幾つの夜を乗り越えたとしても凄惨な過去から逃れることは出来ない。
背後の闇は未来を進む者さえ呑み込もうと迫るもの……
これは紅魔の館に仕えるメイド……"十六夜咲夜"の物語
>>1 世界観と注意
>>2 異変キャラ
零夜
「…………………。」
レミリアの何故実の姉の命を狙うのかと言う問いに対して零夜は何も応えず、その代わりとばかりに零夜は自分の手元の空間を歪めてレミリアとフランの二人を拘束する銀の鎖を引き寄せ、それを思い切り引っ張り、二人を拘束する力を強める。
銀の鎖は吸血鬼である二人にとって、肌を焼き、肉を焼く凶器となり、純粋に力や動きを封じる他に、強い苦痛を与えるものとなっている……
【紅魔館 玄関ホール】
異界の猟犬
『ガアァァァァァァァァァッ!!!』
《グオッ》
レミリアが零夜に対して問いかける傍らで、咲夜の眼前に召喚された巨大な四つ首の魔犬がその巨大な腕を振り下ろして咲夜を瞬時に叩き潰そうとする。
レミリア「・・・っぐ・・・・・!?」
フランドール「・・・・・」
(レミリアは鎖によるじわじわと苦痛を与える攻撃方法によって表情を歪めるものの、フランドールは少し汗が出ては来るものの、ずっと零夜をにらみ続けながら威嚇を続ける・・・・・
威嚇ではどうにもならないというのはフランドール自身もわかってはいるが・・・・・)
咲夜「っ・・・・・!!!!!」
ヒュッ・・・・・!
(今まで少ししか動けなかったものの、このままじゃ確実にやられると思ったその時、腕をなんとか動かすことに成功し、ナイフを取り出して猟犬へと投げつける・・・・・)
異界の猟犬
『ゴアァァァァァッ!!!!』
咲夜が最初の一撃を避け、反撃として投げられたナイフが魔犬の振り下ろされた右前足に突き刺さるものの、その分厚い筋肉の鎧と、ホールの天井近くまであるその巨体にとっては致命傷にはならず、寧ろ怒りを滾らせる結果となり、激情のままに咲夜を見た魔犬は四つある頭の一つが口を大きく開けて吸息をすると、今度は口内から強烈な炎を吐き、ホールの一角もろとも咲夜を焼こうとする。
咲夜「なっ・・・・・!?」
ズッ・・・・・!
(止まった時の中でも動けるようになり始めてはいるものの、まだ完全というわけではなく、炎が咲夜の服と髪をかすめてホールの一角を焼く・・・・・)
咲夜「あっつつつつ!!!!!」
(咲夜は手で叩きながら何とか火を消す・・・・・幸い命に別状はなかったものの、魔犬との体格差や咲夜がようやく今になってやっと動け始めるようになったことから、形勢逆転はまだ見込めない・・・・・
しかし、咲夜もこのままやられるほどヤワじゃない・・・・・)
【紅魔館 屋上】
零夜
「ははははは!
見ろ、ナイフごときであの巨体を倒そうとしているぞ……?」
零夜は巨大な四つ首の魔犬相手に小さなナイフだけで対抗しようとしているのを見て、その咲夜に似て整った顔を少し悪意に歪め、楽しそうに両腕を広げながらスクリーンからレミリア達の方へと振り返る。
零夜
「アレは地獄に巣くい、地獄の炎を吸い、煮えたぎる溶岩を飲み、亡者は愚か獄卒すら喰らう猟犬だ。少し武術や戦闘の心得があるだけでは到底太刀打ちできないだろう。」
零夜は左手を下げ、右手を自分の顔の近くにまで近付けて人差し指を立てながら四つ首の魔犬は地獄の猟犬であり、この世に存在するモノでは到底太刀打ちできないと告げる……
零夜
「しっかりとその目に焼き付けておくといい。
自分の従者が猟犬に生きながらにして喰われてゆく様を……!」
右手の人差し指を立てたまま、復讐のあまり狂気に呑み込まれた零夜の双眼がレミリア、フラン、パチュリーを見据えており、パチュリーは何も解決策が思い浮かばない事に、苛立ちさえ抱いている。
零夜が背にしたスクリーンでは、咲夜に向かって魔犬がその巨大な右前足を振るい、咲夜を壁へ殴り飛ばそうとしている……
・・・・・あまいわね、咲夜はあんたがどんな化け物をよこしたとしても簡単にやられるようなメイドじゃないわよ・・・・・?
(零夜の話し方は、まるでこのまま簡単に猟犬が咲夜を葬り去ってくれると考えているようだが、咲夜にも零夜同様に時間停止能力がある・・・・・
零夜がこのことを知っていたとしてもそうでなくても、咲夜はこんな猟犬に負けるはずがないと信じている・・・・・)
くっ・・・・・!
スッ・・・・・
ほら!こっちよ化け物!!!!!
(零夜がスクリーンを見ていたその時、咲夜がいつの間にか・・・・・いや、確かにそこにいたはずなのに猟犬が右前足を振るった先には咲夜はいなく、床に巨大なクレーターができる・・・・・
体格差はあり過ぎるものの、能力の有利な点で言えばまだこちらの方が上だと思っている・・・・・)
零夜
「………なに……?」
零夜からはスクリーンの先が見えていないものの、レミリアの言葉を聞くと同時に、咲夜が零夜の時止めをしている間に身動きが取れなくなっていたのと同じように、咲夜が時を止めた瞬間、一時的にとは言え、零夜も体が動かせなくなり、再び体を動かせるようになると背後のスクリーンへと直ぐ様視線を戻す。
異界の猟犬
『ゴルルル!!ゴルルルルアアアッ!!!』
時止めを感知できない魔犬は目の前から突然咲夜の姿が消えたことに驚き、咲夜の声が聞こえた方向へ振り向いたび大きく息を吸い込み、再び口内から強烈な炎を吐いて咲夜を焼こうとする。
カチッ・・・・・
パッ・・・・・
ほらほらどうしたの!?こっちよこっち!!!!!
(咲夜は攻撃するよりもまずは魔犬の猛攻を回避しながら策を練った方がいいだろうと考えて再び時を止めて魔犬の炎を避ける・・・・・
しかし、策を練るにしても、これほどの巨体を何とかできるような武器がどこにもないのもまた事実・・・・・)
レミリア「・・・っ・・・言ったでしょう・・・・・?簡単にやられるようなメイドじゃないって・・・・・」
(零夜の反応を見れば、レミリアは純銀によってダメージを受けながら表情を苦痛に歪めながらも、得意気な感じで話す・・・・・
戦闘力は魔犬の方が上だが、時止めという能力は正しく強大な敵の攻撃を回避する際に力を発揮する能力と言っても過言はないのかもしれない・・・・・)
零夜
「………だが、どうせ直ぐに潰れる。
アイツにはあの獣を打ち倒せるような術は無い筈だ……!
