プロローグ
とても言葉には表せない苦痛が俺を襲う。
棒のようなものが俺の肛門に突き刺さっているのだ。
「早く、国王の居場所を言え。さもなくば、お前の腸がぐちゃぐちゃになってしまうぞ? 」
取調官がそう言った。この取調官が苦痛の原因である。こいつが、拷問のつもりなのだろうか、棒のようなものを俺の肛門に突き刺したのだ。
「知らないと言っているだろ! お前たちがいくら拷問をしようと、俺は本当に知らないんだよ。嘘の場所を言うくらいしかないね」
「知らないはずないよな? 」
取調官はそう言って、棒状のものをさらに奥へと突き刺すのであった。
「や、やめろおおおおお! 」
当然、痛みと不快感が俺を襲う。生きた心地などしない。
「やめねえよ! お前このまま、サウナ5時間な? おい、巡査、こいつをサウナ室へ連れていけ」
この糞野郎は俺にさらなる地獄を与えようとしたのであった。棒状のものを突き刺されたままで、サウナ5時間だ。
「はあ、はあ、……俺はただ地獄を味わう事しかできないじゃないかよ。国王の場所など知らないのだからな! 」
実際、国王の場所など知らない。
「まあ、喋る気になったらいつでも出してやるから地獄ではないだろ? 」
嗚呼、こちらの言い分を聞くつもりはないらしい。
地獄は今後も長い間、続くのだろう。運よく死んだら良いな。
痛そううちなら無理だ…頑張って
3:アーリア◆Z.:2018/07/15(日) 23:28 第1話 引きこもり入社する
「糞ニート、早く引きこもりやめて働けよ」
妹の声が聞こえてくる。そしてそては、俺を罵倒する内容だ。間違いなく、俺を心底見下しているのだろう。
「働きもせず食う飯は旨いか? うちらが稼いだカネで飯食いやがってよ」
姉の声も聞こえてくる。
嗚呼、自分がとても惨めだ。ただ、自分自身が惨めに感じるとはいえ、1つ言いたいことがある。それは少なくとも、親や兄妹が稼いだカネで飯を食っているわけではない。一応は俺の銀行口座に振り込まれる5万円で何とか飯だけは賄っているのだ。
まあ、それでも実家住まいで尚且つ、家にカネなど入れてはいない。結局、罵倒されても仕方ないところではある。
「……俺は働く気なんてないと言っただろ」
俺は、姉と妹にそう返した。
すると、
「まあ、お前みたいな糞は就職もできないでしょ。だから私たちが頑張ってお前の就職先を見つけてやったんだよ。だから感謝しろよな。それと、メールで初出勤日を伝えたるからちゃんと行けよ」
と、姉が言った。
「勝手に話を進めるなよ。そもそも、雇用契約の申込みと承諾における意思の合致してないだろ。それと、俺はあんたら2人に雇用契約締結に関する代理権なんて授与してないし、結局、あんたら2人が無権代理人の責任追及を受けるだけだな? 念のために言っておくと、無権代理人責任に於ける損害賠償責任の範囲は履行利益を範囲とするからな? 信頼利益じゃないから高くつくぞ」
「気持ち悪いウンチクは良いから、働けよ? わかったか。……ああ、それと、お前の就職先の会社の人間は私たちに代理権がないことは知っているから。だから向こうは私たちに無権代理人の責任追及なんてできないよ」
姉の手厚い反撃で俺……轟沈。
結局、就職しなければ家を追い出すと両親から言われ、俺はしぶしぶ就職することにしたのであった。
※
初勤日となった。
姉から送られたメールの内容を見たところ、どうやらアイドルをプロデュースする「プロデュース株式会社」という会社らしい。そして、そこそこの規模を誇るらしいのだ。
そして、俺は今、その会社の代表取締役と1対1で話をしている。
「待ってましたよ。あなたが佐東次郎(さとう じろう)さんですね? 私はプロデュース株式会社の代表取締役の愛弗耕夫(あいどる すきお)です。貴方のお姉さんから貴方を就職させて欲しいと1000万円を渡されましてね。本当は貴方みたいなクズは採用したくないのですけどね……」
また罵倒かよ。
これは、先が思いやられるね。
>>2
コメントありがとう。
まあ、プロローグで拷問を受けている人間が誰なのか、後に判ると思う(大体推測できちゃうとは思うけど)。
一応は俺の銀行口座に振り込まれる5万円で何とか飯だけは賄っているのだ。
↑
毎月5万ということです。
おけですー!
