異次元に迷い込んでしまった女の子
――――――帰りたい?
朝起きると見たこともない場所にいた。
確か昨日はテレビ見て、お風呂入って、ベッドで寝た…はず。
ここはどこだろう?
外の様子を見るために、大きな窓をカーテンの隙間から覗こうとしたとき――――――
バンッ!
ドアが大きな音をたてて開いた。
見たこともない男の子が立っていた。
「起きたんだね。大丈夫?」
彼は心配そうな目で私を見た。
「ここはどこ?貴方は誰なの!?さては私を誘拐したのね!!!」
「誘拐した」そうとしか考えられなかった。
彼は困ったように
「まぁまぁ、落ち着いて!あのね!君、うちの家の玄関のそばで倒れていたんだ
それで、うちに運んだのさ」
私は昨日ベッドで寝ていたはずだ…。道端で倒れていたはずがない
それよりも外の様子を窺いたかった。
「運んでくれたのね。ありがとう。それより、外の様子を見させてくれない?」
「分かった!」っと言って彼はカーテンを開けた
――――――そこに広がった光景はまさに異世界だった
(今さらですが感想等の書き込みOKです。正し、スレ主の落ち込むような発言はお控えください)
4:ろん◆NUg:2019/03/10(日) 15:43 建ち並ぶカラフルな家々、人類外の住民たち、不思議なペット。
「い、い、い、い、異世界………」
思わず言葉が漏れた。
男の子は私がこのような反応をするのは予想通りだというような冷静さだった。
「やっぱり、君、ここの世界の住民じゃないんだね」
「そ、そうよ。な、な、なんで、、、こんなとこ」
彼は諦めたような顔で言った
「どうしてここの迷い込んだのかは分からない。ただ一つ言える事は
――――――迷い込んだらもとの世界へは戻れない」
「なんでそう断言できるのよ!」
彼は悲しそうな顔をし
「俺も、この世界の住民じゃない。
ほら、人間の姿をしてるでしょ?」
私は言葉を失った
――――――迷い込んだらもとの世界へは戻れない
何故そう断言できるか問い詰めた
彼は困ったようにして
「色々試したんだ。
都市伝説を検証したり、古い本を読んだり、長老に話しを聞いたりもした。
ダメだった…。
…それに、異世界からこの世界に来る人が絶えないんだ。
俺たちの他にも数人いる。」
彼は一息置いて――――――
「手がかりは一つだけ掴めたんだ。」
「手がかりって何!?」
私は身を乗り出して聞く
「この世界のどこかに、この世界ともといた世界の狭間というのかな?
この世界ともといた世界をつなぐ場所があるんだ。そこにいって、ある条件
のことをすれば帰れる。」
「それ、いいじゃない!条件って…?」
彼は残念そうに言った。
「その、条件が分からないから前言ったように断言できるんだ」
「全然ダメじゃないの」
「そう、全然ダメ」
「ちなみに場所は特定しているんだ」
彼は胸を張って言った。
「条件が分からなきゃ行っても無駄よ」
私はあきれてしまった。
「だから、その条件を探すのを君に協力して欲しい。
見つければ帰れるんだ。悪い話じゃないだろ?」
確かに悪い話ではない。なにより、元の世界に帰りたかった。見も知らぬ場所は不安だ。
「うん、悪い話ではないね。協力する」
「名前…言ってなかったね。
俺の名前は―――――― 」
「俺の名前はユウトって言うんだ。歳は16。」
幼いの割には私よりも年上だった
「私はミキ。15歳よ」
自己紹介を済ませると私は急かして言った。
「早く、条件を探しましょうよ」
彼は穏やかに笑った。
「時間はあるんだ。まぁそう焦らなくてもいいさ。少し俺と街を廻って見ない?」
のんびりとした彼の様子に少しイラついた。
「私は帰りたいの!ここで無駄な時間を過ごすわけにはいかないの」
「あー」と納得したように彼は頷いた。
「ここでは時間の流れがないから大丈夫だよ。向こうの世界にいつ帰っても、君が
この異世界に迷い込む前の時間さ。
