深緑の魔獣

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1:白檀◆Qs:2016/11/26(土) 20:44


部活の小説があったから
一応。

ヒドイン小説はこんなに雰囲気暗くしないけどww

2:白檀◆Qs:2016/11/26(土) 20:45

 森の中にポツリと一軒だけ建った木造りの小屋。その中から、一方的に語りかける声が聞こえる。
「フリーセル、見てごらん。今日は空が綺麗だよ」
 一人の少年が、小屋に取り付けられた小さな窓から顔を出し、眩しそうに天を仰いだ。
 年のころは十二、三歳、あどけなさを残しながらもどこか大人びた顔立ちをしている。ストレートの髪はさながら金の糸。整った顔立ちだが、深い蒼の瞳はどこか物憂げにも見える。
「ねえ、フリーセル?」
 振り向きざまに少年が呟くと、それに呼応するように何かがぐるる…と鳴き声を発する。窓とは反対側、部屋の隅にかかるハンモックの脇から姿を現したのは、一体の…獣、というのが一番近い表現だろうか。獅子の子と狼が混ざったような顔、茶色と灰色の混ざった毛を生やした身体で、大きさは人の赤ん坊ほど。鷲や鷹を思わせる翼をもった、四足歩行の生き物である。見る人が見れば卒倒してしまうような風貌のそれを、少年は話し相手とし、明らかに親しく接していた。
 獣は日に当たるか、当たらないかというところまで来て足を止め、少年は窓から離れると獣に近づいていく。
「今日は寒いね、平気かい?」
 少年は、獣の顔に手を触れると、包み込むように抱きしめた。獣は、頷くでも鳴くでもなく、ただ喉を鳴らすのみ。
「フリーセル、僕たちはずっと一緒だよ。永遠の友達さ」
 そう云いつつ、虚空を眺める少年。後にはただ、かすかに吹く風が、葉を揺らす音だけが残った。

           *    *      * 

 この国は、いたって普通な国。経済状況、民衆の暮らし、政治に貿易、王の評判。どこを取り上げても、落ち込んでいるところもなければ、飛びぬけて良いところも無い。そんな国だ。
 普通でないところを取り上げるとするのならば、それは二つ。一つは、兵が他の国より多少、多いこと。そしてもう一つは、それが、たった一体の生命体の為である事だった。しかしながらその事実は、政府一部の人間や、一件の当事者達である兵士、動物科学者なる者が知るのみ。無論、一般市民や王宮住まいの貴族の窺い知るところではない。
「しかし…何処にいるかも判らない、風貌もハッキリしない。そんな生き物を俺たち如きの力で捕らえられるものなのか?」
 城の片隅、兵士の詰め所の一画。一人の兵士が、机に向かい武器を磨きながら退屈そうにぼやいた。歳は二十代半ば程。
「馬鹿野郎。そんなことを言うものじゃない」
 言ったのは別の兵士。こちらは四十がらみで、背は高め。まばらに生やした無精ひげがだらしなくも、それが一番の特徴となっている。若い方の兵士をとがめるような口調だが、この兵士も、手には獣の特徴が書かれた紙を持ち、どうしたものかと考えあぐねているようだった。
「そうは言うけどなぁ、考えても見ろ。特徴は曖昧、色も判らず、大まかな絵すら無い。こんな状況で見つけて捕らえろ。できれば生け捕りにしろ、だなんて言う方が間違っているとは思わないか?」
 若い方の兵士が言う。もう一人は返す言葉が無いらしく、紙を眺めて黙り込んだ。改めて紙に目を移す。
「確かに、これだけでは、な…」
 彼は云って紙に書かれた、《獅子の子と狼の混ざったような顔に翼の生えた生き物》という部分を人差し指でなぞった。

