人魚姫~零れ落ちた真珠の涙~

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1:AL ◆6.:2020/09/21(月) 17:13

アンデルセン童話の「人魚姫」をアレンジした
小説を書いていきたいと思います。

※D社のリトル・マーメイドの二次創作では
ありません。アリ⚪ルとも何の関係もありません。

・感想、アドバイス待ってます!
・私は豆腐並のメンタルなので否定コメントは
お止めいただけると幸いです。
・読者様求む(ボソッ

2:AL ◆6.:2020/09/21(月) 17:23

ーー貴方は、人魚が涙を流した所を見たことがありますか?
人魚は涙を流すと真珠のような涙が瞳から零れ落ちるのです。
かの伝説の人魚姫も、真珠の涙を流しながら
泡となり、消えたのです。
ーーしかし、人魚は人前に姿を現すことが全くと言って
良い程無いので、真実かどうか怪しいと言う者もおります。


でもこのお話を読めば真実だと言うことが分かりますよ。
では早速読んでみましょうか………

3:AL ◆6.:2020/09/21(月) 19:49

ーー昔々、蒼き海の王国に見目麗しい人魚姫が
七人おりました。その中でもエメラルドグリーンの髪、
金色の瞳、聴く者全てを魅力してしまうような歌声を
持つ、末の娘のアクアス姫は王国一番と言っても
過言ではない程の美しい人魚姫。
更に彼女は心優しく明るい性格をしていた為、国中の
人魚や魚達に深く愛されていました。
勿論、上の六人のお姉様と国王である父上も
アクアス姫をとても可愛がっておりました。

ーーそんな穏やかな海の王国ですが、厳しい掟も
ありました。海上と人間には近付いてはいけないという
掟です。みなこの掟に、何の疑いもなく従って
おりますが、それには訳があります。
人魚や魚は小さな頃から王国にある本や絵画で
人間が魚を捕らえている姿、人間が人魚の肉を食らう姿を
見てきていたのです。
その為、海の王国に住む者はみな、人間は残酷な
生き物だと信じきっておりました。
ーー例外はありません。末のアクアス姫も、です。
ただ、アクアス姫は物事をじっくり深く考えるのが
好きな性格をしておりましたから、人間はどうして
そんなにも野蛮で残酷なことをするのかを
考えることもありました。

4:AL ◆6.:2020/09/21(月) 19:51

>>3
誤字発見

❌聴く者全てを魅力してしまうような歌声

⭕聴く者全てを魅了してしまうような歌声

すみません……

5:AL ◆6.:2020/09/21(月) 20:24

けれど、優しいアクアス姫には野蛮人のことなど
考えても分かりませんでした。
考えて、考えて、分かったのは残酷だと言うことだけ。
人間はきっと、血も涙もない悪人なのでしょう。
アクアス姫は、人間のことを考えるのを止めにしました。
それが姫の十二歳の頃でした。

ーーそれから三年の月日が流れ、アクアス姫は
もっともっと見目麗しく、綺麗な透き通る美しいを
持つ人魚姫に成長しました。
心優しく明るいアクアス姫は、年端もいかぬ
人魚や、魚と遊んであげるのが毎日の日課でした。
この日もアクアス姫は、魚達と鬼ごっこを
しておりました。

「うふふ、逃がさないわよ!」

アクアス姫は綺麗な尾びれをヒラヒラさせて
小魚達を追いかけておりました。追われた小魚達は
きゃあきゃあと楽しそうな声を上げています。
アクアス姫も、その楽しそうな声を聴いてうふふと
笑いました。
ーーその時です。お城に仕える大臣の人魚…エムプールが
泳いでアクアス姫の方へやって来ました。

