暑い真夏の真昼間の出来事……
宅配屋から馬鹿でかい荷物が届いた。
しかもそのでかさときたら、まるで棺桶。
業者さんと二人がかりで俺の部屋まで運んだのだが……
いやはや、重いのなんのって。
一体何が入ってるんだ……
業者さんにお礼にとお茶お勧めて見送った後、早速この「棺桶」
をあける。
が、そこには……
一人の女性が全裸で入っていた。
まっまさか……
俺は悲鳴を上げることも出来ずに腰を抜かしてしまった。
(リサーチャー)
「死体?」
俺の思考は今目の前の「死体」でパニックになっていた。
あわててその「棺桶」に書いてある、住所に連絡を取る。
最近は電話も進化して、一家に一台テレビ電話が普及している。
うちもこれに買い替えて20年近く経っっている。
俺はあわてて「棺桶」に貼り付けてある「送り主の住所の書いてあるラベル」
を剥ぎ取り電話のモニターにぺたりと貼り付ける。
わざわざ電話番号を入力する必要もなく当然受話器も存在しない。
紙をモニターからはずすと読み込み成功と、通信中のメッセージが表示された。
そしてモニターに出てきたのは幼い女の子であった。
俺は保護者に代わる様に言ったのだが、どうやらこの子は訳ありのようだった。
「ご用件は何でしょうか?」
幼い女の子とは思えない口調それも無表情でモニター越しから問いかける。
俺は例の「棺桶」のことを聞き出そうとパニックしている頭から、言葉を選んで質問していく。
すると彼女は微笑みながら、おめでとうございますと一言。
「おめでとうだぁ?」
棺桶送りつけて?おめでとう?何のことかさっぱり分からない。
「貴方はリサーチャーに選ばれたのですよ。」
リサーチャーとは一時的に試作品などを預かりそれをテスト使用し報告する
いわゆる職業なのだが……
そういえば、2ヶ月前職がなくリサーチャーでもやろうかと片っ端から応募してたっけ?
ってことは……
棺桶の中のてっもしかして商品なのか?
後ろに放置してある開けっ放しの「棺桶」に目をやる。
するとそこには先ほどのしたいがひょっこり起き上がってるではないか。
「ぎゃああああああああああああ」
「きゃああああああああああああ」
俺と「死体」は同時に悲鳴を上げる。
「あーびっくりしたぁ、いきなり大声上げるんですもの」
死体から言葉が出た。どうやら死人ではないようだが、相変わらずすっぽんぽんである。
「びっくりしたのはこっちだよ。死体じゃねえのかよ」
「アンドロイドです」
モニターから声がする。
先ほどの電話の相手からである。
「ってまさか、リサーチするのって、これ?」
俺は裸の彼女を指差す。
「そうでーす」
元気良く左手を高々と上げて答える彼女。
「では、資金はそちらに送っておいたのでよろしくお願いします。詳細は彼女から聞いてください」
そして、通信が途切れモニターから少女が消えていく。
「おいおい、まだ俺やるっていってないのに」
頭を掻き毟りつつ、先ほど少女が話した「資金」を確認するために居間に移動する。
「あのさ?服着ません?」
居間に移動するために階段を下りる俺の前をとんとんテンポ良く降りて行く彼女を引き止める。
「あ、服ね。それじゃちょっと着替えてくる。」
くるりと俺の方を振り向き階段を駆け上る彼女。
そのまま俺の横を通り過ぎ、俺の部屋に入っていった。
俺は居間のテレビから送金された「資金」を確認することにする。
紙幣から全ての金が電子マネーに変わった今、銀行なんていうものは存在しない。
ショッピングはほぼ自宅から「通販」で済ませるようになっている。
まぁ、それでもやはり外出してお店で買う人も多いのだが。
さすがに食事は通販では出来ないし、飲みに行くにも通販じゃ出来ない。
購入してから届くのに一日はかかる。
スグに使いたい物などはやはり外出して買うのである。
さて受信が完了したようだ。
さて、「資金」はいくらなのか。
画面を見て俺は凍り付いてしまった。
「どうしたの?」
彼女は服に着替えて居間に入ってきた。
ジーンズにタンクトップ。割と似合ってる。
だがそれよりも俺が彼女に飛ばした言葉は……
「資金って、一千万ドル?何でこんな大金が……お前一体何なんだよ!」
アンドロイドのリサーチャーで資金が一千万、一体何に使うのか?