3:白檀◆Qs:2016/11/26(土) 20:48

こぴぺめんどう

4:白檀◆Qs:2016/11/26(土) 20:54

 太陽が真上に昇り、木々に光を遮られる森も普段よりかは明るさが増してきたころ、小屋から再度、少年の呟く声が聞こえる。
「うーん…お腹が空いたね、フリーセル…何か獲りに行こうか」
 獣はぐるる…と鳴くだけだが、少年はそれを返事ととった様。出かける支度を始めた。
 いくらか時間が経ち、少年が獣を抱き上げる。
「さあ、フリーセル。出かけようか」
 獣に笑いかける少年の髪が風に揺れた。獣はすり抜けるように少年の腕を離れると、森の奥へとかけていく。
「フリーセル?」
 少年は驚いた様子で慌てて獣を追いかけた。途中、何度か草に足をとられそうになるが、そんなものは構わない様だった。
「待ってくれよフリーセル!急にどうしたんだい?」
 夢中で獣を追いかける少年。獣は、そんな少年には目もくれず、ただ森の奥へとかけていく。まるで何かを目指すように。
「あ…」
 やがてたどり着いた場所…森の、少し開けた場所を見渡して、少年は目を見開いた。そして、ぽん、と手を打つと、
「そうだったね」
と、呟く。
 獣の方はというと、その開けた場所に横倒し、もとい、罠にかかって息絶えた熊の肉を、器用に前足で少しずつ引き裂いて、奥歯ですり潰し食していた。
「そっか、僕らが作った罠に獲物がかかっているのを食べようと思ったんだね。…血の匂いを追ったのかい?フリーセル、君は鼻も頭もいいんだなぁ」
 言って少年は、獣の頭を撫でようとする。しかし獣は、その差し出された手を、牙のない、潰れた歯で噛んだ。
「あはは…痛いなぁ。甘噛みかい?でも、甘噛みは懐いている証拠だって、母さんが言っていたな…まあ、懐いているのは当たり前だよね。だって、」
 言いつつ少年は、噛まれているのとは反対の手で獣の頭を撫でる。
「僕らは、永遠の友達だものね」
 言う少年は無邪気な顔で獣を見つめ、獣の瞳に宿る狂気の色にはまったく気づいていないようだった。

5:白檀◆Qs:2016/11/26(土) 20:55



「早くうちの子を…うちの子を探してください!お願いします!」
 城下町の一画、そこそこに立派な家で、一人の婦人が兵士に訴えていた。
「落ち着いてください、奥様。貴方のお子様は私どもが必ず、見付けだします故…」
 四十がらみで背は高め。まばらに生やした無精ひげの兵士が、半ば錯乱しかけた婦人を落ち着かせようと試みる。
「そんなことを言って、息子がいなくなってどれだけ経っていると思っているのですか!二年と四ヵ月…これだけの期間、自分の息子が行方知れずの中、落ち着いていられる人なんていらっしゃって!?」
 しかし、兵士の努力も虚しく、彼女の狂乱ぶりは留まるところを知らない。最早、何かを言えば荒波が帰ってくるような状況だった。
「どうしてくれるのですか…息子を、早く…どうしてくれるのよ…ねえ、どうしてくれるのぉ…!」
 云った言葉は誰に対してなのか。彼女は泣き崩れ、それをメイドが支える。うろたえる兵士を一人のメイドが見据えた。
「すみません…奥様はもうお話ができる状態ではありませんのでお引取りください…」
 メイドが、申し訳なさそうなのと迷惑そうなのを足して割ったような表情で兵士を見つめる。別のメイドがやってきて、婦人を奥の部屋へと誘導する。仕方なく兵士は踵を返し……あることに思い立って振り返った。
「では、一つだけよろしいですか…」
「はい?」
 メイドが、兵士を見据える。兵士は少し考えるような動作をし、口を開いた。
「息子さんが失踪なさる前…何か変わったことはございませんでしたか?」
 彼が言うとメイドは、少し戸惑い、決心したように小さく息を吐く。
「実はお坊ちゃまは、お屋敷での…その、温室育ちというのですかね…それがどうもお気に召さない様でして、毎日のように、森へ、〔探検〕と称し出かけていっては沢山擦り傷を作ってくる、困ったお方だったのです。その探検好きが講じて、虫や爬虫類などを捕ってきては奥様や私たちメイドを困らせていました。それが、二年と…半年ほど前、ちょうど、お坊ちゃまが失踪なさる直前ですね。なんとも不思議な生き物をお坊ちゃまは屋敷内に連れ込んできたのです」
 メイドの言葉に驚愕の表情を浮かべる兵士。メイドは言葉を続ける。
「その生き物は…その、なんと言いましょうか…かなり、グロテスクなモノでして…奥様はその生き物が大層お気に召さなかったようでして…今すぐもといた場所に戻してくるように仰ったのです。その日はこの屋敷も荒れました…。いつもは、しばらくすれば、大人しく奥様の言いつけをしぶしぶながらもお聞きになるお坊ちゃまが、何故かあの日は激しく食い下がり、奥様も、その、気性の激しい方ですので…」
 そこで言葉を切るメイド。沈痛な面持ちからその後のことを何とはなしに察した兵士が口を開く。
「事情は、理解いたしました。しかし…何故、そのことを最初に仰ってはくれなかったのですか?」
 少し不満げとも見える兵士の態度にうろたえたメイドが慌ててまくし立てた。
「それはっ!その、奥様が、大変体裁を気になさる方でして…今回のような異様なものを屋敷に持ち込んだことが近隣の方々に知れ渡ったりでもしたら…とご心配されて…。メイドである私たちもこのことに関しては口止めされていたのです。しかし、このままお坊ちゃまが見つからないままなのは奥様も本意ではないことと思いますので、一応申し上げておいたほうがよろしいかと」
 そういうことか、と兵士は唇を噛み締める。今、彼の思考を占めるのは、この家の行方不明になった子供ではない。彼が連れ帰ってきたという《生き物》と、今、自分たちが兵士として働いている理由のひとつである、《獅子の子と狼の混ざったような顔に翼の生えた生き物》のこと。そして…
「ちなみに、その生き物の特徴は?」
「え?あ、はい…ライオンと…狼、や犬、ですかね、とにかくそのような特徴を持った顔に、褐色の毛を生やした身体で、大きさは…ちょうど、人の赤ん坊ほどでした。身体を覆うほどの、大きな翼が生えていたと思います」
戸惑いながら言うメイドの言葉に、兵士の頭の中でその二つの情報が繋がった。