…それとも俺と街を廻るのがイヤなの?」
彼の悲しそうな瞳に私の良心が痛んだ。
彼も私と同じように不意に異世界へ飛んだのだろう。
きっと話し相手が欲しかったのだ。
「いいよ。行こう」
「それで街を廻るって何をするの?」
彼はニヤっと笑った。
「俺と… デ ー ト ♡ 」
「は?」
初対面であるのに関わらず殴りかけていた。
せっかくの私の良心を…。
「やっぱ、行かない」
彼は焦った。
「ウソウソウソウソ、嘘だよ!!!!!冗談だよ!」
あまりに慌てるので面白かった。
彼のジョークのおかげで異世界や彼に対する緊張感が薄れたような気がした。
「冗談かー、仕方ないな。行ってあげるよ」
私がわざとらしく言うと彼は笑った。
「…相変わらず素直じゃないなぁ」
「…相変わらず素直じゃないなぁ」
一瞬誰が言ったのか分からなかった。
彼が言った…。
ユウトが言っていたのだ。
どこかで会ったことのあるような口ぶり。
私は思わず聞いた。
「私たち、どこかで会ってた…?」
「んーん、気にしないで」
優しく私に微笑んだ。
「明日、街を廻ってみようか」
と話を変えてきたので、私はこれ以上言及するのはやめた。
その日はベッドを借りて寝させてもらった。
どこかで彼と会っていたのだろうか、と記憶を廻らせていたが、思い出すことは
できなかった。
あまり眠れない夜だった。
「おはよう!眠れた?」
眠れなかった、と言って彼を心配させるわけにはいかないので
嘘をついた。
「うん、寝れたよ。ありがとう」
「よーし、じゃあ早く準備して!」
彼はそう言って部屋を出て行った。
張り切った様子に私は思わず笑みが浮かんだ。
外に出てみると私は異世界に来たのだ、と実感できるような街並みだった。
カラフルな屋根、活気付いている商店街、そして、人類外の住民達。
新鮮な光景だった。
「最初見たときはびっくりするよねー」
彼は驚かず、何度も見てきた光景のようであった。
そういえば。
と思い尋ねてみる。
「ユウトはいつから異世界にいるの?」
「うーん、もとの世界でいう3年前ぐらい?」
そういえば、この世界では「時間の流れ」が存在しないのだ。
「結構前なのね。ってことは異世界に飛んでこなかったら、約19歳ぐらい?」
「うん、そういうことになるね。でも異世界に飛んだから16歳のまま。
…永遠の16歳的な!?…魔法少女とか!」
そんなフザケル彼を見ていると異世界にいること以外は普通の少年なんだな、
と思えた。
買い物をしたり、観光したりして分かったことがある。
―――ここの住人たちは優しい。
異世界への警戒心、緊張感はこの一日で随分和らいだような気がした。
一つ不思議な体験をした。
私たちは観光する中、「ある場所」へ行くと不思議な感覚がした。
柔らかい雰囲気に包み込まれぼーっとしてしまうようだった。
その後、元の世界での私を思い出した。
忘れていたのだ。
思い出したのは学校での辛い思い出…。
元の世界へ戻る気が少し失せてしまった。
不思議な体験を彼に伝えてみることにした。
「うんうん、なるほどねえ…」
彼は少しの間考え込んだ。
「俺もそんな体験したことあるよ。
ミキはどんなこと思い出したの?」
あまり聞いて欲しくなかった。
「帰る気が失せるような学校での思い出…」
「そっか…。よかったら俺に話してくれない?
一人で抱え込むよりいいだろ?」
「いやだ…。ユウトにも言いたくない」
「俺も元の世界に……
学校に嫌な思い出がある。
俺も話すよ。多分同じ境遇だったんだと思う」
「同じ境遇だったと思う?なんで…?」
「その様子だとミキは覚えてないと思う…。ミキと俺は以前同じ学校だった。
ミキは不登校だった。
俺も不登校だった。
―――少し話すよ。過去のこと
〜過去〜(ユウト編)
俺は変わり者らしい。
普通なんて誰か決めるんだ…。
人間に定理なんてあるのか?
