幾つの夜を乗り越えたとしても凄惨な過去から逃れることは出来ない。
背後の闇は未来を進む者さえ呑み込もうと迫るもの……
これは紅魔の館に仕えるメイド……"十六夜咲夜"の物語
>>1 世界観と注意
>>2 異変キャラ
【世界観】
物語の舞台となる幻想郷は丁度、紅霧異変が終わり、妖々夢本編開始までの間の時系列となっています!オリジナル要素が強めになると思いますので、東方projectについて知らない方でも参加しやすくなっていると思います!
【注意】
1.本編キャラでの顔文字の使用禁止
2.本体同士の会話は【】などで囲って下さい
3.チートレベル(紫や霊夢以上の強さ)のオリキャラは一部異変キャラを除いて禁止
4.ロルは二行以上お願いします
5.アンカーを付けて下さい
6.管理できるなら何役でも使用可
7.死ネタあり
【異変キャラ】
名前/終月零夜
読み/ついらぎ れいや
二つ名/『時空を操る復讐者』
性別/男
性格/冷酷冷徹な性格をしているものの、姉の咲夜に対して激しい憎悪を抱いており時折、氷のように冷たい仮面の下に隠された激情を表に出すこともある。だが、その根底にあるのは自分達を見捨てた(と思っている)姉に対する怒りと悲しみの念であるものの、復讐心に支配された彼にとってはその自分の本当の気持ちにさえ気付けなくなっている。
能力/「時間を操る程度の能力」
姉の咲夜が使うものとほぼ同質の能力であり、時間操作だけでなく空間操作も可能であり、その気になればほぼ無限に時を止めている事も出来るものの、同じ血と力を持つ咲夜であればその時間操作を解除する事が出来る。
容姿/画像参照
https://i.imgur.com/acAhlOP.jpg
備考/咲夜の双子の弟。
清められた聖銀の短剣を得物としており、青炎を放ち、短剣や長剣を手元に召喚して振るう事で時止めを行わなくとも高い戦闘能力を有している。
かつて月の秘術を求めた悪魔達の襲撃によって両親を目の前で殺害された際に咲夜が自分達を見捨てて逃げたと思い込んでおり、辛うじて生き残ってからも地獄のような日々を暮らし、死に物狂いで人妖問わず戦い続け、元々の優しい性格が己の本心さえ気付けなくなるほど歪んでしまう程の地獄を味わう。
その一方で、幻想郷には自分達の事を忘れて幸せに暮らしている姉が居ると知り、その憎悪と復讐の矛先を向け、姉と姉の大切にしているモノの全てを滅ぼそうとする……
【早速来ました!咲夜さんで参加希望です!】
5:語り手◆3.:2020/12/12(土) 23:09 【ありがとうございます!!
ちなみに咲夜さん以外で使用されるキャラも記載して頂けると幸いです!
m(__)m】
【書き忘れていましたW おぜう様とフランちゃん役もやります!】
7:語り手◆3.:2020/12/13(日) 14:53 【ありがとうございます!!
では、私は追加で美鈴とパチュリーをやりますね!】
【紅魔館 】
美鈴
「いやぁ〜すみません、咲夜さん。」
紅霧異変の首謀者であるレミリアが博麗の巫女と黒白の魔法使いによって敗れた事で異変が解決し、その後に妹のフランドールもまた、幻想郷の守護者達に敗れ、異変は終わりを迎えた。
紅霧異変からそう時が経っていない館内には、破損した建物を修理するために大量の角材と鋼材を抱えた紅魔館の住人の一人である美鈴が人間であるにも関わらず、重い資材を一緒に持って館の修理を手伝ってくれている咲夜に対して感謝の言葉を口にする。
>>咲夜
気にすることないわよ、仕える主の為にやっていることだもの、あなただってそうでしょう?
(着々と館の修復作業を進める中で、すみませんと口にする美鈴に、咲夜は気にすることはないと、これは自分の意思で、もっと言えば仕える主の為にやっていることだからだと言う・・・・・
しかし、咲夜もやはり人間だからか、体にかかる負担は美鈴と比べれば大きいが、そんなことも言ってられずに、着々と作業を進めてゆく・・・・・)
>>美鈴
美鈴
「勿論です!お嬢様は私に居場所を与えてくださった恩人です。その恩を少しでも返せるように日々考えています!」
明らかに200kg以上ある鋼材を片手で軽々と持って運んでいる美鈴は満面の笑みで主への恩を少しでも返せるかもしれないと思い、嬉々として話す。
美鈴
「では、後の力仕事は私がやっておくので、お嬢様にあと三時間程で修理が完了できると言うことを伝えておいてもらえますか?」
当時はまだホブゴブリンも居らず、妖精メイド達では力仕事は任せられない、となると主のレミリアとフランドールに次ぐ肉体強度と腕力を持った美鈴が力仕事をこなす事になる。
塗装や整備等であれば時を止めて作業が出来る相手が適任であるものの、かなりの重量を誇る鋼材を用いた力仕事は自分が適任であることから先に主のレミリアに修理完了時間について伝えて欲しいと言う。
わかったわ、それじゃあ後は任せたわよ?くれぐれも作業中に居眠りとかしないようにね?
(あと三時間ほどで修理が完了するという美鈴に対して、それじゃあ後は任せたと言うものの、同時にくれぐれも作業中に居眠りはしないようにと一応念を押す・・・・・
そして、そのままその場を後にする・・・・・)
咲夜「お嬢様、妹様、美鈴曰く、あと三時間ほどで館の修繕が終わるようです」
レミリア「意外と早かったわね、とりあえずは一安心ね・・・・・」
フランドール「早く直らないかなー・・・・・」
(咲夜から館の修繕があと三時間ほどで完了するという報告を受け、レミリアは思っていたよりも早く修繕作業が済みそうで安心し、フランドールは待ちきれないのか、早く直らないかなーと言葉を漏らす・・・・・)
パチュリー
「……まったく、あの巫女と半人前の魔法使いもそうだけれど、貴方達は暴れ過ぎよ。」
パチュリーは喘息持ちであり、体力が無いことから肉体労働が苦手であり、修理を手伝えない代わりにこの館の建築構造や設計を把握し、それを元に修理計画図を描く事で修理箇所や修理方法を伝える事で手伝っている。
パチュリーはレミリアとフランの近くにある椅子に座り、普段読んでいる魔導書ではなく、建築書を読んでおり、視線を本から逸らさないものの、吸血鬼としての圧倒的な力を持ったレミリアとフランの二人が本気で戦った結果、こうなってしまったのだとため息交じりに言う。
レミリア「ま、まぁ、確かに私達もちょっと暴れ過ぎた感は否めないわね・・・・・」
フランドール「私はもう少し暴れたかったけどなぁ・・・・・」
レミリア「・・・・・」
(レミリアがさすがに暴れ過ぎたと思う中、フランドールはもう少し暴れたかったと言葉を漏らせば、レミリアは咄嗟に無表情でおいマジかと言わんばかりの視線をフランドールに向ける・・・・・
館を修復しなければならないほどにまでなったのだから、もう少しオブラートに包むとかしないのだろうかとも思っていて)
パチュリー
「はぁ……今回は部分的な倒壊だけで済んだのだけれど、貴方達が本気で暴れればこの館は簡単に壊れてしまうのよ?」
右手を本から自分の額に当てて深いため息をつき、まだ暴れ足りない様子のフランの言葉を聞いて呆れたような様子で二人に話す。
紅魔館の資産の一角である里で高価で売れる貴金属や物質の錬成(建築用の資材は純金や純銀とは違い基礎的なものが多いため、かえって錬成する事が出来ない)を行っている事から、今回の修理によって必要な調達費用や、それを調達するために必要な金を得るための手間を考えてしまっている。
フランドール「あ、じゃあ館以外の場所で暴れればいい?」
レミリア「・・・・・」
(レミリアは再びフランドールに視線を向けた後「ねぇ、パチェ・・・・・この子の破壊衝動を抑えられる薬とか作れない・・・・・?」と、何とか妹を抑え込もうと考え始める・・・・・
多分このままでは、紅魔館半壊だけでは留まらず、取り返しのつかないことになると思ったのだろう・・・・・)
パチュリー
「……わかったわ、何か案を考えておくわ。」
この幻想郷に訪れ、巫女と魔法使いに倒されて、これまでは地下に閉じ籠っていた彼女が外の世界に興味を抱くようになったものの、それに呼応するように彼女の中に眠っていた破壊衝動が増大してしまっている。
"あの男"はもうこの世にはいない……
だが、その影響は未だに残っており、これが新たなる災厄を呼び寄せる事になるのではないかと言う不吉な予感が脳裏を過る……
・・・・・なんか深刻そうな表情ね・・・・・
(パチュリーがどこか深刻そうな表情をしていることに気づけば、レミリアも何か嫌な予感がしたのか、パチュリーに上記を述べる・・・・・
これからもしかしたら、何かとんでもないことが起きるのであれば、その時に備えておきたいと思っている・・・・・)
パチュリー
「……ええ、仕方がないわ。
館の修理のために必要な金額を計算していたのだから。」
もうあの男はこの世にはいない、あの男と繋がりのあった"悪の根(ヴァイスリゾーム)"について気になるものの、現状では答えが出る事はないため、気にするだけ無駄であると思い、敢えて館の修理のために必要な金額について考えていたのだと皮肉交じりに言う。
・・・・・あぁ、そういうことね・・・・・
(レミリアはパチュリーの言葉を聞けば納得する・・・・・ような発言をするが、これは表向きであり、内心はパチュリーが本当は別のことを考えていることは見破っていた・・・・・
長い付き合いだからこそ身についてしまった、親しい人物が本心を隠して別のことを言っているのがわかってしまうのが何とも複雑だが、パチュリーが敢えて別の言葉を用いたことから、あまり踏み入らない方がいいだろうと考えて)
パチュリー
「そう言えばレミィ。貴方は最近、例の紅白の巫女の神社に通っているようだけど……巫女の傍にはあの白黒の魔法使いもいた?」
不穏な予感や不吉な予想が脳裏を過るものの、再び本に目を戻し、目で文字を追いながら、異変解決後から度々博麗神社に遊びに行くことが多くなった親友のレミィに、巫女と共にこの館へ乗り込んで来た白黒の魔法使い……魔理沙も居るのかと聞いてみる。
【紅魔館 門近くの庭園】
美鈴
「さて……と、これで運ぶのは最後になるかな……
………………!?」
レミリア、フラン、パチュリー、そして咲夜の四人がレミリアの私室に居る頃、里で購入して門の近くに積み重なっていた建築資材の山を館内へ運んでいた美鈴の背後に、何の前触れも予兆もなく、突如として強い魔力と殺意が感じられるようになり、慌てて後ろを振り返ると……
???
