冤罪者の鎮魂曲

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1:マキ:2013/07/13(土) 19:03 ID:2Sc

冤罪者の鎮魂曲

 冤罪。
 それは罪無き者が罰せられる事。
 何時の時代になっても、冤罪は消えない。
 そもそも、冤罪が生まれ行く原因は「人が裁く」と言う事にある。
 
 冤罪と言うのは、どうして生まれるのか――……
 警察が間違った方法で真実を得ようとしているからか――……
 新犯人が証拠を消したり、他人を犯人にしようとしているからか――……
 いや――……
 冤罪者は結局を言うと、悪いのは警察ではなく――……
 『間違われる奴が悪い』
 ――らしい……。

 
 【作者コメント】
 こんにちは、マキです^^
 アドバイスや感想コメント大歓迎です^^
 (荒らしや中傷はやめて下さい)←

2:秋:2013/07/13(土) 19:56 ID:N8s

題名にめっちゃ引かれました!!

3:マキ:2013/07/13(土) 20:29 ID:2Sc

 秋さん>>

 コメント早っ!?((殴
 あ、あ、あ、あ、あ、あ、あ、あ、あ、秋さんんんん!
 コメント有難う御座いますすすすすすすっ!?
 (葉っぱの人優しっ! 超優しっ! マジ優しっ!)
 だ、だ、だ、だ、だ、題名ですかかかかかかっ?!
 わ、わ、わ、わ、わ、私的には皆さんにドン引きされる物かと!?←
 っと言うか、ひ、ひ、ひ、ひ、ひ、ひ、惹かれた?!
 (なに、その美味しいお言葉!? 人の言葉ってこんなに暖かかったっけ?!)
 も、も、も、も、も、もう本当に、コメント有難う御座いますっっ!
 こ、これからもコメントくれると嬉しいですっ!

4:マキ:2013/07/13(土) 21:29 ID:2Sc

冤罪者の鎮魂曲 第一話・破損音

 『幼女刺殺事件』。
 その事件がテレビや新聞で報道され始めて数日が経過した。
 八歳の少女が刺殺されると言う事件は、事件概要を見聞きした者に驚きを与えた。
 朝のニュースでもまた、数日前から同じ内容同じ映像でその事件の事が報道されていた。
 いつもと同じ、若い女子アナが報道している。
 浦風秀哉(うらかぜ しゅうや)はそれを尻目にバターが塗られたパンを口に運んだ。
 「――にしても、やっぱ世の中物騒だなあ……。餓鬼殺しはあるわ、誘拐事件はあるわ……。対照的にケーサツは何やってんだよ」
 テレビやソファ、机が置いてあるリビングの机前に置かれた椅子に座りながらボヤく浦風。
 机の上には広げられた今日の新聞が置かれ、その一面には『幼女刺殺事件』の事などが書いてある。
 「――次は、今日のお天気です。木下さん」
 女子アナがそう言うとテレビの画面が切り替わり、少し曇った空をバックに一人の男が立っている光景が映る。
 男は「はい。えぇ、今日の天気は――」と言いながら横に置かれた日本列島が書かれている板を指さす。
 「……さて、そろそろ行くか……」
 パンの最後の一口を口に放り込み、立ち上がる。
 それと同時に「関東では直に雨が降りだすので、お出かけの際は傘を忘れずに」。
 爽やかに笑って言われると、「雨……っか」と言って浦風は新聞を閉じる。
 浦風はソファに置かれた黒い学校指定の鞄を手に取ると、机に置かれたリモコンでテレビの電源を切った。
 鞄を片手に、浦風はリビングを出て行った。
 机の上には閉じられた新聞と白いマグカップと皿が置きっぱなし。
 壁にかかった時計は七時十分近くを指している。
 浦風はリビングを出て、玄関に向いながら左の横髪を耳にかけ、同時に左前髪に赤いピンを着ける。
 「うっし……。んじゃあ」
 玄関で、鞄同様学校指定の靴を履くとドアを押して開ける。
 「行ってきまーす」
 無機質な声が、誰もいない浦風家に木霊した。

5:マキ:2013/07/14(日) 18:42 ID:2Sc

 玄関から外に出て、手馴れた手つきで家の鍵を占める。
 朝の空は薄黒の雲が浮いている。
 「マジで雨降りそうだ……」
 天気予報など宛にならないとタカを括り傘を持たずに家を出た浦風。
 「……っま、いっか。どうせ暑いし」
 言うやいなや、浦風は鞄の両方の持ち紐を肩にかけリュックを担ぐような格好になる。
 浦風の家は、住宅街の中に建っており、周りには二階建ての家が多い。
 色や形は様々として、二階建てで殆どが三人以上の家族が住んでいるということに変わりはない。
 浦風が鞄を担いで家から出ると、不意に浦風の家の塀ギリギリに数台の車が止まっていることに気づいた。
 黒や白の車だ。
 人が数人乗っているのは、先頭の車を一瞥した浦風でも解かった。
 車に乗っているのが人相が悪く体付が凄い男と険しい表情の女である事に一瞬動揺を覚えた浦風。
 だが、人様の事を勝手に妄想するのは悪い、と思いさっさと学校に行こうとする。
 すると――
 「浦風秀哉君だね」
 ――車のドアが開き、閉まった音に続いて背後からそんな声がかかった。
 浦風が振り返ると、黒いスーツを着こなした男が浦風を険しい表情で見つめて立っている。
 その男を見て表情を曇らせる浦風。
 「……なんスか、おたく等……」と眉間に皺を寄せ警戒心を表す浦風にその男は近づく。
 「ちょっと、聞かせて欲しい話があるんだ。少し……時間を貰えるかい……?」
 「話って……俺はアンタ等が誰か聞いてん――」
 言いかけた浦風だが男が取り出したものにより、その言葉を引っ込ませる。
 男が取り出したもの。それは、警察陣特有の‘警察手帳’と思われるもので男の写真と名前が書いてあった。
 それを見て、一層表情を曇らせる浦風。
 男はそんな浦風の表情を見て、言った。

 「幼女刺殺事件の事について、話を聞かせて貰うよ」

6:乃愛:2013/07/14(日) 19:06 ID:5Cc

めっちゃ面白そうですね!
てか、面白いです!!

がんばって下さい!!

主人公は、犯人と疑われているのかな!?

7:マキ:2013/07/14(日) 19:40 ID:2Sc

 乃愛さん>>

 コメント有難う御座います!
 お、面白い……ですか……?!
 そう言って頂けると、嬉しいです! 本当有難う御座います!
 そうですね……
 今後進んでいくに応って、主人公が犯人になっちゃう系な展開ですね……
 まぁ、詳しいことはこれから分かりますよ!
 多分!←オイ
 これからもコメント頂けると嬉しいです!
 今後とも宜しくお願いします!