俺と同じように「変わり者」と言われている女子生徒がいた。
ちょこっとお邪魔します、。
もとの世界で繋がりある二人、これからどんな進展があるのか楽しみです、!
<感想頂けたら嬉しくてめっちゃ更新はやくします。笑>
>>18
ありがとうございます!
更新頑張ります!!
>>20 無理しない程度に、!更新待ってますね〜
つまんね
23:ろん◆NUg:2019/03/23(土) 16:38 >>21
ありがとうございますm(__)m
>>22
好きで書いてるのでそう思うのなら見ないで下さいね。
〜過去〜(ユウト編)
別に俺も彼女もいじめられているわけではなかった。
しかし、話し相手がおらず、クラスで浮いていて居づらかった。
同じような境遇にいる彼女を俺は「仲間」だと思っていた。
―――が、しばらくして彼女は学校に来なくなった。
不登校になったのだ。
俺は「仲間」だと勝手だが思っていた彼女が不登校になって、ある程度のショックは受けたが
自分は自分なりにクラスに溶け込めなくても、なんとかやっていこうと思った。
〜過去〜(ユウト編)
それから一ヶ月ほど経つと俺は学校を休みがちになっていた。
体調が悪くなったわけではない。
「孤独」に耐え切れなくなっていったのだ。
移動教室の孤独。 休み時間の孤独。
他のクラスメートが当たり前のように誰かと一緒にいる姿が羨ましかった。
でも、そのようには成れなかった。
次第に学校へ行く気を失ったのだ。
今まで、彼女が周りを気にせず堂々としていることに俺は救われていた。
周りを気にしなくていいんだ。
そう思えた。
ミキは当時中等部の1年生だった。
俺は高等部の1年生だった。
クラスどころが学年も違ったが、彼女に救われていたのだ。
「わ、私に救われていた…?」
「うん」
彼は真剣な表情で頷いた。
「で、でも私…なにもしてないよ?」
「いてくれただけで救われた、ありがとう」
私は誰かにお礼を言われることがなかったので少し気恥ずかしくなった。
「そうかな?あ、あと途中でいなくなっちゃってごめんね…?」
「いや、俺が勝手に仲間だと思ってただけだから」
彼は明るく笑った。
彼は辛い過去を正直に話してくれた。
私も話さなきゃ…。
そう思って口を開くも言葉が出てくれなかった。
言葉を発しようとすると冷や汗が止まらない。
思い出したくない。
「―――無理に話さなくていいよ。
いつか、誰かに話して一人で抱え込むのをやめてもいい。
話さないままでもいいよ」
彼は私に気を遣ってそう言ってくれた。
その言葉に甘えることにした。
「今は言えない」
「うん、それでいいよ」
「話しが変わるけどさ…」と言った後少し彼は考え込んだ。
「 ある場所 に行くと元の世界でのことを思い出すんだろ?
――――元の世界に帰る方法の仮説を思いついたんだ」
「仮説…?」
「今から話すことをよく聞いててね――――」
彼は一瞬考えるようにした後、話し始めた。
「俺たちは元の世界での記憶が所々記憶が抜けている。
「ある場所」に行くと記憶が蘇るんだ。
ミキが体験したようにね。
そこで俺が考えるに、その記憶の断片を全て集めるのが今俺たちの探している「元の世界に戻る条件」
だと思うんだ」
彼は一気に話し終えると一息ついた。
「どう思う…?」
「どう思うって…、そんなに上手くいくのかな?」
「やってみなきゃ分からないだろ」
何の情報もない「ある場所」を探し出すのは大変だし、それが本当でなければ
無駄な労力を使うことになる。しかし、彼が言うことにも一理ある。
「…お前、もし俺の言った仮説が外れてたら無駄なことだと思っただろ?」
ギクッとした。
「貴方、もしかして人の心が読めるの…?」
「そんなわけないだろ。顔に出てる」
彼は飽きれて笑っていた。「あのなぁ」と言葉を続ける。
「その仮説が外れるか、当たるかもやってみなきゃ分からないんだ。
たとえ、外したとしても何か分かるかもしれないし、これはダメだ。
ってことが分かるだろ?消去法だよ」
彼の言うことは正論だと納得してしまった。
「それはそうね。当たってるかもしれないしね」
彼は嬉しそうに頷いた。