「やあ、そこのお姉さん。俺に似た顔立ちの女は此処にいるのかな?」
美鈴の前に咲夜と似た顔立ちや髪をした一人の青年が立っていた。
その姿から、一瞬咲夜本人と見間違えそうになるものの、その放たれた強烈な殺意と魔力から直ぐに咲夜ではないどころか、この館に対して明確に害を成す存在であり、下手をすると一瞬で潰されると判断し、言葉を返す事よりも先に右拳にありったけの気を込めて青年に向けて振るおうとした次の瞬間
《ザシュッ》
美鈴
「……………え……?」
美鈴の全身がズタズタに切り裂かれ、美鈴の後ろには、先程までは目の前にいた筈の青年が不敵に微笑んだまま立っており、何が起こったのかがまるでわからない。
超スピードで切り裂いた訳じゃない……
まるで"時を止めて斬った"かのような感じであった事から困惑しながらも意識を失い、地面に倒れ伏す……
???
「さて……門番が使えないのなら仕方がない、直接自分の目と耳で探すか。」
地面に倒れ、無数に付けられた傷口からは止めどなく血が流れており、血溜まりに沈むようにして意識を失っている美鈴には一瞥もくれないまま、ゆっくりと館内に向かって謎の青年が歩き始める。
えぇ、いたけど・・・・・それがどうかしたの?
(パチュリーが博麗神社には霊夢と一緒に魔理沙もいたのかと聞いてくれば、いたけど、それがどうかしたのと返す・・・・・
パチュリーの言い方からして、魔理沙との間に何かしらがあったのだろうかとは考えられるものの、それが何なのかは考えても特に思い浮かばずに・・・・・)
ゾワッ・・・・・
フランドール「・・・・・」
(レミリアとパチュリーが話す横で、フランドールは顔に影がかかり、暗闇の中で不気味に何かが光るように目を見開き、何か嫌な予感を感じ取る・・・・・
まるで全身を寒気が包み込むような、言葉にし難い何かが迫ってきているのを感知する・・・・・)
咲夜「・・・・・?どうかしましたか?」
(フランドールの様子を見れば、咲夜は心配して声をかける・・・・・
咲夜自身は紅魔館に自身の身内が厄災と化して迫っていることには気づいてはいないものの、気づいていない分、後から再会する二人の絡みに絡まった関係に自然と拍車をかけてゆく・・・・・)
パチュリー
「……そう、それなら今度会った時にでも伝えておいて頂戴、勝手に本を持っていくな……って。」
パチュリーはほんの数秒の間、紅魔館の門付近に向ける……それは丁度今、美鈴が謎の青年によって倒された瞬間の間であり、パチュリー自身も何か異変が起こっている事を察知し、何気無い言葉に交えてレミリアの方へ視線を移動させて"気付いたか"とアイコンタクトを取ろうとする。
更に、咲夜自身も、それほど大きなものではないものの、ほんの一瞬だけ体が動かし辛くなると言う違和感が感じられる……それは"同じ時"を使う血の繋がった者同士だからか、それとも………
・・・・・えぇ、わかったわ・・・・・なるべく早く対応しないとね・・・・・
(レミリアは、パチュリーの魔理沙が勝手に本を持っていくので勝手に持っていくなと注意するように伝えておいてという言葉に、わかった、なるべく早く対応すると返す・・・・・
一見魔理沙の勝手に本を持ち出すことに対する返したが、これは表向きであり、実際は敵の接近がわかった、なるべく早く対応するという意味合いをオブラートに包んで込めている・・・・・
そして同時に、言葉に合わせて頷き、パチュリーのアイコンタクトにわかったという言葉を返す代わりにわかったことを示唆する・・・・・)
・・・・・
《気のせい、かしら・・・・・?今一瞬、体が動かしづらかったような・・・・・》
(妙な違和感を感じるものの、自分以外に時系の能力者が迫っていることなど夢にも思っていないからか、事の重大さに未だ気づいていない・・・・・
しかもその迫っているのが、血の繋がった実の弟などとは、到底思わないだろう・・・・・)
パチュリー
「ありがとう。それじゃあ、私はそろそろ大図書館に……」
???
「見付けたよ、姉さん。」
レミリアにアイコンタクトで敵の接近についての認識を確認すると、迎撃用の術式を発動させるために図書館へ一旦退くべく本を閉じ、椅子から立ち上がった次の瞬間、自らの体にかかった微かな違和感を感じ取った咲夜の前、部屋の出入口となる扉がいつの間にか開いており、咲夜と似た顔立ち、同じ髪色をした青年が冷たい笑みを浮かべて佇んでいる……
レミリア「なっ・・・・・!?」
フランドール「・・・・・」
(迫り来る敵がどんな相手かはまだ把握していないものの、対応する為の準備をする程度の時間くらいはあるだろうと思っていた矢先・・・・・それも、一瞬後と言えるほどの早さで現れた敵と思われる青年にレミリアは理解が追いつかずに驚愕し、フランドールは警戒しながら睨みつけている・・・・・)
・・・・・え・・・・・?
(咲夜自身も主であるレミリア同様に、何が起きたのかは理解が追いつかないものの、決定的な違いがあった・・・・・
それは、今目の前にいる人物が何者なのか、咲夜にはわかってしまった、ということ・・・・・
紅魔館へ来て、レミリアに仕えるようになってからも、一日たりとも忘れたことなどはなかった・・・・・
自分に似た顔立ち、同じ銀髪、雰囲気に至るまで、成長していても咲夜にはわかった・・・・・
そして、青年の「姉さん」という言葉が決定的な証拠だった・・・・・
様々な感情が入り乱れる・・・・・今までどこで何をしていたのか、どんな言葉をかければいいのか、どうすればいいのかわからない・・・・・)
???
「今は"十六夜咲夜"と言う名前になっているんだっけ?
