冤罪者の鎮魂曲
冤罪。
それは罪無き者が罰せられる事。
何時の時代になっても、冤罪は消えない。
そもそも、冤罪が生まれ行く原因は「人が裁く」と言う事にある。
冤罪と言うのは、どうして生まれるのか――……
警察が間違った方法で真実を得ようとしているからか――……
新犯人が証拠を消したり、他人を犯人にしようとしているからか――……
いや――……
冤罪者は結局を言うと、悪いのは警察ではなく――……
『間違われる奴が悪い』
――らしい……。
【作者コメント】
こんにちは、マキです^^
アドバイスや感想コメント大歓迎です^^
(荒らしや中傷はやめて下さい)←
『ドォォオオン――!』
地鳴りのような音が耳に入って着た瞬間、片桐、一之瀬、龍崎の三名は目を見開きその身を震わせた。
「な、なに?!」と焦りの声を漏らす片桐。
三人はその声に同感するかのように目を見開きあたりを見渡した。
そして、数十メートル行ったところにある建物から煙が立ち上がっているのが見えた。
「ちょ、あそこって浦風秀哉がいるって言うデパートじゃ」
片桐が驚いたような口調と表情で言ったとほど同時に龍崎は駈け出した。
それを追って一之瀬も駈け出す。そして、またもそれを追うように片桐も駈け出した。
* * *
目の前の光景が、正直信じられなかった。
ただ呆然としていることしかできない自分を、他人はどう思うのか。
そんなことを考えながら浦風は目の前の光景を黙って見ていた。
燃え上がる炎。
床に倒れる人。
地面に流れる血。
鼻に届く鉄の香り。
聞こえてくる喚き声。
そんなものが浦風の周りを包む。そんなものが浦風の世界を埋め尽くす。
「怖い」と言う感情も「マズい」という思いも「嘘だろ」と言う言葉もなかった。
「……なんだ、これ」
呆然とする中で、それだけが出せた言葉だった。
燃え上がる朱色の炎を目に、浦風は成す術も無く先ほどまで平穏だったデパートの中庭に座り込んでいた。
「……おにいちゃん?」
まるで魂が抜けたみたいにボーっとしていた浦風だが、不意のそんな声に我に返った。
そして声のした方を見れば先ほどの女の子が今にも泣きそうな顔で浦風を見ていた。
浦風は「あー……」と思いながらその女の子を見た。そして、手に握っていた携帯を耳に宛てた。
『ツー、ツー、ツー』と無機質な音が流れてくる。
「おにいちゃん……、だいじょうぶ?」
なんの感情もこもらない顔で立ちあがった浦風に女の子が声をかける。
色の無くなった浦風の瞳に泣きそうな顔の女の子の声が写る。
どこか遠くからサイレン音が聞こえて来た。
女の子がサイレンのする方に視線を向けた。浦風はそんな女の子の頭に手を置く。
「……おにいちゃ」
「わりぃ。お前の母ちゃん探せねえは」
女の子の言葉をさえぎり、浦風は静かにそれだけ言う。心配そうに「おにい、ちゃん?」と声をかける女の子。
それを見下ろしながら浦風は来ていたパーカーを女の子の頭からかぶせた。
「いいか、がきんちょ」と前置きをして浦風は女の子に言う。
「なるべく早く、こっから離れろ。どこでもいい。誰かいるところにだ。誰でもいい。わかったか」
静かにゆっくりそう言うと、浦風は心配げな顔をつくる女の子をその場に置いてその場を去った。
別にどこに行くでもない。ただ歩を進めたかっただけだ。そうでもなければ狂ってしまいそうだった。
今にも壊す勢いで手元の携帯を握り、浦風は歩を進めた。
なんの感情から来たのか解からない思いを胸に、なにも考えずに。
「なにこれ、ひっど」
目の前のデパートから黙々と空へ立ち昇る煙を見ながら、龍崎は他人事のように声を漏らした。
デパートからは人の群れが外へ必死に逃げだしてきている。子連れの女性の割合が多い。
それとは対照的に早くも駆けつけた消防車から一斉に数人の男たちが現れデパートの中に入っていく。
片桐たちが駆け付けた時、デパートはすでに困惑と悲鳴が響く場所と化していた。
無論、警察ではあるものの消防隊ではない片桐たちに出来ることなど一つも無い。
出来て逃げ遅れた人たちの誘導だろう。
「出火元はデパートの中庭! 至急、救急隊、及び消防隊はむかえ!」
消防車の近くでそんなことを言っていた人がいたのを片桐は知っていた。
だから出来ることなら中庭へ行って誰か助けてやりたかったが、
「消防隊がいる今、俺たちに出来ることは無い。ここで様子見だ」
と言う一之瀬に止められた。
片桐は悔しそうな顔をしながらその言葉に従うことにした。
だが、
「……」
龍崎は一人、真剣な顔つきで見える範囲のデパート一体を見ていた。
と言っても、円形方のデパートの表面を流すように見ていたにすぎないが。
そして、ある一点を見た瞬間、龍崎は顔の動きを止めた。そしてそこに向かって走り出した。
「! りゅ、龍崎?!」
突然の行動に反応が遅れる片桐と一之瀬。
龍崎はそんな二人の声も無視して『関係者以外立ち入り禁止』と赤文字で書かれた白い扉を開けた。
きゅーです。
やっぱり、ストーリー構成と登場人物のチョイスが良いですね。
警察達の性格も真面目だけではなくてGOODと思います。
しかも、刑事物とか、サスペンスなのは、若干読み飽きる部分もあるのですが、
この作品は、飽きずに読みやすいので私の大好きな小説です!
あと、なんだか
上から目線になってしまいました!
スイマセン(>_<)
きゅーさん>>
いつも、コメント有難うございます
そう言って頂けると、不肖このワタクシ、嬉しいの一言で御座います←
誰か一人でもそう言ってくれる人がいると思うと、
とても嬉しいですね。やっぱり。
上から目線だなんてとんでもない!
胸を張って言いたい事を言える人はいい人じゃないですか!
今後も、バシバシ言いたいこと言って下さい!
コメント、本当にありがとうございました!
今後もお暇があれば、ぜひお願いします!
龍崎は、浦風くんと一緒に居た女の子を助けに行ったのかな?とか、推測してみたり(笑)
107:マキ:2013/12/15(日) 09:35 ID:zic れい>>
推測されると、今後を考えている自分がなんか嬉しくなる
『おー。そう考えたかー。おしいww』とか思いつつ、今後の展開を作成(笑)
まあ、自分の考えてる展開に不満があったらみんなの予想に身を任せちゃうかm((殴
いつも、コメント有難う!
れいの期待に添えられるような作品をつくっていけるよう頑張るよ!
「ハァ……ッハァ……ッフ……ッハ」
息を荒げ走っていれば、やっと自分がどこにいるのか解からないのが理解出来た。
よくよく見ればいつの間にか人気の無い、薄暗い通路にいた。
「どこだ、ここ」といろんな意味でかいた汗をぬぐう浦風。
周りに人らしき者は一人としておらず、見えるのは電気のついていない薄闇の通路と、
「? ボイラー、室……?」
『ボイラー室』と赤字で書いてある白い扉だけ。
一瞬考え、ここからならどこか外へつながる道があるのでは? と思うと、浦風は即座にその扉を開いた。
すると、
『ドン!』
重々しい音が、行き成り耳に飛び込んできた。そして、空を切るような聞き覚えのある音も。
反射的に「どわっ?!」と言いながらその場にのけぞる。鉄製の床に手をつき伏せると声が飛んできた。
「っあ、わりぃ。当たった?」
のんきな声だった。
浦風は鉄製の床につけられた鉄柵に手を伸ばし、柵の隙間から声の飛んできた方に視線をやった。
浦風が伏せている通路の下、本当の地面と言えばいいのか分からい場所に。
そこには黒い短髪をこしらえ、右手に黒い拳銃を握った男が、
「浦風秀哉だな。幼女殺人事件、及び、刑事殺人で――」
男が淡々とした口調で言っていると突然男のズボンのポケットから音楽が流れて来た。
携帯かなにかの受信音楽だろう。
男は舌打ちをすると拳銃の銃口を浦風に向けながら携帯を開いた。
「はい、こちら龍崎。んだよ。今いいとこなのに――」
『アンタ今どこ!? ――独断行動たぁいい度胸してるなテメェ! 殴るぞコラ!』
男と数メートル離れている位置にいる浦風からも電話から流れる声が聞こえて来た。男と女の声だった。
浦風は行き成り聞こえてきた大きな声にびくりと体を震わせた。
龍崎、と名乗っていた男が携帯から少し耳を離し手話のような動きで浦風にゴメンと言っている。
「っあ、案外良い人」と思いながら銃口を向けられていることを忘れかける浦風。
『ヴー、ヴー、ヴー』
不意に制服のズボンのポケットに入れた携帯が音を立てて振動を起こした。
またもびくりと体を震わせる浦風。すぐにポケットから携帯を取り出し電話相手を見る。
まあ、相手など見るまでもないが。
浦風は『非通知』と出ている相手を見ながらあからさまに顔を険しくさせ、受信ボタンを押した。
「……ッテメェ! さっきの爆発、一体なんだ! テメェ、なんか知ってんだろ!」
受信ボタンを押した直後に怒鳴るように叫んだ。龍崎が怪訝そうな顔で浦風を見る。浦風はそれを無視。
電話から返答らしき声は聞こえてこない。っが、
『浦風君、浦風君! その男の人! 死んじゃったりしちゃったりしちゃうかもしれないよ!』
国語能力の無い言葉に、「っはい?」と声をあげてしまう浦風。
気を取り直して携帯に話しかけている龍崎に視線をやり、その周りにも目を向けてみる。
すると――、
突っ伏している浦風からすれば、はるか上空に近い天井に、赤く光るなにか。
見覚えのあるそれを目に、浦風は目を見開いた。
『そこボイラー室でしょ? 運が悪いねー、浦風君も。なにもそこに逃げ込むことは無かったのにさ』
まるで語尾に音符マークでもつけられ、可愛さアピールでもしてくるような女子の口調に怒りがわいた。
しかし、怒りの言葉を口にするよりも先に体が動いていた。
気付いたら鉄柵に足をかけ、龍崎に飛びつこうとしている自分を、浦風は「大馬鹿だ」と思った。
焦りからか、呆れからか、怒りからか、浦風の口角が上がった。
龍崎が浦風の突然的な行動に驚き即座に銃口を向けるも、浦風が龍崎に飛びかかる方が早かった。
「テメ……!」と携帯と拳銃を両手に握って口ごもる龍崎を下に、浦風は一言だけ声に出した。
「ボイラー室で爆弾が爆発したら、どうなるよ?」
苦々しい笑みで言うと、浦風は視線をはるか頭上の天井に向けた。
* * *
『ドォォオオンッ――!』
地響きのような音がして携帯を片手に握った片桐と険しい顔をした一之瀬が体を震わせた。
他にも、その場にいる消防隊や警察陣、そして報道陣も身震いをし耳をふさいだ。
そして、その場にいる皆が皆、視線を目の前のデパートに集中させる。
見れば、デパートの一部から黒い煙が炎と一緒に空へ向かって上がっているではないか。
「……ざき、龍崎! ねえ、ちょっと! 龍崎!」
携帯に向かって叫ぶ片桐。
携帯からは『ツー、ツー、ツー』と言う無機質な音しか聞こえなかった。
女の子じゃなくて、浦風を見つけたのか!
