ご主人様が私のファンで??

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4:(´・д・`):2019/08/26(月) 00:02

いつも通り登校して教室に入ると、なんだか浮き足立った雰囲気だった。
見慣れない他クラスの女子までいる。
特に女子が色めき立っているということは、どうやら今日は"彼"の登校する日らしい。

「おはよう、恋種」
「あ、雪希ちゃんおはよ!」

挨拶してくれたのは、右城 雪希(みぎしろ せつき)ちゃん。
私のお世話になっている出版社、右城出版の編集長の娘さんだ。
雪希ちゃんは普段から出版社に出入りしているから私の正体がバレちゃったけど、今では一番の親友だ。

「もしかしてあの人が登校するの?」
「そうみたい」

あの人、というのは──。

「あ、来たよ玉敷君!」
「きゃーっ! 久しぶり〜玉敷君!」

無言で教室に入ってきたのは、玉敷 熾央(たましき しおう)君。
数々のドラマやCMに起用されている人気の俳優で、一週間に二、三日は登校する。
俺様でワガママ、しかも色んなアイドルや女優とのスキャンダルが絶えないのに衰えない人気。
玉敷君の机は端っこだというのに、そこだけ人だかりというか、群れができていた。

着崩した制服、ブランド物のピアスやネックレス。
いかにもチャラい遊び人、という感じだけど顔はピンセットで配置したかのように整っている。
それに演技も実力派だ、と監督やプロデューサーからも評判が良い。
まぁ、人気があるのも頷ける。

「すごいなぁ」
「そういきえば、前に雑誌のインタビューで何度か"うち"に来てたわよ。恋種も鉢合わせないように気をつけた方がいいかも」
「え、玉敷君って右城出版に顔出してるんだ……」

俳優だから当然雑誌の取材も受けるんだろう。
右城出版は数多くの女性誌や週刊誌を出しているし、玉敷君が出入りしていてもおかしくはない。

「今日も右城出版に打ち合わせ行くんだけど……まぁすぐ終わるし大丈夫でしょ」
「油断は禁物よ。恋種、バレるの嫌なんでしょう?」
「うん……」

小学校の頃、ノートに描いた小説をみんなに回し読みされて笑い者にされて以来、小説を描いていることを秘密裏にしてきた。
まだ大して知名度もない作家だから、気をつければバレたりしないと思うけど……。


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