8:マキ 23:2013/07/14(日) 21:48 ID:2Sc

 「――だぁかぁらぁ……っ!」
 机を挟んで浦風の前で椅子に座る年配の刑事と思われる男が怒鳴るように言う。
 「なんで、凶器のナイフにお前の指紋が付いてたんだ、って聞いてんだよ!」
 組立式の椅子から勢い良く立ち上がり、机を叩いてそう怒鳴る刑事に「だぁかぁらぁ」と頭を掻く浦風。
 「知らねぇってさっきから何度も言ってんだろうが。話聞いてねぇのかよ」
 机の肘を付き、頬杖をしてシレッと答える浦風。
 「知らねぇじゃねぇんだよ、知らねぇじゃ!」と唾を飛ばして怒鳴り狂う刑事を尻目に浦風は舌打ちをする。
 場の状況が上手く把握できず、朝の刑事たちに流されて警視庁まで来た浦風。
 あぁ言う状況の際は、否定の言葉を投げるのではなく黙って相手に合わせるのが正解だと昔の経験で理解していた。
 警視庁に着くや否や『取調室』とあからさまに書かれた表札が掛かった部屋に入れられ、話が始まったわけだ。
 窓が一つ、鏡が一つ。中央と角に机を一つづつ置いたその部屋は、正にドラマを思わせる物だった。
 「ッチィ……ッ! じゃあ、違う質問だ」
 床に倒れた椅子を立たせ、それに座り直して刑事は続ける。
 「六日前の午後三時から四時の間……お前何処で何やってた」
 ドラマのお決まり台詞。
 浦風はそう思いながらも「六日前……?」と頭をひねった。
 今日から六日前。
 つまり、先週の水曜日という事になる。
 「六日前の三時からっつったら……」
 高校生の浦風にとって、その時間帯は学校だ。
 しかし、その日は学校の創立記念日で学校は休み。当然にも、浦風が学校に行った訳がない。
 これで、詳しい‘アリバイ’が半分ほど崩れる。
 次に時間だが。
 浦風の記憶が正しければ、その時間帯は一人で出かけていた。それを証言する者もいない。
 これで、完璧に‘アリバイ’が崩れる。
 脱力感と絶望感が重々しく浦風の体に圧し掛かる。

9:乃愛:2013/07/15(月) 08:17 ID:2mc

アリバイ崩れちゃったんですか…。
題名からして、おそらく冤罪…

10:マキ 23:2013/07/15(月) 08:33 ID:2Sc

 乃愛さん>>

 そうですねー
 主人公のアリバイ崩れましたねー
 残念ですねー((他人事←オイ
 それで、冤罪ですねー
 主人公可愛そうですねー((他人事←オイ……!

11:マキ 21:2013/07/15(月) 12:58 ID:2Sc

 あくまでも無表情で場を乗り切るつもりだった浦風だが、自然に顔が渋くなる。
 「六日前の三時頃は……出かけてた」
 目の前の刑事から目をそらし、何もない空間を見つめる。
 それを見て、刑事が勝ち誇った様に笑う。
 「それを証明出来る奴はいねぇのか?」
 勝ち誇ったような笑が消えない。
 それを怒りを込めた顔で睨み「あぁ……っ」と言うと、勝ち誇った顔がもっと笑に溢れる。
 喧嘩っ早い浦風の腸が煮えくり返りそうになる。
 いっそ煮えくり返らせて、コイツ殴るか? とまで考えるほどだった。
 「って事でテメェにアリバイは無い訳だ。……そんじゃあ話は戻るが、凶器のナイフにお前の指紋がついてたのはなんでだ?」
 机の上に肘を立て、指を組んで口角を上げる刑事。
 それを何かの仇を見るような目で睨む浦風。
 「……」
 浦風は黙り込む。
 こんな奴、相手にするだけ無駄だ。
 ただの言い訳かもしれないが、浦風はそう思ってそうする事しか出来なかった。
 「……だんまりか。んな事してたら何時まで経っても帰れねぇぞ」
 人を哀れむような目で言われると、つい「あぁ゛?」と声を上げて物凄い形相を作る。
 「おぉ〜、怖い怖い。前科持ちの元ヤンはこえぇな〜」
 そう言われてどんどん形相を酷くしていく浦風。
 浦風の表情が険しくなっていくのと反比例に刑事の顔は冷静な物になっていく。
 「……トイレ何処にあんだよ」
 二人が睨み合いの様な事をしていると、浦風はイラついた表情で言った。
 「あん?」と片眉を上げて聞き返す刑事に「トイレ行かせろつってんだよ」と黒い目を光らせる浦風。
 浦風に低い声で言われると、刑事は部屋内にあるもう一つの机に座っていた男に「オイ」と声をかける。
 男は一度頷くと、部屋のドアを開け「ついて来て下さい」と浦風に言う。
 その言葉に返事を返さず、椅子から立ち上がりドアの方まで歩いていく浦風に刑事は言った。
 「逃げようとか思うなよー。察してると思うが、お前は幼女刺殺事件の重要参考人だー。逃げた時には指名手配だぞー」
 感情のこもらない声で言われると「あっそぅ」と素っ気ない声で言い返し、浦風は男の後を追って部屋を出た。

12:マキ:2013/07/20(土) 10:42 ID:2Sc

 トイレと浦風が聴取を受けていた部屋はそれほど離れておらず、部屋前の道を右手に行けばすぐに着いた。
 薄青のドアを開ければ一目散に天井付近にある窓が浦風の目に入る。
 人一人、高校生の浦風さへも通り抜けられる大きさの窓だ。
 一瞬とは言え浦風がその窓に目を向けた事に気付き、男が口を挟む。
 「川村さん……さっきの人も言ってたけど、逃げたりなんかしたら不味いと思うよ」
 「わぁってるよ」
 不機嫌そうに言うと、浦風は壁に背を預けその場にしゃがみこむ。
 深くため息をこぼせば、嫌と言うほど今の状況が把握できる。
 「ったく……! 何でこんな事になっちまったかなー……」
 不運とか、不幸とか、ついてないとか、有り得ないとか、意味不明だとか。
 否定を投げればどうにかなるかと思ってた。
 頭を抱えればどうこうなるかと思ってた。
 「……念のために聞くけど、君は本当に」
 「やってねぇつってんだろうが。何が良くて餓鬼を殺さなきゃいけねぇんだ。犯人の気が知れねぇよ」
 本心だった。
 男はそう言われると「じゃあ、どうして凶器のナイフに君の指紋が?」と浦風と同じく壁に背を預けて聞く。
 浦風は「さぁ」とどこか遠くを見るような目で答える。
 「どっかで俺がそのナイフに触れたか、真犯人様が触れさせたか、アンタ等ケーサツのミスか」
 「日本の警察は優秀だよ」
 「そんなはずはない」と言うような口調で言われ「ジョーダンだよ、ジョーダン」と薄ら笑みを浮かべる浦風。
 「しっかし、これじゃあ本当に俺犯人になっちまうなー」
 両手で顔をおおってわざとらしく言う浦風。そのせいか、その言葉が酷く嘘の様に聞こえる。
 「……本気で言ってる?」と訊くと、顔から手を離し「まさか」と口角を上げる浦風。
 「日本のケーサツは優秀なんだろ? だったら、俺の無実証明してくれや」
 酷く小憎たらしいイタズラっ子な子供のような笑だった。

