ごらく部
京子「えっ?おい今誰かなんか言った?」
結衣「京子」グイッ
京子「いだだだだだ耳がもげるぅぅ」バンバン
ちなつ「あかりちゃん、急にどうしたの…?」
あかり「そのままの意味だよぉ」
あかり「あかりは空気じゃないんだよぉ…別に窒素と二酸化炭素の固まりじゃないの」
京子「ラムレーズン食いてぇ」
結衣「……」ゲシッ
京子「うわ!暴力反対!」
あかり「それだよぉ!!!」バンッ
京結ち「!!!!!??」ビクッ
ちなつ「ど、どうしたのあかりちゃん!そんな大声を…」ビクビク
京子「み、耳がキーンってなった!」
あかり「マンネリ化に気づかないの!このごらく部という空間の!」
結衣「う、うん…とりあえず落ち着きなよあかグルッフェェェ!!」ドゴォン
京ち「!!!!!???」ビクゥッ
京子とちなつはそれぞれ瞠目し、ゆっくりと振り返る。
結衣「」プラーン
先程二人の横を目にもとまらぬ速さで吹き飛び、障子に突っ込んだ黒い影。
それは結衣だった。
あかり「赤座家の血を舐めないで欲しいんだよぉ」
そして彼女を蹴り飛ばしてみせたのは、まだあどけない顔立ちの少女の華奢な脚である。
ちなつ「結衣先輩いいいいいいいいいいい!!!!???」
京子「……ッハ!こらあかり!何やってんだよこのヤロー!」プンプン
あかり「そろそろあかりも空気なんていう漠然としたものから進化するんだよぉ!」
可愛らしいお団子頭を揺らし、あかりは破顔する。
状況が状況でなければ、誰もが穏やかな気分になる優しい顔だ。
結衣「あああああ」ガタガタ
ただ今は、少女達を戦慄させる悪魔の笑みとしか捉えることは出来ないだろう。
ちなつ「ちょっとあかりちゃん!どういうことよ!」
あかり「もう空気とは呼ばせないよ!そして!あかりを苦しめてきたごらく部の皆には……」
あかり「お仕置きが必要だよぉ」
ズムッ
鈍い音が部室に鳴り響いた。
ちなつ「ぐ…ふぅうっ!」
桃色の髪の少女の鳩尾には、しっかりと主人公の握り拳が沈んでいる。
京子「ちなちゅうううううぅ!!?」
頭にリボンをのっけた少女は叫ぶ。
それは普段のおとぼけた彼女の叫びではない、先輩として、そして仲間…いや、友達としての心配の気持ちが詰まっていた。
ちなつ「き、京子先輩……!」
初めて見る京子の真っ当な優しさに、ちなつは瞳をうるませた。
あかり「減らず口だね」
あかりの右手の甲がちなつの頬を捉える。
そのあまりの衝撃を喰らったちなつの頭にくっついていた首がグィッと引っ張られ、身体もろとも庭に投げ出された。
結衣「いぎゃあああああぁ!!」
と、今まで隅でガタガタ震えていた掠り傷だらけの黒髪少女が駆け出す。
結衣「うわああああぁ!!あぁっ!!あああ!!」
しかし無駄である。
徒手空拳の結衣では、あっさり回り込んできたあかりの前で震え言葉にならない声をあげるのが精一杯。
ちなつ「ちょっとぉ!結衣先輩に手を出したら許さなグッハァ!」
華麗な飛び膝蹴りがちなつの顔面に決まる。
あかり「まだ減らず口を叩くの?そんなお口はこうだよぉ!」
トドメの左ストレート。
波紋さえ込めていないものの、常人なら三日は起きられない。
再びちなつが吹き飛ぶ。
耐久力に優れた彼女はまだ意識があるが、それも朦朧としているようでピクピクと痙攣している。
あかり「結衣ちゃん、京子ちゃん」
赤い悪魔はゆっくりとその笑顔を幼馴染みの先輩達に向ける。