7:総督:2018/07/15(日) 23:42嗚呼・・・鬼畜米英みたいなことする脳・・・むしろソれ・・・やめろっ、誰だ!離せぇ・・・
8:アーリア◆Z.:2018/07/15(日) 23:499:総督:2018/07/15(日) 23:51 >>8
なんともないです。ハラショースターリン様
第2話 引きこもり働く
全く……。
初出勤日から罵倒されるなんて、やれやれな話だ。しかも、どうやら姉が1000万円も支払ったとのことである。
さて、1000万円というと大金だ。少なくとも俺の実家が簡単に出すことはできないだろう。だが、姉は違う。姉は就職後にその勤め先の社長の息子と結婚したというのだ。訊くところによると、元々、その息子と姉は就職する前からの知り合いだったらしい。
「こういうのが、充実した生活っていうのかね……? 」
俺はそう言って、自販機の横にあるベンチに座った。立って待っているのも疲れたので腰をかけたのだ。
そもそもここで何をしているのかと言うと、代表取締役の愛弗がここで少し待っていろと指示してきたものだから、こうして待っているのである。
そして、しばらく時間が経ち愛弗らしき人物が見えた。その後ろには10代くらいの女子が3人いる。
「佐東くん。キミにはこの3人のプロデューサーを務めてもらいたい」
愛弗は俺の前にやって来て早々、そう言った。
「早速……プロデュースをしろと仰るのですか? 」
プロデュースなんて何をするのか、俺は全然知らないぞ。
いや、こいつは、俺を入社させたくないと堂々と言ってきたのだ。失敗させてそれを理由に退職勧告なり懲戒解雇なりしようという魂胆か?
「この会社は芸能関係の会社だってわからないの? 嫌ならさっさと辞めてもらうよ」
「わかりました。承ります。ですが……プロデューサーの仕事を一切知らない人間に務まるもなのでしょうか? 」
俺は疑問に思ったのだ。こういう芸能業界に長く携わった人間がどうして、プロデューサーとしての仕事ができるのかと。やはり、失敗させてという流れが彼は欲しいのだろうか。
「そんな難しいことなど考えなくても良いよ。とにかく頑張れ。わかったか? 」
愛弗はそう云い放ち、この場を去ったのであった。
しばし、沈黙が続いて後、
「俺は佐東次郎という。実は入社したばかりで、まだ名刺もないのだがよろしく頼むよ」
俺は、3人の女子にそう自己紹介した。
「新藤ミカ(しんどう みか)と言います。よろしくです」
「正山メイ(まさやま めい)でーす。よろ! 」
「南洋エリザ(なんよう エリザ)と申します。よろしくお願いします」
と、3人もそれぞれ自己紹介した。これからこの3人をアイドルとしてどう育てりゃ良いんだ?
それともう1つ。
まさか、こんなところで、「南洋」という名字の人間に出くわすとは。
第3話(前編) プロデュ―サールーム
愛弗がこの場を後にし、俺を含めて4人が自己紹介を終えると、今度は廊下の向こうから1人の女性がやって来た。
「佐東さんですよね? 」
その女性はそう声をかけてきたのである。
当然の話ではあるが俺は、この女性にも挨拶をすることにした。
「はい佐東でございます。本日からこの会社のプロデューサーとして勤務することになったのですが、一体何をしたらよいのかと迷っていましてね……」
「私は統括プロデュ―サーの直道ハルカ(うえみち はるか)です。これからよろしくお願いしますね。では、早速、佐東さんにはプロデューサールームへ行ってもらいます。新藤さんと、正山さん、そして南洋さんはいつも通り控室で待機していてください」
彼女の名は植道ハルカというのか。
しかも、見たところまだ若い。それでいて統括プロデュ―サーだ。中々の出世である……これが俺の彼女に対する初対面での感想である。
そして俺は統括プロデュ―サーの案内で、プロデューサールームへ向かうことになった。どうやらこのプロデューサールームと言う場所で、プロデュ―サーたちがデスクワーク業務を行うらしい。
「ここです。あっ、挨拶は不要ですよ。皆さん忙しいか、外出してるので」
統括プロデュ―サーに促されて俺は、プロデューサールームに入った。