13:マキ:2013/07/20(土) 21:22 ID:2Sc

 「……君――」
 男は浦風に、どうしてこの状況下で笑いながらそんな事が言えるのか聞きたかった。
 だが、その問は唐突にもその場に響き渡った音によって遮断された。
 その音は、芸能に全く無関心な浦風でさえも聴いた事があるアイドルグループの曲だった。
 「っあ゛? 何この曲?」と浦風が天井を見つめながら言うと、質問を飲み込んで「さぁ」と男は返す。
 浦風は「どっこいしょ」と年寄り臭い台詞を放って立ち上がると曲の発信場所をトイレ内で模索する。
 「……外?」
 開いた窓から少し離れた場所で呟くように言うと、男も窓に視線を送る。
 浦風が言った通り、曲は外から流れてくるものだった。
 窓縁に手を置き、少し外に身を乗り出して外を見渡す浦風に「何かある?」と聞く男。
 「いや、別に……――っあ」
 辺りをキョロキョロ見渡していた浦風の目が、窓の真下に向けられると同時に浦風は声を上げた。
 「ん? 何かあったの?」と浦風の横に出て聞く男。男はすぐに目線を下に下ろし、浦風同様「っあ」と声を上げる。
 浦風はそんな男を余所に「そだなー」と言って、大胆にも窓縁に足を置いて外に飛び出た。
 浦風の突然な行動に「っちょ……!」と一歩遅れて止めに入る男に「大丈夫だって」という浦風。緊張感が無さ過ぎる。
 心配そうな顔をして浦風を見つめる男を綺麗に流して携帯と‘何か’を拾い上げる。
 「携帯……。落し物かな……。でも何で本庁のこんな所に……」と刑事らしく男が自論を語る。
 一方の浦風は難しそうな顔をして虚空を見つめ自論を放つ男を無視して携帯を開く。
 そして、自分の携帯にでも出るように自然に携帯の受話器を離すボタンを押し「もしもーし」と話始める始末だ。
 「っちょ?! なに、君、して……!」
 「まぁまぁまぁ。落ち着けって。何もしねぇって。携帯拾ってやったお礼にお金頂戴って言うだけだって」
 「現行犯! それ、普通に現行犯! なに本物の刑事前にして窃盗罪働こうとしてるの!?」
 シレっとした顔で人差し指と親指をくっつけ、そんな事を言う浦風に男は率直なツッコミを入れる。
 「ジョーダンだって、ジョーダン。んな、一々まに受けんなって、兄ちゃん」
 言いながら男を制そうとする浦風に「まったく……」と呆れた視線を送る男。
 先ほどの感情はどこへやら。今は呆れしか募らない。
 浦風は鼻で笑って「もしもーし?」と再び言う。すると――
 『っあ、もしもーし? 浦風くーん?』
 ――あまりにも腑抜けた声が飛んできた。

14:マキ:2013/07/28(日) 11:53 ID:qTs

 浦風の表情が固まったのを男は感じた。
 「どうしたの?」と言いながら、男は顔と手を外につき出す。
 浦風は驚いたように目を見張り、口を半開きにしている。その表情を見て、男の表情も曇って行く。
 「? 浦風君?」
 男に疑心感を募らせる浦風の表情が一瞬我に帰ったような表情に変わる。
 浦風は驚きで中々耳に入ってこなかった携帯の声に耳を傾ける。
 『その男の人……撃たれて死んじゃうよ?』
 気味の悪い笑みを浮かべた子供の顔が、声だけで浦風の脳裏に浮かんだ。
 なぜ、電話越しの者が自分の事を知っているのか。
 そして、一体何を言っているのか。
 驚きと戸惑いが浦風の脳内を襲い、正しい行動が導けない中で浦風は男に「動くな!」と叫んでいた。
 浦風自信どうしてこんなことを言っているのか解からなかった。
 たちの悪いイタズラかもしれない。
 しかし、混乱状態の浦風にイタズラかどうか判断する力は無かった。
 男が「っえ?」と言いながら浦風を見つめていた。
 瞬間、バットが風を斬るような音が浦風の耳の中に木霊した。
 同時に浦風の目の前に赤い何かが宙を舞い、薄汚い壁にミチャと飛び散る。
 男の体がグッタリとして窓縁に凭れたまま動かなくなった。
 赤い何かが浦風の頬にも付着する。
 『っね? 言ったでしょ?』
 この状況下で酷く冷静な、酷く楽しそうな口調で、酷く愉快だと言ったような口調だった。
 手に持っていた白い布に包まれていた物が地面に落ちて、布の隙間から黒い物体が浦風の目に入った。
 それは本物を見た事が無い浦風でもドラマなんかで目にする‘拳銃’だった。
 「っな……なに、言って……」
 浦風は地面に落ちた拳銃に目を落としながら声を震わせて言う。
 と、同時に――
 「おぉーい。おせぇぞ、何やってんだー」
 ――とトイレのドアが開いた。

15:♪♪♪:2013/07/30(火) 23:00 ID:NdU

いつも、楽しみにしています。
がんばって(^^)

16:マキ:2013/08/02(金) 19:51 ID:2Sc

 >>15 ♪♪♪さん

 返信遅くなってすみませんっ!
 そして、コメント有難う御座います!
 「いつも、楽しみにしています。」
 ……くぅぅうううっ!
 とっても、嬉しいコメントです!
 心に染みますっ!
 最近コメントが見えないので、人気無いのだとばかり……
 もう、本当に有難う御座います!
 出来れば、今後もお暇があればコメントを……
 いえ。
 何でもありません……←

17:マキ:2013/08/03(土) 09:02 ID:2Sc

 煙草を口に咥えてトイレに入ってきた刑事の動きが止まる。
 当然だ。
 一人の男が窓縁に凭れてピクリとも動かず、事件の重要参考人である人物は外にいるのだから。
 こんな光景を見て、一瞬でさへ動揺も何もせず平常心を保たせる者など、そう居ないだろう。
 「テメェ……何やって……」
 驚いたように少し目を見張ってそう言う刑事。
 浦風はッハとしたような顔で「ちが……!」と説得に入る。
 どうやって、回避する。
 どうやって、説得する。
 どうやって、否定する。
 ――どうやって、どうやって、どうやって、どうやって、どうやって……!
 浦風の頭が完全に混乱する。
 そして――
 「何やってんだ、テメェは!?」
 ――浦風の正確な答えを導く思考回路速度よりも早く、刑事の怒号とも言える声が浦風の耳をつんざいた。

 * * *

 気付いたら、浦風は全力疾走していた。
 数メートル後ろから数人の者が、何か言いながら浦風を追いかけてくる。
 浦風は息を荒げ、瞼に涙を貯めながら走った。
 もう、浦風に投げられる声など聞こえない。
 浦風の頬についた赤い何かが、浦風の目から流れ出る涙に混じって一緒に地面に落ちる。
 その跡は、テレビの予報通り灰色の空から降ってきた大粒の雨によって消え去っていく。

18:マキ:2013/08/03(土) 14:55 ID:2Sc

 予報通り降り始めた雨を、浦風は不思議と愛おしく感じた。
 いつもなら、雨などどうでもいい存在だった。
 気にする対象物から普通に除外されていた。
 だが、今日くらいは。
 今日くらいは雨を好んでも良いのではないかと思った。
 自分が流した涙の跡を消してくれるのなら、ずっと振り続けてくれ。
 そう思った。
 ポツポツッという音が、轟音と化して浦風の耳を襲う。
 その音は、浦風の人生の破壊音だった。
 二度と戻る事のない人生が崩れる音。
 浦風は涙を流し、それを雨が消し去る。
 浦風を追う者達は浦風が涙している事自体気付いていない様子で大声を上げる。
 雨が酷くなり、ポツポツッという音からザァァァァと音調を変える。
 音が変わった瞬間、浦風は雨がしみこむアスファルトの匂いを深く吸い込み歯を食いしばった。
 ――日本の警察は優秀だよ――
 不意に、そう言った男の顔が頭をよぎる。
 浦風は歯を食いしばりながら「クソ……ッ!」と呟く。
 (――兄ちゃん……。アンタの言葉、俺なんかが信じてもいいか?)
 良いなんて言われなくて良い。
 ただ、自分の人生が崩れ行く音から耳を離したかったからに過ぎない質問。
 その質問さへも、虚空に消えていくのだ――……。