二人とも腰を抜かし、肩で呼吸していた。
結衣に至っては畳の上でなにやら逃げようと四つん這いでもがいている。
あかり「京子ちゃん!」
もう黒髪の方はほっといても大丈夫そうなので、あかりは茶髪の方に近づく。
京子「ぃやぁ……や、やだああぁ…」
あかり「あーあ、小さい頃に戻ってる…ねぇッ」
腹部に強力な蹴り。
京子は顔を歪め、畳に崩れ落ちた。
今まで経験してきたどんな怪我よりも辛い激痛と呼吸が出来ない苦しさで、涎を垂らしながら指で畳をむしる。
そして、いとも簡単に意識を失った。
あかり「つまんないの…まぁ、これからゆっくりやっていけばいいよね!」
鞄を手に取ると、京子を助けることなく台所に隠れていた結衣に
あかり「友達を見捨てるなんて最低だねっ!」
満面の笑みで平手打ちをして帰宅した。
赤座家
あかり「お姉ちゃん、そろそろあかりの予備の制服返してよ!」
あかね「あらごめんね」
あかり「許さないもん!」ドゴォッ
素早い拳が姉の腹部に入った。
確実に気絶するレベルの威力。
重い音だが、あかねは平然としている。
あかね「あかり、また強くなってるわ!さすが赤座家ね!」
あかり「お姉ちゃんも凄いよぉ!腹筋でのガードが自然に行われている…身体が覚えてるんだ!」
あかね「ふふっ、昨晩ともこさんに不意打ちで襲われたときも役立ったわぁ」
あかり「ガチ川家の耐久力も凄いよねぇ」
古谷家
向日葵「どうやらあかりさんにも赤座家の力が完全に覚醒したようですわ!」
櫻子「にゃ」
向日葵「七森最強とうたわれる赤座あかねを倒すには邪魔ですわ!」
楓「ついでに生徒会を乗っとるには会長さんも倒さないとだよ」
櫻子「にゃ」
向日葵「というわけで」
楓「一年生組と生徒会に差し入れるクッキーに毒を入れてる」
向日葵「勝てばよかろうなのよ」
櫻子「にゃあ!」
楓「現代の闇がどんどん深くなっていくね」
翌日
櫻子「にゃんにゃ」スリスリ
あかり「櫻子ちゃん、可哀想に」ナデナデ
あかり「あのぐう蓄向日葵ちゃんに猫として調教されてからはや一週間」
あかり「櫻子ちゃんのカタキはあかりが討つよぉ」
「それはどうでしょう…ッ」
瞬間、向日葵は確かに恐怖を覚えた。
確かに気配、そして殺気を完全に消して赤座あかりの背後に立ったのだ。
しかし。
しかし!さらに赤座あかりは!!
あかり「心の声も消さないとだよぉ」ドゴォッ
向日葵「ぬぅぅん!!」
その背後に回っていた!
腰に右足での蹴りを入れられた向日葵はコンクリートの壁に激突した。
あかりも手加減した為、壁に亀裂が入る程度の衝撃だった。
ちなつからすれば蚊に刺されるのと同じぐらいの衝撃。
ちなつ「ちょっと二人とも!通学路で戦うのはまずいよ!皆見てるよ!」
あかり「ごめんね」
挨拶代わりの平手打ち。ちなつも壁に突っ込んだ。
向日葵「そうです。なんなら学校で」
青い髪を揺らしつつ、少女は宣戦布告とばかりに嘲笑う。
それに、あかりも軽い笑みで答えた。
あかり「楽しみだよぉこれであかりも空気じゃないよぅ」
第一部・完
第二部 その拳は誰が為に
あかり「!!!」ドォッ
赤座あかりはロッカーにぶちあたった。
いくつかの鞄や荷物が落ち、埃が舞う。
あかり「不意打ちなんて卑怯だよ!」
向日葵「手加減はしませんことよ!」
椅子を片手に向日葵は追撃の為跳ぶ。
が、あかりも負けていられない。
足元に散乱した荷物を蹴りあげ、向日葵の視界を遮る。
ガシィッ!
