冤罪者の鎮魂曲
冤罪。
それは罪無き者が罰せられる事。
何時の時代になっても、冤罪は消えない。
そもそも、冤罪が生まれ行く原因は「人が裁く」と言う事にある。
冤罪と言うのは、どうして生まれるのか――……
警察が間違った方法で真実を得ようとしているからか――……
新犯人が証拠を消したり、他人を犯人にしようとしているからか――……
いや――……
冤罪者は結局を言うと、悪いのは警察ではなく――……
『間違われる奴が悪い』
――らしい……。
【作者コメント】
こんにちは、マキです^^
アドバイスや感想コメント大歓迎です^^
(荒らしや中傷はやめて下さい)←
>>15 ♪♪♪さん
返信遅くなってすみませんっ!
そして、コメント有難う御座います!
「いつも、楽しみにしています。」
……くぅぅうううっ!
とっても、嬉しいコメントです!
心に染みますっ!
最近コメントが見えないので、人気無いのだとばかり……
もう、本当に有難う御座います!
出来れば、今後もお暇があればコメントを……
いえ。
何でもありません……←
煙草を口に咥えてトイレに入ってきた刑事の動きが止まる。
当然だ。
一人の男が窓縁に凭れてピクリとも動かず、事件の重要参考人である人物は外にいるのだから。
こんな光景を見て、一瞬でさへ動揺も何もせず平常心を保たせる者など、そう居ないだろう。
「テメェ……何やって……」
驚いたように少し目を見張ってそう言う刑事。
浦風はッハとしたような顔で「ちが……!」と説得に入る。
どうやって、回避する。
どうやって、説得する。
どうやって、否定する。
――どうやって、どうやって、どうやって、どうやって、どうやって……!
浦風の頭が完全に混乱する。
そして――
「何やってんだ、テメェは!?」
――浦風の正確な答えを導く思考回路速度よりも早く、刑事の怒号とも言える声が浦風の耳をつんざいた。
* * *
気付いたら、浦風は全力疾走していた。
数メートル後ろから数人の者が、何か言いながら浦風を追いかけてくる。
浦風は息を荒げ、瞼に涙を貯めながら走った。
もう、浦風に投げられる声など聞こえない。
浦風の頬についた赤い何かが、浦風の目から流れ出る涙に混じって一緒に地面に落ちる。
その跡は、テレビの予報通り灰色の空から降ってきた大粒の雨によって消え去っていく。
予報通り降り始めた雨を、浦風は不思議と愛おしく感じた。
いつもなら、雨などどうでもいい存在だった。
気にする対象物から普通に除外されていた。
だが、今日くらいは。
今日くらいは雨を好んでも良いのではないかと思った。
自分が流した涙の跡を消してくれるのなら、ずっと振り続けてくれ。
そう思った。
ポツポツッという音が、轟音と化して浦風の耳を襲う。
その音は、浦風の人生の破壊音だった。
二度と戻る事のない人生が崩れる音。
浦風は涙を流し、それを雨が消し去る。
浦風を追う者達は浦風が涙している事自体気付いていない様子で大声を上げる。
雨が酷くなり、ポツポツッという音からザァァァァと音調を変える。
音が変わった瞬間、浦風は雨がしみこむアスファルトの匂いを深く吸い込み歯を食いしばった。
――日本の警察は優秀だよ――
不意に、そう言った男の顔が頭をよぎる。
浦風は歯を食いしばりながら「クソ……ッ!」と呟く。
(――兄ちゃん……。アンタの言葉、俺なんかが信じてもいいか?)
良いなんて言われなくて良い。
ただ、自分の人生が崩れ行く音から耳を離したかったからに過ぎない質問。
その質問さへも、虚空に消えていくのだ――……。
第一話・破壊音 終
ヤバい!スゲェよ!!姉貴!!!
もう、作家デビューしちゃう気ですか?
神です!神!!
姉貴!ウチのも、見ておくんなまし。
<いつでも君に会えると思っていたのに。>
です。
♪♪さん>>
コメント有難う御座います!
さ、作家デビュー?!
む、無理ですよ!
私みたいに、低レベルな小説……。
で、でもそう言っていただけて嬉しいです!
本当に有難う御座います!
そ、それと……
か、神とか、姉貴とかでもないので、気軽にマキって呼んで頂いて構いませんよ?
良かったらですが、私もオトちゃんとか、オンプちゃんとか呼ぶので……。
『いつでも君に会えると思っていたのに。』ですね!
解りました!
読みに行きますね!
今後も暇があったら、コメント宜しくお願いします!