112:マキ:2013/12/22(日) 16:37 ID:zic れい>>
ご明答!
さあて、これからどうしようかなー(にや←
耳に届く思いの無い無機質な音は片桐の顔に絶望の色を浮かばせた。
「嫌だ」と言う言葉が、片桐の脳内を埋め尽くす。
その隣で、一之瀬も黒縁眼鏡のレンズに空へ立ちこむ黒い煙を映しながら息を呑んだ。
二人の後ろで消防隊や警察官が大声で何か叫ぶ。
「……ざき」
片桐はか細い声で呟いて弱々しく一歩足を踏み出した。
そして、はっきりと「龍崎」と声に出して走り出そうとする。
それを止めたのは一之瀬だ。
「やめろ、片桐! 今行ったら……」
「離してよ、黒眼鏡!」
片桐の腕を力強く掴み、言った一之瀬に片桐の率直な言葉が飛ぶ。
「くろめが……!?」と自分につけられた悪態に言葉を一瞬なくす一之瀬。
しかし、すぐに気を取り直して、片桐に説教でもたれてやろうかと一呼吸置く。
だが、一之瀬が言うよりも早く片桐が、
「早く行かないと龍崎が死んじゃうじゃない! もう、嫌よ! 知り合いが死ぬのなんて!」
そこまで聞いて、一之瀬は片桐の腕を掴む手の力を少しだけ緩めた。
その時、頭の中にはつい数時間前射殺された刑事の顔が――。
そこまで考えて一之瀬は思考回路を強制的に止め、片桐の腕を力強く掴んだ。
「じゃあ、お前は死んでいいってか?!」
怒鳴るように叫ぶと、片桐は怒られた時に子供が作る顔をつくった。
一之瀬は真剣な顔で、今にも泣きそうな片桐を見据える。
「……冷静になれ。お前一人で突っ走っても、なにかが解決できるわけじゃねえだろ」
片桐は大粒の涙を流しながら、数秒を置いて「ごめん」と一之瀬に返した。
「――……えぇっと、誰が死んじゃうんだって……?」
泣き出す片桐の肩に手を添えて火を上げるデパートに目をやる一之瀬の背後から聞き覚えのある声がした。
一之瀬は驚きから目を見開き即座に振り返る。
そこには、見覚えのある男の顔が。
「りゅ、りゅう、ざき……」
一之瀬は驚きが隠せないと言う口調でそう言った。
片桐が一之瀬の言葉に目を見開き素早く下げていた顔を上げる。そして、一之瀬の背後に目をやる。
やはり、そこには見覚えのある男の顔があるわけで。
「りゅう、ざき……?」
疑問形の言葉になってしまった。
しかし、自分の数メートル前にいるのは確かに見に覚えるのある男。
着ている白い服が所々ボロボロで、かすり傷なんかも見える。でも、その男は確かに。
「りゅうざき……!」
片桐は大粒の涙を流しながら男の名前を叫んだ。その声を聞いて男がため息をついた。
一之瀬がパクパクと口を閉じたり開いたりして信じられないと言う文字を顔に浮かべている。
男――龍崎はムッとした顔で「んだよ」
「お、お前、ど、どこから?! ッと言うか、い、今の爆発は? お、お前、な、なんで」
「ああ? なに? 俺がここにいちゃだめなワケ? 死ねってか? 殉職(じゅんしょく)しろってか?」
「誰もそこまでは言ってないだろうが!」
ムキになって怒鳴りを上げる一之瀬とは対照的に片桐は今だ泣き止む素振りを見せない。
龍崎はそんな二人を交互に見比べてもう一度ため息をついてから頭を掻いた。
そして、「まあ、ちとあってな」といって明後日の方向に視線を向けた。
* * *
「ボイラー室で爆弾が爆発したら、どうなるよ?」
…ん?ボイラー室て何すか?←アホ
116:マキ:2013/12/26(木) 18:28 ID:zic ボイラー室って言うのは、暖房を管理する部屋のことだよ^^
でねえ、ボイラー室で爆弾が爆発しちゃうと((ry
突然そんなことを聞かれた時には、一発ぶん殴って説教でも垂れてやろうかと思った。
ボイラー室で爆弾が爆発? そんな事起こってみろ。明日の新聞はそのことで持ちきりだ。
そんなことも理解出来ないのかと、目の前の青年に怒りを思わせる視線を向けた。
青年は苦々しく笑っている。
「……知ったこっちゃねえな。浦風秀哉、幼女殺害、並びに警官殺害でたい――」
逮捕、と言いたいところだったがあることに気付きその言葉を止めた。
なぜ、目の前の青年は行き成りそんな話をし出した?
単なる時間稼ぎ? ならば、飛びかかるようなリスクが多いことはしないはず。
そう言えば、先ほど天井を見ていたような――。
そう思うと、龍崎はおもむろに首を動かし視線を天井に向けた。
明かりが無いため、天井なんてほとんど見えない。だが、暗がりの天井で光る何かが。
赤く光るなにかが――……。
それをぼんやりとだが直視した瞬間、龍崎は息を呑んだ。そして、目の前の青年に喰いかかった。
「てめえ! あれ爆弾か?! ボイラー室で爆発なんざ起こしてみろ! ヘタしたらてめえも俺も――」
「やっぱり、爆弾すか」
龍崎の言葉をさえぎって青年は引きつり笑顔で言葉を流した。龍崎は目を丸くする。
「て、てめえが仕掛けたもんじゃねえのかよ?」
「んなわけねえだろ。仕掛けたのは、多分『容疑者X』とか名乗ってるオチャラケ魔であってー……」
頭を抱えて説明する青年を前に今度は眉をひそめる龍崎。
容疑者X? オチャラケ魔? この犯罪者高校生は一体なにを言っているんだ?
そんなことを考えながら、龍崎は目の前の殺人魔を見据えた。
すると、龍崎の思考を顔を見て読みとったのか、青年が訝しげな顔をして
「あー、言っとくけど、俺ガキ殺しの犯人じゃねえから」
と言った。
そーだよ!浦風くんは犯人ちゃう!
「ボイラー室で爆発」<検索>
浦風君を心配してくれる人が一人でもいると思うと、私が嬉しくてたまらないよ……ッ
ぜひとも、れいだけでも浦風君を信じてあげて! たとえ、浦風君が死んでも←おい
龍崎は顔をしかめて、「今更言い逃れか」ときつく言った。龍崎の前で青年は困ったように頭を掻く。
「今更って言うか、朝も言ったっつーの。それを聞かなかったのはあんたらだろ?」
青年は呆れを込めた顔でそう言った。龍崎はさらに表情を険しくさせる。青年はその顔を見て、黙った。
少しの間、その場に沈黙が走ったかと思うと青年は悲しそうな顔で目線を落とした。そして口を開いた。
「たしかに、俺は四捨五入したら犯罪者なのかもしれねえ……でも、ガキ殺しなんざ……」
「しねえってか? 笑わせんなよ犯罪者。証拠はきちんと上がってんだ」
「指紋だけじゃ引っ張れねえんじゃねえのかよ」
「アリバイもねえだろうが。それに警官殺人に至っては、目撃証言もあんだよ。残念だったな」
龍崎はニヤリと笑って見せた。
しかし、それとは対照的に青年は目を見開いて驚いたような顔をしている。
青年が、「け、警官殺人?」と問いかけるような声を出す。
龍崎はしらを切るつもりかと思い、「てめえ、また言い逃れか」と問い返す。
「いや、だから、警官殺人って、なんの話し――」
「とぼけんな、犯罪者。警視庁で起こった警官射殺事件だ。てめえが犯人のな」
青年はまたも、目を見開いた。そして、「射殺って……誰が死んだんだよ」とか細く言う。
龍崎はまたも顔をしかめ、目の前の青年を睨んだ。青年はまだ驚いたような顔をしている。
「てめえがトイレに行くっつって、そこで殺した奴だよ。忘れたんじゃねえだろうな」
少しの間を開けてそう言うと、青年は覚えがあるのか今以上に目を見開いた。
青年の口から、「っは?」と言う声が漏れた。
「死んだって……あ、あの、兄ちゃん、が……?」
青年の口からこぼれるその声は、ひどくか細く聞くのが困難なほど小さかった。
携帯拾ってバァン!のシーンだっっ(汗)
122:マキ:2013/12/29(日) 19:00 ID:zic 小説上は笑うところではないですが、今は笑って言いましょう←
ピンポーン! 大正解!