6:白檀◆Qs:2016/11/26(土) 21:09

木々の隙間から、月明かりが森を微かに照らしている。小屋の小さな窓からは、幾筋もの淡い光が差し込んでいた。
「…フリーセル?」
 ハンモックに身を預けた少年が、獣に問う。獣は、小屋の中を彷徨いながら、時折小さく鳴いていた。少年はハンモックから降りると、部屋をうろつく獣を抱きかかえ、座る。
「眠れないのかい…?どうしたのかな…」
 云って、ふと目を窓にやる少年。森の木々の隙間から、欠けた月…三日月が微かに目に映る。蒼い瞳に景色を映しながら、彼は何かを思い出したかのように立ち上がった。
「そうか、今日は三日月なんだね。僕と君が出会った、あの日と同じ…」
 獣が呼応するかのように鳴く。少年は、獣を撫でながら語りかけた。
「でも、あの時は本当にびっくりしたよ。いきなり足が動かなくなったと思ったら、痛みが走って…結局、何の罠だったのかな?森に設置された罠なら、狩猟用なんだろうけど……。あの時、君が助けてくれなかったら、僕はあのまま大変なことになっていたかもね。本当に、感謝しているよ、フリーセル…」
 少年が、思い出に浸る中、獣は微かに喉を鳴らし続ける。……少年にはそう聞こえているだろうが、実はそれは、聞こえるかどうかもわからないほど微かなうなり声だった。
 しかし、獣は何かに感づいたように身を強張らせ、先ほどよりも大きいうなり声を上げる。まるで、何かに警戒しているかのように。
「フリーセル?フリーセル!急にどうしたんだい?落ち着いてくれよフリーセル!」
 流石にその様子を見て少年は異変を感じ取る。いくら声をかけても一方向を見つめたままうなり続ける獣に、もしかしたらこれだけ警戒しなければならない何かがあるのかもしれないと、思ったか、彼は小屋の奥にある、肉切り用のナイフと小さなランタンを持ってきた。
「フリーセル、そっちに何かがあるんだね?僕は君を信じるよ」
 少年は獣を抱きかかえると、すぐさま小屋を飛び出し、獣が睨んでいたのとは反対方向…森の奥へと駆け出した。
「まだ何があるのかわからないけれど…取り敢えず逃げておくに越したことはないよね」
 