体力が尽きた時が終わりの時だ。」
度々体の動きが止まる事があるのだが、力と動きを封じられているレミリアとフラン、魔力が枯渇しているだろうパチュリーが何らかの拘束魔法や能力を使えるとは思えない……
微かな違和感を感じつつも、スクリーンの向こうで対抗策を考えながら魔犬の猛攻を避け続けている咲夜を見て歯痒そうに睨み、咲夜の体力が尽きた時が最期だと口にする。
体力が尽きる以前に、あの化け物に咲夜は倒せないわよ・・・・・?アンタと同じく凶暴性を露にするだけのお馬鹿さんのようだしね・・・・・
(レミリアはこの拘束されている状態で、零夜を挑発するような言葉を放つ・・・・・
レミリアからすれば、スクリーンに映し出されている巨体の化け物も、今ここにいる零夜も、そう大差のない同じ愚か者であるということなのだろう・・・・・)
零夜
「……へえ?随分とアイツを過大評価しているじゃないか。
だが、ナイフごときではあの巨体には通じない、ホールから出るための扉は全て時を止めている間に施錠術式を仕掛けておいたから逃走も撤退も不可能……これは最早チェックメイトと言っても過言ではないだろう。」
零夜は激高しながらも、感情のコントロール能力が上手いのか、現状の状況を冷静に分析し、レミリアの挑発に対しても感情的にはならず、分析した状況を元に勝ち目は無いと断言してみせる……
そんな中、魔犬は咲夜に向けて二つの頭から同時に炎を吐き、時を止めても炎の熱はそのままである事を活かして左右から挟み込むようにして逃げ場を奪いながら彼女を焼き尽くそうとする。
カチッ・・・・・
《お嬢様達がどこに拘束されているかもわからない・・・・・もしかしたら紅魔館の外かもしれないし、館内のこの近くかもしれない・・・・・どうすれば・・・・・》
(まずはこの魔犬を倒さなければどうにもこうにもこの事態は先には進まない・・・・・
だが、主達がどこに隔離されているかもわからない現状、下手に動けば巻き込んでしまう可能性だってある・・・・・
攻撃を回避して主達を巻き込んでしまう可能性だってある以上、咲夜はどうすればいいのかわからないまま追い込まれてゆく・・・・・
再び、魔犬の背後に回れば時が動き出した・・・・・)
異界の猟犬
『グルルル………』
眼前から突如として姿が消えた咲夜の姿を探すべく、炎を吐くのをやめて四つある頭の全てを使って周囲を見渡し始める。
だが、体の構造上、真後ろにいる咲夜の姿を見つけ出すには少し時間がかかるようで反撃するための隙が生じる。
《反撃するなら・・・・・今っ・・・・・》
カチッ・・・・・
体格差では有利に立てても、その体格差が仇になったみたいね・・・・・
ヒュッ・・・・・!
(咲夜は時を止めて魔犬の目へめがけてナイフを投げる・・・・・
体格差という相手の長所が短所になったこの瞬間こそ反撃のチャンスである為、僅かな希望に賭けるしかないものの、正直この攻撃でどれほどのダメージを与えられるかはわからない、そもそも相手は得体の知れない異形、すぐに傷が再生する可能性だってある・・・・・)
異界の猟犬
『……!!?グギャオォォォォォォッ!!!』
後ろへ振り返ったところに、咲夜の投げたナイフが四つある首の内の一つの右目に突き刺さると、目を突き刺された頭が館中の窓が破裂するような強烈な咆哮をあげ、四つの頭が同時に口内に魔炎を集束させ始める。
窓が割れてはいるものの、その窓にも全て正面扉と同じように障壁魔法が展開されているため、即座に逃げ出すことは厳しく、かと言ってこのまま立ち止まっていても、魔犬が吐くであろう炎はこの玄関ホール内を埋め尽くすほどのものになってしまうだろう……
《ヤバイっ・・・・・!》
カチッ・・・・・!
時間停止能力を持っていなかったらと思うとゾッとするわ・・・・・
(咲夜は魔犬が口から炎を一斉に吐き出そうとしていることに気づくと、再び時を止める・・・・・
流石に魔犬の攻撃を完全に止めて魔犬を完全に消滅させることは咲夜単独では不可能、咲夜は時を止めて玄関ホールから館内の他の場所へ移動すると、再び時止めを解除し、レミリア達を探し始める・・・・・)
【静止した時の中】
咲夜がホールから逃れようと扉に手をかけるものの、出入り口の扉はおろか、全ての扉に魔術施錠が施されている。
パチュリーやアリスレベルの種族"魔法使い"であれば片手間に解除できる程度の代物ではあるものの、ある程度は魔術を使えるとはいえ、魔術に特化した訳ではない咲夜一人だけでは解除する事に相応の時間が必要になってしまうだろう……
かと言って時を再び動かしてしまえばホールを埋め尽くす業火によって骨すら残らず焼き尽くされてしまうだろう。
なんでっ・・・・・!なんで開かないのよっ・・・・・!?
(咲夜は扉がびくともしないことに焦りを見せ始める・・・・・
このままじゃ化け物に殺されるが、自分の力では時を止めて攻撃するのがやっとであり、倒すには至らないのは自分が一番わかっている・・・・・
が、咲夜は一か八か、火事場の馬鹿力ならぬ、火事場の閃き力とも言えるような、後には引けないこの状況を打破できるかもしれない解決策を思いつき、成功することを祈り時を動かす・・・・・)
カチッ・・・・・
化け物ー!こっちよこっちー!そんなウスノロな動きで私を倒せるとでも思ってるのー!?炎で焼き尽くして骨まで焼くぐらいにしないと私が怖いのかしらー!?図体はでかいクセして度胸は小さい小物なのねー!悔しかったら物理攻撃で仕掛けてきなさいよぉー!
(咲夜は時を始動させると、魔犬へ向かって完全に焼き尽くさないといけないほどに自分が怖いのかと、悔しさを感じるなら物理攻撃で仕掛けてくるがいいと挑発をする・・・・・
咲夜の表情はさっきとは打って変わって、魔犬なんぞ怖くはないとでも言いたげな、魔犬からすれば屈辱的な表情で)
異界の猟犬
『ゴアァァァァァァァァッ!!!』
魔犬は唸り声や雄叫びをあげる程度で、人言を理解できないのか、言葉を話す素振りすら無く、咲夜の挑発もまるで受けること無く口内からホール全体を炎の海に変える業火を吐き、急速に広まって行く……
咲夜の能力は時間の停止だけには留まらない。
その事を踏まえると、現状においてもっとも有利になりうる力は……!
【他にどんなのありましたっけ・・・・・こういう状況において有利になりそうな咲夜さんの力・・・・・】
57:惨劇の幕開け◆gI:2021/01/04(月) 10:41 カチッ・・・・・
(咲夜は時間操作を行い、時間を巻き戻して魔犬が炎を吐く前まで戻して停止させる・・・・・)
さて、これほどの巨体を倒せるかどうかはわからないけれど、とりあえずこの状況において動かしづらい場所を狙おうかしらね・・・・・
ゴガッ・・・・・!