青年は、ひどく困惑したような顔をつくると静かにうつむいた。そして、黙りこんだ。
沈黙がその場を包む中で、龍崎は目の前の青年の言動が理解出来なかった。
なぜ、行き成り黙りこみ、うつむいて、手を、手を震わせているのだろうか。
龍崎は困惑から、「お前、なにやって……」と戸惑いながら声を漏らす。だが、青年から返答はない。
少しの間、その場を沈黙が包んだ。そして、それを青年が砕いた。
「そっか、そっか! あの兄ちゃん、死んじゃったんだ! まじでか! そりゃ、残念!」
最後に、「あの人とは仲良くやれる気がしたんだけどなあ」と言って、青年は勢いよく立ち上がった。
立ち上がると、腰に手を宛てて鼻高らかに笑いだした。「そーか、そーか」と言いながら。
龍崎はその言動に、あっけに取られ少しの間、なんの反応も出来なかった。そして我に返った時――。
『ガン――ッ!』
龍崎は思いっきり青年の頬を殴った。
変なうめきを上げて、青年は地面に体を打ち付けた。
龍崎は、険しい顔で手を強く握りしめながら荒々しく息づいていた。
龍崎は、地面に横になる青年に向かって怒鳴りの声を上げた。
「てめえは……っ、てめえは、人の死を一体なんだと思ってんだ!?」
思いっきり怒鳴ると、龍崎は肩で息をして地面に寝転がる青年に目を落とした。
地面に寝転んだまま、青年は黙っていた。
龍崎はまだ荒い息で転がっている青年を睨んでいる。
少しの間、またもその場に沈黙が走った、かと思うと。
「じゃあ、なんて言やあ良いんだよ?!」
青年が寝転びながら叫んだ。青年は寝転んだまま叫んだ。
「素直に泣けばいいのかよ! ご愁傷様ですって肩を落とせがいいのかよ! 金でも出せばいいのかよ!」
龍崎は青年に近付き、「てめえ……!」と言いながら青年の服の胸倉を掴んだ。
そして、青年に向かって怒鳴りでも上げてやろうかとしたが、無理に終わった。
なぜなら、青年が唇を噛みながら必死に声を抑えつつも涙を流していたからだ。
龍崎は、それを見た瞬間言葉を無くした。逆に青年が龍崎に叫んだ。
「――んなこと出来るわけねえだろ! 俺そんな強くねえんだよ! 俺そんな良い人じゃねえんだよ!」
龍崎の手の中でもがき、掴まれていた胸倉から龍崎の手をほどくと青年は体勢を取り直した。
そして、先ほどよりも小さな声で、しかしよく聞こえる声でつづけた。
「俺……っ、そんな器用な人間じゃねえんだよ……っ!」
目から流れ出る涙をぬぐって、青年はかすれる声で告げた。
龍崎は、言葉を失い、その場に立ちつくすことしかできなかった。
まるで自分が悪者のような立場になってしまい、龍崎がどうしようかと悩んでいると。
『ヴー、ヴー、ヴー!』
と、言う携帯の振動音が聞こえ、目をむいた。
見れば目の前の青年が涙を流しながらズボンのポケットから携帯を取り出し耳に宛がっているではないか。
「はい!?」
青年が涙声のまま大声で電話越しに叫ぶ。
龍崎の位置からでも、『おー、こわ』と言う電話越しの声が聞こえた。
「てめえ! よくも、まー、電話なんざかけてこられたな! さっさと爆弾止めろ!」
「ああ? 時限爆弾じゃねえから問題無い? ふざけんなよ、てめえ!」
「ああ? もう泣かないで良いの……お前、まじ死んだ方が良いわ! って言うか死んでくんない?!」
電話を耳につけたままなにやら叫びまくる青年を前に、龍崎は目をパチクリさせた。
青年は電話越しの人物となにやらギャーギャーワーワー叫んでいる。
しかし、少し経つとそれがピタリとやんだ。
叫んでいた青年が行き成り静かになり、電話の相手と真剣になにか話している。
そして、なにかを言い終えて電話を切った。舌打ちをするのが龍崎にも聞こえた。
青年が、涙の跡を残した目を険しくさせて龍崎を見た。
「――……刑事の兄ちゃん、とにかく、あれだ、あんた、あれ、協力しろ」
龍崎は、反射的に、「はあ?」と声を上げた。
第四話・幼女救出作戦 終
冤罪者の鎮魂曲 第五話・人が死ぬと言うこと
龍崎が反射的に、「はあ?!」と声を上げたとほぼ同時に青年は携帯の画面で時間を確かめていた。
青年は舌打ちをするとズボンのポケットに携帯を入れ龍崎と向き直った。「時間がねえ」
「とにいかく、今は協力してくれ」
そう言いきると青年は龍崎の顔も見ようとせずにボイラー室の中を見渡した。なにかつぶやきながら。
龍崎は通常あまり使わない頭を使って考えた。
協力、とはなんの話しだ? そしてさっきの電話の相手は? 第一、なぜ警察の自分に協力を求める?
考えれば考えるほど頭が痛くなってくる。そんな龍崎に、「おい」と声がかかる。
青年が腕まくりをしながら、「ちょい、こっち来い」と龍崎を手招き。
「……っ、お前、さっきの電話……、つーか、犯人じゃねえとか……、あと、協力って」
なにを中心に話していいかわからず、話しの内容がバラバラになる。
戸惑ったような龍崎の口調に青年は、龍崎の困惑≠察した。
「俺はガキ殺しの犯人じゃないし、協力してもらわねえと俺たちは死ぬ。今はそれだけしか言えねえ」
まっすぐな瞳と視線で言われると、龍崎は驚いたように目を開き目の前の青年を見つめた。
戸惑いと困惑を込めた口調で、「お前……ッ」と口ごもった。青年は静かに笑うと、
「とにかく、早く手伝え。爆弾なんかで死んでたまるか。あと、もう犯罪者とか呼ぶんじゃねえぞ」
青年、もとい、浦風秀哉は龍崎を指さしてはっきりとそう言った。
みなさん、新年明けましておめでとうございます。
去年はどんな年でしたか? そして、今年はどんな年にしたいですか?
わたしは、今年中に、『冤罪者の鎮魂曲』の半分は終わらせたいです。
一年の内に半分=B……亀更新こじらせすぎですね。はい。すみません<(_ _)>
まあ、中学二年生になるのでリアルにそうなるかもです。辛いです←
さて、これはワタクシ事なのですが。
今年になることで、『冤罪者の鎮魂曲』の更新六ヶ月記念と成りました。(正確には十三日)
早いものですねー。気がついたら、あっと言う間に月日が流れていました。
そして、六ヶ月も更新していたのにまだ五話になったばかり。
我え、舐めとんかい。亀更新すぎるだろ(見えない威圧感)。と、自分にツッコミを入れてしまいます。
もう、まずいですね。途中挫折が見えてきてしまうような気がします。絶対したくありませんが。
そんなこんながあったのが、わたしの一年間でした。
この一年間、個人的にもいろんなことがありました。
そして、葉っぱ内でもいろんなことがあったと思います。
それは、今後も変わらないものだと願っています。
来年も再来年も、その次の年も。その次も。ずっと、ずっと。変わらないことを願います。
そんな思いと思い出を胸に、わたしは一年を開けようと思います。
みなさんはどんな思いを胸に一年を開けるのでしょうか? 良い思いですか? 悪い思いですか?
どんな思いでも、それは今後の成功に、そして今後の幸せにつながることを願います。
では。
新年明けましておめでとうございます。
今年も、去年と同じようなお付き合いをお願い致します。
マキ
今年もよろしくねー!
128:マキ:2014/01/01(水) 10:35 ID:MZU 明けましておめでとうございます!
今年もよろしくね!