冤罪者の鎮魂曲 第二話・終わりは、始まりに過ぎない
雨が降ってきた。
その事を、廃工場の錆び付いた屋根に雨が落ちる音を聞いて初めて気付いた。
雨が降ってきた事に気付いて、廃工場の中から割れた窓越しに空を見ると灰色の空が見える。
「あちゃー。降ってきちゃったよ。傘持ってきてないんだけどなー……」
茶色がかかった黒い長髪を後頭部で一つ結びにした女性が困ったような表情でそう言った。
女性は灰色の空を見ながら「っま、いっか。これで報道陣も少なくなるでしょ」と呟く。
女性は虚空に向けていた視線を落とす。
視線の行く末は、黄色い立ち入り禁止用テープ向こうに群がっている報道陣に向けられる。
大きなビデオカメラを持った者。服の袖にテレビ局のワッペンをつけた者。マイクを持っている者。
一目で報道陣だと解かるそれらは、突如降ってきた雨に驚きながらも所持していた傘を開く。
傘を所持していないと思われる報道陣はそそくさとその場を後にする。
結局雨が降ってきて尚も、その場に残った報道陣は女性が思うに数社の報道陣だけだった。
「全く。解かってる事は殆ど話したのに、懲りない人達だなー。そんなにスクープが欲しいかねー」
呆れた表情と口調で言うと、不意に「片桐(かたぎり)!」と女性に向かって声がかかる。
片桐と呼ばれたその女性は、声のした背後に目を向ける。
「んー? どったの、一之瀬(いちのせ)。なんか見つかった?」
片桐と呼ばれた女性は振り返り、声をかけたと思われる黒縁眼鏡をかけた男性に言う。
青いジャージの様な服のポケットに手を突っ込んで片桐が聞くと一之瀬と呼ばれた男性は険しい表情を作る。
と言うか、元々険しかった表情が更に険しくなった。
「っえ、何か怒ってる? っえ、私何かした? まさか、まだこの前のプリンの件引きずって」
「俺のこと馬鹿にしてんのか、タコスケ」
少々焦りを見せて言う片桐に一之瀬は率直なツッコミを入れる。
「じゃ、じゃあ何よ……」と落ち込んだように言うと、一之瀬は険しい表情をまたも険しくさせる。
片桐も一之瀬の表情に合わせて、その表情を険しくさせる。
「真面目な話……どうしたの」
眉間に皺を寄せて言うと、一之瀬は険しい表情に戸惑いの色も見せる。
そして――
「本庁で事件があった。ホシは、今回の事件……幼女刺殺事件の重要参考人と見られてる……」
――冷や汗を見せて言う一之瀬を、片桐は驚いたような視線を向けて見つめた。
はじめまして。
陰ながら拝見させていただいておりました、ちあ@と申します。
陽実、という名前で前は活動しておりました。
誠に勝手ながら自己紹介掲示板にあります、葉っぱ天国で執筆している小説板作家のプロフィールに
書かせていただいた私のプロフィール内の好きな作家様のところにマキ様を書かせていただきました。
最近見つけた小説の中で一番面白く、
久しぶりにネット小説に読みいってしまいました。
私もここの小説板で二年ほど執筆しているのですが、
あまり上達せずにイライラしてしまっていました。
しかしマキ様の小説を読ませていただいて、自分のイライラも努力不足だと痛感いたしました。
少し気になったのがカギカッコの前のスペースと
()で心情を書いている場面があったところでした。
長々と申し訳ありません。
すごく面白い作品を拝読させていただきました。
これからも執筆活動頑張ってください。
陰ながら応援させていただきます。
また、どこかでお会いできればその時は声をかけてください(*´`)
では失礼します。
ちあ@さん>>
コメント&アドバイス有難う御座います!
お、面白い?!
ほ、本当ですか?!
と、とっても嬉しいです!
イライラ解消ですか……。
人によって、いろんな事でストレス(で良いのかな?)溜まりますもんね……。
この様な作品で、ちあさんのイライラが解消したのであれば、嬉しいことこの上ありません!
そして、良きご意見有難う御座います!
「」の前のスペースと、()の心情ですね!
解りました!
今後より、改善していきます!
本当に、良きアドバイス有難う御座います!
今後とも、私を含め「冤罪者の鎮魂曲」を宜しくお願いします!
大きな横断歩道と大きなショッピングセンターを前にした路地裏。
そこで、浦風は息を荒げながら背後のビル壁に背を預けていた。
脱力の色が見える目で地面に視線を落とすと、アスファルトに溜まった水の塊が見える。
少々泥が混じったかのように茶色っぽい色を濁らせる水溜り。
片手で横腹を抑えて壁に背を預けながらその場に座り込む。
荒々しい息が一向に治らない。
灰色の空から地上に降り注ぐ雨が、浦風の体温を奪う。
「ハァハァ……」と言う息が雨音と混じり合う。
浦風は「畜生……っ!」と、震えた声で言いながら目を瞑る。
――糸が切れた人形の様に、一瞬で動かなくなった男――
不意に、先ほどの情景が浦風の脳裏を横切る。
息を飲み、目を見開き、「ッヒ……!」と掠れた悲鳴が上がる。
あの瞬間。
何があったのか、浦風は全く理解しきれていない。
バットが空を切るような音がしたと思ったら、男が突如動かなくなった。
それだけなのだ。
浦風が理解しているのは、たったそれだけなのだ。
それは、押しても引いても代わり映えの無い事実だ。
「一体何なんだよ……! 巫山戯んなよ……。悪巫山戯にしたって、度が過ぎんだろ……っ」
悪巫山戯?
自分で言っておきながら、浦風はその言葉に反応した。
そうだ、悪巫山戯だ。
頭の中で呟く。
電話の相手はまるで‘悪巫山戯’をして「楽しかった」とでもいうような口調だった。
「あの電話……あの電話の相手がわかりゃあ……」
浦風は思い切ったように言うと、勢いよく立ち上がる。
そして、重要な事を思い出し「っあ」と声を上げた。
「け、ケータイ……どしたっけ」
高校の指定制服のポケットに手を入れ、ガサゴソとポケット内を模索する。
あったと言えば、先日制服を洗濯する際に出し忘れた、水で無残になったティッシュの残物だけ。
そんなものが何の役に立つ。
浦風はポケットから出した手の平の中にある無残な姿となったティッシュを見て一言。
「……馬鹿にしてんのか!?」
と、自分勝手に怒鳴ってティッシュの無残な残物を雨水溜まるアスファルトに撒き散らした。
悪巫山戯←なんて読むんですか?
わるふざけ、とか?