 第一話・破壊音 終

19:♪♪:2013/08/04(日) 00:36 ID:NdU

ヤバい!スゲェよ!!姉貴!!!
もう、作家デビューしちゃう気ですか?
神です!神!!
姉貴!ウチのも、見ておくんなまし。
<いつでも君に会えると思っていたのに。>
です。

20:マキ:2013/08/04(日) 08:35 ID:2Sc

 ♪♪さん>>

 コメント有難う御座います!
 さ、作家デビュー?!
 む、無理ですよ!
 私みたいに、低レベルな小説……。
 で、でもそう言っていただけて嬉しいです!
 本当に有難う御座います!
 そ、それと……
 か、神とか、姉貴とかでもないので、気軽にマキって呼んで頂いて構いませんよ?
 良かったらですが、私もオトちゃんとか、オンプちゃんとか呼ぶので……。
 『いつでも君に会えると思っていたのに。』ですね!
 解りました!
 読みに行きますね!

 今後も暇があったら、コメント宜しくお願いします!

21:マキ:2013/08/04(日) 11:29 ID:2Sc

冤罪者の鎮魂曲 第二話・終わりは、始まりに過ぎない

 雨が降ってきた。
 その事を、廃工場の錆び付いた屋根に雨が落ちる音を聞いて初めて気付いた。
 雨が降ってきた事に気付いて、廃工場の中から割れた窓越しに空を見ると灰色の空が見える。
 「あちゃー。降ってきちゃったよ。傘持ってきてないんだけどなー……」
 茶色がかかった黒い長髪を後頭部で一つ結びにした女性が困ったような表情でそう言った。
 女性は灰色の空を見ながら「っま、いっか。これで報道陣も少なくなるでしょ」と呟く。 
 女性は虚空に向けていた視線を落とす。
 視線の行く末は、黄色い立ち入り禁止用テープ向こうに群がっている報道陣に向けられる。
 大きなビデオカメラを持った者。服の袖にテレビ局のワッペンをつけた者。マイクを持っている者。
 一目で報道陣だと解かるそれらは、突如降ってきた雨に驚きながらも所持していた傘を開く。
 傘を所持していないと思われる報道陣はそそくさとその場を後にする。
 結局雨が降ってきて尚も、その場に残った報道陣は女性が思うに数社の報道陣だけだった。
 「全く。解かってる事は殆ど話したのに、懲りない人達だなー。そんなにスクープが欲しいかねー」
 呆れた表情と口調で言うと、不意に「片桐(かたぎり)!」と女性に向かって声がかかる。
 片桐と呼ばれたその女性は、声のした背後に目を向ける。
 「んー? どったの、一之瀬(いちのせ)。なんか見つかった?」
 片桐と呼ばれた女性は振り返り、声をかけたと思われる黒縁眼鏡をかけた男性に言う。
 青いジャージの様な服のポケットに手を突っ込んで片桐が聞くと一之瀬と呼ばれた男性は険しい表情を作る。
 と言うか、元々険しかった表情が更に険しくなった。
 「っえ、何か怒ってる? っえ、私何かした? まさか、まだこの前のプリンの件引きずって」
 「俺のこと馬鹿にしてんのか、タコスケ」
 少々焦りを見せて言う片桐に一之瀬は率直なツッコミを入れる。
 「じゃ、じゃあ何よ……」と落ち込んだように言うと、一之瀬は険しい表情をまたも険しくさせる。
 片桐も一之瀬の表情に合わせて、その表情を険しくさせる。
 「真面目な話……どうしたの」
 眉間に皺を寄せて言うと、一之瀬は険しい表情に戸惑いの色も見せる。
 そして――
 「本庁で事件があった。ホシは、今回の事件……幼女刺殺事件の重要参考人と見られてる……」
 ――冷や汗を見せて言う一之瀬を、片桐は驚いたような視線を向けて見つめた。

22:ちあ@ ◆NLsI:2013/08/05(月) 20:59 ID:bdU



はじめまして。
陰ながら拝見させていただいておりました、ちあ@と申します。
陽実、という名前で前は活動しておりました。
誠に勝手ながら自己紹介掲示板にあります、葉っぱ天国で執筆している小説板作家のプロフィールに
書かせていただいた私のプロフィール内の好きな作家様のところにマキ様を書かせていただきました。
最近見つけた小説の中で一番面白く、
久しぶりにネット小説に読みいってしまいました。

私もここの小説板で二年ほど執筆しているのですが、
あまり上達せずにイライラしてしまっていました。
しかしマキ様の小説を読ませていただいて、自分のイライラも努力不足だと痛感いたしました。

少し気になったのがカギカッコの前のスペースと
()で心情を書いている場面があったところでした。


長々と申し訳ありません。
すごく面白い作品を拝読させていただきました。
これからも執筆活動頑張ってください。
陰ながら応援させていただきます。

また、どこかでお会いできればその時は声をかけてください(*´`)
では失礼します。

23:マキ:2013/08/09(金) 18:59 ID:2Sc

 ちあ@さん>>

 コメント&アドバイス有難う御座います!
 お、面白い?!
 ほ、本当ですか?!
 と、とっても嬉しいです!
 
 イライラ解消ですか……。
 人によって、いろんな事でストレス(で良いのかな?)溜まりますもんね……。
 この様な作品で、ちあさんのイライラが解消したのであれば、嬉しいことこの上ありません!

 そして、良きご意見有難う御座います!
 「」の前のスペースと、()の心情ですね!
 解りました!
 今後より、改善していきます!

 本当に、良きアドバイス有難う御座います!
 今後とも、私を含め「冤罪者の鎮魂曲」を宜しくお願いします!

24:マキ:2013/08/10(土) 14:32 ID:2Sc

 大きな横断歩道と大きなショッピングセンターを前にした路地裏。
 そこで、浦風は息を荒げながら背後のビル壁に背を預けていた。
 脱力の色が見える目で地面に視線を落とすと、アスファルトに溜まった水の塊が見える。
 少々泥が混じったかのように茶色っぽい色を濁らせる水溜り。
 片手で横腹を抑えて壁に背を預けながらその場に座り込む。
 荒々しい息が一向に治らない。
 灰色の空から地上に降り注ぐ雨が、浦風の体温を奪う。
 「ハァハァ……」と言う息が雨音と混じり合う。
 浦風は「畜生……っ!」と、震えた声で言いながら目を瞑る。
 ――糸が切れた人形の様に、一瞬で動かなくなった男――
 不意に、先ほどの情景が浦風の脳裏を横切る。
 息を飲み、目を見開き、「ッヒ……!」と掠れた悲鳴が上がる。
 あの瞬間。
 何があったのか、浦風は全く理解しきれていない。
 バットが空を切るような音がしたと思ったら、男が突如動かなくなった。
 それだけなのだ。
 浦風が理解しているのは、たったそれだけなのだ。
 それは、押しても引いても代わり映えの無い事実だ。
「一体何なんだよ……! 巫山戯んなよ……。悪巫山戯にしたって、度が過ぎんだろ……っ」
 悪巫山戯?
 自分で言っておきながら、浦風はその言葉に反応した。
 そうだ、悪巫山戯だ。
 頭の中で呟く。
 電話の相手はまるで‘悪巫山戯’をして「楽しかった」とでもいうような口調だった。
「あの電話……あの電話の相手がわかりゃあ……」
 浦風は思い切ったように言うと、勢いよく立ち上がる。
 そして、重要な事を思い出し「っあ」と声を上げた。
「け、ケータイ……どしたっけ」
 高校の指定制服のポケットに手を入れ、ガサゴソとポケット内を模索する。
 あったと言えば、先日制服を洗濯する際に出し忘れた、水で無残になったティッシュの残物だけ。
 そんなものが何の役に立つ。
 浦風はポケットから出した手の平の中にある無残な姿となったティッシュを見て一言。
「……馬鹿にしてんのか!?」
 と、自分勝手に怒鳴ってティッシュの無残な残物を雨水溜まるアスファルトに撒き散らした。