*えんざいしゃのちんこんきょく(れくいえむ)* お正月、番外編
作者「はい、こんにちは。『冤罪者の鎮魂曲』の作者でございます」
浦風「あけおめでーす。『冤罪者の鎮魂曲』の主人公、浦風秀哉です」
矢野「それの腐れ縁友人、矢野翼でーす」
片桐「でもって、浦風を逮捕する刑事の片桐でーす(笑顔」
一之瀬「その同僚の、一之瀬でーす」
龍崎「で、無関係の一般市民、龍崎君でーす」
片桐/一之瀬「「己も警官じゃ、ドアホ」」
浦風「(こわっ)」
矢野「(日本が一番平和な国って誰か言ってなかったっけ?)」
作者「っで、今回本編を無視してなんでこんなことをしたかと言うと――!」
浦風「どーせ、くだんねえ理由だろ? 本編書くの面倒くせえとか、本編書くの面倒くせえとか」
矢野「そうそう。本編書くの面倒くせえとか、本編書くの面倒くせえとか、本編……(ry」
作者「本編書くの面倒くせえ、しか言ってないじゃん?! 言っとくけどそんな理由じゃないからね?!」
浦風/矢野「「!?」」
作者「リアルに驚くのやめてくれない?! 涙が出ちゃうからっ」
片桐「っで? なんで、行き成りこんな番外編を考え付いたわけ? 理由、あるんでしょ?」
作者「よくぞ聞いてくれました! 実は、今回このように番外編を開いたのは他でもなく――!」
五人「「「「「他でもなく?」」」」」
作者「本編も思いつかないんで、息抜きがてら暇つぶしでもと思いましてー。あっはは」
浦風「……っえ。それが、この番外編の……開かれたって言うか、とにかく理由……?」
作者「ん? ええ、まあ? なにか問題でも?」
五人「「「「「……」」」」」
作者「ではでは! たかだか数十行のお付き合いでしたが、これにて番外編閉幕にございます!」
浦風「こんなヤツに少しでも期待した俺がバカだった。……おい矢野。本編戻んぞ」
矢野「命令すんなー。って言うか、浦風君作者に期待しての? だいぶバカにしてたように見えたけど」
一之瀬「片桐、龍崎。俺たちも本編に戻るぞー。台本読みなおしとけー」
片桐「言わずもがなよ。次、龍崎が登場回数多いんだから気い引き締めなさいよ」
龍崎「あいあいさー」
作者「っえ、ちょ、ちょっと待って?! え、ちょ、ちょっとお?!」
――今後もこんなグダグダ駄文小説と成りますが、ぜひ、良いお付き合いを宜しくお願いします!
*えんざいしゃのちんこんきょく(れくいえむ)* お正月、番外編← 終
浦風は自分の頭の中にある限りの知識をふり絞って今やるべきことを考えた。
そして、それを的確に、かつ、冷静に龍崎に話した。
「タコ糸、レンガ、ガムテ……って。んなもん急に言われたって見つかるわけねえだろ」
浦風が真剣な顔で今かき集めなければいけないものを龍崎に言った時の第一声は、それだった。
無茶振りとも言えるそれを言った当本人の浦風でさえも無理があるのではと思ってはいた。だが――。
「知るか。『必要なものは置いてあるから頑張ってねー』って言われたんだから。探せばなんかあんだろ」
そう言ってボイラー室内を見つめる浦風。
ボイラー室は、その名の通り、暖房を管理していると思われる円型の大きな機会がある。
浦風はそれを支える鉄の柱の裏や、機械と機械の隙間なんかにも手を這わせて今必要なものを探す。
それを見て、龍崎も渋々暗がりの中、いたるところに手を這わせる。
「……おい」
地面に手を這わせつつ龍崎は浦風に言う。「あ゛?」と浦風が素っ気なく聞き返す。
「……お前が、ガキ殺しと警官殺しの犯人じゃねえなら、一体誰が犯人なんだ? さっきの電話のヤツか?」
龍崎が浦風の顔を見ずに聞くと、すぐに「たぶんな」と返ってきた。
「なら、警視庁に来てそれを話せ」と言うと、浦風は少しだけ黙った。そして少ししてから口を開いた。
「無関係な……、ガキが人質に取られてる」
重々しく言う浦風に、またも反射的に、「はあ?!」と聞き返してしまう龍崎。
そして、それを、「うるせえ」の一言で黙らせる浦風。
辛い過去でも思い出すような顔で、浦風は話す。
どもです。マイペース女王のきゅーです笑
警察&容疑者VS容疑者xですか〜。
台詞も無駄にカッコつけないで行動も繊細に書かれているので、
まるでリアルで起きてると思ってついつい浦風君を応援したくなりますね〜♡
そして、マキ様と同い年と言う事にビックリ!
大人の方が書かれていたと思いました笑
きゅーさん>>
コメント有難うございます
『警察&容疑者VS容疑者X』……さあ、どうでしょう?ww
今後どんなどんでん返しがあるかわかりませんよ?ww(←作者すらわかってません
浦風を応援ですかー……。
浦風がその期待に答えてくれると有難いんですけどね(他人事)←おい
っお!? きゅーさんと同い年?! ビックリです! なんだか嬉しいですね〜^^
では、同い年同士! 今後とも、頑張っていきましょう!
>>マキ様
はい!(何を頑張るかわかんないけど)頑張りましょう!!
小説楽しみダナーヾ(@⌒ー⌒@)ノ
きゅーさん>>
いつも、コメント有難うございます!
頑張ると言ったらそれは、もう!
……勉強とか……←
ではなく! 小説ですよ!
お互い頑張りましょう! しょ・う・せ・つ・を!
「ガキの誘拐事件、あんだろ? それで誘拐されたガキを人質に取ってんだと」
浦風の感情の無いぶっちゃけ発言に言葉を無くし、浦風の後ろ姿を唖然とした目で見つめる龍崎。
「っえ、じゃあなに……?」と龍崎は前置きをしてから今聞いた話しを整理した。
「お前は冤罪で任意逮捕されて、警官目の前で死んで、ガキ助けろって言われた……ってか?」
「イエス。話しが早いね、お兄さん」と浦風がまたも感情のこもらない声で言う。
龍崎はやはりなにも言えなくなり現実味が無い今の現状を再び頭の中で確認した。
まず、目の前の高校生は一度逮捕されて、警官が目の前で死んで、逃げだして……。
そこまで考えて、龍崎はとある疑問を胸に抱いた。
それを聞いてみて良いものかわからなかったが龍崎は浦風を後ろ目に見ながら聞いた。
「それじゃあ、てめえの言う真犯人……、容疑者X? は、ずっとてめえを監視してたってことか?」
浦風が動きを止め、無表情の顔を龍崎に向けた。
「たぶんな」と重たい声で言うと浦風は龍崎から視線をそらした。
龍崎はそんな浦風に困惑の意を込めた目を向ける。
「てめえ、一体、その真犯人となにがあったんだよ……」
「知るかー。俺だってなんでこんなことになってんのか皆目見当もついてねえんだからよ」
そう言う浦風だが、一切の疑心を抱いていないわけではない。
どうして、容疑者Xと名乗る男が自分にここまで執着してくるのか。狙いはなんなのか。
普段使わない頭で考えてもその答えに行きつくことはなく、途中で思考を止めていた。
しかし、他人に改めて言われると考えずにはいられなくなる。
もしかしたら、容疑者Xと言う男と自分は面識があって、なにか問題を起こしたのではないか?
もしかしたら、容疑者Xは自分の知り合いでなにを思ってか自分を陥れようとしていのでは?
もしかしたら、容疑者Xは自分たちが信じてやまない警察の……――。
そう思うから浦風は自分のバカな考えを止めるしかなかった。
小説ですか…恥
分かりました( ̄^ ̄)ゞ!!
犯人と浦風君に何か接点でもあるのかなー?
きゅーさん>>
小説ですよ(笑)
浦風と犯人の接点……、さあ、どんなものでしょう
正直、作者自体考えてうませn((ry
* * *
「――紙ガムテに、ビニル紐、っで、ポリバケツ二個……。まじでありやがった」
床に転がるそれらを見て浦風は言った。龍崎が、「完全に手の中で踊らされてるだろ」と浦風の横で言う。
浦風はその場にしゃがむと、青いバケツの底を上にして天井で光る赤いなにかの真下に置いた。
「踊れる間に踊っとこうや。にしても、あんの野郎、俺がここに来ることも考えてたなあ。ちくしょっ」
「あんの野郎」とは言わずもがな、容疑者Xと名乗っている男のことである。
なんだかんだ言って相手の手の中で良いように弄ばれている気分で怒りがたまっている浦風。
浦風はバケツとバケツの間に少し隙間を開け、龍崎にその隙間に拳銃を挟むよう指示する。
「つうか、てめえなにする気だよ」と問う龍崎に、「まあまあ」と言い流す浦風。
バケツの間に拳銃を挟むと、ガムテープで拳銃をバケツに固定する。引き金の部分を省いて。
「……っと、ビニル紐、どんだけの長さある?」
浦風がビニール紐を持つ龍崎に聞くと、「見る限り、十メートルくらい」と返ってきた。
「まあ、そんぐらいあれば」と言って浦風はビニール紐を龍崎から受け取る。
そして、紐の先端に輪を作り拳銃の引き金にその輪を引っかけた。
「……てめえ。そんな方法どこで手に入れやがった」
今から行われることをなんとなく察した龍崎。
龍崎に言われると、手元の作業を難無くこなしながら、「火曜サスペンス」と一言で返す浦風。
「最近のドラマってすげえな」と思う龍崎であるがあえて口には出さない。
「さってと」
束になっているビニール紐を片手に立ちあがる。
そして、浦風は自分がボイラー室に入る時に使用した出入り口に目を向けた。
いや〜、すごいですね。
自分と同い年だなんて思えません!
全部一気に読んでも飽きない作品です。
なにを仕掛けているのか楽しみです^^
火曜サスペンスwww
141:マキ:2014/01/13(月) 14:13 ID:MZU aribabaさん>>
コメント有難う御座います!