*    *    *

「くそっ、まだ見つからないのか!」
四十がらみの、背の高い兵士が吐き捨てるように言う。彼の周りには、別の兵士が六人。それぞれがランタンを持ち、護身用という名目で腰には剣をぶら下げている。軽鎧に、少々固めの素材の黒いズボン、アーミーブーツという、簡単だが、一目で兵士とわかる格好である。無論、四十がらみの兵士も、同じ風貌。
「もう諦めましょうよ。いくらなんでもこの人数じゃあ、だだっ広い森の中の子供と動物見つけるなんて無理ですよ」
 二十代半ばほどの兵士が、弱音を吐いた。しかし彼の言葉に四十がらみの兵士は揺れない。悠然と前を見据えて、目当ての獲物を捜す。
「見つかるはずだ、必ず。これだけ長期に渡って行方がわからなくなっているんだ。どこかに暮らしている場所が…例えば、今使っていない猟師小屋か何かが、」
 あるはずなんだ、と言いかけて。
 彼が見たのは、薄汚れた小屋と、その奥に見える小さな明かり。そして、その明かりに微かに映し出された異形の姿だった。
「いたぞ!あそこだ!」

7:白檀◆Qs:2016/11/26(土) 21:12

こぴぺめんどくなった
もーやだ

誰か読むなら貼るけど
多分だれも読まんwwww

8:白檀◆Qs:2016/11/27(日) 22:00

 いきなり背後から上がった声に、少年は飛び上がる。振り返りもせず一目散に森の奥へと駆け出した。
「人…?一体どういうことなんだろう?」
 走りながら独り言を漏らす少年。彼に抱きかかえられた獣は相も変わらずうなり続けていた。
 ちらりと振り返ると、武装した男たちが少年を追いかけている。見つかった原因が手に持つランタンだと自覚していない彼は、明かりを消すこともせずそのまま走り続けた。
「いいか!?子供には危害を加えないように気をつけろ!獣も殺さずに生け捕りにしろとのことだ!だが、もしものときは獣の方は殺しても構わん!」
「御意!」
 走りながら叫ぶ兵士たちの言葉に、少年の思考が一瞬停止した。
「殺す…?」
―フリーセルを?

 瞬間、少年の右手はナイフへと伸びていた。


「覚悟っ!」
 迫りくる兵士。腕をつかまれる直前、兵士に向かってナイフを投げつける少年。幸か不幸か、兵士の右ももに命中する。
「ぐあぁっ!」
 うめき声を上げ、たまらず倒れる兵士。まだ若い兵士な為か、自らの足から流れるどす黒く熱い液体にうろたえるばかりである。
「くそっ!」
 それを見て足を止める四十がらみの兵士。手当てを試みるが、それを二十代半ばの兵士が止める。
「先に行ってください!手当ては、私が」
 一瞬躊躇する兵士。しかし、頭よりも先に体は動いていた。目指すのは、森の奥、少年が消えた方である。


「はぁ、はぁ…フリーセル、もう少しだよ」
 少年は森の奥にある湖の近くまで来ていた。道は草に覆われた上り坂で、湖がある場所は開けた所になっている。彼は空を見上げた。
「多分、もうすぐだね。…彼らがやってきたのがこの時間帯でよかった」
 少年は湖のすぐまでたどり着くと、静かにその場に佇み、獣を抱き直す。程なく、今来た道の奥のほうから、微かに足音が聞こえてきた。まだ見えるほどではない。
「あと少し…あと少しのはずなんだ…」
 少年の顔が強張る。空気に緊張が走った。

