*with you in a new world*~アラジン二次創作~

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29:樹音@新一 ◆6Y:2019/10/30(水) 20:12 ID:/1c

*第九話 甘い一時を *

―ジャスミンの姿をしたアカネは軽い足取りで
歩き出す。するとアカネは視線を感じた。

「ジャスミン王女だ!」

「お美しい…」

市場を行き交う人々が、ジャスミンを見つけ
そんなことを呟く。ジャスミンに手を振る人も中には
いた。ジャスミンの姿をしたアカネは、少し
躊躇いがちに手を振り返し、自分は今ジャスミンなのだと
実感した。
**
宮殿に戻ると、アラジンが待っていた。
アブーも一緒だ。

「お帰り、ジャスミン」

アラジンはジャスミンの姿をしたアカネにニコリと
人の良さそうな笑みを浮かべた。その笑顔が
本来の姿をした自分に笑いかける時より、数倍
にこやかに、微笑んでいるような気がした。

「あ…た、ただいま、アル」

アカネは戸惑いつつ、アラジンに返事をした。
心臓がドキドキし、どう答えたら良いのか
分からなくなりそうだ。そんな彼女の様子を見た
アラジンは心配そうな表情をし、こう言った。

「大丈夫かい、ジャスミン?具合でも悪い?」

「へ?あ、ええ…大丈夫よ、気にしないで」

ジャスミンになりきるのはアカネには少しだけ
難しかった。あたし、こんなんで大丈夫かしら…
アカネは心でそう呟いた。

「そう?それなら、良いんだけど。あ、そうだ!噴水に行かない?」

アラジンはアカネを誘う。アカネは緊張して
断りかけたが、愛してもらいたくてこの姿に
なったのだ。チャンスは逃せない。

「勿論よ、行きましょ」
**
噴水に着くと、アラジンは彼女に接近する。
アカネの頬はぼうっと赤くなる。アラジンと
ジャスミンは、いつもこんな調子なのだろうか。
彼女は考える。

「久しぶりに、二人になれて嬉しいよ」

彼も頬を赤く染めながら言った。
アカネの胸は彼がそう言った時、チクリと痛む。
「ごめんなさい、アル。本当はあたしなの。アカネなのよ」
心で呟く。
俯いているアカネを見て、アラジンは言った。

「大丈夫?やっぱり、具合が悪いんじゃ……?」


樹音@新一 ◆6Y:2019/11/03(日) 10:15 ID:uek [返信]

(>>29の続き)

「そんなことないわ。大丈夫よ、心配してくれてありがとう」

アカネはにっこり微笑んで言った。
そして、心の中で「ちゃんとやるのよ」と
自分を励ました。アカネは元・踊り子。色仕掛けも
得意だ。

「アル…愛してる」

アカネは歓迎会の時のようにアラジンに
胸が当たるほどに近付く。アラジンはボッと
顔を赤らめ、赤面するがその後すぐ退けぞいた。

「え…」

アカネは驚いて、思わず声を漏らしてしまう。
まさか―正体がバレたの?アカネは顔を真っ青にする。

「あ、ごめん。いきなりでちょっと驚いちゃって…僕も君を愛してる。これまでも、これからもずっとだ」

アラジンはそう言ってアカネの目をまっすぐに
見つめる。アカネはホッとした。正体がバレた訳じゃ
無かったのね。
その後、アカネは高鳴る胸を何とか落ち着かせた。
キスでもされてしまうかもしれないと思ったからだ。
アカネはそわそわしてしまう。そしてジャスミンに
心で精一杯謝る。「ごめんなさい、許して」と。

―だがしかし。アラジンはアカネにキスは
しなかった。それどころか、抱き締めることさえ。
アカネはもう一度アラジンに接近するが、
アラジンはおもむろに立ち上がり、こう言ったのだ。

「ごめん。疲れてるのは僕の方なのかも。少し休ませてくれ」

そしてアラジンはその場を離れた。
アカネはさぁっと血の気が引いていくのが分かった。
無駄だった。アラジンの愛する人である
ジャスミンに変身しても。

「結局、駄目だったわ。あたしはいつもそう。愛する人に、本当に愛してはもらえない…。そうよ、だから家族もバラバラになった…」

そう呟き、涙を流して静かに泣いた。心の中に
もう会えない家族のことを思い描きながら。
**
―一方、アランの要塞。アランは可愛らしい寝息を
たてながら眠るジャスミンを見つめ、呟くように
言った。

「ジャスミン…眠る姿さえも美しい…」

シュウは読んでいる本から目を離すことなく
アランに調子を合わせて言った。

「まるで眠り姫みたいだな」

「いや、それ以上に美しい王女だよ、ジャスミン王女は。全く、あのドブネズミのワイフにしておくには勿体ない!宝の持ち腐れだ!」

シュウに答えながら、アランは怒鳴る。
アランの頭にはアラジンを地獄に突き落とすという
ことしか頭にないのである。

【第十話 本当にジャスミンなのか へ続く】


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