バカですいません(< _ _)>
りなさん>>
はいっ。
悪巫山戯=わるふざけ
と、読みますねっ^^
すみません(--;)
フリガナ書くの忘れてしまって……。
また、解からないところがあったら言って下さいっ!
>>26
合ってて良かったです(笑)
りなさん>>
他にも解からない所があったら、言って下さい
多くなるうちに、直さなくてはいけないので……←
今は浦風の事を追跡する警察陣はいないが、言動があまりにも大胆すぎる。
その言動をなんの躊躇(ちゅうちょ)も無く行なっている浦風に事の重要さ等、あまり感じられていない。
「あぁー! 俺ケータイどうしたんだよ!? どっかに落とした? あそこに置いてきた?!」
あそこと言うのは、警視庁の事だ。
詳しくは浦風が携帯を見つけたところである。
携帯の行方としてはどちらの可能性もある。
しかし、そう言う状況の場合は携帯をもう一度入手するのは無理に等しくなる。
浦風は大袈裟にも頭を抱え込み「だぁぁああぁ゛!」と唸ってみせる。
あの携帯、詳しくは携帯に電話をかけてきた声の主と連絡が取れれば現状が変えられるかもしれない。
そんな考えが浦風にはあった。
しょせん「しれない」に過ぎない事だが浦風にとっては重要なことだ。
浦風が路地裏前を通るサラリーマンや若いカップルに「何してるんだ」と言う目で見られ数分が経過した頃。
浦風は無表情で「っあ」と声を上げ、「あ、アイツなら」と口篭るような声で言う。
「い、いや……考え直せ、俺。あんな奴にカシなんか作ってみろ。一生コキ使われるぞ?」
壁に手を付いて念仏でも唱えるように言う浦風。
「いやでも、今はんなこと言ってる場合じゃ」と言ってみたり「でも……」と戸惑ったように言ったりしている。
一度決心したものの、その思考に割り込んでくるもう一つの思考。
ブツブツと小声で何か言っている浦風ははたから見れば「変な人」である。
浦風は数分の間深く早く思考回路を回転させた。
そして、やっと決心したように「よしっ」と言う。その顔には冷や汗がたれていた。
「が、頑張ろ……」
と、これから地獄でも見に行くかのように脱力した声で言うとその場から離れようと踵を返した。
今から向かうのは、浦風が死んでも縁を切りたいと思っている――
――‘腐れ縁’と言う名でつながっている‘友人’の家だ。
あのー、いちいち感想をくれた方に1レス使って返さない方が良いです。
雑談で注意されかねないですし、見てる方も見にくいです。
私も見ていたんですが、見にくくて、とてもイライラしました。
匿名さん>>
良きご忠告有難う御座います。
ですが、コミュニケーションも無いよりはある方がイイと思い今まで返事をしていた次第です。
私のような者が書いている小説に懇切丁寧なコメントをくれる方々に返事もせず、
無視をしろ、と言うのはいささか好ましい物ではないと私自身思います。
確かに雑談になりかねるかもしれませんが、そのような事になれば
それこそコメントに注意を呼びかけ、交流掲示板にスレッドを立てます。
今回の匿名様のコメントは今後の忠告だという事で受け取ります。
しかし、誠意の見せ方は人それぞれです。
皆さんへの感謝を二、三行の物に怠り、その下に小説を書くというのは
私自身の誠意の現れにないと思っています。
今回の忠告、何度も言うように有難う御座います。
片桐は、光を無くした瞳で目の前の物に目を落としていた。
薄汚れた壁に垂れる血痕。
雨で濡れた地面に立ててある「1」や「2」と白い文字で書いてある黒いプレート。
片桐は雨が止んで尚も、コンビニで買ったビニール傘を片手にそれを見ていた。
青い帽子をかぶり、マスクをしている者達が片桐の前を行ったり来たりしている。
青と黄色が混じる服の背中に英語で書かれている「東京」が一々片桐の目に飛び込む。
「……酷いもんだな。警視庁で白昼堂々と殺しなんざ。しかも射殺と来た」
黙って立ち続ける片桐の横で、一之瀬が言う。
険しい顔つきだ。
「馬鹿だね、田崎(たざき)」
呟くような片桐のか細い声が一之瀬の耳に入る。
片桐は続けた。
「何が『子供が憧れるヒーローみたいな、警察官になりたい』よ。バッカじゃないの」
呆れたと言わんばかりの顔で傘を閉じながら片桐は言う。
「田崎はそんなこと言ってたのか」と一之瀬が訊くと「うん」と片桐は頭を掻きながら答える。
「警察学校時代の同期でさ。いやー、アイツの丸刈り可愛かったなー」
小さく口角を上げて言う片桐の顔は昔を思う優しげな顔だ。
片桐の話では毎日アニメの主人公の様な事を言っては熱心に勉学に励んでいたと言う。
はにかみの笑顔でそう話す片桐の顔を一之瀬は無表情で見つめていた。
「結婚して、子供も生まれたんだろ」
「アイツも私も四捨五入したら三十代だからねー。結婚くらい……子供、くらい」
声に力が無くなっていく。
一之瀬は片桐に向けていた視線を前方に移す。
田崎――トイレの窓付近で射殺された男――の射殺現場が一之瀬の目に焼き付く。