ズッ・・・・・
(咲夜は魔犬の左前足に蹴りを入れると、そのままナイフを投げる・・・・・
そして、魔犬の動きをある程度鈍らせる為に再び目の方にナイフを3本ほど投付ける・・・・・
仕上げに魔犬の背後に周り魔犬の視界から消えることで時を動かし始めても不意打ちがしやすいようにする・・・・・)
カチッ・・・・・
(時間操作に体術にナイフ投げ、これほどの攻撃を仕掛けたのだからさっきよりかは効いていてくれともはや神頼みとも言えるように願いながら時を動かす・・・・・)
零夜
「………やはり……この違和感は……まさかとは思うが同じ時間を使っているとでも言うのか……?忌まわしい……!何処までもこの俺を馬鹿にするつもりか……!!」
咲夜が時を遡らせ、魔犬のブレスを抑え込み、前肢を蹴って体勢を崩したところへ魔犬の顔にナイフが突き刺さり、その内の一つが魔法
犬の目を更にまた一つ潰す中、一度ならずも何度も感じられた違和感の正体について零夜は気付き始めているようで、スクリーンに映る咲夜を見ながらゆっくりと右手を翳す。
零夜
「ジワジワといたぶるつもりだったが、予定変更だ。時間と空間の支配権はこの俺一人の手中にあればそれでいい……!!」
【局所爆裂魔法「エクスプロード」】
《パチンッ》
零夜は咲夜の始末を決定付けると、指を鳴らす……すると、異界の猟犬の身体中に無数の魔法陣が浮かび上がり、異界の猟犬が持つ全魔力と生命力を爆発エネルギーへと返還して閉鎖された玄関ホール全体に及ぶ強力な大爆発を巻き起こそうとする。
召喚する前からこの自爆魔法は仕込んであった。爆発の発動は此方の手にあり、推測通りに同じ時を操れるのだとして、時を遡らせられたとしても再度爆発させる事が出来る。時を操らなければ当然そのまま爆発に巻き込まれて死亡する事になる。
事前に"エニグマ"の連中から聞いていた情報では強力な魔法障壁の使用は出来なかった筈だ。時間を操作すると言う莫大な力の消費を強いられる姉(咲夜)と異なり、此方は爆発魔法を発動させる……それだけで良いことから、巻き戻しと爆発のタイミング争いとなっても此方の優位性は揺るがない……そう零夜は考えている。
《・・・っ・・・・・!やばいっ・・・・・!》
カチッ・・・・・
(咲夜は時間を魔法陣が浮かぶ前まで遡らせ、停止する・・・・・
咲夜も弟が自分へ対して今現在実の姉という感情ではなく、復讐の標的という憎悪を抱いていることはこの魔犬をよこした時点で把握した、だからこそ今の魔法陣も恐らくは魔犬の技ではなく弟が発動したものだろうと推測する・・・・・
つまり、こうもタイミングよく魔法陣を発動できるということはどこかからこの戦いの様子を見ている、ということ・・・・・
しかも相手も自分と同じ能力を有しているとなれば、魔犬を倒す以前の問題なのは確かだ・・・・・
咲夜は知恵を振り絞ろうとするが、停止する時間が名がければ長いほど、零夜に自分も同じ能力があることがバレる・・・・・
咲夜は、時間とも戦っていた・・・・・)
零夜
「……つッ……!やはり……か……ッ!!」
まさに今、爆発によってホールそのものを消し飛ばそうとした瞬間、再び身体中の動きが止まり、強い違和感を感じ、このタイミングからして、姉が能力を発動させた事は明白だ。
……だが、何度も時間操作をしている中で自身も止まった時の中で意思を保つだけでなく、動くことが可能になっており、ゆっくりと右手をスクリーンに向けて翳すと、零夜は自身の時間操作によって停止した時間を再開させようと時間干渉を行い始める。
・・・・・何・・・・・?
(咲夜は、今までに感じたことのない違和感を本能的に感じる・・・・・
本来、止まった時の中で動けるのは時を止めた本人のみのはずなのだが、今感じた違和感は、簡単に言うならば、止まった時の中を扉を閉め切った部屋と例えるなら、その閉め切った扉を無理やりこじ開けられるような、そんな感覚だった・・・・・)
《時間操作 強制解除》
《カチッ》
《ゴオォォォォォォォォォォォォォォッ》
咲夜もまた、零夜による時間干渉による違和感を感じ取った次の瞬間、咲夜による時間停止が強制的に解除され、それに合わせたように異界の猟犬に仕込んだ自爆魔法を発動させ、ホールごと咲夜を消し飛ばそうするが……
《対爆発&対物理防御球壁》
パチュリーが失われつつある魔力を振り絞って展開した球状の防御壁が咲夜を爆発から守る。……が、殆ど無い魔力を使ってようやく展開したものであったためか、一度爆発を防ぐとそのまま無数の亀裂が生じて崩壊してしまう……
・・・っ・・・・・!?これはっ・・・・・!?
(突如として展開された球状防御璧によって守られたことに驚く・・・・・
恐らく今のはどこかに囚われているパチュリーの魔法によるものであろうということは察することが出来るが、パチュリーほどの魔法使いが展開する防御璧にしては、簡単に崩壊していることがわかる・・・・・
もしかして今もどこかに囚われているレミリア、フランドール、パチュリーは言葉にし難いほどの拷問を受けているのではないかという恐ろしい想像が脳裏を過ぎる・・・・・
が、同時に思ったのは・・・・・)
・・・・・美鈴・・・・・
(一気に三人を捕らえて今もどこかで拘束するほどの相手が、館の修復作業という目に付きやすいことをしていたはずの美鈴を見逃すはずがない・・・・・
が、零夜は美鈴については述べずにいきなり三人を拘束した・・・・・
美鈴はどうなってしまったのだろうかと、不安が咲夜の心に募ってゆく・・・・・)
【紅魔館 屋上】
零夜
「……ッ!?邪魔を……するなッ!!」
《ドスッ》
パチュリー
「………ぐ……ぅ……!」
今の爆発はおそらく相手にとっての最大にして唯一の回避&防御手段である時間の停止を無理矢理解除して喰らわせたものであったため、確実に咲夜を仕留められたと考えていた矢先、咲夜を守るようにして
咲夜自身があの爆発を防げるほどの防御壁を展開できると言うような情報は無く、別の者によるものだとわかり、それを出来るのは強い魔力を持ったパチュリーだけであり、激昂しながら今度はパチュリーの腹部へ封魔の力が込められたナイフを突き刺す……
玄関ホールの正面入口の扉は特に強固な封鎖魔法がかけられているためか、破壊出来ていないものの、ホールの随所にある扉とそこにかけられていた障壁が丸ごと先程の魔犬による自爆魔法によって破壊され、通行可能になっている。
レミリア「・・・っ!!!!!貴様ぁぁああああっ!!!!!」
(レミリアは親友が腹部へナイフを突き刺されるのを目の当たりにした途端、普段からは考えられないほどに言葉遣いに変化が現れる・・・・・)
咲夜「っ・・・・・!」
ダッ・・・・・!
(咲夜は通行可能になっていることに気づけば、咲夜は急いでホールから出て館のあちこちを探し始める・・・・・
この広い紅魔館の中から探し当てるのもかなり難しいが、零夜は待ってはくれない・・・・・)
【紅魔館 屋上】
零夜
「俺が憎いだろ?消してやりたいだろう?
それでいい……それでこそ俺の復讐は叶う……」
目の前で親友のパチュリーを傷付けられた事で激怒するレミリアを見て、零夜は自分の復讐を成すためにはレミリア達の怒りや憎しみも必要であるのだと語る……
【紅魔館 一階/長通路】
《ヴォンッ》
レミリア達を探すべく、館内を奔走している咲夜の前に開けた長い通路が見え、基本的な構造は零夜による空間操作の影響をあまり受けていないようにも見える……だが、その通路へ足を踏み入れた瞬間、通路の天井や床、壁と至るところに無数の青白い小型の魔法陣が展開され、そこから無数の青い光弾が弾幕となって咲夜に向かって襲い掛かる。
だが、紅霧異変の時に戦った霊夢の放つ弾幕に比べると速度も密度も、殺意を優先するあまりかえって薄れており、今の咲夜であれば見切る事が可能なレベルになっている。
ダダダダダッ・・・・・!
スッ・・・・・!スッ・・・・・!
遅いわね・・・・・殺意に囚われていない人間の方が、まだ早かった・・・・・
(咲夜は零夜の殺意に満ちた猛攻を、いとも簡単に、時を止めることすらなく避けていく・・・・・
霊夢が放っていた弾幕を思い出しながら、殺意に囚われていない人間の方が攻撃はちゃんとしていることがわかる・・・・・)
《「高等魔光魔法 レイン」》
《ギュオォォォォォォォォォォォッ》
迫り来る凶弾嵐の中でも霊夢達との戦いを経験した咲夜の前では
通路の奥にある扉に扉を覆うようにして浮かび上がった巨大な魔法陣が現れ、広い通路の半分を埋めるような規模の巨大な破壊光線が放たれる……
この光線に当たればまず間違いなく即死は免れないだろう。
だが、この光線も弾幕のルールにのっとりながらも、改良を重ねた魔理沙のマスタースパークに比べると威力だけに特化し過ぎたあまり、その速度は魔理沙の放つものよりも少し遅くなっている。
《やっぱりね・・・・・あの巫女や魔女の攻撃と比べると、威力に特化しているだけでスピードはさほど脅威じゃない・・・・・》
ダダダダッ・・・・・!
(零夜の更なる猛攻も、霊夢や魔理沙との一戦の中で経験したものと比べれば、やはり遅く感じる・・・・・
本来ならばスピードもかなりの脅威であるのはまず間違いないことではあるのだが、霊夢達の攻撃スピードを経験した今の咲夜からすれば、零夜の攻撃を避けられるほどに体が慣れ始めている・・・・・)
零夜
「(なんだ……なんなんだ……これは……!?