同い年ですか〜。嬉しいですねえ(*^∀^*)
飽きない作品、と言って頂けて幸いです
私自身、最近、全面的に無理矢理じゃね?
と思っていたので、そう言って頂けると本当にうれしいです(笑)
また、お暇があればコメント宜しくお願いします!
れい>>
火サスねwww
もう、それ以外に思いつかんかったww
笑いのネタになったらいいんだけどねww
* * *
「――本当にこれで良いんだろうな?」
白いビニール紐を伸ばし、ボイラー室のドアの取っ手に結ぶ。
「保障は出来ねえよ。だから死んだらごめん」
ドアの前に佇(たたず)み、目の前に立つ龍崎を見ながら浦風は取っ手に手をかける。
どこか呆れた顔で、「ごめんで済むかよ」と苦情を漏らす龍崎。
それを見ながら、「まあまあ」と言いつつ取っ手に結ばれたビニール紐に向けた。
そして長く伸ばされたビニール紐の先に目を向け、最後に一度だけ生唾を飲み込む。
伸ばされた紐は床に置かれた拳銃の引き金に輪となって軽く引っかけてある。
今、紐を全力で引けば引き金に引っかかる輪が縮まり、発砲できる、という単純な仕掛けだが――。
「……やらねえよりマシだろ」
浦風は目を細める。やらなきゃ死ぬ。自分も、目の前の刑事も。
先ほどの電話で容疑者Xと名乗る男が言っていたことを思い出す。
* * *
「ああ? もう泣かないで良いの……お前、まじ死んだ方が良いわ! って言うか死んでくんない?!」
『あっははー。って言うか、良いの? 爆弾が近くにあるのに、こんなふうに駄弁ってて』
「時間制限式じゃねえんだろ。だったら問題ねえだろうが」
『うん、そうだね。でもさあ、時限爆弾じゃないってことは僕の好きなように爆発できるってことだよ?』
電話越しからそう言われて、浦風の眉が少しだけ動く。
「つまり、てめえは好きなように爆弾を爆発させられるってことか」と問えば、
『そーゆうこと』とやはりな口調で言われる。
『っあ、逃げようとか考えないでね? 浦風君が逃げたのがわかった時点で爆発させるからね?』
そこまで言われて、浦風は電話越しの人物がなにを言いたいのかどこか察した。
『最低限の道具はテキトーにそろえてあるから頑張ってね? っあ、ちょっとは爆発するかもだけど――』
そこまで言われて深いため息を吐き、浦風は頭を掻いた。そして、真面目な口調で電話に向かって言った。
「ガキ救出の次は、爆弾止めろってか? てめえ、ホント――ぶっ殺してえほど腐れ下道だな」
電話越しの人物は不気味な笑い声を浦風の耳に届かせた。
火サスを笑いのネタにっ?(笑)
容疑者Xさんょ……爆発させちゃいけませんよww
わたしは常に笑いを狙って生きています←おーい。
容疑者Xね……。ホント、あの人なに考えてるんだろうね。キチガイなのかな?←おいっ
「――おいっ」
浦風は龍崎の少しだけ苛立ったような声を聞いて我に返る。
ッハとしたような顔をして龍崎を見ると、龍崎は少し訝しげな顔で浦風を見つめていた。
「なんだよ」と問えば、言葉ではなく視線で答えが返ってくる。
龍崎の目は言っている。「まだ、完全にお前を信じていない」と。浦風に訴えかけている。
浦風は黙って自分が握る取っ手に目を向けた。目に映る自分の手がひどく小さく見える。
本当にこんな小さな手でなにかを成し遂げることなんて出来るのだろうか?
襲い来るのは底の見えない不安と底なんて無い恐怖。
「……正直、俺は死にたくない」
浦風は自分の小さな手を見ながら言った。龍崎が少しだけ黒目を見開く。浦風は続ける。
「だから、生きたい」
特に考えた様子の無い言葉には重みなんて一つもない。ただ、正直な思いだ。
龍崎は黙りながらそう言う浦風の顔を見た。
冷たく冷めきった顔をしているがその目にはどこか熱がこもっている。
見ているだけで嫌気がさす。融通(ゆうずう)が利かない、馬鹿うるさい女の同僚と同じ目をしている。
龍崎はそう思った。
「……開けっぞ」
沈黙が数秒だけその場を包んだ後、浦風は取っ手を強く握り返した。
「ストップ」
そう言ったのは龍崎だ。龍崎は間髪いれず続ける。
「俺が開ける」
「はあ? どっちが開けるって関係無くね?」
「俺が開けるから、てめえは先に外に出ろ」
「……あ?」
「これでもお巡りさんなんでな。一般市民より先に戦線離脱するわけにゃいかねえんだわ」
そう言う龍崎の顔を、浦風は一瞬だけきつい目で見た後に、ニッと笑って見返した。
龍崎は先ほどまで浦風が握っていたドアの取っ手を握った。深く深呼吸をして、呼吸を整える。
安定した色の無い声で、「行くぞ」と目の前にいる浦風に言う。浦風は首を縦に振る。
龍崎はゆっくり、だが確実にドアの取っ手をひねる。なんとも言えない緊張感が走り――、
「ドアにタックルぶちかませ、浦風秀哉!」
そう叫ぶと、勢いよく取っ手をひねった。
それに合わせて、言われた通り浦風はドアに体を勢いよくぶつける。
反動でドアが外側に開く。
取っ手に結ばれたビニール製の紐が伸び、その先にある拳銃の引き金に結ばれた小さな輪がその口を閉じ――、
『ドン――ッ!』
銃声が一発だけその場に響いた。
浦風が出た後、そのすぐ背後について龍崎は駈け出す。背後に銃声が聞こえた。
発せられた銃弾は空を切り、螺旋を描き、空中に向かって線を描く。そして――、
『ドォォオオン――ッ!』
暗がりの天井に設置された爆弾に直撃し、微力な爆発を招いた。
* * *
背後から爆風を受け、
ほとんどその風に押し出されるようにショッピングモールの通路に飛びだした浦風と龍崎。
二人とも服の所々に汚れや穴を作っていた。
「……」
浦風がボイラー室に入るために通った薄暗い通路に、
爆風で吹っ飛ばされたのか、ボイラー室のドアが無残な姿で倒れている。
そして全開になったボイラー室の入口からモクモクと黒い煙がわき出ている。
それを、地面に寝っ転がりながら見ている限り、言葉なんて出てこなかった。
高い天井を見ていると、黒い煙でそれもさえぎられる。
静かな人時がその場を包み込む。
「……おい」
不意に隣に目を向けると、そこには白いワイシャツをボロボロにした龍崎の姿があった。
「っあ、生きてたんだ」
浦風が寝っ転がりながら言うと龍崎は顔をしかめながら、「たりめえだ」と言った。
浦風は龍崎に向けた目を天井に向けた。煙が立ち込める天井が見える。
――出来た。
心なしかそう思った。
自分の頼りない、小さな手でも、自分の命と目の前の刑事の命は守れた。自分の小さな手で。
そう思うと、胸の内に秘めていた変な感情が勢いよくこみあげて来た。
「ばっかみてえ……っ」
その感情をどう表現していいのかわからず、ただそれだけつぶやいた。
「おい、浦風秀哉」
龍崎が頭を掻きながら浦風を見据えている。「あ?」と言いながら浦風は龍崎を見た。
「てめえ、なんで爆弾をぶっ壊そうなんて考えた。
もしかしたらとんでもねえ事になってたかもしれねえんだぞ」
起き上がりながら、「ああ」と言う浦風。そして、ズボンのポケットから赤い携帯電話を取り出す。
「爆弾をそれごと壊しちゃえばデッカイ被害は無いから、そこにいる刑事さんの拳銃で壊しちゃってよ。
まあ、壊したとしてもすぐに逃げないと死んじゃうけどねえ=v
「……っは?」
「って言われたんだよ。ボクっ子気取りのキチガイ野郎に」
言い捨てるように言うと、浦風は静かに立ち上がり、周りを見渡した。
それを見ながら、「逃げるつもりか?」と言って立ち上がる龍崎。
警察官として、目の前の、一応容疑者≠フ青年をみすみす逃がすわけにはいかないのだろう。
それを知ってか、「いや、逃げるとかじゃないし」と浦風は返す。
「さっきも言ったろ? 無関係なガキが人質様に取られてんだよ。だから、サツに捕まる訳には」
「だからこそ、助けてやるつってんだ」
その一言に浦風は、「っえ」と言うように目を見張った。龍崎は続ける。
龍崎さぁぁん!!
149:aribaba chiaryrain@s7.spaaqs.ne.jp:2014/01/27(月) 19:41 ID:bQY 急にかっこよく見えてきました!
龍崎さんサイコー!
れい>>
龍崎くうううん!
良かったね! れいに名前呼んで貰ってるぜ!
龍崎「っあ? っえ? なに? ……あ? 一言? お礼のお言葉? っえ、まあ、良いけど。
……ええ。いつも駄作者マキがお世話んなってまーす。
今後とも、この小説(特に俺)を応援して頂けると幸いです。
まあ、これからもお互い頑張って進めて行きましょうや。ってことで、これからも宜しくお願いしまーす」
はい。ふざけたよ。ゴメンナサイ……。
aribabaさん>>
コメント有難う御座います!
おお。龍崎君意外と人気ですね。ビックリ。
龍崎君、本当に良かったねー! 浦風君より人気高いよ! きっと!