25:りな ◆IoXo:2013/08/12(月) 00:28 ID:G8I

悪巫山戯←なんて読むんですか?
わるふざけ、とか?

バカですいません(< _ _)>

26:マキ:2013/08/12(月) 08:19 ID:2Sc

 りなさん>>

 はいっ。
 悪巫山戯=わるふざけ
 と、読みますねっ^^

 すみません(--;)
 フリガナ書くの忘れてしまって……。

 また、解からないところがあったら言って下さいっ!

27:りな ◆IoXo:2013/08/12(月) 14:14 ID:FYM

>>26
合ってて良かったです(笑)

28:マキ:2013/08/12(月) 15:20 ID:2Sc

 りなさん>>

 他にも解からない所があったら、言って下さい
 多くなるうちに、直さなくてはいけないので……←

29:マキ:2013/08/12(月) 16:15 ID:2Sc

 今は浦風の事を追跡する警察陣はいないが、言動があまりにも大胆すぎる。
 その言動をなんの躊躇(ちゅうちょ)も無く行なっている浦風に事の重要さ等、あまり感じられていない。
「あぁー! 俺ケータイどうしたんだよ!? どっかに落とした? あそこに置いてきた?!」
 あそこと言うのは、警視庁の事だ。
 詳しくは浦風が携帯を見つけたところである。
 携帯の行方としてはどちらの可能性もある。
 しかし、そう言う状況の場合は携帯をもう一度入手するのは無理に等しくなる。
 浦風は大袈裟にも頭を抱え込み「だぁぁああぁ゛!」と唸ってみせる。
 あの携帯、詳しくは携帯に電話をかけてきた声の主と連絡が取れれば現状が変えられるかもしれない。
 そんな考えが浦風にはあった。
 しょせん「しれない」に過ぎない事だが浦風にとっては重要なことだ。
 浦風が路地裏前を通るサラリーマンや若いカップルに「何してるんだ」と言う目で見られ数分が経過した頃。
 浦風は無表情で「っあ」と声を上げ、「あ、アイツなら」と口篭るような声で言う。
「い、いや……考え直せ、俺。あんな奴にカシなんか作ってみろ。一生コキ使われるぞ?」
 壁に手を付いて念仏でも唱えるように言う浦風。
 「いやでも、今はんなこと言ってる場合じゃ」と言ってみたり「でも……」と戸惑ったように言ったりしている。
 一度決心したものの、その思考に割り込んでくるもう一つの思考。
 ブツブツと小声で何か言っている浦風ははたから見れば「変な人」である。
 浦風は数分の間深く早く思考回路を回転させた。
 そして、やっと決心したように「よしっ」と言う。その顔には冷や汗がたれていた。
「が、頑張ろ……」
 と、これから地獄でも見に行くかのように脱力した声で言うとその場から離れようと踵を返した。
 今から向かうのは、浦風が死んでも縁を切りたいと思っている――

 ――‘腐れ縁’と言う名でつながっている‘友人’の家だ。

30:匿名さん:2013/08/12(月) 16:49 ID:F7E

あのー、いちいち感想をくれた方に1レス使って返さない方が良いです。
雑談で注意されかねないですし、見てる方も見にくいです。
私も見ていたんですが、見にくくて、とてもイライラしました。

31:マキ:2013/08/13(火) 11:57 ID:2Sc

 匿名さん>>

 良きご忠告有難う御座います。
 
 ですが、コミュニケーションも無いよりはある方がイイと思い今まで返事をしていた次第です。
 私のような者が書いている小説に懇切丁寧なコメントをくれる方々に返事もせず、
 無視をしろ、と言うのはいささか好ましい物ではないと私自身思います。

 確かに雑談になりかねるかもしれませんが、そのような事になれば
 それこそコメントに注意を呼びかけ、交流掲示板にスレッドを立てます。
 
 今回の匿名様のコメントは今後の忠告だという事で受け取ります。
 しかし、誠意の見せ方は人それぞれです。
 皆さんへの感謝を二、三行の物に怠り、その下に小説を書くというのは
 私自身の誠意の現れにないと思っています。

 今回の忠告、何度も言うように有難う御座います。

32:マキ:2013/08/13(火) 12:22 ID:2Sc

 片桐は、光を無くした瞳で目の前の物に目を落としていた。
 薄汚れた壁に垂れる血痕。
 雨で濡れた地面に立ててある「1」や「2」と白い文字で書いてある黒いプレート。
 片桐は雨が止んで尚も、コンビニで買ったビニール傘を片手にそれを見ていた。
 青い帽子をかぶり、マスクをしている者達が片桐の前を行ったり来たりしている。
 青と黄色が混じる服の背中に英語で書かれている「東京」が一々片桐の目に飛び込む。
「……酷いもんだな。警視庁で白昼堂々と殺しなんざ。しかも射殺と来た」
 黙って立ち続ける片桐の横で、一之瀬が言う。
 険しい顔つきだ。
「馬鹿だね、田崎(たざき)」
 呟くような片桐のか細い声が一之瀬の耳に入る。
 片桐は続けた。
「何が『子供が憧れるヒーローみたいな、警察官になりたい』よ。バッカじゃないの」
 呆れたと言わんばかりの顔で傘を閉じながら片桐は言う。
 「田崎はそんなこと言ってたのか」と一之瀬が訊くと「うん」と片桐は頭を掻きながら答える。
「警察学校時代の同期でさ。いやー、アイツの丸刈り可愛かったなー」
 小さく口角を上げて言う片桐の顔は昔を思う優しげな顔だ。
 片桐の話では毎日アニメの主人公の様な事を言っては熱心に勉学に励んでいたと言う。
 はにかみの笑顔でそう話す片桐の顔を一之瀬は無表情で見つめていた。
「結婚して、子供も生まれたんだろ」
「アイツも私も四捨五入したら三十代だからねー。結婚くらい……子供、くらい」
 声に力が無くなっていく。
 一之瀬は片桐に向けていた視線を前方に移す。
 田崎――トイレの窓付近で射殺された男――の射殺現場が一之瀬の目に焼き付く。
 薄汚れた風に貼られた、田崎の遺体の形を模る白いテープ。
 雨風で証拠が消されないように、柱を立てそこに軽くかぶせられた青いビニールシート。
 その場一体の立ち入りを禁止するために、一之瀬達から離れたところに貼られた黄色いテープ。
 その後ろで騒ぎを聞きつけ、早くも集まった報道陣関係者。そして野次馬。
「ホント……馬鹿な奴だったよ……」
 片桐は、視線を落として目に手をかぶせた。
 一之瀬に自分の涙を見せないために。