……それなら俺は"終月零夜"とでも名乗ろう。」
周囲にいるレミリアやフラン、パチュリーの事がまるで最初から視界に無いかのように、自らを"全ての夜を終わらせて零にする"零夜と名乗る彼……いや、生き別れた双子の弟はゆっくりと咲夜に向かって歩き出す。
冷静に落ち着いている言動を取ってはいるものの、その内心は激しい憎悪が渦巻いており、咲夜が能力発動時に瞳が青から赤へ変わるのだが、零夜の場合は最初から赤色に変化している……
咲夜「・・・・・」
(咲夜は零夜の言葉は一応聞こえてはいるものの、内容は入ってこない・・・・・
生き別れてから今の今まで、もうずっと何年も死んだものと思っていたからか、実に数年の時を経て、零夜とは違い恨みを抱いたり憎悪を募らせたりなどがない分、純粋にただもう一度会いたいという念願の夢が突然叶った、しかも生死に関わる問題で生きているとは思っていなかった分その衝撃は大きいのだから、咲夜は頭の中が真っ白な状態であり、正に零夜の復讐を達成させるには十分過ぎるほどに条件が揃っている・・・・・)
レミリア「咲夜・・・・・!!!!!」
(身内が復讐の鬼となっていることを未だ理解出来ていない分現状がどんなに危険かをわかっていない咲夜とは違い、レミリア、フランドール、パチュリーは零夜が姿を現す前、迫ってきている段階でもう既にその言葉にし難い危険性に勘づいていたことから、零夜の狙いが咲夜であり、咲夜が放心状態であるということは咲夜は瞬時に対応できない状態で命が危ないということがわかった為、咄嗟に主であるレミリアが咲夜の名前を呼んで危険であることを気づかせようとする・・・・・
が、この一連の流れは同時に咲夜と紅魔館の住人達との絆の深さも表していることから、今まで地獄のような時間を生きてきた零夜の憎悪に更に拍車をかけてしまう・・・・・)
零夜
「………先ずは少し黙らせようか。」
《カチッ》
零夜は内に秘めた煮えたぎる憎悪のマグマがあるにも関わらず、内心に反してゆったりとした動作で燕尾服の懐から銀色に輝く懐中時計を取り出して時計の竜頭部を押す……するとその次の瞬間、咲夜の居場所がレミリアの私室から一階の玄関ホールにまで飛ばされてしまう……時間操作に加えて空間操作を行うことで咲夜を飛ばすのだが、その際にも咲夜の体はまるで金縛りにあったかのように意識を保ちながらも動けなくなり、違和感がより明白に感じられるようになる。
レミリア「なっ・・・・・!?」
(咲夜が突然消えたとしか思えない出来事に、理解がとても追いつかなくなるものの、少ししてからあの青年が咲夜に対して姉さんと言っていたこと、容姿が酷似していたことから恐らくは咲夜の実の弟・・・・・
そしていきなり目の前から咲夜が消えたことを照らし合わせると、弟も咲夜のように時間系の能力を持っていることがわかる・・・・・
しかし、空間系能力については把握出来ておらず、レミリアは「フランドール!パチェ!咲夜を探すわよ!!!!!」と、焦りを見せ始める・・・・・)
《・・・・・っ!?・・・・・この感覚は・・・・・》
(先程は一瞬だったものの、今はとハッキリわかる・・・・・
これは時間を止められている感覚、単なる金縛りなどの能力ではない・・・・・
しかも空間までも移動したことを理解すれば、相手は自分よりも幾分か有利であり、そしてさっきのは相手が時間を止めたことで感じた違和感であることも理解する・・・・・
一つわからないことがあるとすれば、さっきは何の為に時間を止めたのか、ということ・・・・・)
零夜
「探しには行けないよ、お前達は吸血鬼と魔女だろう?お前達には俺の復讐のための贄になってもらう。」
零夜は右手に持った懐中時計の竜頭を更に押してを時間を停止させるとレミリア、フラン、パチュリーの三人を連れて館の屋上へ移動すると、二人の体を吸血鬼の弱点の一つである純銀で出来た輪1つ1つが拳大のサイズもある巨大な鎖を召喚し、同じく召喚した十字架によって拘束し、パチュリーの右肩には封魔の力が込められたナイフで突き刺したところで時間が再び動き出す……
加えて、時間を停止させている間に館の出入口の扉を開いて咲夜が外へ出ることも逃げることも出来ないように扉にも封印魔法陣を展開する事で自力で屋上まで駆け上がらなければならない状況を作り出していく。
この時間停止の間、咲夜は意識を保ったまま、先程までと同じように金縛りにあったかのような状況になっているものの、先程よりも体が幾分が動けるようになっている。
レミリア、フランドール「・・・っ!?!?!?」
(相手の使ってきた武器が、自分たち吸血鬼からすれば弱点のものであり、そこへ加えて咲夜と同じく時間停止能力を持っている以上、なす術はないとすぐに理解する・・・・・
咲夜は時間停止能力を悪事に利用したりなどはしないからこそ、同じ能力を持つ者に対する対処法などは考えてなかったことも災いする形となった・・・・・)
咲夜《・・・・・さっきよりかは少し動ける・・・・・でも、これだけじゃあ・・・・・》
(ほんの少し動けたところで、まともに戦えないのであれば意味は無い・・・・・
それどころか、空間移動能力も持っているとなると、苦戦を強いられることは間違いない・・・・・
レミリア達同様に、咲夜も自分と同じ能力を持つ者と戦うことなど今まで無かったことから、対処法なんてまるでわからない・・・・・)
パチュリー
「………く……ぅ……!この……ナイフ……魔力が……使えな……」
パチュリーは右肩に突き刺さったナイフを引き抜こうと左手をナイフの柄に当てるものの、そのナイフに触れた瞬間的にパチュリーの体から魔力がナイフへと流れ、レミリアとフランの二人と違ってある程度動くことは出来るものの、実質的に無力化されてしまっている……
零夜
「なるほど"アイツ"の言うことは正解だったみたいだ……
抵抗は無駄だよ。この時のために下準備を整えておいたからね?
さあ、それじゃあ君達も見るといい。姉さんが……いや、十六夜咲夜が無惨に喰われる姿を……」
零夜は指を軽く鳴らしてレミリア、フラン、パチュリーの三人も見えるように自身の魔力を薄いスクリーン状に伸ばして結晶化させ、そこに玄関ホールの様子を投影して見せる……
スクリーンに映った咲夜の目の前には青黒い光を放つ巨大な魔法陣を床に展開し、その魔法陣の中からは咲夜を処刑するために用意していたのか、四つの頭を持ち、全身が返り血に染まっているかのように赤黒い体色をし、肌が焼けつくような強烈な殺気と魔力を放つ魔獣を召喚する。
レミリア「パチェ!無理しちゃダメ!じっとしてなさい・・・・・!」
(友人の身を案じ、レミリアはじっとしたまま動かないようにと忠告する・・・・・
そして「ちょっとあなた!!!!!こんなことしてタダで済むと思っていたら大間違いよ!!!!!何が目的!?お金!?」と、少しでも時間を稼いで何とかしようと零夜に怒号を浴びせる・・・・・)
パチュリー
「………わかった……わ………」
腕力が弱く、魔法も使えない今、下手に特攻を仕掛けようとしたところで、時間停止が使える零夜にはどう足掻いても勝てないだろう……魔力が封じられても戦えるような仕掛けを図書館に複数用意していたのだが、時間停止をして奇襲して来るなど想定外だった。
転移魔法も召喚魔法も使えない今、大人しく様子を伺い、このナイフを取る方法と、レミィと妹様の二人を救出するための策を考えていた方が良いだろう。
幸いにも魔法を封じられれば何ら障害にならないと思われているようで、自分は特に拘束はされていない。右肩には深くナイフが突き刺さってはいるものの、出血による気絶をするまでにはもう少しだけ猶予がある……
零夜
「金?そんなものは必要ない。俺が欲しいのは咲夜の命だけ。
それが叶うのなら、後は野となれ山となれ……だ。」
零夜は巨大な異界の獣と玄関ホールにて対峙する咲夜を夜空に浮かぶようにして展開されたスクリーンを通して見ながら、金も脅しも通じない、自分が欲しているのは咲夜の命だけであり、それを奪えるのなら後は殺害されても構わないとまで言う。
多くの場合、野心と保身の二つを天秤にかけた時、どれだけ強い欲望を持っていたところで、保身を取るように出来ている。いかに優れたモノを手に入れたところで、自分が生きていて、自由でなければ意味がないからだ。
だが、零夜にはその保身と言うものがまったく存在しておらず、復讐を成せるのならば、その後には例え自分が殺害されようと構わないというように、にわかには信じがたい常軌を逸した憎悪を抱いている事が伝わる……
・・・・・アンタ、さっきの発言とその容姿からして、咲夜の実の弟よね・・・・・?どうして実の姉の命を狙うの・・・・・?