このアンドロイドはそんなに精巧なアンドロイドなのかよ!
おいおい、資金一千万って……なんかやばくねぇか?
よし断っちゃおう。
俺はさっきの住所に電話をかけることに。
「あのーさっきの件なんですけどお断りしたいのですが」
モニターに少女が出るやいなや間髪居れずにお断りをする俺。
「えーなんでなんでなんでよー」
俺の後ろで彼女が手足をばたばたさせながら騒いでいる。
「うるさいなー、だって1000万って資金なんてでかすぎる。怖くてできるかよ」
俺は彼女をびしりと睨み付けて又モニターに目をやる。
「はい?ああ資金の件ですね。ご心配なくこちらで全部用意いたしましたら」
いや、そういう意味じゃなくって……
「大体、リサーチの内容も聞かされてないんだよ。こんな子供に言われてもピンとこねーし」
そう言うと少女の顔つきがきつくなる。
「何ですって?言ってはならないことを。こう見えても私は27ですよ」
……いや、どう見ても小学生にしか……
「なんですってぇーーーーー」
あ、ヤベ聞こえちゃったか?
「ムキー失礼なチャンと胸だってしっかり膨らんでるんですからね」
そういうと少女は、いきなり着ていた白衣を脱ぎ始める。
「わぁー、博士いけません、おやめになって」
そういうと後ろで手足ばたばたワキャワキャわめいていた彼女が俺の両目を
後ろから両手でさえぎる。
あ、ちょっと……
胸の感触が……
「ええぃ、うっとおしいその手を離せよ」
後ろでブンブン首を横に振りまくる彼女。
あ……だから、胸の感触が……
俺は、たまらず鼻腔から鮮血をぶちまけてしまった……
子一時間経ち……
「あぁーもう最悪だ。」
俺は鼻腔にちり紙をつめ……彼女が氷嚢で俺の首を冷やす。
「とりあえず、話だけ聞こうか?」
俺は怒りを抑えつつ、少女をにらみつけ
「さっき博士って言ってたよな?彼女を作ったのあんたなのか?」
そう問いかけると、少女は満面の笑みでこう答えるのだった。
「ええ、そうですよ私が作った生活補助の為のアンドロイドの試作品です。」
ほぅ、生活補助ねぇ……
「で?何を補助するんだよ?」
「それはもう、いや、えーと……」
彼女が口ごもる。
「何だよ、はっきり言ってくれ」
俺が少しきつめに言うと彼女がこう答えた。
「独身男性用の、いわゆるお嫁さんアンドロイドです。」
「はぁ?嫁さんだぁ?おいおい、そんなもん俺がどうリサーチすんだよ?」
少女はさらに、こうこたえた。
「いえ、普通にですね暮らしていただければ……と」
そしてあわてながら少女は
「あ、それと資金は全てお二人の生活費となっておりますので」
……
「チョイ待ち、何で俺なのよ?他の人でもいいじゃんかよそんなもん」
少女は申し訳なさそうにこう答える。
「ええ、まぁ彼女にも好みという物が御座いましてね」
後ろでほほを染めてこちらをちらちら見ている……アンドロイドが……
「夜のほうも、安心してくださいませ」
いやーーーーーーーそうじゃなくて……
「あ、あのね?俺、彼女いるんだけど?」
少女は少し微笑みながら、
「あ、そこは大丈夫です。もう了承とってありますので」
え?了承……何それ?
「貴方のお連れ様にも同じリサーチ受けていただいておりますので、まあ彼女には男性アンドロイドの方をお願いいたしましたけど、それはもう快く引き受けてくださいましたわ」
「え?」
「すでに、お連れ様の方は婚姻届も出されておりますし……」
へ?
「あ、あの……今なんと?」
空耳だよな。空耳だよな?空耳だよね……
「いえ、ですから婚姻届を……」
のぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!
「不束者ですがよろしくお願いします」
恥じらいながら彼女は律儀にちょこんと正座し挨拶する。
アンドロイドに……ま…け…た…