悪魔、と言う存在をご存知だろうか。
簡単に言えば『悪』を象徴した生物であり、ありとあらゆる宗教にて災いをもたらしたり、人を邪悪な方へ誘ったりする空想上の存在。
それが悪魔__
「私は悪魔。貴方の願いを叶えに来ました」
ということになっている。
「悪魔?」
「ええ、そうです。私が悪魔です」
その女性は張り付いたような笑顔を浮かべると握手を求めているのかユリへ手を差し出した。自身の心の高ぶりを感じながらユリは女性の手を握る。女性の手は見事なまでに白く、細長い。その造形は最早芸術品と言える程だ。
「えー、貴方の願いは?」
「まって、まって。貴方って凄く綺麗ね。悪魔って全員が全員そうなの?」
「まぁ、契約相手によりますかね」
「すごーい!!」
ユリは目をキラキラとさせて質問を続けた。
「大悪魔、小悪魔っていうのもいるの?」
「階級の高い、低いはありますね」
「休みの日はどうしてるの?」
「休みは特にはありませんかね、人間界をまわって次のターゲットを見つける日は大体暇ですが」
「観察するだけだものね。貴方達って死なないの?」
「少なくとも人間よりは長生きですね。決まった寿命を終えるまでは食べるものがなくても、寝なくても死にはしませんから」
「ふーん、じゃあ私を不死身にしてってのは?」
「無理ですね。私達でさえ、手に入れることができないものを与えることはできません。まぁ、人間並みの普通の寿命まで生かすことはできますよ?」
「どうです? お嬢様、その暗闇を映す片目も、心臓を蝕むご病気も私は全て治すことができるんです」
「叶えることができるのは三つの願い。全てを叶えきったのなら、命を貰っていく」
「それが悪魔でございます」
「貴方はこの三つの願いで何を叶えます?」
白く静かな部屋に鳴り響く機械音はユリにとってただの生きている証だ。
機能しない左目、十分なものを得られない肉体は足枷でしかない。
__私の人生は最悪だ。
そんなユリの心中を嗅ぎつけて女性はやって来たのだろう。
そうねぇ、と呟いた後ユリは最後の質問を女性へなげかけた。
「願いは貴方が叶えるかどうか決めるの?」
「いいえ、私達にとって契約主の願いは絶対です」
「そう、ならいいの。ありがとう」
「悪魔さん、私の願いはね__」
「好きな物は自分の物にしたいってよく言うじゃない」
「私、あの考え嫌いなのよ」
「嫌い、はおかしいか。正確には理解できないの」
「貴方には何故だかわかる?」
その長い白髪を揺らして少女はベットに体を横たわせた黒髪の女性に問いかけた。
女性はジッと少女を見つめるばかりだ。
「そんなに悩まなくたっていいじゃない。答えは簡単よ」
「好きな物は既に自分の物だから。貴方だってそうだわ」
少女は女性へ無垢な微笑みを見せた。
ユリ………ユリ……!!!
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