何故光弾や光線をこれだけ簡単に避けられるとは……
予想以上の力だ……)」
無数に飛び交う光弾や、それらを避けた先も考慮して仕込んでおいた光線さえも避ける咲夜を見て、事前に得ていた情報よりも更に強くなっている事に驚き、スクリーンを見上げながら硬直する。
光弾の嵐でさえ五体満足で通り抜けられるとは思わず、あくまでも保険としてあったためか、光線は一度発射し負えるとその込められていた魔力が尽き、咲夜の前には観音開きの扉がある。
だが、その扉の向こうからは荒々しく邪悪な魔力が感じられる。
《この言葉にし難いおぞましい力・・・・・この先に・・・・・》
(零夜がスクリーンを見ながら唖然としている中、猛攻を簡単に全て掻い潜り、咲夜は扉を見つける・・・・・
とてつもなくおぞましい力が感じられるが、今の咲夜は主達を救うことのみを考えているからか、何の迷いもなく扉へと向かい、勢いよく扉を開ける・・・・・)
【紅魔館 広間】
《オォォォォォォォォ……》
扉を開けたその先に待ち受けていたのは広間を埋め尽くさんばかりに枝根を広げ、悪意に満ちた醜悪な笑みを浮かべた不気味な紫色の巨大な樹木……
"ダークトレント"と呼ばれる魔物であり、先程の異界の猟犬よりも更にぶ厚く強固な体を持ち、メイン武器であるナイフが通用せず、体術さえ通用しづらい圧倒的な巨体の化物であり、咲夜の姿を見つけた瞬間、その巨大な枝を振るい、弾き飛ばそうとする。
カチッ・・・・・
まさかさっきの犬っコロよりもやばい奴が待ち受けているとはね・・・・・
(咲夜は時を止めてダークトレントの背後へ周り、策を考え始める・・・・・
しかし、ナイフも通用しないほど強固な体、そして圧倒的な巨体・・・・・
ナイフも通用しないとなれば体術も通用しないのは明白・・・・・)
ダークトレント
『ゲラゲラゲラゲラゲラ!!!』
ダークトレントの背後に回り込んだ咲夜であったものの、ダークトレントの背中から巨大な頭が現れ、更に背面の壁に張り巡らされ、この奥の扉を守る枝根からも無数の顔が現れ、悪意に満ちた笑い声をあげ、無数の枝根を伸ばして咲夜の体を貫こうとする。
カチッ・・・・・
こういう時こそ冷静に・・・・・慌てちゃダメ、冷静に・・・・・
(再び時を止めて、枝根による攻撃を回避し、更には無数にある顔の一つに、ナイフを投げつける・・・・・
もしかしたら、万が一に顔になら攻撃として効くかもしれない可能性もゼロではない為、試してみるしかない・・・・・というか、できる限りの攻撃を試さないと倒せないほどの敵と戦っているという証拠でもある・・・・・)
零夜
「あの魔樹は先程の魔犬よりも更に硬い体を持ち、痛覚すら持たない。ナイフや体術だけではどうにもならないだろう。……今度は自爆には使わない、多少時間がかかろうと今度は確実に潰す……!!」
咲夜の様子を見ていた零夜はナイフや体術では物理的にダークトレントを倒すことが不可能である上に、得意の時間操作もある程度此方から解除する事が出来ると言うことは先程もわかった……ナイフと体術、時間操作しか戦闘に使えないのであれば此方の勝利が揺らぐことはない。
ダークトレントの無数にある顔の一つに咲夜が放ったナイフが突き刺さるものの、痛覚を持たぬダークトレントは異界の猟犬と異なり、痛みやダメージで激怒したり、怯む事はなく、ただただ不気味な笑みを浮かべながら無数の枝根を執拗に伸ばして咲夜を捕らえようとする。
とんでもなく厄介な奴ね・・・・・!!!!
ダッ・・・・・!
(咲夜は段々とダークレントの動きを見切れるようになってきたのか、スピードも追いついてゆく・・・・・
倒すには至らない以上、本当に攻撃が避けられそうにない時と策が浮かんだ時に時間停止能力を使った方がいいと判断したのか、咲夜はダークレントの攻撃を避ければ、頭をフル回転させ始める・・・・・)
零夜
「必死になって足掻いているようだが、それも時間の問題だ。
お前も己の無力を知り、失うことへの絶望と恐怖に苛まれたまま逝けばいい……」
レミリアとフランの二人に背を向け、スクリーンに映るダークトレントの猛攻を避けている咲夜を見て、怨念とも憎悪とも悲しみとも取れない声で、姉も自分と同じ絶望と恐怖に苛まれればいいと呟く。
最早自分には復讐しか残っていない。
姉が新しい家族を得て幸せに暮らしている中、自分は外の世界で血と腐臭に満ちた闇の世界で暗殺と虐殺を繰り返して来た。自分達を見捨てて逃げた姉に復讐する。それだけを心の支えとしてきた零夜の狂気が言葉となって現れ始める。
事情は知らないけれど、哀れね・・・・・復讐心しか残っていない上に、実の姉の命を狙うなんて・・・・・
(どんな事情があれ、復讐心しか残っていなく、実の姉という親族の命を狙うという愚行は、レミリアからすればあまりにも哀れなことに思える・・・・・
事情をしらないレミリアは、咲夜側に何か問題があったのだろうかと思っても普段一番接しているからか、とても咲夜が実の弟をここまでにするようなことをしたとは思えない・・・・・)
零夜
「……そう言えば、お前達も父が暴君であったのだろう?
なら……わかるだろ?見捨てられ、命を脅かされ、苦痛と恐怖の中を生きる絶望を……!そしてそれを引き起こした者達への復讐と憎悪が!!」
少し首を傾けて目線だけをレミリアに移動させると、自分と同じように支配され、絶望と恐怖の中を生きることや、それを強いる者への憎悪と復讐を理解できる筈だと投げ掛ける。
っ・・・・・!アンタ・・・・・どこでそれを知ったの・・・・・?お父様・・・・・いや、あの男はとっくの昔に地獄に落ちたはず・・・・・
(接した限りでは、咲夜に対する復讐心しか持ち合わせていないように思っていたからか、いきなりヴァルターについての話題が零夜の口から出たことに驚きを隠せない・・・・・
零夜がヴァルターのことを知っている何者かと繋がりがある、ということなのだろうか・・・・・)
零夜
「ほう、この情報は正しかったようだな……
誰が教えたのかについて知る必要は無いだろう?