「明日から「ある場所」を探そう」
「…当てはあるの?」
「ない、適当」
――――「ある場所」探しは長くなりそうだ。
しかし、彼との作業は不思議と嫌ではなかった。
プロフィール載せます
少女プロフィール
名前:ミキ
年齢:15
好きな食べ物:チョコ
少年との関係:少年は同じ学校の先輩
少年プロフィール
名前:ユウト
年齢:16
好きな食べ物:生姜焼き
少女との関係:少女は同じ学校の後輩
※少年が元の世界にいたのは三年前だから、当時の少女の年齢は13
また、異世界では時空がないから少年は16のまま
本当に長くなってしまった。
当てがなさすぎて、まだ2つの記憶の断片しか集められていない。
「明日から「ある場所」を探そう」
と彼が言ってから3日も経ったのに…。
まだ2つしか記憶の断片しか集められていないのだ。
「しかし、彼との作業は不思議と嫌ではなかった。」
という、前言は撤回する。
流石に嫌気がさしてきた。
「まぁまぁ、そんな嫌そうな顔しないでよー」
彼はのん気そうに言った。
「はぁ…誰でも流石に嫌になるよ」
私はワザとらしく溜め息を吐いた。
「んー、そう?俺と一緒に探せてうれしいんじゃないのー?」
「何言ってんのよ、バカ」と私が反論する前に彼が話し始めた。
「あー、そうそう、俺さ実はミキが「ある場所」を探し回っている間に住民からいい話を聞いたんだ」
「はぁ、私が一生懸命走り回っている間に住民とお話ですか…」
私が飽きれたように言うのを気にせず彼が話しを勝手に進める。
「まぁ聞いてよ――――
その住民の話によるとさ、俺の言った仮説は大体当たってたんだよ」
彼は誇らしげにそう言った。
「え、ええ!?住民の行ってた事ってどんなこと?」
「えーっとね………」と彼は誇らしげに話し始めた。
「俺たちは元の世界での記憶が所々記憶が抜けている。
「ある場所」に行くと記憶が蘇る。
ミキが体験したように。
そこで俺が考えるに、その記憶の断片を全て集めるのが今俺たちの探している「元の世界に戻る条件」
だ―――――――― って仮説を前に俺が言ったね?」
確認するように彼は私に聞いてきた。
「うん、言ってたね」
「これ、当たってるんだ…。
…正しくは俺の言った仮説は「元の世界に戻る条件」ではないんだけどね」
条件…ではない?
「どういうこと?」
「続きがあったんだ。
…でも―――――――――――― 」
条件には続きがあったのだ。
私は続きを急かした。
「でも?なに?」
彼の顔からは誇らしげな表情は一切なくなり、曇った表情になる。
嫌な予感がする…。
「…その記憶の断片を集めてから「あること」をしなければいけないんだ」
彼はそして言葉を切った。
「あることって?」
「その「あること」が誰も分からないんだ…」
嫌な予感は的中した。
「――――ごめん」
彼の沈んだような声色と同時に彼が以前私にかけてくれた言葉を思い出す。
『―――無理に話さなくていいよ。
いつか、誰かに話して一人で抱え込むのをやめてもいい。
話さないままでもいいよ』
そうやって私に優しく声をかけてくれた。
私を励ましてくれた。今度は私が…。
「せっかく記憶の断片を集めてもこれじゃあ――――」
「また、その続きを探せばいいじゃない」
私は彼の言葉を遮って続ける。
「その続きを誰も知らないのだったら、私たちが探せばいいじゃないの。
ゆっくりでいいから…」
私はこの言葉で彼を励ますことが出来たのだろうか。
「………そうだよね、ごめん、俺が諦めたら異世界に来たばっかりなのにミキが不安になるよな」
彼は笑って言葉を続ける。
「まさか、ミキがそんな優しい言葉をかけてくれるとは思わなかったよ」
「ちょっと!私のことをなんだと思ってるの!?」
「ごめん、ごめん、冗談だよ」
明るく笑っている彼を見ていると、私の言葉で励ますことが出来たんだな…
と安心することができた。
「今までどおりで今、出来ることをしよう。
「ある場所」探しの再開!」
――――また、私たちは目的もなく歩き始めた
「…ちょっと!「ある場所」探しするとかいいながら、なんで遊園地に来てるのよ!」