「アクアス姫様!」

姫を探すのに、あちこち泳ぎ回ったのでしょう、
ぜえぜえと荒い息をしながら、大臣がアクアス姫に
呼び掛けました。アクアス姫は小首を傾げます。

「あらエムプール、今日はお城の用事は無かった筈よ。
どうしたの?」

アクアス姫は問い掛けました。

「そ、それは確かに、そうだったのですが………
国王陛下が姫様にご用があると仰られましてねぇ。
何でも、急用だとか……」

「まぁ!そうだったのね、それで貴方急いで私を?
ありがとう、そしてごめんなさい。探すのに
手間取ったでしょう?今日は、可愛い小魚ちゃん達と
鬼ごっこをしていたから、あちこち泳ぎ回っていたのよ」

姫はエムプールの手を取り、謝りました。

「ああ、それで中々見つからない訳です!でも、わたくしは
大丈夫でございます。わたくしめなんぞにお気を遣わせて
すみません」

アクアス姫の言葉を聞いて、エムプールの方が
逆に謝りました。アクアス姫はにこりと優しく微笑み、

「気を遣ってなどいないわ、エムプール。
私は貴方に心から感謝しているの。いつも私達に
良く仕えてくれて」

と言いました。

6:AL ◆6.:2020/09/22(火) 17:29

そんな姫の言葉を聞いて
エムプールはうやうやしくお辞儀をしました。

「貴方様のような、お優しい人魚にお仕え出来て
このエムプール、誠に光栄でございます!
それでは、お父上が待っておりますので参りましょう」

エムプールは握られたアクアス姫の手を優しく離すと
言い、泳ぎ始めました。

「ええそうね、行きましょう。………それにしても
お父様、急用って何かしら……?」

アクアス姫も彼に続きながら、そんなことを呟きました。
そして、まだ楽し気な声を上げて泳ぐ小魚達を見て
姫は泳ぎながら声を飛ばします。

「小魚ちゃん!ごめんなさい、今日はもうおしまいよ!
また明日、一緒に遊びましょうね!」

それを聞いた小魚達は寂しげにアクアス姫を見つめ、
ヒレを手のように振りました。姫も手を振り返し
急いでエムプールに続いてすいすいと泳いでお城へ
戻りました。

7:AL ◆6.:2020/09/26(土) 11:54

お城へ帰ると、国王の間で国王陛下が待っておりました。

「お父様、ただいま帰りました。それで、私に
話って何なの……?急用だって聞きましたわ」

アクアス姫は優雅にお辞儀をした後、
父親に問いかけました。国王陛下はアクアス姫を
真剣な眼差しで見つめると、話を始めました。

「わが娘よ、良く聞きなさい。お前ももう、年頃の娘だ。
そこで、婚約者を決めようと思う。
丁度、隣の海に住んでいる王子がそなたに婚約を
申し込んで来た。よい機会だ、是非会ってみないか?」

アクアス姫は、国王の言葉を聞いて目を見開きました。

「でも、私は十五歳よ……まだ早いわ」

8:AL ◆6.:2020/09/27(日) 12:48

アクアス姫は父親に反論しました。

「″もう″十五歳ではないか、娘よ。
会うだけでも構わん。いきなり結婚しろ等とは
儂も言わぬ。だが、会ってみないことには何も
始まりはせんだろう?」

国王陛下は姫を諭すような、優しい口調で言いました。
アクアス姫は父親から目線を逸らすと、目を伏せました。
そして、目線を逸らしたまま、反論を続けました。

「そうね……それはその通りよ、お父様。
だけど私は社交界デビューしたのだって、つい最近の
ことなのよ?それなのに、もう婚約者を決める?
物事には段取りというものがございますわ、お父様」

9:AL ◆6.:2020/10/07(水) 19:20

姫の言う、社交界デビューとは舞踏会に
出席するということです。人間だけではなく人魚にも
舞踏会もあるのです。美しいヒレをひらひらさせて
踊るのです。その、人魚の社交界デビューの年齢というのが
アクアス姫の年と同じ、十五歳だったのです。
そして姫は、先日デビューしたばかりなのでした。
ですので姫は、こうして父親に反論をしているのです。