龍崎「ああ? んなの高くたって興味ねぇよ。
まあ、世の中は主人公じゃなくて、他の重要キャラが目立つ時代だしー?
主人公交代が来たら変わってやっても良いぜえ?(ドヤッ」
……。
はい。ふざけました。スミマセン。本当にスミマセンorz
「一応、俺もお巡りさんなんでな。困ってる一般市民見捨てるわけにゃいかねえんだわ」
そう言う龍崎の顔はひどく朗(ほが)らかだった。その顔と言葉に浦風は目を見張った。そしてうつむいた。
冷たい地面に置いた自分の手が小刻みに震えている事が良く解かった。
今ここですべてを打ち明けたら、きっと自分は救われる。でも――、
「じゃあ、見捨ててくれ」
龍崎の口から、「っあ?」と声が漏れる。浦風は立ち上がる。
ズボンのポケットに手を突っ込んで余裕のある笑みをつくって見せる。
「サンキューな兄ちゃん。あんた見かけによらず良い人だな」
「だから、ここは黙って見す捨ててくれよ」浦風ははっきりそう言った。
龍崎は色の無い目で浦風の顔を見た。「……あっそ」と言って龍崎も立ち上がる。
「じゃあ、俺さっさと退散しますわ。一応、犯罪者だし?」
そう言うと浦風は龍崎に背を向けた。
「そのセリフは冤罪を掛けられている浦風秀哉からの物だと思って良いのか?」と浦風の背に問うと、
「ダークヒーロー浦風様からのセリフにしといてー」と大声で返ってきた。
浦風がデパート内に姿を消した時、龍崎は心なしか安心していた。
そして、その場を後にした。
* * *
「っま、逃がしても良かったっしょ」
冤罪者だし。
独り言を言うように言うと、「っは?」と片桐が言った。片桐の目にはまだ泣き跡が付いている。
「ん? いや。こっちの話。って言うか、重要なお話が偉い人にあんだけど?」
浦風の事をいち早く誰かに話さなくては。
今、片桐と一之瀬に大雑把にでも話しておいては良いと思うが、今話せば変に混乱が生まれるかもしれない。
不運な事に、デパートの周りにはすでに報道陣が殺到しているし。
片桐は龍崎に言われると訝しげな顔をつくって、「その前に怪我を治療するのが先よ」と言われた。
まったくだ、と他人事のように龍崎も思った。
「って言うか、上に重要な話ってなに?」
龍崎の数歩先で足を止め、振り返る片桐。龍崎は、「ああ」と言って明後日の方向を見た。
片桐になら言っても良いと思うが、騒がず聞いてもらいたい。
「黙って聞いてねー」と前置きして、龍崎が今まで起こった事を説明する。だが――、
『ッヒュ――!』
――何かが空を切るような音が龍崎の言葉をかき消した。
その音は聞こえるか聞こえないかくらいの微量な物だった。
それは片桐の耳に入ったのが奇跡だと思われるぐらいの、本当に小さな音だった。
音が聞こえたとほぼ同時に、片桐の目の前で龍崎は地面に膝をつき、静かにその場に崩れた。
そして、倒れた龍崎の体から赤い液体が地面に流れ出てきた。
少しずつ、少しずつ、少しずつ、少しずつ。
「……え」
片桐の足元で、龍崎が小刻みに震えながら自分の胸元を強く抑えた。
背中と胸に赤い液体がにじんでいる。服が白いせいで、赤いのなんてよく目立つ。
――龍崎。そんな触ったら、その赤いのシミんなっちゃうよ。クリーニング出さなきゃだよ。
龍崎は背中を地面に付け、荒い息と虚ろな目で天を仰ぐ。
その時、微かにだな、「う、ら、かぜっ」と言ったのが片桐には解かった。
――なに、それ? 今、あんたをこうやって苦しめてる人? その名前、聞いたことあるよ。
「浦風、秀、哉?」
龍崎の近くに、人が集まってきた。そしてすぐに、担架に載せられた。
片桐はその場に力無くへたり込んだ。
「浦風、秀哉……」
色の無い、その声は虚空に溶けて行った。
* * *
「――……あ?」
誰かに呼ばれたような気がして浦風が振り返ると、無人の車が数台、目に入った。
先ほどの爆発が効いたらしく、デパートの従業員専用出入り口を這っている刑事らしき者はおらず、
結構ラクチンに外に出られた。
出た所がデパートとビルに挟まれた狭っ苦しい場所ではあったが結果オーライである。
ここまで来る際に通った通路から白い服を着た者たちが無残な巨大中庭中を歩き回っているのが見たが、
見えなかった事にした。
今頃、先ほどの刑事はデパートの外に出ているだろう。そして、自分の現状を誰かに話して――。
そこまで考えて浦風は思考回路を停止させた。
変な期待はするだけ、無駄だと思ったからだ。
龍崎さぁぁん!←2回目
ダメやん。浦風くんの名前出したら。泣
片桐くんが誤解しちゃうじゃんかぁぁ…↓↓
なんてことをするんだ。笑
あ、あはははは……
自分でも何やってんだと思った←
龍崎、意外と人気あったのにね
無念(>□<;)
主人公交代はやっぱ無しだね
浦風「(よしっ!)」
龍崎「(っああ゛?!)」
>>154
片桐くんって、龍崎さんのこと大好きなんだね^^
主人公交代するなら、片桐くんでお願いしまーす!笑
片桐ちゃんも一応¥翌フ子だしねえ
解かりづらいけど←
時期主人公は片桐ちゃんかあ……。
よし考えておこう。
片桐「(っふ。((ドヤ)」
浦風「(このアマッ!)」
あかんて!
片桐“くん”じゃないと!
片桐“ちゃん”だと、しっくり来ないww
まじでかww
んー、それもそうかなーww
片桐「は、はあ?!」
浦風「っぷ」
片桐「ああ゛?」
浦風「さあせんしたあ!」
ああ。
ちゃん≠カゃなくて、くん≠セね
たしかに。
『ヴー、ヴー、ヴー』
毎度お馴染みの振動音が浦風のズボンのポケットから発せられる。
不覚にもビクッと肩を震わせる浦風である。
気を取り直しながらもおずおずとポケットから音の発信源である携帯を取り出す。
携帯には、電話越しの人物を示す、毎度お馴染みの非通知≠フ文字が。
頭の中で今言うべき事を一つに絞って、浦風は意を決したような顔で電話に出た。
『どーもー! 生きてるみたいだねー、うっらかっぜくーん! 良かったねー、浦風くーん』
やはり、毎度お馴染みなイラつくくらいハイテンションな声が携帯のスピーカーから漏れ渡り、
狭いその路地に小さく響く。
今までの浦風であれば、この言葉一つにでも「うるせえ」の一言を言っていた。が。
今は現状が違う。言わなければいけない事がたくさんある中で、聞かなければいけない事が一つ。
「……てめえ、なんで、あの兄ちゃん殺したんだよ」
あの兄ちゃん≠ニは、言わずもがな、警視庁で殺された刑事。
浦風が信じてみようと誓った言葉をくれた、一人の男。
浦風が絞り出した言葉を口にすると、少しの沈黙がその場を埋め尽くし、
それを電話越しの人物は、実にあっけらかんと、簡単に打ち砕いた。
『ねえ、それ、今更すぎじゃない?』
携帯を握る浦風の力が強まった。
『なになに? 浦風君はあのお兄さんが生きてると思ってたの? 本当に? ガチで?
思ってるわけ無いよねえ? 思うはずがないよねえ? 思えるはずがないよねえ?
だって、目の前で死んだんだもん。目の前で動かなくなったんだもん。目の前で殺されたんだもん。
なんで殺した? 答えは簡単。邪魔だから。っえ? 単純すぎないかって? シンプルイズザベストだよ。
でもでも、本当に浦風君はあのお兄さんが生きてると思ってたの?