(パチュリーが大人しくし始めたのを見て少し安心すれば、零夜に対して何故実の姉の命を狙うのかと聞く・・・・・
咲夜の反応を見る限り、しばらくは会っていなかったか、もしくは会えるはずがない人物と会った時の反応だったことから、咲夜と零夜の間に何かしらがあったのは伺えるが、命を狙う程となるとよほどのことなのだろうか・・・・・)
零夜
「…………………。」
レミリアの何故実の姉の命を狙うのかと言う問いに対して零夜は何も応えず、その代わりとばかりに零夜は自分の手元の空間を歪めてレミリアとフランの二人を拘束する銀の鎖を引き寄せ、それを思い切り引っ張り、二人を拘束する力を強める。
銀の鎖は吸血鬼である二人にとって、肌を焼き、肉を焼く凶器となり、純粋に力や動きを封じる他に、強い苦痛を与えるものとなっている……
【紅魔館 玄関ホール】
異界の猟犬
『ガアァァァァァァァァァッ!!!』
《グオッ》
レミリアが零夜に対して問いかける傍らで、咲夜の眼前に召喚された巨大な四つ首の魔犬がその巨大な腕を振り下ろして咲夜を瞬時に叩き潰そうとする。
レミリア「・・・っぐ・・・・・!?」
フランドール「・・・・・」
(レミリアは鎖によるじわじわと苦痛を与える攻撃方法によって表情を歪めるものの、フランドールは少し汗が出ては来るものの、ずっと零夜をにらみ続けながら威嚇を続ける・・・・・
威嚇ではどうにもならないというのはフランドール自身もわかってはいるが・・・・・)
咲夜「っ・・・・・!!!!!」
ヒュッ・・・・・!
(今まで少ししか動けなかったものの、このままじゃ確実にやられると思ったその時、腕をなんとか動かすことに成功し、ナイフを取り出して猟犬へと投げつける・・・・・)
異界の猟犬
『ゴアァァァァァッ!!!!』
咲夜が最初の一撃を避け、反撃として投げられたナイフが魔犬の振り下ろされた右前足に突き刺さるものの、その分厚い筋肉の鎧と、ホールの天井近くまであるその巨体にとっては致命傷にはならず、寧ろ怒りを滾らせる結果となり、激情のままに咲夜を見た魔犬は四つある頭の一つが口を大きく開けて吸息をすると、今度は口内から強烈な炎を吐き、ホールの一角もろとも咲夜を焼こうとする。
咲夜「なっ・・・・・!?」
ズッ・・・・・!
(止まった時の中でも動けるようになり始めてはいるものの、まだ完全というわけではなく、炎が咲夜の服と髪をかすめてホールの一角を焼く・・・・・)
咲夜「あっつつつつ!!!!!」
(咲夜は手で叩きながら何とか火を消す・・・・・幸い命に別状はなかったものの、魔犬との体格差や咲夜がようやく今になってやっと動け始めるようになったことから、形勢逆転はまだ見込めない・・・・・
しかし、咲夜もこのままやられるほどヤワじゃない・・・・・)
【紅魔館 屋上】
零夜
「ははははは!
見ろ、ナイフごときであの巨体を倒そうとしているぞ……?」
零夜は巨大な四つ首の魔犬相手に小さなナイフだけで対抗しようとしているのを見て、その咲夜に似て整った顔を少し悪意に歪め、楽しそうに両腕を広げながらスクリーンからレミリア達の方へと振り返る。
零夜
「アレは地獄に巣くい、地獄の炎を吸い、煮えたぎる溶岩を飲み、亡者は愚か獄卒すら喰らう猟犬だ。少し武術や戦闘の心得があるだけでは到底太刀打ちできないだろう。」
零夜は左手を下げ、右手を自分の顔の近くにまで近付けて人差し指を立てながら四つ首の魔犬は地獄の猟犬であり、この世に存在するモノでは到底太刀打ちできないと告げる……
零夜
「しっかりとその目に焼き付けておくといい。
自分の従者が猟犬に生きながらにして喰われてゆく様を……!」
右手の人差し指を立てたまま、復讐のあまり狂気に呑み込まれた零夜の双眼がレミリア、フラン、パチュリーを見据えており、パチュリーは何も解決策が思い浮かばない事に、苛立ちさえ抱いている。
零夜が背にしたスクリーンでは、咲夜に向かって魔犬がその巨大な右前足を振るい、咲夜を壁へ殴り飛ばそうとしている……
・・・・・あまいわね、咲夜はあんたがどんな化け物をよこしたとしても簡単にやられるようなメイドじゃないわよ・・・・・?
(零夜の話し方は、まるでこのまま簡単に猟犬が咲夜を葬り去ってくれると考えているようだが、咲夜にも零夜同様に時間停止能力がある・・・・・
零夜がこのことを知っていたとしてもそうでなくても、咲夜はこんな猟犬に負けるはずがないと信じている・・・・・)
くっ・・・・・!
スッ・・・・・
ほら!こっちよ化け物!!!!!
(零夜がスクリーンを見ていたその時、咲夜がいつの間にか・・・・・いや、確かにそこにいたはずなのに猟犬が右前足を振るった先には咲夜はいなく、床に巨大なクレーターができる・・・・・
体格差はあり過ぎるものの、能力の有利な点で言えばまだこちらの方が上だと思っている・・・・・)
零夜
「………なに……?」
零夜からはスクリーンの先が見えていないものの、レミリアの言葉を聞くと同時に、咲夜が零夜の時止めをしている間に身動きが取れなくなっていたのと同じように、咲夜が時を止めた瞬間、一時的にとは言え、零夜も体が動かせなくなり、再び体を動かせるようになると背後のスクリーンへと直ぐ様視線を戻す。
異界の猟犬
『ゴルルル!!ゴルルルルアアアッ!!!』
時止めを感知できない魔犬は目の前から突然咲夜の姿が消えたことに驚き、咲夜の声が聞こえた方向へ振り向いたび大きく息を吸い込み、再び口内から強烈な炎を吐いて咲夜を焼こうとする。
カチッ・・・・・
パッ・・・・・
ほらほらどうしたの!?こっちよこっち!!!!!
(咲夜は攻撃するよりもまずは魔犬の猛攻を回避しながら策を練った方がいいだろうと考えて再び時を止めて魔犬の炎を避ける・・・・・
しかし、策を練るにしても、これほどの巨体を何とかできるような武器がどこにもないのもまた事実・・・・・)
レミリア「・・・っ・・・言ったでしょう・・・・・?簡単にやられるようなメイドじゃないって・・・・・」
(零夜の反応を見れば、レミリアは純銀によってダメージを受けながら表情を苦痛に歪めながらも、得意気な感じで話す・・・・・
戦闘力は魔犬の方が上だが、時止めという能力は正しく強大な敵の攻撃を回避する際に力を発揮する能力と言っても過言はないのかもしれない・・・・・)
零夜
「………だが、どうせ直ぐに潰れる。
アイツにはあの獣を打ち倒せるような術は無い筈だ……!
体力が尽きた時が終わりの時だ。」
度々体の動きが止まる事があるのだが、力と動きを封じられているレミリアとフラン、魔力が枯渇しているだろうパチュリーが何らかの拘束魔法や能力を使えるとは思えない……
微かな違和感を感じつつも、スクリーンの向こうで対抗策を考えながら魔犬の猛攻を避け続けている咲夜を見て歯痒そうに睨み、咲夜の体力が尽きた時が最期だと口にする。
体力が尽きる以前に、あの化け物に咲夜は倒せないわよ・・・・・?アンタと同じく凶暴性を露にするだけのお馬鹿さんのようだしね・・・・・
(レミリアはこの拘束されている状態で、零夜を挑発するような言葉を放つ・・・・・
レミリアからすれば、スクリーンに映し出されている巨体の化け物も、今ここにいる零夜も、そう大差のない同じ愚か者であるということなのだろう・・・・・)
零夜
「……へえ?随分とアイツを過大評価しているじゃないか。
だが、ナイフごときではあの巨体には通じない、ホールから出るための扉は全て時を止めている間に施錠術式を仕掛けておいたから逃走も撤退も不可能……これは最早チェックメイトと言っても過言ではないだろう。」
零夜は激高しながらも、感情のコントロール能力が上手いのか、現状の状況を冷静に分析し、レミリアの挑発に対しても感情的にはならず、分析した状況を元に勝ち目は無いと断言してみせる……
そんな中、魔犬は咲夜に向けて二つの頭から同時に炎を吐き、時を止めても炎の熱はそのままである事を活かして左右から挟み込むようにして逃げ場を奪いながら彼女を焼き尽くそうとする。
カチッ・・・・・
《お嬢様達がどこに拘束されているかもわからない・・・・・もしかしたら紅魔館の外かもしれないし、館内のこの近くかもしれない・・・・・どうすれば・・・・・》
(まずはこの魔犬を倒さなければどうにもこうにもこの事態は先には進まない・・・・・
だが、主達がどこに隔離されているかもわからない現状、下手に動けば巻き込んでしまう可能性だってある・・・・・
攻撃を回避して主達を巻き込んでしまう可能性だってある以上、咲夜はどうすればいいのかわからないまま追い込まれてゆく・・・・・
再び、魔犬の背後に回れば時が動き出した・・・・・)
異界の猟犬
『グルルル………』
眼前から突如として姿が消えた咲夜の姿を探すべく、炎を吐くのをやめて四つある頭の全てを使って周囲を見渡し始める。
だが、体の構造上、真後ろにいる咲夜の姿を見つけ出すには少し時間がかかるようで反撃するための隙が生じる。
《反撃するなら・・・・・今っ・・・・・》
カチッ・・・・・
体格差では有利に立てても、その体格差が仇になったみたいね・・・・・
ヒュッ・・・・・!