「お父様、お願い、分かって!」

姫の懇願も空しく国王陛下は

「今日中に、返事を出さなくてはならんのだ。
とにかく、何度も言うが会ってみないことには
何も始まらない。明日、隣国の王子と会うように」

と、おっしゃいました。

「でも……」

アクアス姫がまごつくと、国王陛下は更に続けました。

「これは、国王の命令だ!破ることは出来ぬ!」

その威厳溢れる父親の姿に、姫はこれ以上反論出来ないと、
溜め息を吐き「はい」と小さく頷きました。

国王が、返事を出す為に部屋を出るとアクアス姫は
もう一度溜め息を吐き、

「本当に、国王陛下はご立派だわ」

と皮肉を言いました。

10:零桜:2020/10/08(木) 23:53

まーた読者を引き込む小説を書いてらっしゃるよこの人は...((
好きやわぁ...

11:AL ◆6.:2020/10/09(金) 17:01


そんな大それたモンじゃないよーw
え、ありがとう❤️

12:AL ◆6.:2020/10/09(金) 17:02

あ、>>11>>10宛てですー

13:AL ◆6.:2020/10/09(金) 17:22

ーーアクアス姫はさっと踵を返し、自室に帰って
いきました。いつもなら、大臣のエムプールに挨拶を
するところですが、今日の姫様にはそんな心の
余裕はありませんでした。
姫は自室にあるドレッサーの前に座り、鏡の中から
覗き込む自分の顔を見つめて溜め息を吐きました。
さっきから溜め息ばかり吐いている、と思ったものの、
溜め息を吐かずにはいられないのでした。
するとそこへ、三歳年が離れた姉上のアリアー姫が
やって来ました。

「あら、アリアー姉様どうしたの?ノックもしないで」

アクアス姫は驚いて顔を上げました。姉上は笑って

「ノックはしたわよ。それも三回もね。貴方、気付いて
いないんですもの、姉として心配になってこうして
声をかけたという訳よ」

と言いました。ただし、言葉の最後の方は笑った表情から
一転、真剣な表情をして、妹を見つめていましたけれど。

「気付かなくてごめんなさい。そして、気にかけて
くれてありがとう、姉様。私、ちょっと考え事をしてたの」

アクアス姫は目を伏せ、物憂げな表情を浮かべて
言いました。姉上は妹の肩を抱き、こんなことを
言ったのです。

「貴方が何を考えているか、あたしには分かるわよ
アクアス」

「え?」

アクアス姫は思わず長い睫毛をぱちくり、瞬きさせました。

「明日、婚約者に会うんですってね」

アリアー姫は妹の表情など、気にする素振りも
見せずに言いました。

「ええそうよ。でも私、まだ結婚なんてしたくないわ。
第一、結婚するには愛がなくちゃ!」

アクアス姫は姉に訴えました。

14:AL ◆6.:2020/10/15(木) 19:36

アリアー姫は妹の目を見て言いました。

「少しずつ、愛を育むことだって出来るわ。
最初は愛が無くても、何度も逢瀬を重ねる度に
愛が芽生えていくということもある……」

「だけど姉様!私……」

アクアス姫は言葉を途中で止めにして、鏡の前に
突っ伏しました。姉は溜め息を吐き、諭します。

「会ってみないと、分からないでしょ」

アクアス姫はすいーっと本棚の方に泳いでいき、
一冊の本を手にして、アリアー姫の元に戻りました。

「私はね、運命的な出会いをして、もしも会えない
日々が続いても、再び会えることを信じて待っていられる…
そんな恋がしたいのよ!」

その本は、アクアス姫が幼い頃から愛読している
ロマンス小説でした。姫は、美しくロマンティックな
恋愛に憧れているのです。

15:AL ◆6.:2020/10/21(水) 20:19

「はぁ、全くアクアスったら!まぁ良いわ。
いつか貴方にも分かる時が来るわよ」

夢見がちな妹に少しだけ呆れながらも、そう言って
アリアー姫は自室に戻っていきました。
これで、アクアス姫は一人になってしまいました。
姫は一人になると、先ほどのロマンス小説を手に取り、
美しく綺麗な挿し絵をうっとりと眺めました。