死んじゃうって言ったじゃん! 言わなかったっけ? 言ったよねえ? 言ったよ。
なのに、今更その事ぶり返すとか……、浦風君ってネチっ子?』
ペラペラペラペラペラペラペラ。
まるで終わりを知らないかのように一方的に語る相手に、浦風は憤りの無い怒りを感じた。
正直、もうなにも考えられずにいた。なにか考えた方が良い気もしたが、なにか考える気になれなかった。
第一、こんな事を平然と言える相手を前に、なにを考えればいいと言うのだ。
『あ、そうそう! 僕が電話したわけ、まだ言ってなかったね!』
本題に入ろうかとでも言いたげな口調で相手は言う。浦風はなにも言わない。ただ黙っているだけ。
電話の相手は一人で、楽しそうに続ける。
『君のお友達に、矢野翼君っているでしょ? その子のおうちに行ってみてよ! い、ま、す、ぐ、に!』
それだけ言うと、電話が切れた。
浦風は電話越しの人物が矢野の名前を出した瞬間、ッハと我に返った。
そして、無機質な『ツー、ツー、ツー』と言う音を聞きながら辺りを見渡した。
目に映る狭い路地裏には、ゴミ箱やらなんやらが置いてある。
そして、そんな中に浦風の目に入った物が一つ。
「ッ――……!」
浦風は目に入った自転車≠ノ走ると、それにまたがり、即座にその路地から抜けた。
向かうは、自分を信じてくれた、やっぱり腐れ縁の友人の家。
やっぱり、巻き込んでしまった。巻き込ませしまった。どう謝るべきだ。どう謝ったらいいんだ。
太ももが痛くなるのもいとわず、浦風は全速力でペダルをこいだ。
今にも不安で押しつぶされそうになる心を必死に、支えながら。
* * *
車でも三十分近くかかるところを、自転車をかっ飛ばし、
信号と言う信号を無視して矢野家まで訪れた浦風。
矢野の家の前に着いた時、浦風は汗だらけで息を荒くしていた。
「っう、は、あ……! や、矢野!」
人目もはばからず、ほとんど叫ぶようにして矢野家のドアを叩き開く。
『バンッ』と言う音とともに、家の中から変な異臭が飛んできた。鼻を刺すような鉄の香り。
浦風はその匂いの正体を知っている。
不安と恐怖が浦風の心を襲った。
「矢野ッ!」
浦風は叫ぶと、土足で家に上がりこんだ。
家の中に入り込むと、鼻を突く匂いはさらに強まった。
咄嗟に鼻を抑え、ひるむ。すぐに気を取り直し、目の前にあるドアを開いた。
開いたと同時に異臭が増す。
浦風が部屋の中を見渡すと、相変わらずたくさんの等身大フィギアの群れが見えるだけ。
その中に矢野の姿は見当たらない。
「ッ――! 矢野! いたら返事しろ、矢野!」
そう言って、その部屋を見渡す。返事も無ければ物音さえ聞こえない。
しかし、浦風の鼻を突くその異臭はその部屋からするわけで。
浦風は意を決すると部屋の中に入った。
つい数時間前とは打って変わり、部屋の中はカーテンが閉まり暗闇その物だった。
「矢野!」と叫びながら部屋の中に入ると、その部屋とつながっている台所に目が向かった。
裏口がある、案外広々とした最新のキッチン用具が揃っている台所。
浦風は等身大フィギアの隙間から見える台所から目が離せなかった。
そして、目の前のフィギアをどけて、進んだ。
「ッ――……、矢野!」
そして、床に横たわる矢野の姿を見つけた。
暗がりのせいでよく見えない。
浦風はフィギアを倒して床に横たわる矢野に近付いた。
目を閉じている矢野に向かって、叫ぶように名前を呼んで見せる。
何度目かの、「矢野」と言うフレーズを口にしたとき、浦風の手に変な感触が走った。
液体に触れたような、変な感触。
浦風は自分の手を見て、息を呑んだ。
それは、暗がりでも良く分かる、黒ずんだ血≠セった。
血の気が引いた。
「矢野! おい、矢野! しっかりしろ! おい!」
肩を揺さぶる。よくよく見れば、矢野は腹部から血を流している。
矢野の茶色い髪が肩を揺さぶるたびになびく。しかし、矢野自体はなにも言わない。
浦風は頭が真っ白になるのを、たしかに感じた。
矢野ぉぉぉぉぉ!!!
密かに矢野好きだったのに・・・。
犯人X許せない。笑
良かったね、矢野君!
怪我したかられいに心配されてるよ!
このまま死んじゃっても結果オーライだよ!
矢野「ふっざけんなあああ!
今の現状見たら、俺ただ単に浦風に勝手に巻き込まれて一方的に怪我させられただけじゃねえか!
萌えキュンハートナノちゃんとのランデブーが待ってるっつーのによおおおっ!」
浦風「どんまい(ドヤッ」
矢野「(イラァア)」
……。
矢野君の健闘を祈ります 笑
矢野の腹部から出る血が止まらない。浦風の頭が真っ白になっていくのを止める事が出来ない。
「! そ、そうだ、きゅ、救急車……っ! 救急車、呼ばねえとっ」
『容疑者X』などと言うふざけた奴との連絡にしか使わない携帯を開き、『1』の番号に指を伸ばす。
しかし、今まさにそのボタンを押そうとした時、浦風の腕を誰かが掴んだ。
見れば、息も絶え絶えな矢野が、震える腕で浦風の腕を持てる力で引っ掴んでいるではないか。
「矢野ッ、てめ」
「う、らかぜ……っ」
心配の声をかけようとする浦風の言葉をさえぎり、矢野は力無く浦風の名を呼ぶ。
「つ、ばっき、が……っ、つ、ばき、ちゃんっ、っが」
「つ、ばきって……。あいつが、ツバキがどうかしたのかよっ?」
矢野の腕が浦風の腕から離れる。矢野の息がもっと荒々しくなる。
浦風の心に募る不安が、『ツバキ』と言う一つのワードで膨れ上がった。
「っ、さらわれ、った……っ」
「っな――! ど、どう言う事だよ、矢野!」
「知るか……っ! ……てめえが、出てった後、刑事が来て……っ、そいつらが帰ってたら……」
そこまで言うと、矢野は静かに微かに開いていた目を閉じた。出血が尋常じゃない。
「おい、矢野」と浦風が矢野の名前を呼ぶが、返事が無い。沈黙が走る。
「ツバキ……」
遠くの方から、何故か救急車のサイレンの音が聞こえた。
それに混じって、救急車とは違う物のサイレンも。
それを耳にすると、浦風は歯ぎしりを立てて矢野宅の裏口から勢い良く外に出た。
矢野が最後まで言いたかったことなんて何か解からない。でも、とにかく今はあれだ。
矢野は殺しても死なないヤツだと信じてる。だからこそ、今やらなければいけない事は一つ。
全速力で馬鹿みたいに逃げる
こと、だけだ。
冤レク(冤罪者の鎮魂曲(レクイエム)の略)も160スレ突破!
これも皆様のおかげです!
と、言う訳で(?) なぜか、冤レクキャラを描いてみました!
マウスなので下手ッピですが、お暇とユーラシア大陸並みの大きな心のある方はURLを↓
URL:http://www.kakiko.info/oekaki_bbs/data/IMG/_003278.jpg
(手前から、矢野君、龍崎さんです。奥の方にいる吹き出しの人は主人公君です。
作者のイメージなので、皆さんのイメージと違っていたらスミマセン……<(_ _)>)
すみません! URL間違えました!
URL:http://www.kakiko.info/oekaki_bbs/data/IMG_003278.jpg
矢野くん想像通りすぎてワロタ\(^0^)/″
矢野やっぱ好きやわぁ。笑
龍崎さん意外と童顔((跳び蹴り
おお。それは良かったwww
龍崎、ねえ。まあ、あの人は、あんな感じです。はい。
ちっさかったけど、浦風もあんな感じ←
* * *
片桐は、『手術中』と言う文字が光る部屋の前に置かれた椅子に腰かけていた。
その目には色が無く、顔色も冴えなかった。
「片桐」
名前を呼ばれて、声のした方を見ると、一之瀬が立っていた。眼鏡越しの目は沈んでいる。
「なに?」と片桐は色も感情もなにもこもらない声で聞く。
「……龍崎が撃たれた瞬間、お前が一番龍崎の近くにいたんだ。なんか見てねえのか?」
そう言う一之瀬の目は、やはり沈んでいた。
一之瀬とて、こんな事を今聞くのは嫌なのだろう。だが、状況が状況。職業が職業なだけある。
片桐は椅子に腰かけたまま、静かにうつむいた。
「それは……、刑事としての質問? それとも、一之瀬一個人としての質問?」
口ごもる一之瀬。黙りこむ片桐。
少しの前を開けて、一之瀬は、「もちろん、刑事として、だ」と沈んだ目をぎらつかせていった。
片桐は一之瀬のそれを聞いて、静かに微笑んだ。「そっか」
「間違っても、『両方だ』何て言う格好良い事は言ってくれないわけね。安心したわっ」
立ち上がり、一之瀬に近付く片桐。まだ、目に色は無い。しかし、その顔は悲しそうに笑っていた。
時計を見ると、午後八時を回っていた。一体、何時間ここにいたのだろう?