(咲夜は時を止めて魔犬の目へめがけてナイフを投げる・・・・・
体格差という相手の長所が短所になったこの瞬間こそ反撃のチャンスである為、僅かな希望に賭けるしかないものの、正直この攻撃でどれほどのダメージを与えられるかはわからない、そもそも相手は得体の知れない異形、すぐに傷が再生する可能性だってある・・・・・)
異界の猟犬
『……!!?グギャオォォォォォォッ!!!』
後ろへ振り返ったところに、咲夜の投げたナイフが四つある首の内の一つの右目に突き刺さると、目を突き刺された頭が館中の窓が破裂するような強烈な咆哮をあげ、四つの頭が同時に口内に魔炎を集束させ始める。
窓が割れてはいるものの、その窓にも全て正面扉と同じように障壁魔法が展開されているため、即座に逃げ出すことは厳しく、かと言ってこのまま立ち止まっていても、魔犬が吐くであろう炎はこの玄関ホール内を埋め尽くすほどのものになってしまうだろう……
《ヤバイっ・・・・・!》
カチッ・・・・・!
時間停止能力を持っていなかったらと思うとゾッとするわ・・・・・
(咲夜は魔犬が口から炎を一斉に吐き出そうとしていることに気づくと、再び時を止める・・・・・
流石に魔犬の攻撃を完全に止めて魔犬を完全に消滅させることは咲夜単独では不可能、咲夜は時を止めて玄関ホールから館内の他の場所へ移動すると、再び時止めを解除し、レミリア達を探し始める・・・・・)
【静止した時の中】
咲夜がホールから逃れようと扉に手をかけるものの、出入り口の扉はおろか、全ての扉に魔術施錠が施されている。
パチュリーやアリスレベルの種族"魔法使い"であれば片手間に解除できる程度の代物ではあるものの、ある程度は魔術を使えるとはいえ、魔術に特化した訳ではない咲夜一人だけでは解除する事に相応の時間が必要になってしまうだろう……
かと言って時を再び動かしてしまえばホールを埋め尽くす業火によって骨すら残らず焼き尽くされてしまうだろう。
なんでっ・・・・・!なんで開かないのよっ・・・・・!?
(咲夜は扉がびくともしないことに焦りを見せ始める・・・・・
このままじゃ化け物に殺されるが、自分の力では時を止めて攻撃するのがやっとであり、倒すには至らないのは自分が一番わかっている・・・・・
が、咲夜は一か八か、火事場の馬鹿力ならぬ、火事場の閃き力とも言えるような、後には引けないこの状況を打破できるかもしれない解決策を思いつき、成功することを祈り時を動かす・・・・・)
カチッ・・・・・
化け物ー!こっちよこっちー!そんなウスノロな動きで私を倒せるとでも思ってるのー!?炎で焼き尽くして骨まで焼くぐらいにしないと私が怖いのかしらー!?図体はでかいクセして度胸は小さい小物なのねー!悔しかったら物理攻撃で仕掛けてきなさいよぉー!
(咲夜は時を始動させると、魔犬へ向かって完全に焼き尽くさないといけないほどに自分が怖いのかと、悔しさを感じるなら物理攻撃で仕掛けてくるがいいと挑発をする・・・・・
咲夜の表情はさっきとは打って変わって、魔犬なんぞ怖くはないとでも言いたげな、魔犬からすれば屈辱的な表情で)
異界の猟犬
『ゴアァァァァァァァァッ!!!』
魔犬は唸り声や雄叫びをあげる程度で、人言を理解できないのか、言葉を話す素振りすら無く、咲夜の挑発もまるで受けること無く口内からホール全体を炎の海に変える業火を吐き、急速に広まって行く……
咲夜の能力は時間の停止だけには留まらない。
その事を踏まえると、現状においてもっとも有利になりうる力は……!
【他にどんなのありましたっけ・・・・・こういう状況において有利になりそうな咲夜さんの力・・・・・】
57:惨劇の幕開け◆gI:2021/01/04(月) 10:41 カチッ・・・・・
(咲夜は時間操作を行い、時間を巻き戻して魔犬が炎を吐く前まで戻して停止させる・・・・・)
さて、これほどの巨体を倒せるかどうかはわからないけれど、とりあえずこの状況において動かしづらい場所を狙おうかしらね・・・・・
ゴガッ・・・・・!
ズッ・・・・・
(咲夜は魔犬の左前足に蹴りを入れると、そのままナイフを投げる・・・・・
そして、魔犬の動きをある程度鈍らせる為に再び目の方にナイフを3本ほど投付ける・・・・・
仕上げに魔犬の背後に周り魔犬の視界から消えることで時を動かし始めても不意打ちがしやすいようにする・・・・・)
カチッ・・・・・
(時間操作に体術にナイフ投げ、これほどの攻撃を仕掛けたのだからさっきよりかは効いていてくれともはや神頼みとも言えるように願いながら時を動かす・・・・・)
零夜
「………やはり……この違和感は……まさかとは思うが同じ時間を使っているとでも言うのか……?忌まわしい……!何処までもこの俺を馬鹿にするつもりか……!!」
咲夜が時を遡らせ、魔犬のブレスを抑え込み、前肢を蹴って体勢を崩したところへ魔犬の顔にナイフが突き刺さり、その内の一つが魔法
犬の目を更にまた一つ潰す中、一度ならずも何度も感じられた違和感の正体について零夜は気付き始めているようで、スクリーンに映る咲夜を見ながらゆっくりと右手を翳す。
零夜
「ジワジワといたぶるつもりだったが、予定変更だ。時間と空間の支配権はこの俺一人の手中にあればそれでいい……!!」
【局所爆裂魔法「エクスプロード」】
《パチンッ》
零夜は咲夜の始末を決定付けると、指を鳴らす……すると、異界の猟犬の身体中に無数の魔法陣が浮かび上がり、異界の猟犬が持つ全魔力と生命力を爆発エネルギーへと返還して閉鎖された玄関ホール全体に及ぶ強力な大爆発を巻き起こそうとする。
召喚する前からこの自爆魔法は仕込んであった。爆発の発動は此方の手にあり、推測通りに同じ時を操れるのだとして、時を遡らせられたとしても再度爆発させる事が出来る。時を操らなければ当然そのまま爆発に巻き込まれて死亡する事になる。
事前に"エニグマ"の連中から聞いていた情報では強力な魔法障壁の使用は出来なかった筈だ。時間を操作すると言う莫大な力の消費を強いられる姉(咲夜)と異なり、此方は爆発魔法を発動させる……それだけで良いことから、巻き戻しと爆発のタイミング争いとなっても此方の優位性は揺るがない……そう零夜は考えている。
《・・・っ・・・・・!やばいっ・・・・・!》
カチッ・・・・・
(咲夜は時間を魔法陣が浮かぶ前まで遡らせ、停止する・・・・・
咲夜も弟が自分へ対して今現在実の姉という感情ではなく、復讐の標的という憎悪を抱いていることはこの魔犬をよこした時点で把握した、だからこそ今の魔法陣も恐らくは魔犬の技ではなく弟が発動したものだろうと推測する・・・・・
つまり、こうもタイミングよく魔法陣を発動できるということはどこかからこの戦いの様子を見ている、ということ・・・・・
しかも相手も自分と同じ能力を有しているとなれば、魔犬を倒す以前の問題なのは確かだ・・・・・
咲夜は知恵を振り絞ろうとするが、停止する時間が名がければ長いほど、零夜に自分も同じ能力があることがバレる・・・・・
咲夜は、時間とも戦っていた・・・・・)
零夜
「……つッ……!やはり……か……ッ!!」
まさに今、爆発によってホールそのものを消し飛ばそうとした瞬間、再び身体中の動きが止まり、強い違和感を感じ、このタイミングからして、姉が能力を発動させた事は明白だ。
……だが、何度も時間操作をしている中で自身も止まった時の中で意思を保つだけでなく、動くことが可能になっており、ゆっくりと右手をスクリーンに向けて翳すと、零夜は自身の時間操作によって停止した時間を再開させようと時間干渉を行い始める。
・・・・・何・・・・・?
