがあるのかもしれない。私じゃないとできない何かがあるのかもしれない。
それなら、私は何だってしよう。
彼女の為に、何だって手伝おう。
「そんな。陽鶴ちゃんにそこまで、頼っていいの? 迷惑でしょう?」
美月ちゃんが申し訳なさそうに眉尻を下げる。
声はとても頼りなくて、不安げだった。
私はもそもそとベッドから降りた。頭が少しふらついて、捻挫した足に鋭い痛みが走る。それでもどうにか彼女の正面に座った。
「陽鶴ちゃん?」
えへへ、と笑ってみせた。
私の笑顔は、人の気を抜けさせるという効果がある。多分。
姉みたいに美人じゃないというのも、たまにはいいことがあるのだ。
「私が一緒に、何でもやる。だから、安心して。美月ちゃんの不安、私が半分貰う。だから、大丈夫。美月ちゃんは、一人じゃないよ」
もう一度えへへ、と笑うと、美月ちゃんがびっくり顔で見た。
それから見る間に、美月ちゃんの大きな瞳から綺麗な涙が溢れた。
頬を伝ったその涙は、彼女のスカートの上にパタタッと音を立てて落ちた。
「陽鶴ちゃん、ありが、と……」
「う、うわ! 泣かないでよ、美月ちゃん」
私は慌てて美月ちゃんに手を伸ばした。
しかし、触れる前にぱっと止める。
私の目には、美月ちゃんははっきりと存在している。
栗色の髪は一本一本煌めいているし、桃色のほっぺたは柔らかそうだし、ぎゅっと引き結んだ唇は僅かに震えている。しっかり、見えている。
しかし。彼女の頬を伝う涙を拭おうと伸ばした私の指先は、空を舞った。正確に言えば、彼女の体を何の抵抗もなくすり抜けた。
「あたし、幽霊だよ? なんでもすり抜けちゃう。ほら」
泣き笑いした美月ちゃんが私の手を掴んだ。けれどそれもするりとすり抜けてしまう。私の手を握る感覚は、ない。


理空◆LJ2:2017/01/06(金) 23:42 [返信]


11,七月二十日水曜日[続きC]

タイトル、付け忘れました。


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