何せ……今日を持ってお前達も、アイツも……全員まとめて死に絶えるのだからな?」
零夜は咲夜との時間の相互干渉や、パチュリーの補助等、度重なるイレギュラーの中で懐疑的になっていたものの、レミリアの反応からしてこの情報は正しかったのだと判断すると、零夜は銀の懐中時計をスーツの内ポケットから取り出し、現在の時間帯を見せる。
零夜が開いた懐中時計は午後三時を指している。
それが示しているのは……日の出まで残り三時間しか無いと言うこと……
これはつまり、あと三時間経ってもレミリアとフランの二人が救出されなかった場合、二人とも日光に照らされて消滅してしまうことを意味している……
本当に卑怯ね、アンタ・・・・・どんな人生を送ってきたかは知らないけれど、どうせ一方的な逆恨みなんでしょ・・・・・?言うことやること全部がただの逆恨みの小物・・・・・
(零夜のあまりの冷酷さに、レミリアは零夜の今までの人生を知らないが故も含めて零夜が一番傷つくような一言を放つ・・・・・
新しい家族と居場所を見つけた咲夜とは対照的に、文字通り生き地獄を経験して今まで生きてきた零夜の過酷な人生を知らないこと、咲夜が零夜がここまでなるほどのようなことをする人物ではないということを信じているため容赦なく言える・・・・・)
零夜
「なんとでも言え、これが俺達人間の強さなのだからな。」
(二人に見せていた懐中時計を閉じ、再びスーツの中に戻しながら、この狡猾さや卑劣さこそが人間の強さであり、人外の存在に対抗する方法なのだと応える……零夜にとって人間は悪意の強い者だけが勝ち残れる、他者を平気で蹴落とせる者こそが幸せに近付ける……そんな歪んだ価値観の下の発言だ)
零夜
「逆恨み?ふん、そうか……ならお前がお前の父に抱いていた感情も逆恨みだと言えるな?」
(零夜はレミリアの言葉を聞くと冷笑し、自分達を見捨てて一人幸せを掴んだ咲夜と、ヴァルターを同じく自分達に災いと苦痛をもたらした張本人であると言う考えの下で同一視し、姉を恨んでいる自分と父を恨んでいたレミリアとフランの二人に対して「逆恨み」と言う言葉をそのまま返す……
咲夜は刻一刻と根を張り広間を埋め尽くさんとばかりに広がる人面樹によるあらゆる方向からの刺突攻撃や薙ぎ払い攻撃を向けられ続けている。
零夜としても、このまま後は放っておくだけで咲夜は体力が尽きて攻撃が避けられなくなれば死亡し、三時間後には日光によってレミリアとフランも消滅する。出血によって意志が既に失われつつあるパチュリーもこのまま手当てをしなければそうは長く生きられない……まさに絶体絶命の状況に追い込まれてしまっている)
っ・・・・・!そ、それはっ・・・・・
(恨む側が零夜と自分達姉妹であるなら、同じ立ち位置にいるのは咲夜とヴァルター・・・・・
だが咲夜はヴァルターとは違う、ヴァルターのように誰がを故意に殺めたり、悲しませたりはしない・・・・・
だが、レミリアは上手く返答することも出来ずに、黙り込んでしまう・・・・・)
零夜
「……口でならば何とでも言える。
俺もお前達とヴァルターの関係についてそこまで詳しくは知らない。
だが……俺にとってアイツはお前達にとってのヴァルターに等しい、許すことの出来ない悪……この身を擲ってでも滅ぼしたい存在だと知れ。」
零夜は視線をレミリア達から咲夜とダークトレントが戦うスクリーンへ戻し、自分にとってはレミリア達にとってのヴァルターに等しい敵なのだと断言する……
スクリーンの中では、徐々にその体積を増して咲夜の逃げ場を奪っていくダークトレントの姿と、それでも必死に回避を続ける咲夜の姿が移っている。
・・・・・咲夜がアンタに何をしたって言うのよ・・・・・咲夜が実の弟にここまで恨まれるようなことをする人間じゃないっていうのは、主人の私が一番知っているのよ・・・・・?
(レミリアは咲夜が実の弟にここまでされるほど恨まれるようなことをする人間ではないことを弟の零夜よりもよく知っている・・・・・
だからこそ、より一層零夜の気持ちが理解出来ない・・・・・)
零夜
「……いいだろう、言ったところで何が変わるわけでも無い。冥土への土産として話そう。」
どの道、残り三時間で全員塵となって消える運命にある。
ならばそれまでに少しの雑談をする程度の事、何ら障害にはならないだろう。
零夜
「俺とアイツはのどかな街の中で生まれ育ち、貧しいながらも優しい両親の下で充実した毎日を暮らしていた……その頃の俺もこんなささやかだが平和な毎日が続くと信じていたんだ……だが……この幸せは長くは続かなかった。」
零夜
「覆面の集団によって俺達の家が襲われ、父さんと母さんが殺され……
俺自身も殺されかけた……アイツは……俺達が襲われている時、俺達を見捨てて一人で家から逃げた……姉さんは小さい頃から時間を操る事が出来ていたから助けようと思えば何時だって俺達を助けられた筈なんだ……なのに……アイツは俺達を見捨てて……逃げた。」
零夜はここまで話終えると、自分のスーツとシャツの胸元を開ける。
すると、無駄無く鍛えぬかれたその体には無数の傷跡が付けられており、特に鳩尾の辺りには一際大きい刺し傷の跡がくっきりと残っている……
体に付けられた無数の傷は様々な拷問や、能力が開花して人拐い達から逃れた先で生き延びるためにもがいた証であり、鳩尾の傷跡は家族を襲撃された時に付けられたものだ。
零夜
「辛うじて生かされた俺は人拐いに捕えられ、地獄としか言い様の無い世界を生きて来た……自分で命を絶とうとした事など十や二十じゃない。だが……俺はアイツへの憎しみだけを糧に生き延びて来た……」
・・・・・咲夜は、助けを呼ぼうとしたんじゃないの・・・・・?いくら時を止められるからって、子供が家族全員襲われた際に出来ることなんでたかが知れている・・・・・
(いくら時を止める能力を子供の頃から持っていたとしても、子供ならパニックになるのは当たり前・・・・・
咲夜は家族を置いて逃げようとしたのではなく、他の大人の助けを呼ぼうとしたのではないかと指摘をする・・・・・
この言葉が零夜に響くとは思えないが・・・・・)
零夜
「……それが真実であったとしてももう遅い。
ここまで来た、来てしまった以上、俺はもう止まることは出来ない。
復讐の成功か……死か……そのどちらかの二つ以外に俺に道は無い。」
零夜はレミリアの言葉を聞くと、零夜自身もその考えがあったからなのか、少しの沈黙の後、先程までとは打って変わって冷静な口調でそう応える……
例え咲夜が助けを求めるために出たのだとしても、復讐のために此処までしてしまった以上後戻りなど出来ない。咲夜を仕留めて復讐を成すか……それとも敗れ去り消えるか……その二つしか自分にはもう道など存在しないのだと応える。
皮肉な事に、自分にとって大切な、肝心な場所では時間の操作が及ばない……最も変えたい場所、戻りたい場所には遡ることが出来ない……それが後天的に能力に目覚めた零夜の最大にして取り返しの付かない欠点……
復讐だけが自分の生き甲斐であり、これまでの自分を支えてきた……
それを否定すると言うことはこれまでの自分の全てを否定するようなもの。例え自分の考えや行いが過ちであったとしても、自分自身の手では終わらせられない。
終わりを迎えることが出来るとすればそれは咲夜によってこの命が絶えられたその時だけなのかもしれない……
・・・・・家族を失ったことでどんどん歪みに歪んで、挙句の果てには唯一血の繋がりがある姉を消して目標を達成しようだなんで、本当に哀れね・・・・・お互い生きている今の内に、話ぐらいしたらどう・・・・・?