向日葵「なに!?」
少女が同級生めがけ降り下ろした椅子の足を、あかりはいとも容易く掴んでみせた。
あかり「コォォォォ…」
次に、赤髪の少女は微笑む。
あかり「限られた視界でピッタリ後頭部を狙うなんてさすがはゲス向日葵ちゃんだよ…でも」
あかりの手が、椅子を掴む小さな拳が電撃を帯びる。
向日葵「なにいいいいぃ!!?」
咄嗟に椅子の背もたれから手を離そうとするも、無駄だった。
スカーレット・レッド・オーバードライブ
あかり「紅赤色の波紋疾走ッ!」
バリバリバリバリバリバリバリバリッッッ
あかりの手から、椅子を通し向日葵に波紋が直撃した。
向日葵「ぐがぁっ!?ああぁっ!!がああああああああぁああぁですわぁぁああぁ!!」バリバリ
ドグォオオォォンン
向日葵「がふぅ!!」ドッ
向日葵は黒板にぶちあたった。
ガタンという音と共にチョーク入れが落ち、白い煙が彼女を包む。
あかり「向日葵ちゃん、お仕置きだよ!」
少女は制服のスカートの裾を揺らし、走り出す。
あかり「コォ……っ!」
が、蹴りは当たらなかった。
いや、わざと外したのだ。
あかり「外道だよ、向日葵ちゃん!」
お団子頭を揺らし、あかりは首を鳴らす。
向日葵「手段など、問題ではないのだァ!」
櫻子「にゃあああ」
その腕には、櫻子。
つまり、身代わりを取ってきたのだ。
ちなつ「向日葵ちゃん、恐ろしい子…!」
あかり「ぐ…」
向日葵は血の滲む口元を腕で拭うと、不敵な笑みを見せる。
ジリッ…
二人と一人の距離が縮んでいく。
向日葵「無駄無駄無駄無駄ァ!!」
青髪の生徒の拳が、あかりの顔に入った。
向日葵「おおおおおお!!!」
連打連打連打連打連打連打。
普通の人間ならばぶっ飛ぶ威力であろうその拳はお構い無く、全く遠慮というものを知らずあかりに入れられていく。
向日葵「これでもまだ立っていられるのかぁ!」
今、最も重い一撃があかりに容赦なく叩きつけられた。
あかり「あかり、飽きちゃった」
向日葵「なんっ、だと…?」
効いていなかった。
あかり「覚悟はいい?あかりは出来てる」ピタッ
向日葵の前に立ち盾となっていた櫻子の胸に、あかりは左手の指先で触れる。
あかり「カァッ!!」バリバリバリバリッ
ドキュウゥーーーーーン
ガラガラ…
向日葵「ぐっ、はぁッ!がはっ!」
廊下まで吹き飛ばされた向日葵は呼吸困難に陥っていた。
肺、そう。肺に波紋での攻撃を喰らったのだ。
あかり「気分はどう?」
そして、闊歩する紅き粛清者。
…ふふふ、と。
向日葵は苦しみながらも笑っていた。
向日葵「しかし赤座さん……貴女は櫻子にも攻撃したッ!あの子の身体は波紋に耐えられない!」
櫻子「にゃーす」
ちなつ「ちょっ、暴れないでよ!」
向日葵「…は?」
あかり「被害者である櫻子ちゃんにあかりが手を出すわけないよぉ」
あかりはアハハと笑う。
櫻子は先程と変わらずピンピンしており、健康そうだった。
あかり「あかりは櫻子ちゃんにだけダメージをプラマイ0にするくっつく負の波紋を流したんだよ」
向日葵の眉がピクリと反応する。
あかり「じゃあ、遠慮なくーーーッ!!」
ゴシャァッ
あかりはガラスに突っ込んだ。
ちなつの驚愕の顔がチラリと見えた後、身体にぐんっと重力がのしかかるのが解った。
あかり「この、力は!」
窓ガラスをぶち破って校庭めがけて落下していくあかりは、これが誰の仕業か解った。
あかり「会長!」
七森中の第一位の生徒会長だ。
続き、その人物が割れた窓から踊り出す。
りせ「……」
松本りせ。
先程も言った通りこの七森中の第一位、生徒会長。
その圧倒的な力は!