「え?ここに「ある場所」があるかもしれないじゃん?」
彼は遊園地で買ったパンを食べながら答えた。
…説得力がない。
「その割には楽しんでるね………」
私がそう言った瞬間――――――
バッッ!!っと彼が私の方に向き
「毎日、当てもなく歩くのは疲れたんだ!たまには遊んだっていいだろ!?ミキも遊びたいだろ!!!???」
と大声で言った。
「ああ…、「遊びに来た」ってはっきり言っちゃうのね…」
私は少し考えた後、言葉を続けた。
「――――まぁ遊ぶのも悪くないかな」
「まぁ遊ぶのも悪くないかな…って…相変わらず素直じゃないなぁ
――――あ!あれ行こ!」
彼はジェットコースターの方へ歩き始めた。
って、ええ!?私ジェットコースター無理だんだけど!?
「ちょっと!やめてよ!」
私は慌てて反論する。
そんな私を見て彼はニヤリ、と口の端を歪ます。
「へぇ〜、嫌いなんだぁ〜?」
そう言われるとイラッとくる。
「別に嫌いじゃないよ!ほら、行こう!」
ごめんなさいー。誤字の訂正です。
>>8の二行目
「幼いの割」にではなく
「幼い印象の割」にでした。
カチ、カチっと、ジェットコースターが昇って行く音がする。
くる、くるぞ。と私はレバーを握る手に力が入るのが分かった。
「ぎゃああああああああ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
絶叫しないつもりだったのだが、思わず悲鳴が漏れてしまった。
いや、もはや漏れてしまったレベルではない。
突然、横に乗っている彼の存在が気になって、チラッと目だけを動かす。
「………ぷっ、あはは!!!」
彼は私を見て吹きだした。
…腹立つ。
そう思いながらも絶叫は止められなかった。
「お、おえっ」
降りた瞬間、吐き気が襲いかかる。
「ちょ、大丈夫?」
流石に彼は私を心配した。
…私がこうなったのはあんたのせいでしょ…
――――仕返しだ!
「お化け屋敷行きましょう!!!!」
彼が私を見て「こいつ、正気なのか?」とでも言いたそうな顔をする。
「何?行きたくないの?…もしかして怖いのかしら?
ジェットコースターでは私をあんなにバカにして笑ってたのに…ねぇ?」
煽る。
「べべべべべべ、別にいいよ!!!!!怖くなんてないよ!!!!!!??????
誘ってきたミキが泣いたって知らないんだからね!!!!????」
ヒット。
この様子だと、お化け屋敷は苦手なようだ。
残念ながら、お化け屋敷は私の得意分野なのだ。
今度は私が彼を笑うことになるからね…。
覚悟しなさい!
「それじゃあ、行こうか?」
今度は私が言うセリフだった。
私は震える彼の手を掴んで、引っ張っていった。
お化け屋敷に入るために列に並んでいる間も彼の震えが止まることはなかった。
並ぶこと一時間。前に並んでいるのは一組だけになった。
屋敷からは悲鳴が聞こえる。
「まぁこんなの子どもだましね」
と私は彼のいる方に振り向いた。
「………大丈夫、大丈夫。怖くない、怖くない
――――って、ミキ、俺に話しかけた?」
顔を青ざめさせて、周りのことが気にならないほど精神を集中させて自己暗示をボソボソと唱えていた。
…面白いから、話しかけてないということにしよう。
「え?話しかけてないけど?どうしたの?」
「ひっ」と彼は悲鳴を漏らした。
その瞬間。
「次のお方〜、屋敷の中に入ってください」
私たちの番が来た。
行こうとすると誰かに服の裾を引っ張られたような気がした。
振り返ると―――――――。
「俺たち呪われてる!!!!!ミキ!絶対行くなよ!!!!????」
と涙目で必死に訴えている彼がいた。
「はいはい、大丈夫よ。私が話しかけてない、って言ったのは嘘。
私が話しかけたよ。
…で、怖いのなら言って頂戴?」
と意地悪く、そう言ってみた。
「怖くなんて…ななななななないよ。で、でも呪われ―――」
はぁ。
―――ホント素直じゃないねぇ。
「はいはい、怖くないなら行こうねー」
と私は彼を引きずって行った。
「ぎゃああああああああ!!!!!!!!!!!!!!!!!!ごめんなさい、ごめんなさい!!!!!!