33:マキ:2013/08/16(金) 14:52 ID:2Sc

 片桐の泣く姿なんか、見たくなかった。
 出来る事なら、死ぬまで見たくなかった。
 一之瀬の純粋な想いとは裏腹に、片桐は涙を見せまいと顔に手を重ねている。
「……お前も、泣けるんだな。初めて知ったよ」
 想いを表に出さず、嫌味を言うように一之瀬がそう口に出す。
 「私の事、なんだと思ってんのよ……馬鹿」と涙を流しながら非難の言葉をなげる。
「……ホシは俺達が担当してる『幼女刺殺事件』と同一人物らしい。俺たちの管轄内だ。無論操作に回される」
 一之瀬の言いたいことを、片桐はどことなく察した。
 一之瀬の冷静な色を見せる瞳が片桐に向く。
「操作、すんだろ?」
 優しさも込もった冷静な目を向けられると、片桐は「ヒック」と肩を震わせた。
 一之瀬は片桐から返される言葉を待った。
 たとえどんな返事でも良い。
 別にどんな返事であれ、何も言うことはない。
「……捜査、しないわけないでしょうが……! 察せよ、馬鹿っ」
 可愛気の無い返事だ。
 片桐が言った言葉を聞いて一之瀬は単純にそう思った。
「もうちょい、可愛気がある言い方出来ねぇのか。一応は女なんだからよ」
「一応って、何よ! ドアホッ!」
 片桐の反発の声が一之瀬に届く。
 一之瀬はそんな言葉知らぬ存ぜぬだ。
 片桐はしかめた顔付きで、一之瀬を見ると目に浮かぶ涙を拭った。
「……捜査、するわよ。言われなくても」
 不貞腐れた子供のような口調だった。
 しかし、そう言う片桐の目にはいろんな感情が写っていた。 
 喜怒哀楽だけの感情じゃない。
 喜怒哀楽以上でもあり、以下でもある感情。
 一之瀬はため息を吐くと踵を返した。
「行くぞ。捜査会議、始まっちまう」
 無愛想な口調で言われると片桐は「うっさい」と言いながら一之瀬の背中を追っていった。

34:マキ:2013/08/18(日) 17:22 ID:2Sc

 壁から少し出っ張った白いボタンを押せば、聞き慣れた無機質な音がドア越しに小さく耳に入る。
 その音は、家中に響き渡ったのだろうが家のドアが開く気配は無い。
 それどころか、家には人の気配が感じない。
 ここまで来てなんだが、まさかいないのか?
 住宅街に並ぶ二階建ての家の茶色いドアに手と額をくっつけて考えるのは、何を隠そう浦風だ。
 浦風は誰も家のドアを開けない事を理解しながらも、家のインターフォンを再度力強く押し付ける。
 またも、家の中から無機質な音が耳に入る。
 しかし、誰かが出てくる気配は無い。
 眉間に皺を寄せ、いかにもイラついたと言うような表情を作ってドアを睨む。
「おいコラ、矢野(やの)! いんのは、解かってんだよ! とっとと出てこい、コラァ!」
 タチの悪いヤクザのように怒鳴りながらドアを叩いてみるも、返答無し。
 またも脳内に「誰もいないんじゃない?」コールが鳴り響くのを、必死に否定して浦風は続ける。
「居留守かよ、おい! ……っそんなんじゃっ、テメェの大好きな萌えキュンハート何とかも泣――」
 近所迷惑である事を知ってか知らずか、ドアを叩き怒鳴り続けた浦風。
 しかし、そんな浦風の言葉が途中で遮られる。
 その代わり、家のドアが勢い良く開き不覚にも浦風はそのドアに額を強く打ち付ける。
 その時の、鈍い音がその場一体を埋め尽くした。
 「い、いってぇ……!」とドアがピンポイントにぶつかった額を抑えてよろめく浦風。
 同時に、開いたドアと一緒に家の中から足が飛び出し、浦風の腹部をとらえる。
 飛び出してきた足は浦風の腹にストライク。
 腹部に物凄い衝撃が走った。
 一瞬遅れで衝撃が体中に伝わり、浦風の体は大袈裟にも向い側に位置する家の塀に飛ばされる。
 浦風の脳内で先ほどのコールから「っあ、死んだお婆ちゃんが見える」コールに変わった瞬間だった。
 開いたドアから薄緑色のスリッパをはいた足が外に出てくる。
 そして――

「萌えキュンハートナノちゃんだ、このド三下ぁああぁ゛!」

 ――物凄い怒号を上げて、一人の少年が腹を抱える浦風を睨んだ。

35:匿名さん:2013/08/18(日) 20:20 ID:xBM

No.33の11行目、
「捜査」が「操作」になってますー

面白いので頑張ってください!

36:マキ:2013/08/20(火) 18:00 ID:qTs

 匿名さん>>

 っあ、ホントだ……。
 匿名さん、ミス教えてくれて有難う御座います!
 ……すいません。
 確認を怠っていました……。

 教えてくれて、本当に有難う御座います!
 多分、他にもミス有ると思います……←

 「面白い」と言ってくれるのは有り難いですが
 誤字脱字の多い小説って……駄目ですよね……基本的に……。

 こんな小説に、素晴らしきお褒めの言葉をくれて有難う御座います……!
 これからも、宜しくお願いします……!

37:マキ:2013/08/21(水) 20:20 ID:qTs

 物凄い怒鳴りを上げるカチューシャで前髪を留めている少年。
 男でありながらカチューシャをしていると言うのは、珍しいものだ。
 少年は腹を抱える浦風に近づく。
「おいおい、浦風君よー。テメェさぁ、いい歳こいてキャラの名前一つ覚えらんないの? 馬鹿なの?」
 魂が天高く逝き掛けている浦風の服の胸ぐらを引っ掴んで言う。
 その顔は、怒りに満ち溢れた恐怖を感じさせる顔だ。
 一方の浦風は、やはり死にそうな猫の形相である。
「うおーい、浦風くーん? テメェなに死にさらそうとしてんのー? さっさと意識戻せ。殺すぞ」
 発言が一々恐怖をあおっている。
 少年曰く、わざとではないのだろう。
 しかし、浦風にしてみたら少年の発言は違う意味で「堕とし言葉」である。
 少年は一向に返事をしない浦風の首をグラン、グランと縦に振らせる。
 その時も当たり前のように暴言を吐いていた。
「なにシカトしてんだよ! あぁ゛?!」
 返事をしない浦風に怒りを積もらせる少年。
 少年は続けた。
「シカトといじめは万引きより悪い事だからやっちゃ駄目、やったらお母さん泣いちゃう。って習わなかったか?! あぁ゛!」
「っ習ってねぇよ!? 万引きより、シカトといじめの方がレベル高いなんて習った事ないよ!?」
 やっとの事で意識を取り戻し、少年に率直なツッコミを入れる浦風。
 少々、納得のいくツッコミである。
「シカトといじめ舐めんなよ! つか、シカトイコールいじめだからね! 良い子の皆、これ大切だからね!?」
「だったら、シカトといじめ一緒にしろよ! 無駄に尺取ってんじゃねぇよ!」
 真面目な顔で以外にも真面目な事を言って見せる少年。
 それに叫ぶかのようにツッコミを入れる浦風。
 傍から見たら、この二人はどのように映るのだろうか。