あかり「がああああぁ!」グシャァアッ
あかりは校庭に叩き付けられた。地面にピシッとヒビが入り、岩盤が浮き上がるのを背中で感じた。
りせ「……」トンッ
あかり「ふーっ!痛いじゃないですかぁ!」
崩れたお団子を直しながら、あかりは眼前の無口な少女に視線を向ける。
何を考えているのかさえ読み取れない。
向日葵「ヒューーッ!ざまぁですわ!流石です会長!もっとや…グガッ」
オレンジジュースの缶が窓から顔を覗かせていた向日葵の顔面に命中し、一瞬姿が消える。
あかり「一方通行……便利な力です」
赤い瞳を細め、少女はにこりと笑う。
りせ「……」
りせは顔を上げる。
あかり「次にあなたは…校内で暴れたのは許さない、と言う!」
りせ「校内で暴れたのは許さない……ハッ」
ドゴォッ!メゴッ!ブンッ!ヒュッ!バリバリッ!
あかり「痛いなぁ全く…授業も大変だったよ」
ぶつぶつ言いながらあかりは給食のお味噌汁を口に運ぶ。
そんなちなつにオドオドとあかりは声を掛ける。
ちなつ「あかりちゃん。今日も京子先輩達を殴るの?」
櫻子「んにゃあ」
あかり「ん〜…まぁ、ね」
盛り上がる彼女達の横で、向日葵は沈黙していた。
下に見ていたあかりが予想外に強かったことと、会長の力を目の当たりにしたからである。
正攻法で勝つのは難しそうだ。
しかし毒入りクッキーは全て今朝の戦いで燃えてしまった。
かくなるうえは。
向日葵「赤座さん、共闘いたしませんこと?」
あかり「え、やだ」
あかりと手を組むことである。
彼女と組めば、ある程度は会長と良い戦いが出来るかもしれない。
あかり「今は向日葵ちゃんとごらく部への復讐が大切だし」
あっさり断ると、あかりはちなつの頭を掴んで向日葵の頭に思いきりぶつけた。
向日葵「いっ」
椅子ごとひっくり返った向日葵の上に、ちなつと給食が飛ぶ。
あかり「あかりはあかりの力を、自分の正義の為に使うよぉ」ニコッ
第二部・完
第三部 その少女、純粋につき
ごらく部
京子「あああああかりごめんごめんだからもう蹴らないでやめて」
あかり「煩いよ!」バチィィッン
部室に入った途端、京子が泣きながら脚にすがりついてきたので右の平手打ちを喰らわせた。
京子「ぎゃっ」
少し先に吹っ飛ぶと、結衣に抱きついて泣き出した。
結衣「うぅ……あかり!」スクッ
あかり「なぁに結衣ちゃん」
ちなつ「ちょっ!あかりちゃん!結衣先輩には手をだs」ゴ シャッ
机にちなつの頭が沈む。そこを中点として机は真っ二つに割れた。
結衣「ひぃっ……ぁ、あかりっ!京子も私も凄い反省した!もう空気とか言わないよ!だからっ…がぁあああああああぁ!!!!??」グシッ
結衣の顔が苦痛に染まり、足を踏みにじられる痛みに喚く。
あかり「足をグリグリしてるだけだよぉ」ゴリゴリ
結衣「ほ"ね"がぁ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ」ドサアッ
京子「あがりぃ!やめてあげてよ!結衣死んじゃうぅぅっ!」
あかり「えっ?」パンッ
泣きながら止めるよう訴える京子の泣き面に一瞬、軽く拳を当てた。
鼻血が噴き出し、更に泣き喚く。
そこに。
綾乃「歳納京子ォー!」ガァンッ
あかり「ッ!」
生徒会副会長が現れた。
千歳「うちもおるでー」
綾乃「このッ!この!赤座さんの頭を治すわッ!」ガンッガンッ
なんという荒療治だろうか?