許して!呪わないで!!!!!!!???????」
明らかに人形だろう、と思うような仕掛けにも彼は悲鳴をあげていた。
従業員さん達もこれだけ怖がってくれれば仕事のやりがいがあるだろうなぁ。
と私はどうでもいいことを考えていた。
―――バッッッ
急に目の前に人影が現れて流石に私も驚く。
「ちょっとこれはビックリしたねー
…って、あれ?」
横にいるはずの彼がいなかった。
先に屋敷から出たのだろうか。
よほど怖かったのだろう、と可哀想に思えてきた。
…いや、でもこれはユウトが私をジェットコースターに無理やり連れて行った
仕打ちよ!!
私はこの屋敷から出たら、彼に一言二言言ってやろうと思った。
屋敷を出ると、出口のすぐ近くに彼が立っていた。
「ちょっと、なんで先に出て行ったの?
もしかして…怖かったの?」
「んなわけ、あるか!怖くなんてないさ! 」
と彼がすぐに反論した。
「ミキが遅かったから置いていったんだよ」
「色々ツッコみたいけど止めて置くわ…」
山ほど言いたいことはあったが、時間の無駄だから止めて置く。
なにより、せっかく遊園地に来ているのだから楽しみたかった。
「次は平和にお互いが大丈夫なとこ行こうよ」
と私は歩き出した。
――――その瞬間
柔らかい雰囲気に包み込まれた。
こんな普通なところが「ある場所」だったなんて…。
嫌だ、嫌だ。思い出したくない。
「怖い、怖いよ。…助けて、ユウト…」
無意識に彼に助けを求めた。
「大丈夫だから…」
彼は私の手を握り、言葉を続ける。
「今は、少しだけ思い出して。
し ん、配 しなく、ても…」
彼の言葉が途切れ途切れになってくる。
いや、私の意識が途切れていっているのか…。
「お、俺がミキ、を―――」
彼の言葉を最後まで聞けず、私はその場で気を失ってしまった。
〜過去編〜(ミキ)
「美紀!あれほど友達作りなさい、って言ったのに
なんで、まだ一人もいないの!?もう五月よ。グループとかもう――――」
母が友達のいない私に対して怒鳴った。
私は友達がいなくても寂しいとも、欲しいとも思わなかった。
―――私は独りが好きな人間だったのだ。
でも、母は友達がいるのが当たり前。という考えを私に押し付けてくる。
「あのねぇ、私、前にも言ったけど独りがいいのよ」
「何言ってるの!?友達の大切さも分からないで!」
何が友達の大切さだ。綺麗ごとばかり並べて、自分の価値観を子どもに押し付けてくる。
結局は独りな私を社会的に見て好ましくないから、友達を作らせようとしているのだろう。
友達なんてどうせ裏切る。どうせ表面上だけ。気を使うのも疲れる。
当時の私はそう考えていた。
いや、今もなのかもしれない。
だから、元の世界に戻るのに少しだけ抵抗があるんだ。
皆でいるのが当たり前。そんな場所が嫌だったのだ。
「へぇ、ミキは友達が要らなかったんだね」
意識が戻った私は過去のことを彼にベンチで話していた。
「えぇ、要らない。ユウトもそうだったでしょ?」
「う〜ん」と彼は少し考えた。
「俺はミキとは違うかな。俺は友達が欲しかったけど、コミュニケーションの
取り方が分からなかった。適切な距離、愛情が分からなかったんだ」
「距離?愛情?」
私は少し疑問に思って、オウム返しした。
「うん。それが分からなかった理由はさ…
俺、実は幼少期に虐待にあっていたんだ。
…今回思い出したのもそのこと。
なんか嫌なことばかり思い出すねぇ―――」
〜過去編〜(ユウト)
「ちょっと!!!!なんで90点なんて点数なの!?