第3話(後編) プロデュ―サールーム
プロデュ―サールームの中は、一般的な企業(事務)の従業員が仕事をする場所と同じ感じであった。机の上にはパソコンが置かれていたり、コピーや印刷をする機会、その他、資料などを保管している棚もある。
「佐東さんの机はこちらです」
統括プロデューサーがそういった。
なるほど、今後はあの机で俺はデスクワークをすることになるのか。
「さて、最近のプロデューサーは、担当のプロデューサーが音楽プロデュースやレコードプロデュースなどを全部プロデュースするという感じになってますね。さらに具体的に言うと、担当するアイドルに関する予算調達なども仕事の1つです。ですが、佐東さんはこの仕事に慣れるまでは私が補佐しますので安心してください」
へえ。随分とやることが多いなこりゃ。
というか、音楽プロデュースってもしかして、、俺が作詞作曲するということなのだろうか? 仮に俺が作詞するとなると、全部軍歌みたいな音楽になってしまうぞ……。
「あ、あの、音楽プロデュースというと、やはり私が作詞作曲することになるのでしょうか? 」
「いえいえ。基本的に作詞作曲は外注です。ただ外注する際の契約締結は担当プロデューサーに権限がありますので、そのへんも理解しておいてくだい」
なるほど。
プロデューサーは担当するアイドルについての権限はかなり広範囲にあるわけか。であるなら先程、愛弗が『本当は貴方みたいなクズは採用したくないのですけどね』と罵倒してきたわけだが、そう言いたくなる気持ちは大いにわかる。
客観的に変な奴に広範囲に権限を付与などしたくはないだろうから。
そして、今日は引き続き統括プロデューサーによる説明で終わった。
明日から本格的な業務を行うことになるのだろう。
第3話(後編) プロデュ―サールーム
プロデュ―サールームの中は、一般的な企業(事務)の従業員が仕事をする場所と同じ感じであった。机の上にはパソコンが置かれていたり、コピーや印刷をする機会、その他、資料などを保管している棚もある。
「佐東さんの机はこちらです」
統括プロデューサーがそういった。
なるほど、今後はあの机で俺はデスクワークをすることになるのか。
「さて、最近のプロデューサーは、担当のプロデューサーが音楽プロデュースやレコードプロデュースなどを全部プロデュースするという感じになってますね。さらに具体的に言うと、担当するアイドルに関する予算調達なども仕事の1つです。ですが、佐東さんはこの仕事に慣れるまでは私が補佐しますので安心してください」
へえ。随分とやることが多いなこりゃ。
というか、音楽プロデュースってもしかして、、俺が作詞作曲するということなのだろうか? 仮に俺が作詞するとなると、全部軍歌みたいな音楽になってしまうぞ……。
「あ、あの、音楽プロデュースというと、やはり私が作詞作曲することになるのでしょうか? 」
「いえいえ。基本的に作詞作曲は外注です。ただ外注する際の契約締結は担当プロデューサーに権限がありますので、そのへんも理解しておいてくだい」
なるほど。
プロデューサーは担当するアイドルについての権限はかなり広範囲にあるわけか。であるなら先程、愛弗が『本当は貴方みたいなクズは採用したくないのですけどね』と罵倒してきたわけだが、そう言いたくなる気持ちは大いにわかる。
客観的に変な奴に広範囲に権限を付与などしたくはないだろうから。
そして、今日は引き続き統括プロデューサーによる説明で終わった。
明日から本格的な業務を行うことになるのだろう。
バグがなんだか知らんが同一内容のレスが連続してるな。
15:アーリア◆Z.:2018/07/27(金) 21:09 第4話(前編) そしてまた、闘いが始まる
初出勤日は統括プロデューサーの説明で殆ど終わり(18時退社)、俺は家へ戻る最中である。
であるのだが、色々と寄るべき場所があったので、時刻はすでに22時をまわっていた。
「しまった。まだ、小田(おだ)さんのところへ行っていなかったな。仕方ない小田さんについては明日にしようか……」
小田さんというのは、東京都の渋谷区議会議員を2期務めている政治家である。