あかりの頭をパールでボコボコに叩き始める。
あかり「…」
あかりのお団子が弾む。
千歳「……ハッ」
綾乃『京子……助けに来たわ』
京子『あ、綾乃ぉ…』ウルウル
綾乃『もう大丈夫…さぁ、傷を癒すキッスを…』
千歳「綾乃ちゃんが王子でもええなああぁ!!」ブシャァーーッ
綾乃「千歳!?」
妄想で鼻血を噴く千歳。
オロオロする綾乃。
いつも通りの光景に頬が緩んだ京子だったが、次の瞬間冷水を浴びせられた気分になった。
千歳に気を取られていた綾乃は、パールで殴る手を止めていた。
あかり「赤の流法」
あかり「髪紅嵐」
巨大化しほどけた少女のお団子は、綾乃の細い身体を両脇から高速回転で襲った。
京子「あやのぉおおおおおおおおおおおおおぉ!!!!!!!!」
ギュンンッ…ゴッ グシャアァァアアア
ズッ…ガラガラ
綾乃「…がっ、ふ……と、しのぅ…」
京子「うわあああぁ!!!!!!」
千歳「…ぁ、綾乃ちゃ」ゴキッ
あかり「池田先輩の首って折りやすいんだぁ」
千歳「」ドサッ
京子「ああああああ」ガクブル
崩壊した壁にのめり込んで動かなくなった綾乃。
一瞬にして首を蹴り折られた千歳。
結衣「ひがっ、ぁ…ああ…」ヒクヒク
絶望そのものである。
あかり「さっき杉浦先輩が私を殴ってたとき、二人ともなんて言ってたっけ」
結京「」ガタガタガタ
あかり「京子ちゃんは『いいぞ綾乃!頑張れ!お団子なんかやっつけろ!空気!』結衣ちゃんは『流石だ綾乃!やれ!あかりなんて空気だ!』」
結京「ァ…ソレハ…ァアア」ガタガタ
あかり「お仕置きしないとね」
ちなつ「私の方が空気だよ」
あかり「ガチ川家の耐久力はやっぱり凄いね」
ちなつ「ガチ川って言わないで」
あかり「ガッチーナ」
ちなつ「あn」
ドッ!