ダメダメじゃないの!!!」
俺の母が手を振り上げた。
俺は「来る」っと思って目を閉じる。
目を閉じた瞬間、頬に熱を感じた。
平手打ちをされたのだ。
「これじゃあねぇ、中学受験出来ないわよ!?」
と言い、俺に二度目の平手打ちを喰らわせる。
別に俺は中学受験を受けたいわけではない。母が行かせたいのだ。
母は子どもの俺に「完璧」を求める人だった。
俺は小さい頃から、母に怒られないように、殴られないようにと運動も勉強も完璧にこなせるように必死に頑張った。
でも、母の期待に応えられなかった俺が悪いのだろう。こんな点数をとった俺が悪いんだ。
母が俺に平手打ちする理由も分かる。
「―――お母さん…ごめんなさい」
俺は小さい声ながらも謝った。
しかし、母の罵声と暴力は止むことはなかった。
「―――ってことを思い出したんだ」
彼は思い出したことを正直に全て話してくれた。
話すのも辛いはずなのに…。
私は何て声をかければいいのだろう。
「大丈夫…もう、大丈夫…だよ」
私は根拠のないことしか言えなかった。
彼は「うん」と頷き、私の頭を撫でた。
「昔のことだし、それに―――――
ミキがいるから……もう、独りじゃな、いから、元の世界に戻って、も大丈夫な気が…する」
といつもは物事をはっきり言う彼が少しつまり気味に、顔を赤らめながらそう言った。
「そ、そう?」
いつもと違う彼に私は短い言葉でしか返せなかった。
「うん。だから…ミキ。
元の世界に戻りたくないだなんて、思わないで…ね…?」
「え、あ、う、うん」
皆でいるのが当たり前。そんな場所が嫌いで、戻ることに抵抗があるのは変わりないが
彼が一緒なら―――と思えば、戻ることへの抵抗も薄れていくような気がした。
でも、本当に元の世界に戻ってからも一緒にいられるのだろうか?
私は彼に頼ってばかりでいいのだろうか?
と考えると、やはり不安は拭えない。
ふと、夜空を見上げると星ひとつなく真っ暗だった。
孤独感を煽る。
しばらくの間、空を眺めていると――ドンッ!と音がし、真っ暗な夜空に光が差した。
―――花火だ。
「花火を見たら、もう夜遅いし、帰ろうか?」
と彼が私に優しく笑いかけてくれる。
真っ暗な私の心に光を差してくれる彼は、私の中の花火だった。
「さーて、今日はどこで「ある場所」探そうかー?」
と朝から元気な様子で彼が尋ねてくる。
前回は「遊園地」と少し遊びすぎたので私は真面目な場所がいいと思った。
「何かの教会…とか?」
「えぇ、教会!?なんで?つまらないじゃん」
楽しい、つまらない、の問題ではないと思うのだが…。
「そういう場所に行くと何か分かると思って」
「せっかくなら楽しいとこ行こうよ」
楽観的な彼ともの堅い私。意見は全く合わなかった。
「神聖的な場所の方が絶対何か分かると思うわ」
「いいや、楽しくないね。それにあるとは限らないじゃん?