「とても素敵だわ……いつか私も、こんな恋がしたい」

アクアス姫は呟きを漏らしました。
いつか本当に、そんな恋をする日が来ることを、姫はまだ
知りません。今はまだ、あくまでも恋に恋をしている
だけなのでした。

ーーそこへ、突如静寂を破る、激しいノックの音が
響き渡りました。姫は、一瞬で扉の向こうにいる相手が
誰だか分かったので溜め息を吐きました。

「お父様、お入りになって」

言いつつも、鏡から見返して来る姫の顔は
嫌悪に満ちていました。国王が部屋に入って来ます。

「何のご用?」

アクアス姫は、出来るだけ父親と目線を合わせないように
気を付けながら言いました。

「返事を出して来たぞ。明日をさぞかし楽しみにしているとの
ことだそうだ」

「私はちっとも、楽しみなんかじゃないわよ」と
危うく言いかけて、姫は止めました。けれども姫は
もう決心はついていましたから、仕方ないと
割り切りました。国王は、それだけを言うと、部屋から
出ていきました。

「私を心配したり、私を気にかけて、ここへ来たんじゃ
ないんだわ、お父様は」

姫はぽつりと言いました。

16:AL ◆6.:2020/11/08(日) 11:50

姫は、心を落ち着ける為に、今は亡き王妃の
書斎へ向かいました。アクアス姫は、悲しいことが
あった時、今のように心を落ち着けたい時に
王妃の書斎へと向かうのです。
そうすると、何だかお母さんから励まして貰えるような
気がするからです。

王妃の書斎へ入ると、やはり心が安らぐのを感じました。
アクアス姫は、書斎に飾られている亡き王妃の
肖像画を眺めて呟きました。

「ママがまだ、生きていてくれれば良かったのに………
そうしたら、きっと色んなことが聞けたでしょうね。
分からず屋のお父様をどうにか言いくるめて、
婚約者に会わずに済んだかも…………」

王妃は、アクアス姫がまだ幼い頃に亡くなられた為
姫は王妃を″ママ″と呼んでいます。姫がお母さんについて
覚えていることは、優しく包む腕、女神のような
暖かい微笑み、綺麗な歌声と容姿です。きっと今日の
ような時にも味方になってくれた筈のお母さん。
アクアス姫は、久しぶりに母が恋しくなりました。

「ママ、私………明日ね、婚約者に会うのよ。
どうしたら良いの?私は愛のある結婚がしたいの」

アクアス姫は、優しい笑みを湛えた王妃の肖像画に
語りかけました。でも、肖像画の中の王妃は、何も
答えてはくれません。優しい笑みを湛えたままです。
姫は寂しい気持ちを堪え、本を読むことにしました。

ーーそこで、興味深いものを見つけました。
彼女の物語はゆっくりとそして確実に動き始めています。

17:AL ◆6.:2020/11/08(日) 12:04

姫は、本棚の奥の奥に古い本があるのを見つけました。
まるでその古い本は、存在を隠すかのように見えました。

「まぁ、こんな本あったかしら?」

アクアス姫は好奇心に駆られ、古い本を手に取ると
本のページをめくりました。
その本は、人魚姫と人間の恋を描いたロマンス小説
でした。姫は眉をひそめ、思わず独り言を言いました。

「野蛮人と恋など成立する筈がないわ」

そう姫は言いましたが、その物語に描かれている人間は、
海の王国で教えられてきた人間のイメージとは
全くと言って良い程かけ離れておりました。
物語の人間は優しく、真心があり、海を愛する王子として
描かれていたのです。

18:AL ◆6.:2020/11/08(日) 16:54

そして足を手に入れ、人間の世界に踏み入れた
人魚姫。その人魚姫の健気な愛を受け入れ、自らも
彼女を愛した人間の王子。二人の愛は、素晴らしく
美しいものでした。
物語の世界に引き込まれ、一気に本を読み終えた
アクアス姫が思わずほうっと溜め息を吐いてしまう
程でした。