ちなつにあかりのお団子がほどけて襲いかかる。
あかり「朱の流法」
あかり「大緋炎の流法!」
あかりの毛一本一本が意識を持つかの如くちなつに襲いかかる。
あかり「波紋の避雷針ともなりちなつちゃんを守るモフモフが逆に私の毛を取り込んでいくなぁ!」
ちなつ「ちょっ…ぁつっ!?なにこれ!」
桃色の髪から中に侵入していくあかりの毛は高熱を帯びていた。
ちなつ「っ、ぐ……あああぁ!!!」ボンッ
やがてモフモフに火がつき、ちなつは畳の上を燃えながら転げ回った。
結衣「ひっ!!ち、ちなつちゃん!」
京子「うわあああああ!!結衣!逃げよッ…」
あかり「ヘアーグライディン!」
彼女のお団子の毛がうごめく。
スパァッ!ズザザッ
京子「ぎゃあああああ!!!」
結衣「痛いよぉ!!うがかあぁ!!」
あかりのお団子の毛が高速で空を斬ったことによりカマイタチが発生したのだ。
二人は脚を切られたことにより悶絶し、畳の上で騒いでいる。
あかり「あぁ、ヘアーカッターグライディンだったよぉ……間違えちゃった」
お団子を撫でながら肩を落とす彼女の先で、ちなつは火を消し終えていた。
ちなつ「全く、ショートカットになっちゃったわ」
あかり「うわぁ、誰?」
ちなつ「全く、あかりちゃんは純粋だね」
ちなつは短くなった桃色の髪をいじる。
あかり「そんなことよりちなつちゃん、京子ちゃんったらちなつちゃんや綾乃先輩、池田先輩を見捨てて結衣ちゃんと二人で逃げようとしたんだよぉ」
ちなつ「……」
静かに、静かにちなつは京子に視線を向けた。しかし激痛に泣き叫ぶ京子にとっては睨まれているとも解らず、
京子「ちなつちゃん!助けてぇ!そいつやっちゃえ!!」
好き放題叫んでいる。
あかり「お仕置きだよぉ!」ガシッ
あかりは京子の頭を掴むと、そのまま畳の上に叩きつけた。
京子「いぁあぁ」ダラダラ
彼女の顔は真っ赤になり、畳には赤い液体がボタボタと落ちていく。
結衣「うっ、あぁ……あああ!!」
と、結衣が駆け出す。
余程の恐怖だったのだろう。
必死に、傷つき血の流れる脚を引きずりながら出口を目指す。
壁の中の綾乃やぶっ倒れている千歳には目もくれない。
あかりは声を張る。
あかり「ちなつちゃん!結衣ちゃん好きにしていいよ!」
お団子から飛んだ毛は素早く結衣の脚を絡め取り、手足に巻きつき少女の動きを封じた。
ちなつ「あらあかりちゃん、それはありがとう♪」
結衣「うわああぁあぁっ!!やめろ!!助けろよ!!!くっそぉ!!」バタバタ
あかりは二人の様子を微笑ましそうに見詰めた後、京子に馬乗りになる。
京子「ひあああぁ!!!あかりごめん!!ごめんなさいごめんなさい!!」
あかり「フゥン……空気で悪かったね…ッ」ゴッ
綾乃「と、しのぅ……京子はッ、わたっ…しが…守るの!!」
ズタボロの雑巾みたいになった身体で、綾乃は再びあかりの頭にパールを打ち付けた。
一瞬隙が出来たあかりから京子は逃げ出し、そばにあった壷を手に取る。
そして。
京子「あかりぃぃぃぃぃてめぇええええええ!!!」
殴りかかるが、逆に殴られ畳に転がる。
あかり「二人とも…そろそろまとめてやられようよ」
赤髪の少女は、まだ意識を保ち、戦える姿勢だ。
深い呼吸と共に、両の拳が握られる。
あかり「刻むぜビート!燃えつきる程ヒート!」コォォォ
スカーレット・レッド・オーバードライブ
あかり「紅赤色の波紋疾走ッ!!」
あかり「疲れたよぉ」
ちなつ「ふぅ」ツヤツヤ
結衣「」
第三部・完
第四部 お団子は砕けない
櫻子「あかりにゃーんおはよにゃー」スリスリ
あかり「うん、おはよう」ナデナデ
あかり(あれから櫻子ちゃんは人語を話せるレベルには治りました)
あかり(でも元々頭が軽度の障害さんなので心配だよぉ)
向日葵「おはようございます」
ちなつ「おはようあかりちゃん」
否ッ!