自分でそう思うも、分かったって意味なんて無いだろう。きっと。
――浦風、秀哉。
片桐の目が、赤く光る『手術室』の文字盤に。
「絶対……、絶対、ぶん殴ってやるっ」
そう言う片桐の目は怒りと悲しみが入り混じった、重たい物だった。
冤罪者の鎮魂曲 第五話・人が死ぬと言うこと 終
冤罪者の鎮魂曲 第六話・もがく黒主人公
辺りが薄闇に溶け込む中、制服を着た警官が懐中電灯片手に公園を歩きまわっていた。
そして、息を殺してそれが去って行くのを、公園に植えられる背の高い木に猿の如く乗って見つめる者が。
「……こっちは異常なし、ッと」
警官はそう言うと静かに夕闇の中に溶け込んで消えていった。
それを見届けると、木に乗っていた者は勢いよく音を立ててそこから滑る落ちた。
「どうわあああっ!」
その人物――浦風は、地面に落ちると苦々しく顔を歪めた。「だあああ」と唸り声を上げる。
「あっぶねえ……! ああー。まさか木に登って中国大芸能みてえな体技しねえといけなくなるとか……」
そう言って、枝と枝に足をかけやじろべえ的な体勢でいた事を思い出す。
ズボンのポケットから携帯を取り出し時間を見ると夜の八時を回っていた。
何時間この木に身を潜めていたのか、考えるだけで自分のメンタルの強さに一目置く浦風である。
「ったく、これからどうすりゃあ良いんだ」
腹は減ってるし、帰る場所は無いし、金も無いし、現状も解からないし、腹減ってるし。
今まさに何をすれば良いのか全くと言っていいほど分からない。
だが、ひとまずあれだ。あれ。
どっか、ご飯を分け与えてくれる人を探そう。
どこぞの店の試食でも良い。だから、ホントにひとまず何か食う物を。
そう思って、浦風は公園の外に広がる繁華街に目をやった。
『――ヴー、ヴー、ヴーッ』
すると、ポケットに入っている携帯が音を立てて振動した。本日何度目か解からない電話だ。
浦風は表情を険しくすると着信相手の名前を見た。
案の定、と言うか当たり前の如く、いつも通りのヤツだ。
浦風は静かに携帯を開くと受話器ボタンを押した。「……はい」
『っあ、浦風くーん! どうやら捕まってないみたいだねー! 良かった、良かった!』
電話に出た瞬間に飛んでくるこの声。どうにも、この声を好きになれない浦風である。
「……てめえ、ツバキをどこにやった」
ドスの効いた声で言えば、電話越しの相手が微かに笑ったのが聞こえた。
『ツバキ? ああ、矢野君の妹さんの? どこにやったって……、どっかに?』
あくまでもすっとボケるつもりでいる、容疑者X。それに怒りを募らせざるを得ない浦風。
「……あの凶暴娘がてめえみてえな奴にどうこうされるとは思ってねえ。安心しろ」
『何を安心しろっての?』
語尾に『(笑)』がつくような口調で言われ、浦風はピクリと眉間にしわを寄せた。
『っま、いいや。今日はもう遅いし、ゲームはまた明日ねー。そろそろお休みの時間だし』
「てめえの脳内は昭和か」
『健全な男たるもの、ラジオやテレビは八時まで。良い子はさっさとおねんねよっ』
「昭和に帰れ殺人鬼」
憤怒の感情を込める顔で浦風が言うと、スピーカーから笑い声が聞こえて来た。
本当につくづく、この電話越しの人物は浦風をイラつかせてくれる。
『現在進行形で言えば、殺人鬼は浦風君だよ?』
電話が切れた。
お久しぶりです。
どんどん面白い展開になりましたねー!
ホンっト、xさんは人をイラつかせるの得意ですね(まるで私みたいです笑)
きゅーさん>>
いやー、どんどん、わたしでさえも頭が故障品になる内容になっていってますよ←
Xさんは、知り合いの男の子をモチーフに書いてます
いやはや、その子も顔面タックル決め込みたいほどイラつく人で……
Xさんってそのうち絶対に浦風にぶん殴られますよ。わたしも一緒にぶん殴りたいです。
Xさん「っえ?! 僕ってそんなに悪者なの?!」
浦風「今更?」
はろー⭐︎
お久しぶりか感じの私(笑)
今後も楽しみにしてるよ!
X悪者(笑)
浦風君殴ったれーぃ!
※更新を放棄してしまい申し訳ありませんっ!
いや、放置しようとか思ってたんじゃないんです!
誰かのサイトポリシーに巻き込まれて更新出来なかったんですっ
っていう事で!←
XP の件などありますが、本日より更新を再スタートさせていただきます!
以前同様、なんともいえない駄文ですが、宜しくお願いしますっ!
浦風は、おもむろに空を拝んだ。
厚い雲の隙間から、微かな光りを放つ星々が顔を出している。
「……」
現在進行形で自分は、殺人鬼? そうさせたのはどこの誰なんだか。
静かにため息を吐くと、浦風は携帯を強く握りしめた。
その拳には、有り得ないはずの“今日”を、強く捻り潰そうと言う思いがこめられていた。
* * *
「矢野翼の妹と連絡がつかない」
開口一番。
片桐が仮眠室から出た矢先、一之瀬はそう言った。
「友達の家にいる、……とかじゃないのね」
「ああ。親の方とは今朝方連絡がついたんだが、妹――矢野椿(やの つばき)の方は、まだ」
一之瀬の話しでは、親しい友人の家にも連絡したが矢野椿はいないとのこと。
それどころか、昨日の午後から音信不通と化している。
「実の兄貴が刺されたのに音信不通ねえ。大分、兄妹仲が悪いようねえ」
「お前も今回の事件に関係あると思うか」
「ええ。例えニジオタ引きこもりぷーたろうが兄貴でも刺されたって聞いたらすっとんでくわ」
「アホ面を拝みにか」と訊くと「もちろん」と返ってきた。
一之瀬の腕時計が朝の九時を指した瞬間だった。
* * *
始めに言っておくと、浦風の体は固い方だ。
「……」
なので、寝床にポリバケツを選んだのは、ただ単に浦風がバカだったからだ。
ポケットから振動を感じて、目を覚ました。携帯のデジタル時計は朝の九時前を表示している。
「……はい、」
『おっはよー、浦風君! 良い朝だねー! 素敵な朝だねー!』
半分ほど寝ている頭で携帯に出ると、テンションの高い声が飛んできた。
「誰だこいつ、」と思いながら視線を上に向ける。青い天井が見えた。
あれ、ちょっと待て。俺の部屋って天井青かったっけ?
そう考えて浦風は、自分がボリバケツの中で寝ていた事を思い出した。
「っあ、いってえ……、」
もともと体が柔らかいわけでも無いのに狭苦しい密閉空間で安息をしこうと言うのが間違っている。
昨夜は結局手持ちも無いので何も食べずにドラム缶状のバケツで寝たのだが。
流石に辛かった。
お陰で体中が痛い。
バケツを倒して外に出ると薄汚れた路地裏が目に写った。
『丸一日経つのに、まだ捕まらないなんてスゴいねー。冤罪者の才能あるんじゃないー?』
「んな才能、特典付きでも要らねえ」
「っで、要件は何だ」浦風が声のトーンを下げて問う。
電話越しの人物は少しだけ間を開けると言った。
『いさぎがいいね。流石に黙って従ってくれるようになったのー?』
「ツバキが絡んでなかったら暴言の百個や二百個たれてやってたよ」
笑い声が聴こえた。浦風はこの笑い声が、どうしても好きになれなかった。
『じゃあ、』
一呼吸置くと、電話越しの人物は続けた。『そろそろ真面目な話しをしようか』
浦風の表情が険しくなる。
『浦風君のいる場所は携帯のGPSで解ってるんだけど、』
常に監視下にある。とでも言っているような口振りだった。
『近くに青い看板引っ提げてる建物無い?』
「建物?」
路地の外に顔を出し、辺りを見渡す。
傍から見れば怪しい事このうえないだろうが、そんな事を言っていられるような場合でもない。
辺りに目を向けているとそれらしき建物が目に入った。
浦風がいる場所から、道路を挟んだ向こうにある建物だ。確かに青い看板が見える。
『今から三十分くらいしたら、堂々とその建物の中に入って屋上へ向かってよ』
階段真っ直ぐ上っていったら着くからさあ。
気楽に言ってくれやがる。そう思ったが口には出さなかった。
『それじゃあ、頑張ってねえ』
言うが早いか、勢い良く電話がきれた。
無機質な電子音を発する携帯を片手に、
「ホント、気楽に言いやがって」
と、愚痴を溢した。
浦風がツバキと出会ったのは、きっと偶然が重なっただけに過ぎなかったんだ。
その日はクリスマスを二週間後に控えた日だった。
朝から雪が降っていて、気温も低く、人々が縮こまって歩くような日。
当時、中学三年生だった浦風は、家族不在で訪れるクリスマスをどう過ごすべきか考えていた。
普通なら受験勉強一色なのだろうが、生憎浦風にその四文字はない。
自分はやれば出来る子、YDKと考えているからだ。実際浦風はやろうと思えば大概の事は出来る。
やろうと思うのは365日中の4日程だが。
そんな日のそんな浦風に声を掛けたのは、同級生でクラスが同じの矢野だった。
浦風と矢野は腐れ縁の仲で小中と同じクラスなのだ。
「今日家族で早めのクリパやるからお前も来い」
クリスマスパーティーをクリパと略すのは個人の勝手だが、なぜそれに自分も行かなければいけないんだ。
そう聞くと、
「お前どうせ暇なんだろ。凡人を誘ってやってんだ。有り難く思え」
ひとまず、一回殴っておいた。
* * *
「おい矢野! てめえ親父さんが予約したレストランに行くんじゃねえのかよ!」
小綺麗な包装紙で包まれた箱を両手に抱えて浦風は叫んだ。
その叫びを受けた矢野本人は、自分の後方を歩く浦風に落胆の目を向けた。
「約束は七時だ。今から行っても二時間近く待たされる。だから暇潰ししてんだ。
つうか、本当ならてめえら凡人がどう足掻いても行き着く事の出来ない、
超がつく高級レストランに連れてってやるつってんのにんだその態度。てめえは恩を知らねえ猫か」
「勝手に連れてきた分際で舐めた事ぬかしてんじゃねえよ。
なんならこのオモチャどっかに沈めて帰ってやっても良いんだぞ」
腕に抱えた荷物と矢野を交互に睨み付けながら浦風は言った。
「イヤダナー、浦風君。ホンノカワウィー冗談ジャナイカー。真二受ケルナヨー」、と、
あからさまな片言で言い切ると、矢野は右手に並ぶ様々な店に目を向けた。
そして、
「ッ──! あ、あれはっ!?」
等と言うが早いか、浦風を一人残し目の前の人混みの中に消えていってしまった。
「っえ、ちょ、矢野君?! あ、っちょ、え、や、やの、矢野おおおおお!」
マキー!久しぶりです!
私はいつまででも待ってるからね!更新!