「本当にこんなことが、有り得るのかしら。
だって、人間は野蛮で恐ろしくて………」

姫はそこまで言ってから、少し考えました。
物事をじっくり深く考えるのが好きな姫は思い直した
のです。人間の世界も、きっとこの海の王国のように
とても広いのでしょう。
そんな広い世界に野蛮人しかいないというのも
考えにくいのです。海の王国にも、色々な人魚や
魚がいます。もしかしたら一人くらいは
この物語のような人間がいるかもしれません。
考え直した姫は別のことについて、また考えていました。

「この本が、ママの書斎にあったということは
これはママの本なのかしら」

何故、王妃はこの本を持っていたのでしょう?
彼女の夫である王が厳格に守っている海の王国の
掟については、王妃も知っていた筈なのに。

「ーーママも、こんな恋がしたかったの?人間と?」

アクアス姫は、考えをまとめようと、思い付いたことを
口に出してみました。
すると、本棚にこのロマンス小説のように
ひっそりと隠されている日記帳のようなものを
見つけました。

「これは、何?日記かしら?もしかしたらママの?」

何故こんな本をひっそりと隠していたのか、その
理由が分かるような気がして姫はその日記を
読みました。

19:AL ◆6.:2020/11/08(日) 17:13

日記は、やはり王妃のものでした。
その日記には、遠い海からこの王国に来た時の
心境、結婚してからの日々などが書いてありました。
ただ、所々謎めいたことが書いてありました。

『私はある人に会ってしまいました。その人を
私は心から愛しています。でも、本当は
愛してはいけない人なのです。私のこの恋は
叶う筈のないものなのです。それでも、私はあの方を
愛しています』

姫は眉をひそめました。

「あの方………?」

更にアクアス姫はページをめくります。

『ある興味深い物語を見つけました。私と同じ想いを
抱いている、人魚のお姫様の物語。本当に私に
そっくりなので、驚いているわ』

姫は、その日記の物語が何のことかすぐに分かりました。
恐らく、この人魚姫と人間の王子のロマンス小説の
ことなのでしょう。ですが、同じ想いというのは………

「ママは、人間に恋をしたの?人間を好きになったの?」

姫の疑問は募るばかり。またページをめくります。

『もう想いは抑えきれそうにないわ。私は一体
どうしたら良いの?遠くから眺めるのは嫌……
あの方にお近づきになりたい』

『私も、物語の人魚のお姫様みたいに、幸せな
結末を迎えたい。無理だって、願ってはいけないと
分かってる。だけど………』

アクアス姫は、母の強い想いに驚きました。

「やっぱりママは、人間を愛してしまったんだわ。
それも、凄く」

20:AL ◆6.:2020/11/22(日) 08:51

アクアス姫が日記を眺めていると、向こうから
エムプールの声が聞こえて来ました。

「姫様!?アクアス姫様!?どちらですか!!?」

どうやら、アクアス姫を探しているようです。
なんとなく王妃の部屋から出てくる姿を見られるのは
まずいように感じ、アクアス姫はエムプールが
王妃の部屋を去ってから、周りを確認しつつ
出てきました。
そして姫は自分の部屋に戻ると、こっそり持って来た
王妃の日記と、王妃の部屋にあったロマンス小説を
自分の本棚の奥深くに隠しました。

21:匿名:2020/12/05(土) 23:52

素敵です!
がんばって下さい!

22:AL ◆6.:2020/12/07(月) 19:23

わわわ!ありがとうございます😭✨
頑張ります!

23:AL ◆6.:2020/12/12(土) 17:13

「ママの秘密を知ってる人は、この城にいるのかしら」

姫はふと、そんなことを呟きました。

「嗚呼、誰か相談出来る人がいれば良いのに!」

思わず姫はそう言っていましたが、こんなこと
説明のしようもないし、分かっても貰えません。

「ああそうだわ。″あの人″に相談するのが一番よ!
このロマンス小説か、ママの秘密を、知っているかも
しれないわ!」

ーーアクアス姫の言う、″あの人″とは《蒼く深き海》に
住む魔女、エリザベードのことでした。
エリザベードは、元々何処かの王国を治める女王でしたが
その魔力を恐れられ、追放されてしまいました。
そんなエリザベードを拾ってくれたのが、アクアス姫の
両親でした。
エリザベードは、高い魔力を誇る海の魔女でしたが
美しく、心優しく、面倒見がよい良い魔女でした。
よくアクアス姫の相談にも乗ってくれました。
だから今回も、アクアス姫はエリザベードに相談を
することに決めたのです。