38:マキ:2013/08/25(日) 17:12 ID:2Sc

「大体、テメェ何しに俺んち来んだよ! 理由もねぇのに、勝手に人んちきてんじゃねぇよ!」
 少年に言われ、一瞬は「理由も無く来たら駄目ってか?!」と怒鳴り返しそうになる浦風。
 しかし、浦風がこの少年を訪ねた理由を思い出しその言葉を飲み込む。
 そして「っあ、そーだった」と一人納得したように手の平に拳を乗せた。
「あぁ゛? なに、一人で納得してんだよ」
「そうそう、理由があるんだった。って、こんな冷静にしてる場合でも無かった!」
 少年の腕を振りほどき、左右に顔を振る。
 今更すぎる確認だ。
 幸運にも、周りには少年と浦風以外いない。
 大声で漫才を繰り広げていたのに、誰からの注目も無いと言うのは運がイイものだ。
「ちょ、矢野! 理由は聞かず、俺をかくまえ!」
「はぁ? っえ、お前何かやったの? っえ、あれか? 万引きして、追われてんの?」
 本来のここに訪れた理由を完全に思い出し、浦風は慌てたように少年に頼み込む。
 一方の少年は満面の笑みで浦風を馬鹿にするかのように言う。
 その顔と発言にまたも苛立ちを感じて「万引きから離れてくんない?!」とまた飽きもせずツッコミを入れる。
「っとにもかくにも! ……今は、理由を聞かずに俺をかくまってくれっ。頼む……っ」
 小さながらも頭を下げて堂々と頼み込む浦風。
 少年からしたら、こんなに縮こまっている浦風を見たのは初めてだ。
 少年は少し考える間を開けると、目の前の浦風を見て渋々と言った様に口を開いた。

「萌えキュンハートナノちゃんのフィギア五個と特典付きDVDで手ェ打ってやるよ。ったく……」

 どこか困ったような顔だったが、その瞳には慣れ親しんだ友の顔が鈍く映っていた。

39:かりん:2013/08/25(日) 23:41 ID:nYk

おもしろい!!何回見てもおもしろい!!
実はあたし、第1話(?)から読んでたんですよ。いわゆる「かくれ読者」ってやつです。
これからもずっと読んでいくので、頑張ってくださいね!
応援してます\(^_^)

40:マキ:2013/08/31(土) 18:00 ID:7YQ

 かりんさん>>

 コメント有り難う御座います!
 か、かくれ読者……?!

 わ、私の様な者が作った小説にその様な方がいるなんて……っ!?
 不詳このワタクシ、嬉しいの一言しか出ません!

 はいっ!
 これからも頑張って投稿し続けようと思います!
 本当に有り難う御座いました!
 今後もコメント宜しくお願いします!

41:マキ:2013/09/10(火) 14:57 ID:/5A

 矢野(やの)と浦風に呼ばれた少年は、外に出たスリッパのまま家の中に引き返して行った。
 それには家の住人ではない浦風も少々呆れる事を覚えた。
「外出たんだからスリッパ脱げよ」
「良いんだよ別に。リビングと廊下じゃスリッパ変えんだから」
 なぜリビングと廊下でスリッパを変えるのか。
 浦風はその理由を知っていた。
 と言うより、矢野の自宅に来た者は必ずその理由を理解して帰っていく。
 まぁ、矢野の家に来た者など数える程しかいないが。
 浦風は自分の質問にそっけない答えを返されると、呆れたと言うような顔を更に呆れ顔にする。
 呆れた顔のまま、浦風は玄関のドアを閉めその場で革の靴を脱ぐ。
 綺麗な廊下に足を置けば、右に伸びる短い廊下と目の前にある扉が目に入る。
 自然にもその扉の向こうの世界を想像してしまう浦風である。
「おい、何やってんだよ。さっさと来い」
 扉の取っ手に手を置いてそう言う矢野。
 浦風は呆れながらも「お、おう」と言って取っ手に手を置く矢野に近付く。
 すると――
『プルルルッ、プルルルッ、プルルルッ!』
 ――突如となく、浦風の右手にある廊下に置かれた電話が音を発した。

42:りな ◆IoXo:2013/09/12(木) 21:16 ID:lPY

おお!なんだなんだ!
ま、まさか……け、警察ッッ!?!?

43:マキ:2013/09/13(金) 20:47 ID:z2E

 りな>>

 いやいや、それは企業秘密というヤツで(笑)←
 まぁ、まだ明かせないかな
 警察かもしれないし、ただの電話かもしれないし、間違い電話かもしれないし←
 まぁ、きっと、これから解かるはず!
 多分!←オイ

 いつも、コメント有り難う!
 これからが、本番だよ!
 こんな駄作小説だけど、これからも良かったら見て下さいっ!

44:りな:2013/09/14(土) 01:14 ID:OOQ

>>43
駄作なワケないじゃん!
面白いし、読んでて楽しいし!
最高だよ!!
本番待ってるよ!

45:マキ:2013/09/14(土) 21:04 ID:z2E

 りな>>

 そう言ってもらえると、嬉しいよ!
 これからも、楽しんでもらえるように頑張るね!

 さぁて、ちょいと本気出すかー!

46:マキ:2013/09/14(土) 21:40 ID:z2E

「んだぁ、こんな時間に」
 矢野はドアの取っ手から手を離し、浦風のすぐ横にある電話に近付く。
 茶色い棚の上で、白い電話機が『プルルルッ』と音を放つ。
 その音は浦風の耳に痛いほど響き渡った。
 先程の雨音のように。
 あの男が動かなくなった時に聞いた、空を斬る音のように。
 浦風の目が見開かれた。
「その電話……っ」
 嫌な予感がする。
 得も言われぬ感覚が浦風を襲う。
 決定的な何かがあるわけじゃなかった。
 ただ直感的にその電話には出てはいけないと思った。
「うぃす、矢野ですけど」
 浦風の言葉など耳にも入れない素振りで、矢野は受話器を耳に宛てがった。
 そして、数秒の間矢野の動きが停止する。
 少ししてから、驚いた表情で矢野が浦風に視線を送った。
 その視線の意味を、浦風は理解する事が出来た。察する事が出来た。
 矢野が、受話器を耳から離す。その受話器からは――

『浦風君に変わってもらえますー?』

 ――聞き覚えのある、憎たらしい子供のような声が漏れていた。
 これが、始まりなのだ。
 一度終わった、浦風秀哉と言う人間のプロローグなのだ。
 つまり、まだまだ序章に過ぎぬという事なのだ。

 第二話・終わりは、始まりに過ぎない 終

47:りな:2013/09/14(土) 23:56 ID:xt6

もう、ほんとヤバい……
コメントもほどほどにしなきゃいけないけどつい書いてしまう面白さ…(><)