(少しでも零夜の殺意と復讐心のレールをを咲夜との和解へと切り替えようとし始める・・・・・
ここまで歪んでしまった感情を元に戻すことは難しいが、少しでも咲夜に対する今の殺意が和らいで、和解する気持ちへと変わればとダメ元で言ってみる・・・・・)
【紅魔館 階段前】
ダークトレント
『ゲヒャヒャヒャヒャ!!!』
レミリアが零夜に対する説得を進めている中、咲夜と交戦していたダークトレントは遂に広間の五分の四以上をその巨大な根を張り巡らせる事で覆っており、着実に咲夜の逃げ場を奪っていた……そして、移動可能なスペースの大半を奪ったダークトレントはほぼ全方向から同時に黒い根を伸ばし、咲夜の体を貫こうとした次の瞬間。
《ドゴオォォォォォォォォォォォォォォォッ》
美鈴
「遅れてしまいすみません!!」
辺り一帯に鳴り響く程の凄まじい爆音と共に、封鎖魔法によって脱出不可能となっていた広間の扉が勢いよく吹き飛び、ダークトレントの無数にある顔の一つに深々と突き刺さる……そして吹き飛ばされた扉の先には両手に赤い鱗が生えた美鈴が立っており、咲夜の姿を見付けると館の危機であったにも関わらず駆け付けるのが遅れてしまった事への謝罪をする。
・・・め、美鈴・・・・・
(攻撃も通用しない相手から何とか攻撃を受けないように避け続けるのが精一杯な中、もはや絶体絶命とも言える状況に追い詰められたその時、突然ダークレントの顔にいきなり吹き飛んできた扉が突き刺さるのを見て、驚きを隠せないでいる中、扉が飛んできた方向を見ると、美鈴が助けに来てくれたことにさらに驚く・・・・・)
・・・・・やられたんじゃないかと思って心配したわよ・・・・・
(レミリア達は零夜に拘束されているのはわかっているが、美鈴に関してはどうなったのかがわからなかった為、一安心する・・・・・)
美鈴
「あはは、ご心配させてしまってすみません。ちょっと不意を突かれてしまいましたが、もう大丈夫です。」
右手を自分の頭の後ろに回しながら不意を突かれて戦闘不能になっていたものの、今はもう大丈夫だと言うと、蠢くダークトレントへ向き直り、両手の拳を強く握り締め、足を開いて腰を落とし、構えを取る。
美鈴
「さあ……一気にお嬢様のところまで行きましょう……!!」
《ドゴオォォォォォォォォォォォォォォォッ》
美鈴は此方にも向けて無数の枝根を伸ばし来るダークトレントを見ると、構えを取った状態で正拳突きを放ち、空気を殴り付けて衝撃波を巻き起こし、迫り来るダークトレントの枝根を薙ぎ倒し、更にはそのままダークトレントが守る扉もろともバラバラに消し飛ばし、階段への道が見えるようになる。
だが、その階段の向こうには幾つもの妖精メイド達の骸と、妖精メイド達を倒したと思われる無数の甲冑達が待ち構えており、巨大な盾や剣を持って警戒している。
・・・・・酷い・・・・・メイド達まで・・・・・
(咲夜はあれだけの強敵であったダークトレントをあっという間に美鈴が倒したことに驚きつつも、今は一刻も早くレミリア達が囚われている場所へ向かわなければと思うと、階段の方へと向かう・・・・・
すると、階段の向こうにメイド達の骸があるのを見て、咲夜は精神的にショックを受ける・・・・・
今回の騒動は自分の弟が引き起こしたこと、咲夜は責任を感じていた・・・・・)
美鈴
「……大丈夫です。妖精メイド達は少し時間がかかってしまうかもしれませんがまた復活できます。」
ショックを受けている咲夜を見て、メイド達は妖精であるため"一回休み"の状態にはなってしまっているものの、その根底にある自然現象そのものが消えた訳ではないため、また生き返る事が出来ると伝えて少しでも支えようとする。
だが、レミリア達は妖精では無く、一度滅ぼされてしまえば二度とは蘇ることは出来ない……だからこそ、今は足を止めている暇は無い……
・・・・・そうね・・・・・急ぎましょう・・・・・
(妖精達はまた生き返るとしても、何の罪もないのに死の経験までさせてしまったことは本当に申し訳なく思っており、弟と、零夜と戦わなければいけないという試練を前にもう精神的にもやられ始めている・・・・・
どうしてこんなことになってしまったのだろうかと、後悔の念に押し潰されそうになる・・・・・)
美鈴
「雑魚は私に任せて下さい。」
【虹符「烈虹真拳」】
美鈴は一刻も早い救出と、精神的な負い目を感じている相手を前に進ませる事で少しでもその感情を紛らわそうと考え、全身に紅色のオーラを纏い、連続して拳を放ち、迫り来る甲冑の軍隊に向かって色とりどりの無数の光弾を放ち、館の屋上の階段への道を作る。
美鈴
「さあ、今のうちに先へ進んで下さい!!」
だが、打ち倒した甲冑の中には誰も入っておらず、砕かれた甲冑がみるみる再生しており、悠長に戦っていれば日の出になるまでの時間を稼がれてしまうだろう。
わかったわ・・・・・
ダッ・・・・・!
(この階段の向こう・・・・・この向こうに、零夜がいる・・・・・
主達を救うのを最優先としているが、同時に咲夜の心に芽生えるのは、仲が良かった弟に恨まれてしまうのも仕方ないということと、できればこんな形で再会はしたくなかったという感情・・・・・
ガッ・・・・・!
咲夜は、屋上に出る扉を勢い良く開けた・・・・・)
【紅魔館 屋上】
零夜
「……来たか……どうやら余興はこれまでのようだな……」
美鈴は咲夜が階段を駆け上がると、屋上に辿り着き、両手を後ろで組み、展開していたスクリーンを消して佇んでいた零夜がゆっくりと咲夜の方へ振り返り、余興はこれで終わりのようだと呟く。
お嬢様達を開放しなさい・・・・・
(咲夜は零夜を睨みつけながら、レミリア達を開放するようにと忠告する・・・・・
しかし、零夜が咲夜に殺意を抱くのとは裏腹に、咲夜は零夜とは和解したい気持ちもある・・・・・
咲夜は戦いを目前に、どうすればいいのかわからなくなっていた・・・・・)
零夜
「いいだろう……ただし、この俺を倒せたら……の話だがな。」
【「静止する時()」】
先程のやり取りの中でレミリアに語ったように、零夜の中にはまだ迷いや躊躇いが残っていた。でなければわざわざ館の空間を操って咲夜を飛ばさずに最初の段階で彼女の首を斬っていればそれで終わっていただろう。
だが、その迷いや躊躇いがある反面、憎しみや復讐心だけを支えに零夜は生きてきた。もはや、どちらかが命を落とすまで止まることは出来ない。
零夜は手にした銀の懐中時計のスイッチを押し、周囲の時の流れを完全に静止させる灰色の波動を放ち、更に左手の掌に銀製の短剣を召喚してそれを咲夜に向けて投擲する事で仕留めようとする。
あら、気が合うじゃない・・・・・
ヒュッ・・・・・!
(咲夜は投げられた短剣を回避すると、ナイフを6本取り出し零夜へ向けて投げる・・・・・
零夜同様、咲夜にとってもこの戦いは後戻りできない戦いであり、同時に過去の過ちに対する回答と終止符を打つ戦いでもある・・・・・)
零夜
「なるほど、時間停止はやはり効かない……か。」
停止した時の中でも此方の投擲した短剣を避け、咲夜がナイフを投げるのを見て、やはり同じ時間操作能力者同士だと互いに相殺し合うのだと言うことを理解すると、今度は右手に十字架を連想させる銀の長剣を召喚して投げられたナイフを全て弾き飛ばしながら、此方からも距離を詰めるべく駆け出す。
駆け出すとそのまま手にした長剣を勢いよく前へ突き出し、そのリーチを活かした高速の突きによって咲夜の体を刺し貫こうとする。
・・・っぐ・・・・・!
ガッ・・・・・!
(零夜は咲夜への復讐心から来る純粋な殺意によって容赦のない一撃、対する咲夜は主達を救う為とはいえ、零夜のように敵対者に殺意があるわけではないからか、やはり少し動きに躊躇いがある・・・・・
咲夜は攻撃を瞬時に回避しようとするが、右腹部辺りの服の生地を裂かれ、皮膚をかする・・・・・
かすったところはわずかながらに切り傷になり、血が出る・・・・・
咲夜は片足を振り上げ零夜に反撃をする・・・・・)
零夜
「……ふん、今回は逃げないんだな?」
零夜は突きを避けられ、反撃として繰り出された蹴りに対して自分の左手を盾のようにして相手の脚にぶつける事でその威力の軽減を行いながら、「今回は逃げ出さないんだな」と皮肉を呟く。
そして、更なる追撃として突き出した右腕を横へ払う事で手にした長剣による薙ぎ払いをする。先程の咲夜の蹴りを敢えて受けたのはこの斬撃を当てるためであり、これこそが本命の攻撃となっている。
ザッ・・・・・!
ぅぐ・・・・・!