(咲夜は、今までに感じたことのない違和感を本能的に感じる・・・・・
本来、止まった時の中で動けるのは時を止めた本人のみのはずなのだが、今感じた違和感は、簡単に言うならば、止まった時の中を扉を閉め切った部屋と例えるなら、その閉め切った扉を無理やりこじ開けられるような、そんな感覚だった・・・・・)
《時間操作 強制解除》
《カチッ》
《ゴオォォォォォォォォォォォォォォッ》
咲夜もまた、零夜による時間干渉による違和感を感じ取った次の瞬間、咲夜による時間停止が強制的に解除され、それに合わせたように異界の猟犬に仕込んだ自爆魔法を発動させ、ホールごと咲夜を消し飛ばそうするが……
《対爆発&対物理防御球壁》
パチュリーが失われつつある魔力を振り絞って展開した球状の防御壁が咲夜を爆発から守る。……が、殆ど無い魔力を使ってようやく展開したものであったためか、一度爆発を防ぐとそのまま無数の亀裂が生じて崩壊してしまう……
・・・っ・・・・・!?これはっ・・・・・!?
(突如として展開された球状防御璧によって守られたことに驚く・・・・・
恐らく今のはどこかに囚われているパチュリーの魔法によるものであろうということは察することが出来るが、パチュリーほどの魔法使いが展開する防御璧にしては、簡単に崩壊していることがわかる・・・・・
もしかして今もどこかに囚われているレミリア、フランドール、パチュリーは言葉にし難いほどの拷問を受けているのではないかという恐ろしい想像が脳裏を過ぎる・・・・・
が、同時に思ったのは・・・・・)
・・・・・美鈴・・・・・
(一気に三人を捕らえて今もどこかで拘束するほどの相手が、館の修復作業という目に付きやすいことをしていたはずの美鈴を見逃すはずがない・・・・・
が、零夜は美鈴については述べずにいきなり三人を拘束した・・・・・
美鈴はどうなってしまったのだろうかと、不安が咲夜の心に募ってゆく・・・・・)
【紅魔館 屋上】
零夜
「……ッ!?邪魔を……するなッ!!」
《ドスッ》
パチュリー
「………ぐ……ぅ……!」
今の爆発はおそらく相手にとっての最大にして唯一の回避&防御手段である時間の停止を無理矢理解除して喰らわせたものであったため、確実に咲夜を仕留められたと考えていた矢先、咲夜を守るようにして
咲夜自身があの爆発を防げるほどの防御壁を展開できると言うような情報は無く、別の者によるものだとわかり、それを出来るのは強い魔力を持ったパチュリーだけであり、激昂しながら今度はパチュリーの腹部へ封魔の力が込められたナイフを突き刺す……
玄関ホールの正面入口の扉は特に強固な封鎖魔法がかけられているためか、破壊出来ていないものの、ホールの随所にある扉とそこにかけられていた障壁が丸ごと先程の魔犬による自爆魔法によって破壊され、通行可能になっている。
レミリア「・・・っ!!!!!貴様ぁぁああああっ!!!!!」
(レミリアは親友が腹部へナイフを突き刺されるのを目の当たりにした途端、普段からは考えられないほどに言葉遣いに変化が現れる・・・・・)
咲夜「っ・・・・・!」
ダッ・・・・・!
(咲夜は通行可能になっていることに気づけば、咲夜は急いでホールから出て館のあちこちを探し始める・・・・・
この広い紅魔館の中から探し当てるのもかなり難しいが、零夜は待ってはくれない・・・・・)
【紅魔館 屋上】
零夜
「俺が憎いだろ?消してやりたいだろう?
それでいい……それでこそ俺の復讐は叶う……」
目の前で親友のパチュリーを傷付けられた事で激怒するレミリアを見て、零夜は自分の復讐を成すためにはレミリア達の怒りや憎しみも必要であるのだと語る……
【紅魔館 一階/長通路】
《ヴォンッ》
レミリア達を探すべく、館内を奔走している咲夜の前に開けた長い通路が見え、基本的な構造は零夜による空間操作の影響をあまり受けていないようにも見える……だが、その通路へ足を踏み入れた瞬間、通路の天井や床、壁と至るところに無数の青白い小型の魔法陣が展開され、そこから無数の青い光弾が弾幕となって咲夜に向かって襲い掛かる。
だが、紅霧異変の時に戦った霊夢の放つ弾幕に比べると速度も密度も、殺意を優先するあまりかえって薄れており、今の咲夜であれば見切る事が可能なレベルになっている。
ダダダダダッ・・・・・!
スッ・・・・・!スッ・・・・・!
遅いわね・・・・・殺意に囚われていない人間の方が、まだ早かった・・・・・
(咲夜は零夜の殺意に満ちた猛攻を、いとも簡単に、時を止めることすらなく避けていく・・・・・
霊夢が放っていた弾幕を思い出しながら、殺意に囚われていない人間の方が攻撃はちゃんとしていることがわかる・・・・・)
《「高等魔光魔法 レイン」》
《ギュオォォォォォォォォォォォッ》
迫り来る凶弾嵐の中でも霊夢達との戦いを経験した咲夜の前では
通路の奥にある扉に扉を覆うようにして浮かび上がった巨大な魔法陣が現れ、広い通路の半分を埋めるような規模の巨大な破壊光線が放たれる……
この光線に当たればまず間違いなく即死は免れないだろう。
だが、この光線も弾幕のルールにのっとりながらも、改良を重ねた魔理沙のマスタースパークに比べると威力だけに特化し過ぎたあまり、その速度は魔理沙の放つものよりも少し遅くなっている。
《やっぱりね・・・・・あの巫女や魔女の攻撃と比べると、威力に特化しているだけでスピードはさほど脅威じゃない・・・・・》
ダダダダッ・・・・・!
(零夜の更なる猛攻も、霊夢や魔理沙との一戦の中で経験したものと比べれば、やはり遅く感じる・・・・・
本来ならばスピードもかなりの脅威であるのはまず間違いないことではあるのだが、霊夢達の攻撃スピードを経験した今の咲夜からすれば、零夜の攻撃を避けられるほどに体が慣れ始めている・・・・・)
零夜
「(なんだ……なんなんだ……これは……!?
何故光弾や光線をこれだけ簡単に避けられるとは……
予想以上の力だ……)」
無数に飛び交う光弾や、それらを避けた先も考慮して仕込んでおいた光線さえも避ける咲夜を見て、事前に得ていた情報よりも更に強くなっている事に驚き、スクリーンを見上げながら硬直する。
光弾の嵐でさえ五体満足で通り抜けられるとは思わず、あくまでも保険としてあったためか、光線は一度発射し負えるとその込められていた魔力が尽き、咲夜の前には観音開きの扉がある。
だが、その扉の向こうからは荒々しく邪悪な魔力が感じられる。
《この言葉にし難いおぞましい力・・・・・この先に・・・・・》
(零夜がスクリーンを見ながら唖然としている中、猛攻を簡単に全て掻い潜り、咲夜は扉を見つける・・・・・
とてつもなくおぞましい力が感じられるが、今の咲夜は主達を救うことのみを考えているからか、何の迷いもなく扉へと向かい、勢いよく扉を開ける・・・・・)
【紅魔館 広間】
《オォォォォォォォォ……》
扉を開けたその先に待ち受けていたのは広間を埋め尽くさんばかりに枝根を広げ、悪意に満ちた醜悪な笑みを浮かべた不気味な紫色の巨大な樹木……
"ダークトレント"と呼ばれる魔物であり、先程の異界の猟犬よりも更にぶ厚く強固な体を持ち、メイン武器であるナイフが通用せず、体術さえ通用しづらい圧倒的な巨体の化物であり、咲夜の姿を見つけた瞬間、その巨大な枝を振るい、弾き飛ばそうとする。
カチッ・・・・・
まさかさっきの犬っコロよりもやばい奴が待ち受けているとはね・・・・・
(咲夜は時を止めてダークトレントの背後へ周り、策を考え始める・・・・・
しかし、ナイフも通用しないほど強固な体、そして圧倒的な巨体・・・・・
ナイフも通用しないとなれば体術も通用しないのは明白・・・・・)
ダークトレント
『ゲラゲラゲラゲラゲラ!!!』
ダークトレントの背後に回り込んだ咲夜であったものの、ダークトレントの背中から巨大な頭が現れ、更に背面の壁に張り巡らされ、この奥の扉を守る枝根からも無数の顔が現れ、悪意に満ちた笑い声をあげ、無数の枝根を伸ばして咲夜の体を貫こうとする。
カチッ・・・・・
こういう時こそ冷静に・・・・・慌てちゃダメ、冷静に・・・・・
(再び時を止めて、枝根による攻撃を回避し、更には無数にある顔の一つに、ナイフを投げつける・・・・・
もしかしたら、万が一に顔になら攻撃として効くかもしれない可能性もゼロではない為、試してみるしかない・・・・・というか、できる限りの攻撃を試さないと倒せないほどの敵と戦っているという証拠でもある・・・・・)
零夜
「あの魔樹は先程の魔犬よりも更に硬い体を持ち、痛覚すら持たない。ナイフや体術だけではどうにもならないだろう。……今度は自爆には使わない、多少時間がかかろうと今度は確実に潰す……!!」
咲夜の様子を見ていた零夜はナイフや体術では物理的にダークトレントを倒すことが不可能である上に、得意の時間操作もある程度此方から解除する事が出来ると言うことは先程もわかった……ナイフと体術、時間操作しか戦闘に使えないのであれば此方の勝利が揺らぐことはない。
ダークトレントの無数にある顔の一つに咲夜が放ったナイフが突き刺さるものの、痛覚を持たぬダークトレントは異界の猟犬と異なり、痛みやダメージで激怒したり、怯む事はなく、ただただ不気味な笑みを浮かべながら無数の枝根を執拗に伸ばして咲夜を捕らえようとする。
とんでもなく厄介な奴ね・・・・・!!!!