薄汚れた風に貼られた、田崎の遺体の形を模る白いテープ。
雨風で証拠が消されないように、柱を立てそこに軽くかぶせられた青いビニールシート。
その場一体の立ち入りを禁止するために、一之瀬達から離れたところに貼られた黄色いテープ。
その後ろで騒ぎを聞きつけ、早くも集まった報道陣関係者。そして野次馬。
「ホント……馬鹿な奴だったよ……」
片桐は、視線を落として目に手をかぶせた。
一之瀬に自分の涙を見せないために。
片桐の泣く姿なんか、見たくなかった。
出来る事なら、死ぬまで見たくなかった。
一之瀬の純粋な想いとは裏腹に、片桐は涙を見せまいと顔に手を重ねている。
「……お前も、泣けるんだな。初めて知ったよ」
想いを表に出さず、嫌味を言うように一之瀬がそう口に出す。
「私の事、なんだと思ってんのよ……馬鹿」と涙を流しながら非難の言葉をなげる。
「……ホシは俺達が担当してる『幼女刺殺事件』と同一人物らしい。俺たちの管轄内だ。無論操作に回される」
一之瀬の言いたいことを、片桐はどことなく察した。
一之瀬の冷静な色を見せる瞳が片桐に向く。
「操作、すんだろ?」
優しさも込もった冷静な目を向けられると、片桐は「ヒック」と肩を震わせた。
一之瀬は片桐から返される言葉を待った。
たとえどんな返事でも良い。
別にどんな返事であれ、何も言うことはない。
「……捜査、しないわけないでしょうが……! 察せよ、馬鹿っ」
可愛気の無い返事だ。
片桐が言った言葉を聞いて一之瀬は単純にそう思った。
「もうちょい、可愛気がある言い方出来ねぇのか。一応は女なんだからよ」
「一応って、何よ! ドアホッ!」
片桐の反発の声が一之瀬に届く。
一之瀬はそんな言葉知らぬ存ぜぬだ。
片桐はしかめた顔付きで、一之瀬を見ると目に浮かぶ涙を拭った。
「……捜査、するわよ。言われなくても」
不貞腐れた子供のような口調だった。
しかし、そう言う片桐の目にはいろんな感情が写っていた。
喜怒哀楽だけの感情じゃない。
喜怒哀楽以上でもあり、以下でもある感情。
一之瀬はため息を吐くと踵を返した。
「行くぞ。捜査会議、始まっちまう」
無愛想な口調で言われると片桐は「うっさい」と言いながら一之瀬の背中を追っていった。
壁から少し出っ張った白いボタンを押せば、聞き慣れた無機質な音がドア越しに小さく耳に入る。
その音は、家中に響き渡ったのだろうが家のドアが開く気配は無い。
それどころか、家には人の気配が感じない。
ここまで来てなんだが、まさかいないのか?
住宅街に並ぶ二階建ての家の茶色いドアに手と額をくっつけて考えるのは、何を隠そう浦風だ。
浦風は誰も家のドアを開けない事を理解しながらも、家のインターフォンを再度力強く押し付ける。
またも、家の中から無機質な音が耳に入る。
しかし、誰かが出てくる気配は無い。
眉間に皺を寄せ、いかにもイラついたと言うような表情を作ってドアを睨む。
「おいコラ、矢野(やの)! いんのは、解かってんだよ! とっとと出てこい、コラァ!」
タチの悪いヤクザのように怒鳴りながらドアを叩いてみるも、返答無し。
またも脳内に「誰もいないんじゃない?」コールが鳴り響くのを、必死に否定して浦風は続ける。
「居留守かよ、おい! ……っそんなんじゃっ、テメェの大好きな萌えキュンハート何とかも泣――」
近所迷惑である事を知ってか知らずか、ドアを叩き怒鳴り続けた浦風。
しかし、そんな浦風の言葉が途中で遮られる。
その代わり、家のドアが勢い良く開き不覚にも浦風はそのドアに額を強く打ち付ける。
その時の、鈍い音がその場一体を埋め尽くした。
「い、いってぇ……!」とドアがピンポイントにぶつかった額を抑えてよろめく浦風。
同時に、開いたドアと一緒に家の中から足が飛び出し、浦風の腹部をとらえる。
飛び出してきた足は浦風の腹にストライク。
腹部に物凄い衝撃が走った。
一瞬遅れで衝撃が体中に伝わり、浦風の体は大袈裟にも向い側に位置する家の塀に飛ばされる。
浦風の脳内で先ほどのコールから「っあ、死んだお婆ちゃんが見える」コールに変わった瞬間だった。
開いたドアから薄緑色のスリッパをはいた足が外に出てくる。
そして――
「萌えキュンハートナノちゃんだ、このド三下ぁああぁ゛!」
――物凄い怒号を上げて、一人の少年が腹を抱える浦風を睨んだ。
No.33の11行目、
「捜査」が「操作」になってますー
面白いので頑張ってください!
匿名さん>>
っあ、ホントだ……。
匿名さん、ミス教えてくれて有難う御座います!
……すいません。
確認を怠っていました……。
教えてくれて、本当に有難う御座います!
多分、他にもミス有ると思います……←
「面白い」と言ってくれるのは有り難いですが
誤字脱字の多い小説って……駄目ですよね……基本的に……。
こんな小説に、素晴らしきお褒めの言葉をくれて有難う御座います……!
これからも、宜しくお願いします……!