ちなつのピンクの頭が壁にめりこんだ。
ちなつ「ちょっとぉ、せっかく頭セットしたのにぃ」
あかり「やっぱりちなつちゃんは殴りがいがあるよぉ」
HAHAHAHA
ちなつ「向日葵ちゃん、昨日会長と戦ったんだって?」
向日葵「えぇ。そしてなかなか私の好みの方なのでネコにして可愛がりたかったのですが……木原神拳を持ってしても無理でしたわ」シュン
肩を落としつつ、あかりにナイフを放つが波紋でぐにゃぐにゃに曲げられる。
あかり「不意打ちは良くないよぉ」ドゴォ
向日葵「ふッ、ぐ……ォゥゲエエエエエェエェ」ビチャビチャ
青い髪を鷲掴みにし、胃袋に思いきり蹴りを入れた。吐いた。
櫻子「猫なら私がいるにゃん!」
ちなつ「櫻子ちゃんはネコかな?」
櫻子「?猫にゃ!」
ちなつ「あ、ごめんそっちじゃなくて」
2年廊下
綾乃「」京子「」結衣「」
千歳「み、皆しっかりするんや…」
千歳「死んだらアカンよ!せっかく学校に来れたんや!」
千鶴「姉さんこそ首の骨大丈夫…?」
千歳「しゃあない!みんなこれやるで!」
綾乃「…歳納京子の写真!」ハッ
京子「…ラムレーズン!」ハッ
結衣「…幼女!」ハッ
まり「結衣お姉ちゃん生きてる?」
一年教室
ちなつ「あ〜やっっっとお昼だぁ〜」ウーン
あかり「あかり、もう疲れたよぉ」
ガラッ
不意に、四人だけの教室の扉が開いた。
そこに居たのは
りせ「……」
あかり「あれ?会長」
向日葵「!!!!!」ザッ
りせ「……」クィッ
櫻子「面出ろってやつですかにゃ!」
りせ「……」コクッ
重々しい雰囲気が漂い始める。
一体彼女は何を言いたいのだろうか?
…生徒会メンバーをボコッたからだろう
渋々、あかりと向日葵、そしてちなつと櫻子も見学としてついていった。
校庭
りせ「……」ブゥンッ
西垣「皆を怪我させたのは許さない、と言っているぞ」
りせの周囲に空き缶や石が浮かぶ。
あかり「……ベクトル操作ッ!」
瞬間、それらは二人めがけて飛んだ。
あかり「波紋だよぉ!」
バリィィーーーーーーッ
りせ「……」ピリピリ
西垣「波紋を飛ばせるようになっているのは凄い、と言っている」
りせ「……」ゴゥンッ
西垣「しかし私の『一方通行』には勝てない、と言っている」
ドドドッ!!!!!
あかり「うわぁ!」
あらゆるものが二人に向かって高速で突っ込んでくる。なんとか波紋と脚で弾いたり軌道を反らしたりしているが、これも長くは続かないだろう。
向日葵「ぜーーっ!はーーっ!会長!私もあかりを倒したいですわ!なので味方になりまs」
ドギュオオーーーーーンッ
向日葵の足元に風穴が空いた。
黒髪の美少女は表情を変えない。
西垣「ふむ、嫌だそうだ」
ちなつ「すごい」
櫻子「そうにゃね!」
あかり「呼び捨てにされたのがムカつくけど状況が状況だよぉ!ここは…」
彼女のお団子がシュルルッと勝手にほどける。
あかり「赤の流法」
\アッカリ~ン/
りせ「……!」
西垣「二人…いや、大室達も巻き込んで消えたな」
少し離れた所
向日葵「逃げたのはいいですけどどうするんですの!?勝ち目がありませんわ…」
四人は草むらの中に隠れ、小声で話し込んでいた。
あかり「向日葵ちゃんが力に目覚めればいいんだよぉ」
ちなつ「おっ、それっぽい!」
向日葵「力…」
向日葵「目からビームなら」ビカッ
彼女の目から放たれた光熱のビームは草むらを一部焼いた。
あかり「やったぁ!後は反射を崩す方法を」
ドッッッッッ!!!!!!!!