ダッ・・・・・!
(咲夜は段々とダークレントの動きを見切れるようになってきたのか、スピードも追いついてゆく・・・・・
倒すには至らない以上、本当に攻撃が避けられそうにない時と策が浮かんだ時に時間停止能力を使った方がいいと判断したのか、咲夜はダークレントの攻撃を避ければ、頭をフル回転させ始める・・・・・)
零夜
「必死になって足掻いているようだが、それも時間の問題だ。
お前も己の無力を知り、失うことへの絶望と恐怖に苛まれたまま逝けばいい……」
レミリアとフランの二人に背を向け、スクリーンに映るダークトレントの猛攻を避けている咲夜を見て、怨念とも憎悪とも悲しみとも取れない声で、姉も自分と同じ絶望と恐怖に苛まれればいいと呟く。
最早自分には復讐しか残っていない。
姉が新しい家族を得て幸せに暮らしている中、自分は外の世界で血と腐臭に満ちた闇の世界で暗殺と虐殺を繰り返して来た。自分達を見捨てて逃げた姉に復讐する。それだけを心の支えとしてきた零夜の狂気が言葉となって現れ始める。
事情は知らないけれど、哀れね・・・・・復讐心しか残っていない上に、実の姉の命を狙うなんて・・・・・
(どんな事情があれ、復讐心しか残っていなく、実の姉という親族の命を狙うという愚行は、レミリアからすればあまりにも哀れなことに思える・・・・・
事情をしらないレミリアは、咲夜側に何か問題があったのだろうかと思っても普段一番接しているからか、とても咲夜が実の弟をここまでにするようなことをしたとは思えない・・・・・)
零夜
「……そう言えば、お前達も父が暴君であったのだろう?
なら……わかるだろ?見捨てられ、命を脅かされ、苦痛と恐怖の中を生きる絶望を……!そしてそれを引き起こした者達への復讐と憎悪が!!」
少し首を傾けて目線だけをレミリアに移動させると、自分と同じように支配され、絶望と恐怖の中を生きることや、それを強いる者への憎悪と復讐を理解できる筈だと投げ掛ける。
っ・・・・・!アンタ・・・・・どこでそれを知ったの・・・・・?お父様・・・・・いや、あの男はとっくの昔に地獄に落ちたはず・・・・・
(接した限りでは、咲夜に対する復讐心しか持ち合わせていないように思っていたからか、いきなりヴァルターについての話題が零夜の口から出たことに驚きを隠せない・・・・・
零夜がヴァルターのことを知っている何者かと繋がりがある、ということなのだろうか・・・・・)
零夜
「ほう、この情報は正しかったようだな……
誰が教えたのかについて知る必要は無いだろう?
何せ……今日を持ってお前達も、アイツも……全員まとめて死に絶えるのだからな?」
零夜は咲夜との時間の相互干渉や、パチュリーの補助等、度重なるイレギュラーの中で懐疑的になっていたものの、レミリアの反応からしてこの情報は正しかったのだと判断すると、零夜は銀の懐中時計をスーツの内ポケットから取り出し、現在の時間帯を見せる。
零夜が開いた懐中時計は午後三時を指している。
それが示しているのは……日の出まで残り三時間しか無いと言うこと……
これはつまり、あと三時間経ってもレミリアとフランの二人が救出されなかった場合、二人とも日光に照らされて消滅してしまうことを意味している……
本当に卑怯ね、アンタ・・・・・どんな人生を送ってきたかは知らないけれど、どうせ一方的な逆恨みなんでしょ・・・・・?言うことやること全部がただの逆恨みの小物・・・・・
(零夜のあまりの冷酷さに、レミリアは零夜の今までの人生を知らないが故も含めて零夜が一番傷つくような一言を放つ・・・・・
新しい家族と居場所を見つけた咲夜とは対照的に、文字通り生き地獄を経験して今まで生きてきた零夜の過酷な人生を知らないこと、咲夜が零夜がここまでなるほどのようなことをする人物ではないということを信じているため容赦なく言える・・・・・)
零夜
「なんとでも言え、これが俺達人間の強さなのだからな。」
(二人に見せていた懐中時計を閉じ、再びスーツの中に戻しながら、この狡猾さや卑劣さこそが人間の強さであり、人外の存在に対抗する方法なのだと応える……零夜にとって人間は悪意の強い者だけが勝ち残れる、他者を平気で蹴落とせる者こそが幸せに近付ける……そんな歪んだ価値観の下の発言だ)
零夜
「逆恨み?ふん、そうか……ならお前がお前の父に抱いていた感情も逆恨みだと言えるな?」
(零夜はレミリアの言葉を聞くと冷笑し、自分達を見捨てて一人幸せを掴んだ咲夜と、ヴァルターを同じく自分達に災いと苦痛をもたらした張本人であると言う考えの下で同一視し、姉を恨んでいる自分と父を恨んでいたレミリアとフランの二人に対して「逆恨み」と言う言葉をそのまま返す……
咲夜は刻一刻と根を張り広間を埋め尽くさんとばかりに広がる人面樹によるあらゆる方向からの刺突攻撃や薙ぎ払い攻撃を向けられ続けている。
零夜としても、このまま後は放っておくだけで咲夜は体力が尽きて攻撃が避けられなくなれば死亡し、三時間後には日光によってレミリアとフランも消滅する。出血によって意志が既に失われつつあるパチュリーもこのまま手当てをしなければそうは長く生きられない……まさに絶体絶命の状況に追い込まれてしまっている)
っ・・・・・!そ、それはっ・・・・・
(恨む側が零夜と自分達姉妹であるなら、同じ立ち位置にいるのは咲夜とヴァルター・・・・・
だが咲夜はヴァルターとは違う、ヴァルターのように誰がを故意に殺めたり、悲しませたりはしない・・・・・
だが、レミリアは上手く返答することも出来ずに、黙り込んでしまう・・・・・)
零夜
「……口でならば何とでも言える。
俺もお前達とヴァルターの関係についてそこまで詳しくは知らない。
だが……俺にとってアイツはお前達にとってのヴァルターに等しい、許すことの出来ない悪……この身を擲ってでも滅ぼしたい存在だと知れ。」
零夜は視線をレミリア達から咲夜とダークトレントが戦うスクリーンへ戻し、自分にとってはレミリア達にとってのヴァルターに等しい敵なのだと断言する……
スクリーンの中では、徐々にその体積を増して咲夜の逃げ場を奪っていくダークトレントの姿と、それでも必死に回避を続ける咲夜の姿が移っている。
・・・・・咲夜がアンタに何をしたって言うのよ・・・・・咲夜が実の弟にここまで恨まれるようなことをする人間じゃないっていうのは、主人の私が一番知っているのよ・・・・・?