物凄い怒鳴りを上げるカチューシャで前髪を留めている少年。
男でありながらカチューシャをしていると言うのは、珍しいものだ。
少年は腹を抱える浦風に近づく。
「おいおい、浦風君よー。テメェさぁ、いい歳こいてキャラの名前一つ覚えらんないの? 馬鹿なの?」
魂が天高く逝き掛けている浦風の服の胸ぐらを引っ掴んで言う。
その顔は、怒りに満ち溢れた恐怖を感じさせる顔だ。
一方の浦風は、やはり死にそうな猫の形相である。
「うおーい、浦風くーん? テメェなに死にさらそうとしてんのー? さっさと意識戻せ。殺すぞ」
発言が一々恐怖をあおっている。
少年曰く、わざとではないのだろう。
しかし、浦風にしてみたら少年の発言は違う意味で「堕とし言葉」である。
少年は一向に返事をしない浦風の首をグラン、グランと縦に振らせる。
その時も当たり前のように暴言を吐いていた。
「なにシカトしてんだよ! あぁ゛?!」
返事をしない浦風に怒りを積もらせる少年。
少年は続けた。
「シカトといじめは万引きより悪い事だからやっちゃ駄目、やったらお母さん泣いちゃう。って習わなかったか?! あぁ゛!」
「っ習ってねぇよ!? 万引きより、シカトといじめの方がレベル高いなんて習った事ないよ!?」
やっとの事で意識を取り戻し、少年に率直なツッコミを入れる浦風。
少々、納得のいくツッコミである。
「シカトといじめ舐めんなよ! つか、シカトイコールいじめだからね! 良い子の皆、これ大切だからね!?」
「だったら、シカトといじめ一緒にしろよ! 無駄に尺取ってんじゃねぇよ!」
真面目な顔で以外にも真面目な事を言って見せる少年。
それに叫ぶかのようにツッコミを入れる浦風。
傍から見たら、この二人はどのように映るのだろうか。
「大体、テメェ何しに俺んち来んだよ! 理由もねぇのに、勝手に人んちきてんじゃねぇよ!」
少年に言われ、一瞬は「理由も無く来たら駄目ってか?!」と怒鳴り返しそうになる浦風。
しかし、浦風がこの少年を訪ねた理由を思い出しその言葉を飲み込む。
そして「っあ、そーだった」と一人納得したように手の平に拳を乗せた。
「あぁ゛? なに、一人で納得してんだよ」
「そうそう、理由があるんだった。って、こんな冷静にしてる場合でも無かった!」
少年の腕を振りほどき、左右に顔を振る。
今更すぎる確認だ。
幸運にも、周りには少年と浦風以外いない。
大声で漫才を繰り広げていたのに、誰からの注目も無いと言うのは運がイイものだ。
「ちょ、矢野! 理由は聞かず、俺をかくまえ!」
「はぁ? っえ、お前何かやったの? っえ、あれか? 万引きして、追われてんの?」
本来のここに訪れた理由を完全に思い出し、浦風は慌てたように少年に頼み込む。
一方の少年は満面の笑みで浦風を馬鹿にするかのように言う。
その顔と発言にまたも苛立ちを感じて「万引きから離れてくんない?!」とまた飽きもせずツッコミを入れる。
「っとにもかくにも! ……今は、理由を聞かずに俺をかくまってくれっ。頼む……っ」
小さながらも頭を下げて堂々と頼み込む浦風。
少年からしたら、こんなに縮こまっている浦風を見たのは初めてだ。
少年は少し考える間を開けると、目の前の浦風を見て渋々と言った様に口を開いた。
「萌えキュンハートナノちゃんのフィギア五個と特典付きDVDで手ェ打ってやるよ。ったく……」
どこか困ったような顔だったが、その瞳には慣れ親しんだ友の顔が鈍く映っていた。
おもしろい!!何回見てもおもしろい!!
実はあたし、第1話(?)から読んでたんですよ。いわゆる「かくれ読者」ってやつです。
これからもずっと読んでいくので、頑張ってくださいね!
応援してます\(^_^)
かりんさん>>
コメント有り難う御座います!
か、かくれ読者……?!
わ、私の様な者が作った小説にその様な方がいるなんて……っ!?
不詳このワタクシ、嬉しいの一言しか出ません!
はいっ!
これからも頑張って投稿し続けようと思います!
本当に有り難う御座いました!
今後もコメント宜しくお願いします!
矢野(やの)と浦風に呼ばれた少年は、外に出たスリッパのまま家の中に引き返して行った。
それには家の住人ではない浦風も少々呆れる事を覚えた。
「外出たんだからスリッパ脱げよ」
「良いんだよ別に。リビングと廊下じゃスリッパ変えんだから」
なぜリビングと廊下でスリッパを変えるのか。
浦風はその理由を知っていた。
と言うより、矢野の自宅に来た者は必ずその理由を理解して帰っていく。
まぁ、矢野の家に来た者など数える程しかいないが。
浦風は自分の質問にそっけない答えを返されると、呆れたと言うような顔を更に呆れ顔にする。
呆れた顔のまま、浦風は玄関のドアを閉めその場で革の靴を脱ぐ。
綺麗な廊下に足を置けば、右に伸びる短い廊下と目の前にある扉が目に入る。
自然にもその扉の向こうの世界を想像してしまう浦風である。
「おい、何やってんだよ。さっさと来い」
扉の取っ手に手を置いてそう言う矢野。
浦風は呆れながらも「お、おう」と言って取っ手に手を置く矢野に近付く。
すると――
『プルルルッ、プルルルッ、プルルルッ!』
――突如となく、浦風の右手にある廊下に置かれた電話が音を発した。
おお!なんだなんだ!
ま、まさか……け、警察ッッ!?!?
りな>>
いやいや、それは企業秘密というヤツで(笑)←
まぁ、まだ明かせないかな
警察かもしれないし、ただの電話かもしれないし、間違い電話かもしれないし←
まぁ、きっと、これから解かるはず!
多分!←オイ
いつも、コメント有り難う!
これからが、本番だよ!
こんな駄作小説だけど、これからも良かったら見て下さいっ!