遊園地にもあったよね!!??なら他の楽しい場所にもあるって!」
言い争いは当分続いたが彼の一言で終った。
「ミキさぁこの動物園、行きたがってたよね〜??」
と彼はカタログを片手に尋ねてくる。
それは私は以前、機会があれば行きたいな。と思っていた動物園だった。
「なんで知ってるの!!!!!!?????」
「ミキが学校でこのカタログ見てたから!」
と彼は私の行動を観察していたようなストーカーみたいな発言をした。
「いや、なんで見てたの知ってるのよ。怖い…」
「こ、怖い…!?たまたま見えただけだよ!ミキのこと好きでもなかったし、ずっとミキのこと見てない!!!!!」
「まぁいいや」と私はカタログをパラパラと見ていた。
「あ!どう?行きたい!?」
私は【期間限定!ホワイトタイガーとの記念撮影!】と書かれている文に目が惹きつけられた。
「い、行きたい…」
「よっしゃあ!教会回避!!」
と彼が勝ち誇ったような顔をしていた。
「おおー!!動物園なんて久しぶりー!!!」
と彼が辺りを見渡し、目を輝かせていた。
「久しぶりなの?私は一年ぶりくらいかなー。ちょっと久しぶり」
「うん。ほら、親があんなんだったからさ10年ぶりぐらい…」
この様子だと親との思い出もほとんどないのだろう。
なら―――――――――
「私と一緒に思い出作ろうね!!もとの世界に戻ってからもずっと!」
彼は少し驚いたような表情をしたがすぐに頷き、何かを言おうとしたがすぐに口を閉じる。
「…なんて言おうとしたの?」
「ううん、今は言わないでおく。もとの世界に戻ってから言うよ」
と彼ははにかんだ。
その表情からは悪い知らせのようではないようだ。
「そっか。楽しみにしとく!」
「楽しみにしといて!じゃあ、まずはこっちから行こうか」
と彼は私の手をひっぱり、歩き出す。
男の子に手を触れられたことはないが、不思議と嫌ではなかった。
むしろ、はなさないで欲しい。ずっと一緒にいたい。
でも、私たちはいつまで一緒にいられるのか分からない。
そう考えると寂しかった。
゚+o。。o+゚♡゚+o。。o+゚♡゚+o。。o+゚♡゚+o。。o+゚♡゚+o。。o+゚♡゚+o。。o+゚♡゚+o。。o+゚゚+o。。o+゚♡゚+o。。o+゚♡゚+o。。o
【受験生なので更新頻度が落ちます。
見てくださってる方はこれからも宜しくお願いしますm(_ _)m 】
少なくとも動物園にいる間、私は彼のことを意識していた。
多分、男の子として…。
少し手に触れられたからかもしれない。だとしたら私はちょろすぎる。
期間限定のホワイトタイガーとの記念撮影に並んでいる間、私は思わず聞いた。
「もとの世界ではさ…す、好きな人、とかいたの…?」
「え!!!!!!!!????????」
彼は驚いて少し後ずさった。
「い、いる…」
と彼ははにかみながら言った。
彼の言い方は少し不自然なような気がした。
「いた」ではなく「いる」。現在進行形。
つまり、彼の好きな人はこの世界に飛ばされたのだろうか?
それともまさか、この世界の住民だろうか?
…いや、それはない。この世界の住民は奇形だ。人間とはほど遠い。
変な趣味を持っていなければ好きになることはないだろう。
それか――――
私…。
いやいやいやいや、そんなわけない!!!!!!!!!!!!!!!
「おーーーい、ミキ?」
私が思考を廻らせていると、彼が私に呼びかけていた。
「あ、何?ごめん、ボーっとしてた」
「だろうね。でさ、この動物園一周まわっちゃったけど、「ある場所」はなかったんだ。でも、楽しかったね!」
いつの間にか一周まわっていたようだ。楽しい時間はあっというま。
私たちははやくもとの世界に戻って、厳しい現実世界で生きていかなければいけない。
でも――――――――――――――――
「次はどこに行こうか?」
「…どこにも行かない」
「なんで?」と彼は心配そうに私を見る。
「私さ、ずっとユウトとここにいたい」
「…」
彼は黙り込む。
「あんな世界、戻りたくない。ユウトだってそうでしょ?ここの方がずっと楽しい。帰りたくなくなっちゃった」
「俺たちはここに元々いない。だから帰らないと…」
「なんでいちゃダメなの?」
「ダメってわけじゃないけど…もとの世界に帰ったほうが絶対いい。ここは未知な場所。いつまでもいると危険だ
帰ろう」
私は納得できなかった。
「――――嫌だ」
「じゃあ話でも聞かせてもらおうか」