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15:匿名:2018/06/04(月) 18:13

夏の旅のお話


匿名:2018/06/04(月) 21:07 [返信]

>>15 夏の旅のお話

夏休みにも入り、セミがジリジリと鳴き出した頃、ある田舎の町に三人の少女がいた。
彼女達は、都会の方から遥々と旅に来ている。
「いやー、田舎もいいねえ」
茶髪のポニーテールを揺らす少女が、軽い口調でそう言う。
「そうね」
「そ、そうだね……!」
黒髪ロングのクールな少女と黒髪ショートの大人しそうな少女もそれに共感する。
この時、彼女達はこれから悲劇が起きることを知らなかった。

三人はよっぽど田舎町に夢中になっていたのか、気がつくと辺りが暗くなっていた。
「そろそろ帰らないとね」
黒髪ロングの少女は、そう言って駅の時計を見る。
「……えっ」
その時、彼女はあることに気がついた。
「ねえ、咲。私達の時計ずれてない?」
そして、茶髪のポニーテールの少女に確認をする。
「え? ……ホントだ。ヤバっ」
「電車が来ないと思ったら……」
黒髪ロングの少女は深くため息をつく。
もう結構な時間なので、電車は通らない。
「どうする……?」
黒髪ショートの少女は、二人の顔を見て心配そうに尋ねる。
「とりあえず、親に帰れないかもって連絡するわ」
黒髪ロングの少女はスマホを取り出して、電話をかけようとした。その時……
「……あれ、まだ人居たんだ」
目の前から三人と同い年くらいの少年がやってくる。
「あー、電車に乗り遅れたんよ」
その少年に、茶髪のポニーテールの少女が苦笑いしながら説明する。
「うわ、ドンマイ。良ければ送っていこうか?」
すると、少年は特に何でもなさそうな表情でさりげなくすごい事を言う。
「えっ……? あなた、私たちと同い年くらいでしょう?」
困惑した黒髪ロングの少女が少年にそう返す。
「……俺ハタチなんだけど」
少年……否、青年は露骨に不機嫌そうな顔をして、そう言った。
「ええーっ!?」
三人はびっくりして同時に大声をあげる。
「まあ、いいか。三人とも、どこ住み?」
「東京です……」
「うお、都会だな。まあ、ここからそこまで遠くないし、車で行けるか」
青年はそう言って、駅の近くに停めてあった車の所へ歩き出す。
「ついてきな」

「あ、ありがとうございます」
「大丈夫大丈夫」
三人は青年の車に乗って、東京に辿り着いた。
もうそこそこな時間になってしまっているので、三人は青年に感謝の言葉を述べて、急いで自宅へと帰る。

「いやー、昨日は酷かったねー」
「ええ」
「うん……」
その旅の次の日、黒髪ロングの少女の家に集合した三人は、昨日の事を語る。
「今度からは……時計もちゃんと確認しようか」
「ええ……」
反省もきちんとし、そして……
「夏の旅は、怖い!」
口を揃えて、そう叫んだ。

―――END


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