>>43
駄作なワケないじゃん!
面白いし、読んでて楽しいし!
最高だよ!!
本番待ってるよ!
りな>>
そう言ってもらえると、嬉しいよ!
これからも、楽しんでもらえるように頑張るね!
さぁて、ちょいと本気出すかー!
「んだぁ、こんな時間に」
矢野はドアの取っ手から手を離し、浦風のすぐ横にある電話に近付く。
茶色い棚の上で、白い電話機が『プルルルッ』と音を放つ。
その音は浦風の耳に痛いほど響き渡った。
先程の雨音のように。
あの男が動かなくなった時に聞いた、空を斬る音のように。
浦風の目が見開かれた。
「その電話……っ」
嫌な予感がする。
得も言われぬ感覚が浦風を襲う。
決定的な何かがあるわけじゃなかった。
ただ直感的にその電話には出てはいけないと思った。
「うぃす、矢野ですけど」
浦風の言葉など耳にも入れない素振りで、矢野は受話器を耳に宛てがった。
そして、数秒の間矢野の動きが停止する。
少ししてから、驚いた表情で矢野が浦風に視線を送った。
その視線の意味を、浦風は理解する事が出来た。察する事が出来た。
矢野が、受話器を耳から離す。その受話器からは――
『浦風君に変わってもらえますー?』
――聞き覚えのある、憎たらしい子供のような声が漏れていた。
これが、始まりなのだ。
一度終わった、浦風秀哉と言う人間のプロローグなのだ。
つまり、まだまだ序章に過ぎぬという事なのだ。
第二話・終わりは、始まりに過ぎない 終
もう、ほんとヤバい……
コメントもほどほどにしなきゃいけないけどつい書いてしまう面白さ…(><)
りな>>
雑談(じゃないけど)は、控えなきゃいけないけどつい返信してしまう有り難さ(笑)
まぁ、私も控えなきゃなんだけどね←
冤罪者の鎮魂曲 第三話・幼女誘拐事件
浦風は耳を疑った。
と、同時に自分の直感の良さに寒気さへも覚えた。
矢野が動揺したように浦風に視線を送る。
その視線が鋭い刃とやって、浦風に突き刺さる。
浦風は意を決したような表情を作ると、歯を食いしばって矢野に近付く。
「お、おい」と動揺する矢野を無理矢理に押しのけて受話器を奪うと即座に耳に宛がてる。
「テメェ、どこの誰だっ」
受話器を耳につけるや否や、浦風は即座にドスの効いた声で言った。
電話越しの人物の笑い声が、嫌でも浦風の耳に入ってくる。
『単刀直入だねー、うん。面白いから良いんだけど。うん』
人の怒りを買うような口調だ。
浦風は今にも受話器を目の前の壁に叩きつけたくなる衝動に駆られるも、なんとか堪える。
衝動的にでもそんなことをすれば、折角望んで訪れたチャンスが泡の如く消えていってしまう。
そんな気がしたのだ。
「テメェ、人のことおちょくってんのかよっ。それとも馬鹿にしてんのかよっ、ハッキリしろや」
矢野の許可があれば、今にでも壁を殴って溜まった怒りを発散していただろう。
驚くほどの短気であるのは、浦風自身が一番に理解していた。
『まさか! いつ、誰が、何時何分何十秒、地球が何回回った時にそんなことしたんだよー!』
「お前、いい加減しよろ。俺は小学生かなんかのくだらん喧嘩に巻き込まれてんのか、あん?」
なんとも幼稚臭い言い分に、浦風はやはりドスの効いた声で返答をするのだった。
葉っぱ天国の素人が創作した小説で初めて面白いと思った。
頑張れ。
戦刃むくろさん>>
コメント有難う御座います
面白い、と言っていただけてとても嬉しく思います(#^.^#)
ですが、葉っぱ天国には私のような者が作る小説よりも
はるかに高レベルな小説を作る方々が大勢います。
私なんて、足元にも及びません
コメント、誠に有難う御座います
これからも、頑張ります
お暇があれば、またコメント宜しくお願いします
『と、こ、ろ、でー』
幼稚臭い事をズラズラと並べられていると、不意に電話越しの人物はそんな事を言った。
変に一文字一文字の間を空けたのは、何を思っての事なのだろうか。
浦風は反発の言葉を投げかけようと口を開く。っが、それよりも早く電話越しの人物は続けた。
『浦風君ってちっちゃい子好き?』
間髪入れずに放たれたその言葉。
それを聞いた途端、浦風は固まった。そして、どう答えるべきか迷った。
ちっちゃい子、とは、‘幼女’と捉えるべきなのだろうが。
そして、もっと考えるのであれば、その質問は浦風が幼女好きなのか聞いているということである。
それを人知れず察した浦風は、あからさまに顔をしかめた。
「あの、さーせん。電話切っていいッスか?」
『っえ?! なんで?! ロリコンなのか、聞いてるだけじゃ――』
「黙れ、クズがッ」
浦風からなんとも言えない殺気がそこらじゅうに放たれる。
殺気を空気的に感じると、矢野は「壁殴んじゃねーぞー」と浦風に念を押す。
『まぁまぁ。話は最後まで聞いてよ。……君も男でしょ? だったら、‘ミッション’とか訊くと燃えない?』
口角が上がった。
電話越しでもそれが理解できるほど、電話越しの人物は話し方に感情を込めたようだった。
「……わりぃな。俺はミッションとか言う言葉には心揺るがねぇんだよ」と浦風は言う。
電話越しの人物は笑った。
『でもさっ。人生に一回くらい、あってもイイとは思わない? とっても、とっても刺激的な……――』
浦風は表情を険しくし、受話器から発せられる声に耳を傾けた。
人を小馬鹿にしたような口調の言葉に。
自分の人生をぶち壊すことになる言葉に。
『――死ぬほど充実した、‘ミッション’って』
やはり、人のことを馬鹿にしたような口調だった。
「さぁ、どんなミッションなんだっ!?」
次回浦風がーーーー………っっ!?