(零夜の斬撃を回避しようとするが、反応が遅れて腕に長剣が突き刺さる・・・・・
そして、今回は逃げないんだなという零夜の問いに対して「えぇ・・・・・そうね・・・・・今の私は逃げない人間になったの・・・・・」と返す・・・・・)
零夜
「……そんなにあの妖怪共が大切なのか?」
零夜の振横薙ぎに振るった長剣が左腕に深々と斬り込み、骨にまで到達すると、ここまで身を挺してまで妖怪…つまりはレミリア達が大切なのかと問い、刺さった長剣を勢いよく引き抜く事で 咲夜の左腕を切断しようとする。
グッ・・・・・!
当たり前でしょ・・・・・私の大切な家族よ・・・・・
(咲夜は長剣の刃の部分を握り、ググッと力を込めて切断は免れようとする・・・・・
そして、零夜のあの妖怪共が大切なのかという問いに対して、咲夜は大切な家族であると返す・・・・・
咲夜からすれば、レミリア達はかけがえのない存在であることがわかる・・・・・)
零夜
「戯言を……ぬかすなッ!!!」
《シャッ》
零夜は長剣の刃を掴んで引き抜くのを阻止した事に対して驚くものの、直ぐにそれを遥かに上回る"憎悪"が零夜の心を支配していく……
自分よりも先に時間操作能力を開花させていたにも関わらず、自分や家族を見捨てて一人逃げ出した姉が……あろうことか妖怪を守るためにその身を挺しているのだと言う事が零夜の心を復讐へと駆り立てる。
咲夜の顔を蹴り飛ばして剣を引き抜こうと、床を蹴って少し飛び上がり、そのまま体を捻って遠心力を込めた回し蹴りを放ち、相手を蹴り飛ばそうとする。
遅いっ・・・・・!!!!!
(咲夜は零夜の蹴りを避けると、そのまま自力で長剣の刃を引き抜いて零夜へと無数のナイフを投げつける・・・・・
今の家族を馬鹿にされている以上、咲夜も黙ってはいられない・・・・・
咲夜も徐々に攻撃することへの躊躇は消え始めている・・・・・)
零夜
「俺はお前を消すために生きてきた……そのために俺は復讐以外の全てを捨てて来た……何も失っていないお前とは覚悟が違う!!」
意思の強さは戦う強さへと変わる……
零夜の場合は姉への復讐、その一念のために人間らしい心も、友も、仲間も、復讐を成すための力以外の全てを捨てて来た……それが零夜が自分では止めることが出来ない理由になっている。
自分とは対称的に新しい居場所や家族、仲間を得た咲夜に劣る理由がないと言い、ほぼ至近距離であった事からナイフを取り出そうとする咲夜に対して、回し蹴りが空振りしたものの、その勢いを利用して空中で更に一回転して咲夜の手を蹴り飛ばしてナイフを叩き落とそうとする。
笑わせるんじゃないわよっ・・・・・!!!!!
(咲夜は零夜の蹴りを受けながらも、更に瞬時に別のナイフを取り出して至近距離で投げつける・・・・・
咲夜だって今の今までレミリア達とただただ幸せな毎日を送っていたわけではない・・・・・
それこそ、レミリアに拾われるまでは地獄のような日々も生きてきた、拾われる前も後も、時間停止能力を持ちながらも家族を救えなかったことをずっと心の闇として秘めながら生きてきた・・・・・
なんなら、救えたはずなのに救えなかった咲夜からすれば、零夜よりも心の闇は深いのかもしれない・・・・・)
零夜
「それは俺の台詞……だ!!」
ナイフを投げられるものの、蹴りや欧打が当たる程の至近距離では投擲による優位性は殆ど無く、咲夜の手を蹴ってナイフを弾き飛ばすと、地面に着地した瞬間にそのまま地面近くにまで姿勢を落とす事でナイフを避けると同時に、彼女に対して足払いを仕掛けて転倒させようとする。
一度転倒してしまえば、再度起き上がるにせよ、床を転がって避けようとするにせよ、零夜の持つ長剣による斬撃を回避する事が困難になってしまうだろう。
なっ・・・・・!?
(零夜の思惑通り、咲夜は足払いを仕掛けられて転倒する・・・・・
咲夜は家族を囚われているということから零夜に対する怒りの感情は抱いているものの、零夜が咲夜に対して抱く恨みの感情はそれをもはるかに凌駕するということの証明にもなっている・・・・・)
零夜
「俺がどんな思いでこれまで生きてきたのか……どんな人生を歩まされて来たのか……お前には想像する事さえ出来ないだろうな!!」
《ヒュオッ》
足払いが成功し、転倒した咲夜に対して零夜はこれまでの生について口にする……
奴隷として生きてきた人生……能力を開花させて奴隷でなくなってからも安息の地など無く、闇の狩人として様々な苦痛や恐怖、絶望を味わって来たのか等、咲夜には想像する事すら出来ないだろうと言うと、右手に握った長剣を振り下ろし、倒れた咲夜の体を両断しようとする。
パチュリー
「…………ッ!これは………?」
咲夜と零夜が戦いを繰り広げている中、パチュリーは自分の体に刺さり、魔力を封じている魔封効果が込められた銀のナイフの柄を掴み、激痛に耐えながらもゆっくりと引き抜く。すると、そのナイフから違和感が感じられ、その違和感の正体が何なのかと勘繰り始める。
既にナイフは抜けたものの、まだ魔力は回復しておらず、完全に回復しきるまでには到底日の出には間に合わないため、フランを閉じ込めた時のように雨を降らせたり、空を雨雲で覆うことは出来ない。
二人の戦いに自分は介入することは出来ない……
時間操作が出来ない自分が零夜へ反撃しようとしてもかえって足手まといになってしまう事が目に見えているからだ。
ガッ・・・・・!
ぐっ・・・・・!
(咲夜はナイフを取り出し、刃の部分で長剣の刃をなんとか食い止めるが、ナイフの刃と長剣の刃では圧倒的な差があるが、何が何でも負けられない咲夜は必死に抵抗する・・・・・
そして、
パチュリーがナイフを引き抜いたのを見ると「パチュリー様!ナイフをこっちへ・・・・・!」と叫ぶ・・・・・)
零夜
「剣にナイフが勝てると思っているのか?」
零夜はナイフの柄
だが、幾ら振るいやすさを重視して軽量化されているとは言え、ナイフと長剣とではその単純な質量に差がありすぎる上に、床に倒れた状態で腕力しかまともに使えない状態の咲夜と長剣を振り下ろしている事で単純な腕力に加えて剣の質量や体重も攻撃に乗せることが出来る零夜とでは力を込められる姿勢や態勢にも大きく差を付けられてしまっている。
パチュリーも咲夜の呼び掛けに応えて魔封じのナイフを投げ渡そうとするが、この状況を打破し、零夜の注意を逸らす事が出来なければ容易く避けられてしまうだろう。
・・・っ・・・・・私・・・・・は・・・・・負けられな・・・・・
ズブッ・・・・・
ぁ゛・・・・・
(咲夜の体に、長剣の刃が深々と突き刺さる・・・・・
どんなに負けるわけにはいかないという強い意志があったとしても、長年に渡って募った復讐心を前にしては、力が一歩及ばないということの証明なのかもしれない・・・・・)
零夜
「………終わりだな。」
零夜は復讐を成し遂げられるという事への喜びも嬉しさも何も宿っていない、どこまでも冷たい無感情な顔をしたまま、咲夜のナイフの柄を貫いた長剣を更に押し込んで彼女の体を貫こうとしていく……
どれだけ時間を操れると言う規格外の能力を持っていようとも、人間である事に変わりはない……傷や怪我をすれば簡単には治らず、失った手足が戻る事もない……一つの傷や怪我が致命傷となりうる人間だ。
パチュリー
「………ッ!(防御魔法を……!いえ、それでは間に合わない……回復魔法をしようにも剣が刺さってしまっては意味を成さない……それ以前に今の私に魔力は残されていないし、このナイフを投げたところであの時使いに阻まれるのは確実……打つ手が……無い………)」
パチュリーは脳内に様々な打開策や救出方法を模索するものの、いずれにしても今の状況を打破しうるようなものは見付からない……
・・・・・
(咲夜の手は力なく崩れ、長剣の刃が容赦なく体を貫く・・・・・
咲夜はもう抵抗もしない・・・・・いや、できない・・・・・
長剣が刺さった場所からは、血が流れ続けている・・・・・)
零夜
「………残りは1時間20分か。
ここまでに相当の魔力を消耗したが……これでもう俺の時間操作に対抗できる奴もいない。このまま館内にいる奴らも殲滅しておくか……」
咲夜の体を貫いた長剣をそのまま床に刺して串刺しの状態にすると、懐から銀の懐中時計を取り出して日の出までに残された時間を確認し、咲夜の名を叫ぼうとしたものの、ナイフによって受けた傷によって大声が出せなくなっており、呻くような声をあげるパチュリーと、銀の鎖によって十字架に磔にされたレミリアとフランの三者の様子を見る。
そして、三者をまとめて始末しようと三人の頭上に召喚魔法を展開し、そこから銀の大剣を呼び寄せ、それを落とす事で三人をまとめて貫こうとする……
???