りせ「……」ゴォッ
西垣「ふむ、古谷にも力があったのか」
ブラック・レイ
向日葵「光の君臨!!」ビカァッ
りせ「……」
しかし、あっさりと反射される。
向日葵「ムキィーッ!なんですのあのめんどくせぇ能力は!!?」
あかり「ベクトルだよぉ!当たる直前に引くんだよぉ!」
向日葵「なるほど」ボコッ
すると、向日葵の右目が皮膚の下を移動していき。
ボコッ
右の甲に出てきた。
向日葵「これぞ君臨!光のレーザーを編み混んだムチよ!」ビビッ
『光の君臨』は目から取り込んだ光をエネルギーに変えているのだ。だから眼球はしょうがない。
向日葵「くらいやがれですのおおこおおおお」ビッ
ザシュッ!!
出前で引いたことにより、ムチはにりせの肩を抉った。
ちなつ「やった!!この調子なら二人とも勝てるよ!!」
櫻子「んにゃあ!」
りせの翻訳をしていた教師、西垣は顎に手を添えた。
「……仕方ない、私もやるか」
ちなつ「えっ!??」
櫻子「爆発するにゃん」
西垣は着ていた白衣を脱ぎ捨てると、懐からスイッチを取りだし、押した。
するとどうしたことか、りせに少し似た白い人間型のロボットが歩いてきた。
西垣「こいつはキラー・ナナ・クイーン。さぁ、見せてあげるよ」ピンッ
向日葵「っ!コインを弾いた?一体ッ…」
西垣「第一の爆弾」
ドッッ!!ンンンンン
触れたものを爆弾に変えてしまう第一の爆弾。
あかり「っっ!!!」
向日葵とあかりはなんとか回避した。が。
りせ「……」ズッ…
会長はその隙に怒濤の攻撃を仕掛ける。
岩石が流星群のように飛んでくる中、
あかり「無駄だよぉ!」
あかりは『赤の流法』『朱の流法』『波紋疾走』を駆使して華麗に魅せた。
そしてその拳が、光る波紋を帯びる。
スカーレット・レッド・オーバードライブ
あかり「紅赤色の波紋疾走ッ!」ドッーーーーバリバリバリバリィィッッッ
見事な波紋ボディブローッーーーー
それは反射の膜を打ち消し、逆にベクトル操作が仇となりりせの華奢な身体に吸い込まれた。
当然、波紋もより良く流れる。
りせ「ぐっがぁぎゃぁくかけギィャアアアアアアアアアアアア」
バリバリバリバリバリバリィーーーーーーッ
西垣「ッ!?松本ォー!」
そう!この刹那!この一瞬が!避けられた筈の西垣の運命を変えた!
向日葵「隙ありィーーーーーーッ!」ビカッ!!!!!
青髪の少女のムチは西垣のロボットを木破微塵に破壊した。
西垣「くっ!?しまっ…」
向日葵「はァ!」ビカッ
気づいたところでもう遅い。
向日葵の左目から放たれたレーザーは西垣の胸に見事命中した。
西垣「ぐぁああぁ!」ジュッ
そしてそのまま、西垣は倒れた。
ちなつ「…すごい!!」
櫻子「倒したにゃ!さすが二人とも強いにゃ!」
りせ「」ビリビリ…
西垣「」ジュゥゥ…
りせも西垣も気を失い、倒れている。
そう、一年生組の勝利である。
あかり「次は向日葵ちゃんとも決着をつけないとね!」
向日葵「ふふふふふふ…」
生徒会長と教師を置き去りにして、彼女達は昼休み終了のチャイムと共に教室へと去っていった。
第四部・完
なんじゃこれ
87:黒座あかり hoge:2016/06/29(水) 10:16 意味解らんのを書きたかっただけ
他意はない
>>42のタイトル、あの平安バトルファンタジーの第一話と似てる気がするのは気のせいだろうか……。
89:匿名さん:2016/07/05(火) 01:25>>22も、か……?
90:匿名さん hoge:2016/07/05(火) 15:48正直二次創作スレで久しぶりにまともなやつを見ました。最近ここ雑談場になって来ていますからね…