↑心の実況↑
りな>>
さぁて、どんなミッションでしょうか〜(2828←
乞うご期待! って言っておきたいけど、期待される程の物でもないしね-▽-
まぁ、浦風が死なない事を祈っていて下さい←
浦風「っえ゛?」
ミッションとは、一体どういう物なのか。
浦風は顔をしかめた。
「自分の素性を明かさねぇのに、ずいぶん勝手なこと言うなぁ。テメェ」
低い声で言うと、受話器から鼻で笑うような声が聴こえた。
浦風が投げている質問は、問いかけて良い質問と言えるはずだ。
『アッハハ。僕の素性? そうだな〜……。容疑者Xとでも名乗っておくよ。面白いでしょ?』
面白いわけあるかっ、と言ってやろうと思ったもののやめることにした。
言ったら言ったで、電話越しの人物のペースに乗せられているような気がしたからだ。
代わりと言ってはなんだが「っで、ミッションってなに」と素っ気ない口調で聞く。
『クスッ』と鼻で笑うのが、受話器から浦風の耳に入った。
『君が警視庁に呼ばれて、事情聴取を受けた理由って何となく解かってるよね?』
浦風が所轄署を差し置いて速攻で本庁に連れて行かれたのは、どうも幼女刺殺事件が関連している。
どうにも、事件のナイフに浦風の指紋がついていたのが浦風をマークする決め手となったらしいが。
詳しい理由は知らないものの、それくらいなら通常は使わない浦風の頭でも理解している。
「……餓鬼殺しで、らしいな。それ以上は――」
「それ以上は知らない」と言うつもりが、不意にも脳裏に映った光景がその言葉を遮断させた。
光景。刑事の男が、突如動かなくなった。あの光景。
声にならない嘆きが浦風の口から溢れた。
「ッ――……!」
『っお? まさか、まさか? 思い出しちゃった? あの刑事さんが死んじゃった時のこ、う、け――』
「うるせぇッ!」
焦りを隠せない浦風の怒鳴り声が、その場に小さく響いた。
もしかして……警察じゃなくて例の携帯電話の人……?(勝手に警察だと思っている)
そして、犯人!?
浦風くんがんばれ〜っ
りな>>
浦風君、応援されてるんだから頑張ってね!
私も応援するからっ!
浦風「いやいや。俺の今後を決めるのはお前だから。
頑張れって言われてもどうしようもねぇんだけど……」
りなも応援してるんだから、頑張ってねっ!←念押し
浦風「……はい……」
不意に、浦風の頭にとある質問が浮かんだ。
それは、浦風が電話越しの人物と接触できた際必ず聞こうと思っていたもので。
浦風は動揺を隠すことが出来ないまま、その質問を口にした。
「なんで……なんで、テメェ、あの兄ちゃんが……」
あの時。
あの刑事の男が動かなくなる前に電話越しの人物が言った言葉。
――その男の人……撃たれて死んじゃうよ?――
言葉とは裏腹な軽い口調。
嫌と言うほど鮮明に覚えているその言葉の意味。
その言葉を聞いた後、男は動かなくなった。
その光景は忘れることなく、浦風の頭の中に残っている。
『っえ? ……あぁー。あのお兄さんのこと? っえ? 浦風君そんなことも解かんないの?』
口調が軽すぎてイラっとくる。
不思議と浦風がそう思うことは無かった。
それとは逆に、焦りと恐怖が浦風を襲った。
そんな浦風など知ったこっちゃないとでも言うように、電話越しの人物はいつもの口調で続ける。
『そんなの決まってるじゃん』
その後の言葉は解かるから、言わないでくれ。
不意にもそんな事を思ってしまう。
自然に、後の言葉を聞かないようにと耳を塞ぎたくなる。
しかし――
『僕があのお兄さんを撃ったからだよ』
――その言葉を言う者は、遠慮など知らぬ様子だ。
浦風の時間が一瞬止まった。
受話器から何故か笑い声が上がる。
続いて『あれー? どうしたの、浦風くーん』と人を馬鹿にするような声が飛んだ。
他にも戯言(たわごと)をほざくように電話越しの人物は言葉を並べた。
そして言うのだ。
浦風に課せられた‘ミッション’とやらを。
『っあ、うん。でねー? 幼女刺殺事件と同じくらい今騒がれてる事件知ってる?』
知るか。
そういい返したかったが、口が動かなかった。
頭の回転事態がストップしたかのように、浦風は一切の言動能力を持っていなかった。
電話越しの人物はそんな浦風を無視しながら続ける。
『‘幼女誘拐事件’って、知ってるでしょ?』
淡々とした子供のような口調が浦風に問いかける。
それは浦風にも聞きおぼえがあった。
幼女刺殺事件と同じくらいの動揺を人々に与えた事件だ。
ここ数日、幼女刺殺事件同様、新聞やテレビで報道されている。
『っで、その事件で誘拐された子たちがまだ見つかってないってのは、知ってるかなー?』
どうでもよかった。
どうせ、他人事だ。浦風には関係のないことだ。
『浦風君には、その子たちをヒーローみたいに助けてみて欲しいんだよ! 意味分かる?』
どこか解かったような気がしたが、解からない方が良かったのかもしれない。
しょせん戯言が並んだおかしな日本語でしかないのだ。電話越しの人物が言っていることは。
だが、自分の頭にそう言い聞かせてしまったら何かを失ってしまう気がする。