24:AL ◆6.:2020/12/13(日) 10:34

アクアス姫は、すいすいと《蒼く深き海》を目指して
泳ぎました。泳ぎ疲れた頃、エリザベードの住んでいる
洞窟が見えました。

「こんにちは、エリザベード。いらっしゃる?」

姫は洞窟に入ると、呼び掛けました。

「あらこんにちは、プリンセス。どうぞ、いらっしゃい」

感じの良い声が返って来ます。
アクアス姫が振り向くと、エリザベードがそこに
いました。全身緑の綺麗な鱗だらけで、滑らかな
青い髪を持ち、つり目だけれど、優しげな目元が覗く、
大変な美貌の持ち主、海の魔女・エリザベードです。

「あのね、エリザベード。今日は……相談があって
ここへ来たのよ」

勇気を出して、そう話しました。幾ら信頼を置いている
エリザベード相手だとは言っても、この重大な秘密を
話すのは、かなり勇気のいることでした。

「勿論相談に乗るわ。その前に…」

エリザベードは向こうの方へ泳いでいくと
ティーカップとティーポットを持って、こちらへ
戻って来ました。

「お茶をお飲みなさいな。喉に良いお茶よ」

綺麗なティーカップにお茶を注ぐと、アクアス姫に
手渡しました。

「ありがとう、エリザベード」

姫は一気にお茶を飲み干すと、こう尋ねました。

「ねぇ、誰にも話したりしないって約束してくれる?」

アクアス姫の訴えかける様な眼差しを感じ、魔女は
彼女を落ち着かせる為に頭を撫でました。
それはまるで、母親の様に優しげな手つきでした。

「約束するわ。何があってもね」

エリザベードはにこりと微笑むと、答えました。

25:AL ◆6.:2020/12/13(日) 10:46

「ーーエリザベード、これを知っている?
何処かで見たことはある?」

彼女はそう言うと一冊の本を取り出しました。
それは例のロマンス小説でした。

「……!あ、貴方、何処でそれを!?」

エリザベードの優しげな瞳が、動揺する様に
揺れました。明らかに表情が変わったのを、姫は
見逃しませんでした。

「ーーやっぱり知っているのね。これは何?」

アクアス姫は魔女に問い掛けました。

「今は知る時じゃあ、ないわ」

とだけ、魔女は静かに答えました。

「何故?私は今すぐ、知りたいのよ!」

「焦らないで、可愛いプリンセス。今知りたいと言うなら
私は、貴方から泣きながら貴方の腕を奪わなければ
ならない。それかーー美しい歌声を。美しい歌声を
奪って、代わりにがらがら声を貴方の喉にくっつけないと
いけなくなるでしょうね」

それは脅しとも取れる発言でしたが、そんな発言にすら
優しさが含まれていたので、怖くはありませんでした。

「じゃあ、私はいつ、知れるの?」

アクアス姫は焦って前髪を引っ張りました。

「その時が来たら。とだけ言っておくわ」

それでも姫の瞳が不安げに揺れているのを見て
魔女は言葉を続けました。

「大丈夫。いつかその時が来るわ…」

26:AL ◆6.:2020/12/13(日) 17:17

姫は「いつかっていつなのかしら」と言いかけて
止めました。エリザベードが″いつか″と言っているのです。
きっとその″いつか″が来る筈。それまでは、姫と
心優しい魔女、二人だけの秘密です。