48:マキ:2013/09/15(日) 22:50 ID:z2E

 りな>>

 雑談(じゃないけど)は、控えなきゃいけないけどつい返信してしまう有り難さ(笑)
 まぁ、私も控えなきゃなんだけどね←

49:マキ:2013/09/16(月) 09:42 ID:z2E

冤罪者の鎮魂曲 第三話・幼女誘拐事件

 浦風は耳を疑った。
 と、同時に自分の直感の良さに寒気さへも覚えた。
 矢野が動揺したように浦風に視線を送る。
 その視線が鋭い刃とやって、浦風に突き刺さる。
 浦風は意を決したような表情を作ると、歯を食いしばって矢野に近付く。 
 「お、おい」と動揺する矢野を無理矢理に押しのけて受話器を奪うと即座に耳に宛がてる。
「テメェ、どこの誰だっ」
 受話器を耳につけるや否や、浦風は即座にドスの効いた声で言った。
 電話越しの人物の笑い声が、嫌でも浦風の耳に入ってくる。
『単刀直入だねー、うん。面白いから良いんだけど。うん』
 人の怒りを買うような口調だ。
 浦風は今にも受話器を目の前の壁に叩きつけたくなる衝動に駆られるも、なんとか堪える。
 衝動的にでもそんなことをすれば、折角望んで訪れたチャンスが泡の如く消えていってしまう。
 そんな気がしたのだ。
「テメェ、人のことおちょくってんのかよっ。それとも馬鹿にしてんのかよっ、ハッキリしろや」
 矢野の許可があれば、今にでも壁を殴って溜まった怒りを発散していただろう。
 驚くほどの短気であるのは、浦風自身が一番に理解していた。
『まさか! いつ、誰が、何時何分何十秒、地球が何回回った時にそんなことしたんだよー!』
「お前、いい加減しよろ。俺は小学生かなんかのくだらん喧嘩に巻き込まれてんのか、あん?」
 なんとも幼稚臭い言い分に、浦風はやはりドスの効いた声で返答をするのだった。

50:戦刃むくろ ◆Anf.:2013/09/18(水) 00:21 ID:e3M

葉っぱ天国の素人が創作した小説で初めて面白いと思った。
頑張れ。

51:マキ:2013/09/21(土) 10:30 ID:TUE

 戦刃むくろさん>>

 コメント有難う御座います
 面白い、と言っていただけてとても嬉しく思います(#^.^#)
 ですが、葉っぱ天国には私のような者が作る小説よりも
 はるかに高レベルな小説を作る方々が大勢います。
 私なんて、足元にも及びません

 コメント、誠に有難う御座います
 これからも、頑張ります
 お暇があれば、またコメント宜しくお願いします

52:マキ:2013/09/21(土) 23:24 ID:TUE

『と、こ、ろ、でー』
 幼稚臭い事をズラズラと並べられていると、不意に電話越しの人物はそんな事を言った。
 変に一文字一文字の間を空けたのは、何を思っての事なのだろうか。
 浦風は反発の言葉を投げかけようと口を開く。っが、それよりも早く電話越しの人物は続けた。
『浦風君ってちっちゃい子好き?』
 間髪入れずに放たれたその言葉。
 それを聞いた途端、浦風は固まった。そして、どう答えるべきか迷った。
 ちっちゃい子、とは、‘幼女’と捉えるべきなのだろうが。
 そして、もっと考えるのであれば、その質問は浦風が幼女好きなのか聞いているということである。
 それを人知れず察した浦風は、あからさまに顔をしかめた。
「あの、さーせん。電話切っていいッスか?」
『っえ?! なんで?! ロリコンなのか、聞いてるだけじゃ――』
「黙れ、クズがッ」
 浦風からなんとも言えない殺気がそこらじゅうに放たれる。
 殺気を空気的に感じると、矢野は「壁殴んじゃねーぞー」と浦風に念を押す。
『まぁまぁ。話は最後まで聞いてよ。……君も男でしょ? だったら、‘ミッション’とか訊くと燃えない?』
 口角が上がった。
 電話越しでもそれが理解できるほど、電話越しの人物は話し方に感情を込めたようだった。
 「……わりぃな。俺はミッションとか言う言葉には心揺るがねぇんだよ」と浦風は言う。
 電話越しの人物は笑った。
『でもさっ。人生に一回くらい、あってもイイとは思わない? とっても、とっても刺激的な……――』
 浦風は表情を険しくし、受話器から発せられる声に耳を傾けた。
 人を小馬鹿にしたような口調の言葉に。
 自分の人生をぶち壊すことになる言葉に。

『――死ぬほど充実した、‘ミッション’って』

 やはり、人のことを馬鹿にしたような口調だった。

53:りな ◆fDt6:2013/09/21(土) 23:40 ID:GgY

「さぁ、どんなミッションなんだっ!?」
次回浦風がーーーー………っっ!?

↑心の実況↑

54:マキ:2013/09/22(日) 09:11 ID:TUE

 りな>>

 さぁて、どんなミッションでしょうか〜(2828←
 乞うご期待! って言っておきたいけど、期待される程の物でもないしね-▽-
 まぁ、浦風が死なない事を祈っていて下さい←

 浦風「っえ゛?」 

55:マキ:2013/09/22(日) 16:50 ID:TUE

 ミッションとは、一体どういう物なのか。
 浦風は顔をしかめた。
「自分の素性を明かさねぇのに、ずいぶん勝手なこと言うなぁ。テメェ」
 低い声で言うと、受話器から鼻で笑うような声が聴こえた。
 浦風が投げている質問は、問いかけて良い質問と言えるはずだ。
『アッハハ。僕の素性? そうだな〜……。容疑者Xとでも名乗っておくよ。面白いでしょ?』
 面白いわけあるかっ、と言ってやろうと思ったもののやめることにした。
 言ったら言ったで、電話越しの人物のペースに乗せられているような気がしたからだ。
 代わりと言ってはなんだが「っで、ミッションってなに」と素っ気ない口調で聞く。
 『クスッ』と鼻で笑うのが、受話器から浦風の耳に入った。
『君が警視庁に呼ばれて、事情聴取を受けた理由って何となく解かってるよね?』
 浦風が所轄署を差し置いて速攻で本庁に連れて行かれたのは、どうも幼女刺殺事件が関連している。
 どうにも、事件のナイフに浦風の指紋がついていたのが浦風をマークする決め手となったらしいが。
 詳しい理由は知らないものの、それくらいなら通常は使わない浦風の頭でも理解している。
「……餓鬼殺しで、らしいな。それ以上は――」
 「それ以上は知らない」と言うつもりが、不意にも脳裏に映った光景がその言葉を遮断させた。
 光景。刑事の男が、突如動かなくなった。あの光景。
 声にならない嘆きが浦風の口から溢れた。
「ッ――……!」
『っお? まさか、まさか? 思い出しちゃった? あの刑事さんが死んじゃった時のこ、う、け――』
「うるせぇッ!」
 焦りを隠せない浦風の怒鳴り声が、その場に小さく響いた。

56:りな ◆fDt6:2013/09/22(日) 20:53 ID:OOQ

もしかして……警察じゃなくて例の携帯電話の人……?(勝手に警察だと思っている)

そして、犯人!?

浦風くんがんばれ〜っ

57:マキ:2013/09/23(月) 12:54 ID:TUE

 りな>>

 浦風君、応援されてるんだから頑張ってね!
 私も応援するからっ!
 浦風「いやいや。俺の今後を決めるのはお前だから。
  頑張れって言われてもどうしようもねぇんだけど……」

 りなも応援してるんだから、頑張ってねっ!←念押し

 浦風「……はい……」


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