何年か前にお世話になったことがあり、こうして時々顔を合わせに行く程度の交流がある1人なのだ。
そして23時ごろになるころ、家に着いた。
両親、そして妹はもう寝てるかもしれないので俺は静かに玄関を開けた。
「おい! 何時だと思ってるんだよ」
家に入って早々、姉のデカい声が俺の頭を刺激する。これは嫌な刺激だ。
というか、今日もこっち(実家)に来てるのかよ。まあ、その理由は間違いなく俺に関することだとは思うが。
「きちんと、出勤したよ。何か問題でもあるのか? 」
「18時には帰ったそうだな? で、23時になるまでお前どこでなにしてたんだ」
こいつ……。
ここまで干渉してくるのかよ。例えば小学生や中高生が夜遅くまで家に勝ってこないのは問題かもしれないが、俺はすでに成年者だ。
「俺がどこで何をしようと、自由なはずだがな」
というか、俺が会社を18時に出たということを知っているなると、わざわざ愛弗あたりにでも聞いたのだろうか。
「はあ? お前、今までうちらのカネで飯を食ってきたって言うのに何なの? その態度は」
飯だけなら毎月振り込まれている5万円で賄ってましたよ。まあ、家賃相当額も払わず実家に居候させてもらってますけどね。
「……」
そして有効な口答えが思い付かず少しの間、黙っていると、
「退社したら寄り道せず帰って来いよ? わかったか! 」
と、姉は言って自分の部屋(実家に泊まるとき用)へと戻っていった。
第4話(後編) そしてまた、闘いが始まる
翌日。
俺は午前4時頃に起きて、そして20分程度で身支度をして家を出て、朝食は駅そばで済ませた。
「さて、早いところ小田さんの家に行ってしまおう」
小田さんは朝が早いので、こんな早朝に自宅を伺っても怒られることはないのだ(むしろ、用があるなら出来るだけ朝早く来てくれと言っているくらいなのである)。
電車に乗ること40分、渋谷駅に到着した。
そこから徒歩数分で小田さんの家(アパート住まい)に着く。
※
小田さんの家につきインターフォンを鳴らした。
「おはようございます。佐東です」
そう言ってから数秒、玄関が開かれた。
「お、おお? 佐東さん。お久しぶりですね。元気にしてました? 」
「ええ。おかげさまで……。あっ、お邪魔します」
俺は小田さんに促されて、部屋の中へと入った。
そして小田さんは、わざわざ麦茶を淹れて持ってきてくれたのである。
「実はですね、私は就職することになりましてそのご挨拶に参りました」
「それは、おめでとうございます。もう心身ともに回復できましたか……。で、どのような所に? 」
「アイドルのプロデューサーの仕事です。プロデュース株式会社という会社ですね」
それから、小田さんと色々と世間話をして、午前7時半をまわったころに俺は小田さん宅を後にした。
小説の書き方上手くて憧れます
18:アーリア◆Z.:2018/08/01(水) 20:44 >>17
どうも、ありがとう。
まあ、少しずつ投稿していきます
第5話(前編) そして仕事が始まる
「おはよう。キミが昨日入社したとかいう佐東君だね? 」
俺は小田さん宅を後にして、会社のビルに入った途端に何者かから声をかけられたのであった。少なくとも声からして男性であることはわかる。
俺はその声がした方を振り向いた。
見たところ、声をかけて来たであろう男性はかなり高級感のあるスーツを着ていたのである。
どうやら俺は、これまた社会的地位の高い人間に声をかけられてしまったということか。
「おはようございます。おっしゃる通り私は佐東ですが、一体どのような御用で? 」
俺は、そう男性に訊ねた。
「そうだった。自己紹介がまだだったね。私はこのプロデュース株式会社の代表取締役の中村一蔵(なかむら いちぞう)だ。まあ、よろしく」
まさか出勤して早々に会社の代表取締役から声をかけられるとは。何か俺はやらかしたのだろうか?
まあ良いや。とりあえず今は引き続き話を聞いてみることにしよう。
「実は昨日、黒尾敏(くろお びん)先生からキミのことを聞いてね。彼から電話が会ったのだよ」
黒尾敏だって!