「今日は本当にありがとう。凄く心が軽くなるのを
感じたわ」

アクアス姫は、心から言いました。
エリザベードはにこりと、優しげな笑みを浮かべます。

「それは良かったわ、可愛いプリンセス。
また何かあったらいつでもいらっしゃいな。
相談に乗るわ」

27:AL ◆6.:2020/12/14(月) 19:57

アクアス姫は「ありがとう」と言う代わりに
ひらひらと手を振り、洞窟を出て行きました。

「あら、何か忘れているような気がするわ」

姫は呟きました。そして、頭の中に泳いで自分を
探し回るエムプールの姿が浮かびます。

「そうよ!エムプールが私を探していたんだったわ!」

思い出した様にアクアス姫は叫びます。
そんな訳で、姫は急いで城へと戻りました。
**
ーー同じ頃、海上では浜辺を歩く凛々しく整った顔立ちの
男性がおりました。髪は海を思わせる深い青色で、
瞳の色はアクアス姫と同じ金色でした。
彼は海に近い城の王子で、名前をサファイアと
言いました。優しく賢い王子は、みんなから愛されて
育ちました。そんなサファイア王子は、海を心から
愛していました。小さな頃から海に惹かれ、船で旅を
するのを趣味としておりました。
そして、何かあれば浜辺に来るようにしていたのです。
ザザ、と言う波の音を聞きながら、王子は靴を脱いで
足を蒼い海に浸しました。
と、そこへ。誰かの足音が聞こえ、彼が振り返ると
サファイア王子の執事であるマイルがおりました。

「なんだい、マイル?」

「王子様、サファイア王子様!嗚呼、こちらへ
おりましたか。求婚者の姫君へのお返事がまだで
ございましょう!?お父上がカンカンですよ!」

マイルはそう言うと、サファイア王子を優しく
立たせました。王子は苦笑いして、

「おっと、そうだった。すっかり忘れていたよ」

と仰いました。

ーー偶然か、はたまた運命なのか、海の王国の姫と
人間の国の王子は同じ日に求婚者と会うことになって
いたのです。

ーー少なくとも、このサファイア王子が海の王国の
お姫さんの運命を担っていることは確かです。

王子は靴を履き、砂を払うと、マイルに訴えるように
こう話し出しました。

「だけれどもね、マイル。僕は言ってるだろう?
僕は船乗りになりたいのさ!愛する海を、この肌で
いつも感じていたいんだ。だから僕は、泳ぎが得意で、
僕と同じくらいに海を愛している女性以外とは
結婚はしない。そう決めているんだ!」

「そうは仰いますがね、サファイア王子。泳ぎが得意な
姫君なんて、そう簡単におりませんよ」

マイルは困ってしまって、眉根を寄せながら言いました。

28:AL ◆6. hoge:2021/01/17(日) 09:17

「ははは、マイル、運命を信じていれば必ず会えるさ。
少なくとも、僕はそう信じているんだ!」

強い決心を瞳に灯して、サファイア王子が言いました。

「運命は明日のお見合いにあります。さぁ、お返事を。
宮殿に帰りますよ、王子」

マイルはそう言うと、宮殿の方を指差しました。
サファイア王子は何か言いたげでしたが、渋々
マイルに従って、宮殿へと帰ることにしたのでした。

29:AL ◆6.:2021/02/14(日) 09:06

「また海に出向いていたのか?」

サファイア王子の父親である、国王陛下が
怖い声で仰いました。

「海を見ていると気持ちが安らぐので」

サファイア王子は、悪びれもせず答えました。
国王は、はぁと溜め息を吐きました。

「海に行くのが悪いのではない」

国王は言葉を続けます。

「王子たるもの、早く身を固めて世継ぎを産ませねば
ならぬのだよ。それが王族の務めなんだ」

そう言って、お返事用の艶々した紙を取り出しました。

「せめて、会うだけで良い。だから、頼む」

サファイア王子にペンを握らせました。
流石に断ることが出来ずに、さらさらとお返事を書きました。

「これでよろしいですか?」

王子様は何処か投げやりに、言いました。

「うむ。隣国だから、ギリギリ間に合うだろう」

そう仰って、伝書鳩に手紙を配達させました。


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