(レミリアは咲夜が実の弟にここまでされるほど恨まれるようなことをする人間ではないことを弟の零夜よりもよく知っている・・・・・
だからこそ、より一層零夜の気持ちが理解出来ない・・・・・)
零夜
「……いいだろう、言ったところで何が変わるわけでも無い。冥土への土産として話そう。」
どの道、残り三時間で全員塵となって消える運命にある。
ならばそれまでに少しの雑談をする程度の事、何ら障害にはならないだろう。
零夜
「俺とアイツはのどかな街の中で生まれ育ち、貧しいながらも優しい両親の下で充実した毎日を暮らしていた……その頃の俺もこんなささやかだが平和な毎日が続くと信じていたんだ……だが……この幸せは長くは続かなかった。」
零夜
「覆面の集団によって俺達の家が襲われ、父さんと母さんが殺され……
俺自身も殺されかけた……アイツは……俺達が襲われている時、俺達を見捨てて一人で家から逃げた……姉さんは小さい頃から時間を操る事が出来ていたから助けようと思えば何時だって俺達を助けられた筈なんだ……なのに……アイツは俺達を見捨てて……逃げた。」
零夜はここまで話終えると、自分のスーツとシャツの胸元を開ける。
すると、無駄無く鍛えぬかれたその体には無数の傷跡が付けられており、特に鳩尾の辺りには一際大きい刺し傷の跡がくっきりと残っている……
体に付けられた無数の傷は様々な拷問や、能力が開花して人拐い達から逃れた先で生き延びるためにもがいた証であり、鳩尾の傷跡は家族を襲撃された時に付けられたものだ。
零夜
「辛うじて生かされた俺は人拐いに捕えられ、地獄としか言い様の無い世界を生きて来た……自分で命を絶とうとした事など十や二十じゃない。だが……俺はアイツへの憎しみだけを糧に生き延びて来た……」
・・・・・咲夜は、助けを呼ぼうとしたんじゃないの・・・・・?いくら時を止められるからって、子供が家族全員襲われた際に出来ることなんでたかが知れている・・・・・
(いくら時を止める能力を子供の頃から持っていたとしても、子供ならパニックになるのは当たり前・・・・・
咲夜は家族を置いて逃げようとしたのではなく、他の大人の助けを呼ぼうとしたのではないかと指摘をする・・・・・
この言葉が零夜に響くとは思えないが・・・・・)
零夜
「……それが真実であったとしてももう遅い。
ここまで来た、来てしまった以上、俺はもう止まることは出来ない。
復讐の成功か……死か……そのどちらかの二つ以外に俺に道は無い。」
零夜はレミリアの言葉を聞くと、零夜自身もその考えがあったからなのか、少しの沈黙の後、先程までとは打って変わって冷静な口調でそう応える……
例え咲夜が助けを求めるために出たのだとしても、復讐のために此処までしてしまった以上後戻りなど出来ない。咲夜を仕留めて復讐を成すか……それとも敗れ去り消えるか……その二つしか自分にはもう道など存在しないのだと応える。
皮肉な事に、自分にとって大切な、肝心な場所では時間の操作が及ばない……最も変えたい場所、戻りたい場所には遡ることが出来ない……それが後天的に能力に目覚めた零夜の最大にして取り返しの付かない欠点……
復讐だけが自分の生き甲斐であり、これまでの自分を支えてきた……
それを否定すると言うことはこれまでの自分の全てを否定するようなもの。例え自分の考えや行いが過ちであったとしても、自分自身の手では終わらせられない。
終わりを迎えることが出来るとすればそれは咲夜によってこの命が絶えられたその時だけなのかもしれない……
・・・・・家族を失ったことでどんどん歪みに歪んで、挙句の果てには唯一血の繋がりがある姉を消して目標を達成しようだなんで、本当に哀れね・・・・・お互い生きている今の内に、話ぐらいしたらどう・・・・・?
(少しでも零夜の殺意と復讐心のレールをを咲夜との和解へと切り替えようとし始める・・・・・
ここまで歪んでしまった感情を元に戻すことは難しいが、少しでも咲夜に対する今の殺意が和らいで、和解する気持ちへと変わればとダメ元で言ってみる・・・・・)
【紅魔館 階段前】
ダークトレント
『ゲヒャヒャヒャヒャ!!!』
レミリアが零夜に対する説得を進めている中、咲夜と交戦していたダークトレントは遂に広間の五分の四以上をその巨大な根を張り巡らせる事で覆っており、着実に咲夜の逃げ場を奪っていた……そして、移動可能なスペースの大半を奪ったダークトレントはほぼ全方向から同時に黒い根を伸ばし、咲夜の体を貫こうとした次の瞬間。
《ドゴオォォォォォォォォォォォォォォォッ》
美鈴
「遅れてしまいすみません!!」
辺り一帯に鳴り響く程の凄まじい爆音と共に、封鎖魔法によって脱出不可能となっていた広間の扉が勢いよく吹き飛び、ダークトレントの無数にある顔の一つに深々と突き刺さる……そして吹き飛ばされた扉の先には両手に赤い鱗が生えた美鈴が立っており、咲夜の姿を見付けると館の危機であったにも関わらず駆け付けるのが遅れてしまった事への謝罪をする。
・・・め、美鈴・・・・・
(攻撃も通用しない相手から何とか攻撃を受けないように避け続けるのが精一杯な中、もはや絶体絶命とも言える状況に追い詰められたその時、突然ダークレントの顔にいきなり吹き飛んできた扉が突き刺さるのを見て、驚きを隠せないでいる中、扉が飛んできた方向を見ると、美鈴が助けに来てくれたことにさらに驚く・・・・・)
・・・・・やられたんじゃないかと思って心配したわよ・・・・・
(レミリア達は零夜に拘束されているのはわかっているが、美鈴に関してはどうなったのかがわからなかった為、一安心する・・・・・)
美鈴
「あはは、ご心配させてしまってすみません。ちょっと不意を突かれてしまいましたが、もう大丈夫です。」
右手を自分の頭の後ろに回しながら不意を突かれて戦闘不能になっていたものの、今はもう大丈夫だと言うと、蠢くダークトレントへ向き直り、両手の拳を強く握り締め、足を開いて腰を落とし、構えを取る。
美鈴
「さあ……一気にお嬢様のところまで行きましょう……!!」
《ドゴオォォォォォォォォォォォォォォォッ》
美鈴は此方にも向けて無数の枝根を伸ばし来るダークトレントを見ると、構えを取った状態で正拳突きを放ち、空気を殴り付けて衝撃波を巻き起こし、迫り来るダークトレントの枝根を薙ぎ倒し、更にはそのままダークトレントが守る扉もろともバラバラに消し飛ばし、階段への道が見えるようになる。
だが、その階段の向こうには幾つもの妖精メイド達の骸と、妖精メイド達を倒したと思われる無数の甲冑達が待ち構えており、巨大な盾や剣を持って警戒している。
・・・・・酷い・・・・・メイド達まで・・・・・
(咲夜はあれだけの強敵であったダークトレントをあっという間に美鈴が倒したことに驚きつつも、今は一刻も早くレミリア達が囚われている場所へ向かわなければと思うと、階段の方へと向かう・・・・・
すると、階段の向こうにメイド達の骸があるのを見て、咲夜は精神的にショックを受ける・・・・・
今回の騒動は自分の弟が引き起こしたこと、咲夜は責任を感じていた・・・・・)
美鈴
「……大丈夫です。妖精メイド達は少し時間がかかってしまうかもしれませんがまた復活できます。」
ショックを受けている咲夜を見て、メイド達は妖精であるため"一回休み"の状態にはなってしまっているものの、その根底にある自然現象そのものが消えた訳ではないため、また生き返る事が出来ると伝えて少しでも支えようとする。
だが、レミリア達は妖精では無く、一度滅ぼされてしまえば二度とは蘇ることは出来ない……だからこそ、今は足を止めている暇は無い……
・・・・・そうね・・・・・急ぎましょう・・・・・
(妖精達はまた生き返るとしても、何の罪もないのに死の経験までさせてしまったことは本当に申し訳なく思っており、弟と、零夜と戦わなければいけないという試練を前にもう精神的にもやられ始めている・・・・・
どうしてこんなことになってしまったのだろうかと、後悔の念に押し潰されそうになる・・・・・)
美鈴
「雑魚は私に任せて下さい。」
【虹符「烈虹真拳」】
美鈴は一刻も早い救出と、精神的な負い目を感じている相手を前に進ませる事で少しでもその感情を紛らわそうと考え、全身に紅色のオーラを纏い、連続して拳を放ち、迫り来る甲冑の軍隊に向かって色とりどりの無数の光弾を放ち、館の屋上の階段への道を作る。
美鈴
「さあ、今のうちに先へ進んで下さい!!」
だが、打ち倒した甲冑の中には誰も入っておらず、砕かれた甲冑がみるみる再生しており、悠長に戦っていれば日の出になるまでの時間を稼がれてしまうだろう。
わかったわ・・・・・
ダッ・・・・・!
(この階段の向こう・・・・・この向こうに、零夜がいる・・・・・
主達を救うのを最優先としているが、同時に咲夜の心に芽生えるのは、仲が良かった弟に恨まれてしまうのも仕方ないということと、できればこんな形で再会はしたくなかったという感情・・・・・
ガッ・・・・・!
咲夜は、屋上に出る扉を勢い良く開けた・・・・・)
【紅魔館 屋上】
零夜
「……来たか……どうやら余興はこれまでのようだな……」
美鈴は咲夜が階段を駆け上がると、屋上に辿り着き、両手を後ろで組み、展開していたスクリーンを消して佇んでいた零夜がゆっくりと咲夜の方へ振り返り、余興はこれで終わりのようだと呟く。