 そして

9:白檀◆Qs:2016/11/27(日) 22:01

「なんだこれは!?」
「体が動きません!」
 辛抱数分後、聞こえていた足音が途絶え、変わりに二、三人の驚愕の声が聞こえる。少年は声のしたほうにかけていった。
「おじさんたち、兵隊さんだよね?どうしてこんな所に来たの?」
少し距離をとり、兵士たちを見下ろす形で語りかける。冷静な態度にも見えるが、その声は怒気を孕んでいた。四十がらみの兵士が、膝をつき、動かぬ体を無理やり動かそうとする。
「無駄だと思うよ。そこに咲いている花があるだろう?その花は夜明けの数時間前から吸うと麻痺効果のある特殊な花粉を飛ばす。今はそっちが風下だから、おじさんたちは動けない」
 少年の冷ややかな口調に兵士は苦い表情を浮かべた。仕方なく返答する。
「君には危害は加えない。ただしその動物をこちらに渡してほしいんだ。今、この国が、兵力の増強を図っているのはその動物を手にするためなんだ」
 兵士の言葉に、少年は少し考える。程なくして、もう一度兵士の顔を見据え、言った。
「フリーセルを手に入れてどうする気なんだ?フリーセルを何のために渡さなければならない?」
 兵士は、焦っていた。明らかにこの少年は獣を親しい者と捉えている。獣のことを雑に扱うような台詞を吐けば、怒りに震えた少年にこの場で殺されかねないと考えていたのだ。しかし、彼の思考を別の若い兵士が打ち砕いた。
「その獣は怪物なんだ!今はまだ子供だが、成長すれば必ず危害が及ぶ。だからそれを未然に防ぐために私たちはその生物を実験に…」
「実験だって?」
 若い兵士の言葉に、少年の眉がはねる。怒りから、唇は戦慄き、手は震えていた。震える手から獣が飛び降りると、そのまま少年の脇に鎮座する。四十がらみの兵士は、内心臍を噛んだ。
「待ってくれ!実験といっても酷いことをするつもりはないんだ!頼むからその生物を渡してくれ!」
 四十がらみの兵士は必死の弁解を試みるが、少年は聞く耳を持たない。
「黙れ!大人なんて所詮みんな同じだ。獣だの、生物だの、フリーセルをそんな呼び方して化け物扱い。母さんだって、父さんだって、メイドだってそうだった!ふざけるな!フリーセルは化け物なんかじゃない!犬や猫、人間とだって一緒だ!心の通じ合える、僕の大切な、たった一人の親友だ!!」
 少年は叫んだ。それは、自らを助けてくれた友達への感謝と、そんな彼と獣を蔑む大人への怒りが入り混じった、心からの叫びだった。
 若い兵士も、四十がらみの兵士も、その他の兵士も、皆戦意を喪失していた。このままではどうすることもできない。体は動かないし、その動かない体では目的の獣を奪還することもできない。諦めかけて、四十がらみの兵士の手が、何か硬いものに当たった。硬くて、棒状。横目で見ると、それは腰に下げていた剣だった。彼の頭に、ひとつの案が浮かぶ。
―そうだ、万が一の場合は殺しても構わない…。そういう命令だったはずだ。奪還がままならぬのならば、いっそ…
「うおおおおっ!!」
 彼は、今持てる最後の力を振り絞り、剣を抜き、投げ放った。驚愕の表情を浮かべる、少年とその他の兵士たち。この場に居合わせた全員が、この瞬間、スローモーションに見えた。

そして
 獣が、吠えた。

『るぐおおおおおぉおぉっっ!!』

 今まで、一度も少年が聞いたことのない、獣の遠吠えが森に木霊し、獣の全身が光り輝く。

「何なんだ…一体!?」
 云ったのは、誰だったか。

 次の瞬間、骨を砕く音と肉を引き裂く音。兵士たちの悲鳴が響き渡った。



*    *    *

―フリーセル?