おいおい。あの人、口軽いな全く……。
とはいえ、あの人とこの会社に繋がりがあったとは驚きだ。
「まあ、今後キミともっと落ち着いた場所で話すこともあるだろうから、よろしく覚えておいてくれ」
そう言って、代表取締役の中村は会社を後にしたのであった。
第5話(後編) そして仕事が始まる
代表取締役の中村とのやり取りの後、俺は急いでプロデューサールームへと向かった。
そしてプロデューサールームに入ると、既に統括プロデューサーを中心として会議らしきものが開かれていたのである。
尚、今は業務開始時刻の10分前だ。
「渋谷でコンサートを開くという話だけど、会場となりうる殆どの場所が別の会社のアイドルたちのイベントが半年後まで埋まっていて極めて困難になっているわ」
「そ、そうですか……。愛弗社長もかなり乗り気でいらっしゃったのに」
「一旦白紙にするしかないのでしょうかね? 」
「最悪そうなるわね。一応私の方でも出来るだけ何とかする……としか今は言えないわ」
どうやら、聞こえてくる限りでは暗いお話のようだ。つまりプロデュース株式会社にとっては不利なお話と言うことである。
しかし、新米職員の俺にとってはそんなことよりも一刻も早くプロデューサーとしての一通りの業務を覚える必要があるのだ。
そんなもんで結局、今日も仕事らしい仕事はせず帰宅となった。
※
さて、俺はとっとと帰宅しようとプロデューサールームを出た。
ところが……だ。
「やあ佐東君」
そう声をかけてきた者が居たのである。ちょうど朝に会った代表取締役の中村である。
「これはこれは。どうされましたか? 」
「ああ。アイドル関連の事業なんぞ私は一切興味がないが、渋谷で予定されていたイベントが実現不能なりつつあるとか聞いたもんでな。キミという者を知るために敢えてこの案件を利用させてもらうと考えたのだ」
このプロデュース株式会社はアイドルのプロデュースを行う会社と聞いているのだが、その会社の代表取締役が、それに一切興味が無いとはいやはや驚きだ。
「渋谷区の公営施設で、我が社のアイドル共によるイベントが出来るよう手配しろ」
代表取締役の中村はそう言って、持っていた黒いアタッシュケースを俺に手渡してきた。
「中村さん。こ、これはもしかして……? 」
「良い結果を待っているよ」
それだけ言って、代表取締役の中村はこの場を後にしたのである。
第5話(後編) そして仕事が始まる
代表取締役の中村とのやり取りの後、俺は急いでプロデューサールームへと向かった。
そしてプロデューサールームに入ると、既に統括プロデューサーを中心として会議らしきものが開かれていたのである。
尚、今は業務開始時刻の10分前だ。
「渋谷でコンサートを開くという話だけど、会場となりうる殆どの場所が別の会社のアイドルたちのイベントが半年後まで埋まっていて極めて困難になっているわ」
「そ、そうですか……。愛弗社長もかなり乗り気でいらっしゃったのに」
「一旦白紙にするしかないのでしょうかね? 」
「最悪そうなるわね。一応私の方でも出来るだけ何とかする……としか今は言えないわ」
どうやら、聞こえてくる限りでは暗いお話のようだ。つまりプロデュース株式会社にとっては不利なお話と言うことである。
しかし、新米職員の俺にとってはそんなことよりも一刻も早くプロデューサーとしての一通りの業務を覚える必要があるのだ。
そんなもんで結局、今日も仕事らしい仕事はせず帰宅となった。
※
さて、俺はとっとと帰宅しようとプロデューサールームを出た。
ところが……だ。
「やあ佐東君」
そう声をかけてきた者が居たのである。ちょうど朝に会った代表取締役の中村である。
「これはこれは。どうされましたか? 」
「ああ。アイドル関連の事業なんぞ私は一切興味がないが、渋谷で予定されていたイベントが実現不能なりつつあるとか聞いたもんでな。キミという者を知るために敢えてこの案件を利用させてもらうと考えたのだ」
このプロデュース株式会社はアイドルのプロデュースを行う会社と聞いているのだが、その会社の代表取締役が、それに一切興味が無いとはいやはや驚きだ。
ところで、「キミという者を知るために敢えてこの案件を利用させてもらうと考えたのだ」などと言ってきたわけだが、何か俺にさせようという魂胆なのだろうか?
「渋谷区の公営施設で、我が社のアイドル共によるイベントが出来るよう手配しろ」
代表取締役の中村はそう言って、持っていた黒いアタッシュケースを俺に手渡してきた。
なるほど。やはり俺にそのイベントに関する案件を任せてくるとはな……。
そして何よりもこの黒いアタッシュケースを手渡してきた時点で、どのような手段を使えと言っているのかが容易に推測できるわけだ。
「中村さん。こ、これはもしかして……? 」
「良い結果を待っているよ」
それだけ言って、代表取締役の中村はこの場を後にしたのである。
>>21は>>20の訂正によるものです。
今回に限っては、訂正箇所だけ示す方法では適当とは言えないと判断しましたので丸々投稿しました。