「………ッ!!
今の私だけでは……この結界を壊せない……」
零夜が幾重にも渡って張り巡らせた巨大にして強固な結界。
紅魔館の正面門の前では幾度も激突した後があるものの、結界が破壊できるまでには及ばず、己の無力さにうちひしがれている者が一人いた……
自分一人だけではこの壁を壊して助けに向かうことは出来ない……
だが、博麗の巫女ならばこの結界を解除して助けに向かうことが出来るようになるかもしれない。
???
「レミリア……フラン……待っていて………」
脳裏にはレミリアとフラン、そして館の住人達の事が次々と過り、歯を強く食い縛り、巫女の元へと向かって飛び去って行く……
かつてヴァルターの暴力や支配から二人を守ることが出来なかった……その過ちを再び繰り返す訳にはいかない。
レミリア「・・・・・アンタは、必ず地獄に堕ちる・・・・・」
フランドール「・・・・・消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ」
(レミリアとフランドールの二人は咲夜を長剣で突き刺した零夜を睨みつけながら、抵抗も何もせずにただただ罵声を浴びせる・・・・・
今この時、自分達を救うべく動いている者がいるということも知らずに・・・・・)
零夜
「地獄……か。ならば死した妖は何処へ行くのだろうな?」
《バチンッ》
レミリアとフランの二人の言葉を聞き、ならば完全に死亡した妖怪は何処へ行くのだろうと呟くと、零夜は指を鳴らす。
するとそろを合図として三人の頭上に召喚した大剣が三人の心臓目掛けて落ち始め、咲夜と同じように串刺しにしようとする。
カチッ・・・・・
(突然、レミリア、フランドール、パチュリーの三人を亡き者にするために召喚した大剣が三人に直撃する寸前でその動きを止める・・・・・
零夜ならば・・・・・いや、零夜だからこそすぐにわかるような、この謎の現象の正体は・・・・・)
零夜
「…………!!」
日の出を待つこと無くとも、決着は既についた。
体を貫かれ、絶命したであろう咲夜ではもう何も出来ず、咲夜以外で時間を操れる自分に対抗できる者はいない。
そう考えていた最中、突如として自分以外の者による時間停止が発動される……咲夜も人間だ。体を貫かれて尚、生きている事など出来ず、どれだけ強い能力を持っていようとも死してしまえば無力となる。
その筈であったにも関わらず、時間停止が成されている事に驚愕し、停止した時の中で左手に長剣を握ったまま何が起こったのかと咲夜の方へ振り返る。
ポタッ・・・・・ポタッ・・・・・
はぁっ・・・・・はぁっ・・・・・!
(零夜が振り返ると、咲夜は自分の体へ突き刺さっていた長剣を抜き取り、刺さっていた場所を左手で押さえながら右手で長剣を構える・・・・・
零夜の原動力が咲夜に対する復讐心ならば、咲夜の原動力はレミリア達に対する愛だろうか・・・・・)
零夜
「馬鹿な……確かに体を貫いた筈だぞ?お前……まさか人間を辞めているのか?」
人間の生命力や再生力では体を貫かれた状態で立ち上がることなど、まして能力を使うことなど到底出来ない……だとしたら考えられる可能性は一つ。咲夜は既に人間を辞めて吸血鬼にでもなっているのだろうか?
……ならば此方も相応の戦法を取るまで。
零夜は軽く一回転し、その遠心力を乗せて右手に持った長剣を振るい、魔力を具現化させた横薙ぎの巨大な斬撃を放つ。
ガッ・・・・・!!!!!
(咲夜は手負いの状態でありながらも、素早い動きで零夜の斬撃を避け、そして背後に回り込みさっきまで自分の体に刺さっていた長剣を振るう・・・・・
そして「私は人間をやめちゃあいないわよ・・・・・昔も、そして今も、失うことが怖いただの人間よ・・・・・」と、今は今この時、レミリア達を失うかもしれないことだろうが、昔というのは家族を助けられなかった時のようにも聞こえる・・・・・)
零夜
「なら……あの状態からどうやって助かったんだ?確実にお前の体を刺し貫いていた筈だ。」
背後に回り込んだ咲夜を見て右手に持っていた長剣を振り向き際に振るい、咲夜が振るった剣と激突させて相殺しつつ、右足を咲夜の左横腹目掛けて蹴り出して鍔迫り合いにもさせずに一気に斬り伏せようとする。
さぁ・・・・・ね・・・・・私にだって・・・・・わからないわ・・・・・
ヒュッ・・・・・!
(咲夜は零夜の攻撃を再び避けると、ナイフを零夜へ向けて投げつける・・・・・
零夜の頬をナイフがかすり、鮮血が一滴滴る・・・・・
自分でもここまで手負いの状態で何故戦えているのかがわからないが、まだ戦えるのであれば、何としてでもこの戦いに終止符を打ちたい・・・・・)
零夜
「……そうか……お前は人間を捨てたか。」
零夜の繰り出した蹴りは咲夜を前に空振りに終わり、同時に距離を取って咲夜が投げたナイフを零夜は回避したは良いものの、自身の頬に掠り、傷口から血が垂れると、それを左手の袖で拭う。
零夜
「ならば………俺も人間である事を捨て去り、完全なる殺戮と破壊の化身と化そう!!」
姉の咲夜は人間である事を捨てたのだと判断すると、零夜は左手の掌の上に召喚魔法陣を展開し、そこから黒い血液が入った小さな注射器を取り出す。
その黒い血液から感じられるおぞましく、禍々しい闇の魔力から、レミリアとフランにとって最悪の象徴とも言えるあの"ヴァルター"の血液である事が即座にわかるだろう……
・・・っ・・・・・!?
(零夜が掌に召喚したものが予想外過ぎるものだったため、咲夜は言葉を失う・・・・・
もしあれを注射してしまえば、零夜を本当の意味で救い出すことはできなくなってしまう・・・・・
どんなに敵同士だとしても、やはり血の繋がった実の弟・・・・・死なせたくはない・・・・・)
パチュリー
「させる訳がないでしょ……!」
【「ウィンターエレメント」】
零夜がヴァルターの血を取り込んでしまえば殆ど壊滅状態にある現在の紅魔館のメンバーでは対抗する手段がないと判断したパチュリーは自分の傷や怪我を回復する事よりも零夜の妨害を選び、床に右手を付けて水柱を立ち上げる事で零夜の左腕へ攻撃を加えて彼が持つヴァルターの血が入った注射器を吹き飛ばす。
零夜
「………ちッ!まだ生きていた……!!」
《シャッ》
零夜は吹き飛ばされた注射器の代わりに手元に短剣を生成してそのままパチュリーの眉間目掛けて正確に投げ、咲夜の代わりにパチュリーから先に仕留めようとする。