ぐるる…という、獣の鳴く声。

―よかった、フリーセル。無事だったんだね。

 またも、獣は鳴くのみ。

―それにしても…ここは何処だい?なんだか、真っ白だね…

 今度は、獣は鳴かなかった。

―誰もいない、何もない…君と僕だけ。

 獣は、動かない。

―素敵だね、なんて素敵なんだろう。ここなら、誰にも邪魔されない。僕たちは、永遠に一緒だね。

 呼応するように、小さく、小さく、獣が泣いた。

10:白檀◆Qs:2016/11/27(日) 22:01

 ある一軒の家。外は暗く、三日月。寝所にともに寝そべる親子が話していた。
「おかあさん、それからどうなったの?」
「危険を感じて成長してしまった獣は、理性を失って、そこにいる人たちをみんな食べてしまったのよ」
「…男の子も?」
「そうよ」
「…それは、悲しいね」
「そうね、けれど、少年は死んでしまったことに気づかないまま、遠い世界で獣とずっと暮らすことができたのよ」
「でも、獣が可哀想だよ」
「そうね…」
「じゃあ、兵隊さんたちは、どうなったの?国は?」
「兵隊さんたちも、食べられてしまって、獣のせいで国は滅びたのよ。けれど、獣も、ずうっと前に死んでしまったの」
「そっか…じゃあ、怖くないね!」
「そうね…」
「でも、僕、その獣にそっくりなお友達がいるんだよ。こないだ、森に遊びに行ったら出会ったんだ。ライオンと狼さんみたいなや顔で茶色っぽい毛。大きさは、人間の赤ちゃんくらいだよ。大きな羽も、生えてたなぁ…」

                         END

11:白檀◆Qs:2016/11/27(日) 22:01

ふー、終了

12:青蓮:2016/12/10(土) 11:32

 なんという。
月のない夜のような。
静かでいて、悲しいお話ですね……。

 改めまして、こんにちは青蓮です。
読ませていただきましたが、なんとも謎の多い……。

 短編ということもあるかも知れませんが、細かに語られていないぶん想像力が掻き立てられます。
何が少年をそこまで駆り立てたのか。
フリーセルの大量虐殺は少年の愛ゆえなのか、殺されそうになった獣の本能か……。
読む人によって感想が違う作品だなーと感じました。

 で、こっからは余談なのですが。
読んでてちょーっと読点(、)が多すぎるかなーと思いました。
(特に主語直後)
強調するために一度文を切るのはずごくよく分かりますが、
あくまで読者の息継ぎポイントなので多用すると読みにくくなるかもです。
1つの文に句読点1個ずつを意識してみて下さい。

 あと、容姿の描写ってどう思います?
自分は伏線じゃない限りテキトーな人なので、
この作品読んでて「しっかりしてんなー」と思ったのですが……。
 白檀さんってどんな風に意識してるんですかね?

 って最終的に質問になっちゃいましたw
とにかく、素敵な作品。ありがとうございました。ではー

13:越後:2016/12/10(土) 11:45

獣の姿の説明を読んで「人喰いの大鷲トリコ」を思い浮かべたのは俺だけじゃないはz((

14:白檀:2016/12/10(土) 21:12

>>12

なるほど、確かにそうですね。

一応しっかりとした設定はあるにはあるのですが・・・
まぁ、そこは想像にお任せしたほうがいいのかな?
(まとめる能力がなくて書きたいことが書けなかったなんて
言ってない言ってない)←←
いやぁ、なんせ「部活内冊子」での作品だったもので、
ページ数をそうそう取れるわけもなく(それでも私だけ8ページもありましたが汗)
色々と説明不足なところはあるように思えますね。自分でも。
それから読点の話、なるほど確かにという感じですね。
1文1個心がけてみようと思います。

それから容姿の描写の話ですが、
自分は「読んでいて絵が見える小説」を目指していますので、
出来るだけわかりやすく鮮明に風景が浮かぶように心がけている次第です。
(まだまだですが・・・)


ともあれ読んでいただきありがとうございました!
また、予想以上に丁寧な読み込みありがとうございます^^

15:白檀:2016/12/10(土) 21:13

>>13

あのCMめっさ怖かったんですけど・・・←

16:スレ主:2017/01/25(水) 13:44

あげてみる

17:サントロンの幽霊物書き:2017/01/25(水) 19:07

人と獣の禁じられた友情とその悲劇的な末路という、王道をゆく展開が実に見事。
ラストはフリーセルにとって救いであるとも、あるいは再びの悲劇を予感させる恐怖演出とも取れる想像に楽しい結末でありました。

18:はる:2017/01/25(水) 19:58

恋空とか、君がくれたものとかの小説好きな人います?私は大好きです!気が合う子と話したーい!

19:スレ主:2017/01/27(金) 12:04

>>17
どうもですー!めっちゃ嬉しいいい

20:スレ主:2017/01/27(金) 12:04

>>18
スレチです

21:すれぬすぃ:2017/02/07(火) 14:47

あげてみるるる


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