そんな考えが、浦風の頭のあちこちを行き来するのだ。
「……ダークヒーロー、ってか……」
浦風は呟くように言った。
『え?』と言う電話越しの人物。
浦風が静かに続ける。
「俺ぁ、ダークヒーローより根っからの悪役の方が向いてんだよな……。個人的な感想だけど」
軽く笑って見せた。
表情は読めないも、笑っているのは解かる。
電話越しの人物はなにも返さない。
少し経ってから『なにが言いたいの?』と返ってきた。
浦風はうつむきがちだった顔を上げた。
「あんま自分勝手に話を推し進めんじゃねぇって言いてぇんだよ」
浦風は受話器を置いた。
振り返ると驚いた表情の矢野が呆然とした表情でたっていた。
いかにも今の状況を説明してくれと言っている顔だ。
「お、お前、一体何があったってんだよ……」
矢野が言う。浦風は矢野の顔を真っすぐ見つめた。その顔は真剣そのものの顔で。
浦風は矢野の顔を見据えながらゆっくり口を開く。
「矢野」
静かな言葉に、矢野は一瞬「はいっ」と変な声をあげそうになった。
声を上げない代わりにか、矢野の表情には浦風への恐怖が露わとなっていた。
浦風が静かに続ける。
「黙って俺に、協力してくれ」
矢野は浦風の口から発せられたその説明に耳を疑わずにいられなかった。
第一突飛すぎる浦風の話を信じること自体が無理に近い。
一通り浦風の話を聞き終えた時、矢野の頭の中は混乱状態に陥っていた。
話されたことを整理するのに少なくとも五分は必要とされる。
「――っえ、あの、う、浦風君? つまり、お前の言ったことを整理してみると……」
矢野は浦風に言われたことを順を追って言ってみる。
まず、最近巷(ちまた)を騒がせている事件の重要参考人として仮逮捕。
なぜか警視庁に直行で行ってみれば、ドラマ厨の部屋に連れて行かれドラマ厨の取り調べ。
次に一人の刑事付きでトイレに行ってみたら外から音楽が聞こえ浦風が外に出ると携帯を発見。
その携帯に出てみると何かイラつく奴が出てきて付き添いの男が動かなくなった。
その後は無我夢中で逃げて、今に至る。
小学校の読書感想文の前置き並みの矢野の自己解釈説明に浦風は頷いた。
矢野の表情が色が消えていく。
「あ、あの……じょ、ジョーダンだよね? 浦風君。お願い。ジョーダンかドッキリだって言って」
「俺的にはこの部屋を何かのドッキリかと思いてぇよ」
うなだれる矢野に浦風は言う。
矢野に状況を説明しろと言われ通された部屋は、壁全面的に同じ女の子が写ったポスターが貼ってある部屋だった。
緑色の短い髪と青い目が特徴の女の子。
ポスターだけでは飽き足らずか、マネキン代のフィギアまで置いてある始末。
浦風はこの部屋にただただため息をつくしかなかった。
祝☆連載(?)3ヶ月!!
いきなり来てすいませんm(_ _)m
リルルと申します。
この物語には今日初めて出合ったのですが、もう夢中で読んでしまいました〜!!
これからもずーっと読ませていただきます〜。
時々コメすると思うので、その時はまたよろしくお願いします。
ではでは〜!!(^^♪
>>62
今日初めて出合った ×
今日初めて出会った ○
です……。
わたくし、バカでして。
無駄レス申し訳ありませんっ。
リルルさん>>
コメント有難う御座います。
っえ? 投稿始めてから3ヶ月も経ってたんですか?!
うわぁー……。
……何だか、驚きです。自分の小説なのに。
む、夢中に、ですか?
こんな突飛すぎる小説をそのような感情で呼んで下さっているなんて……っ
有難う御座いますっ!
はいっ!
これからもお暇があったらで良いのでコメントお願いします!
では!
本当にコメント有難う御座いました!
昨日で祝3ヵ月なんだね!
今日でうちがここに初コメして3ヵ月だ!
続きの展開超気になる!
今後もがんばってね〜♪
(by読者2号)
はじめまして!今日から小説書かせて頂きます!お願い致しますw
67:まっちゃ:2013/10/14(月) 09:06 ID:55Yとてもいい話ですね!続きがきになります/(*´з`*)\
68:マキ:2013/10/14(月) 10:12 ID:jUs りな>>
これもりなたちがいてくれたお陰だよ!
きっと感想コメントとか無かったら挫折してた……←
そして、3ヶ月も経ってるのに思った以上に話が進んでいないって言う現状……。
頑張んなきゃな……っ
それじゃ、りな!
コメントいつも有難う!
これからも暇があったら宜しく!
まっちゃさん>>
コメント有難う御座いますっ!
今日から小説投稿始めるんですか^^ 頑張って下さいね!
お褒めの言葉有難う御座いますっ!
これからもお暇があったらコメントお願いします!
矢野は考えた。浦風の言っていることを鵜呑(うの)みにするか否かでだ。
冷静に考えればこんなにも突飛すぎるはなしはドラマやアニメでしか見たことがない。
もっと考えるのであれば、基本不登校の自分に仕掛けられたなにかのドッキリなのか。
そんな考えもあったが、目の前の腐れ縁の友人の真剣な面持ちはそんな考え持たせてくれなかった。
頭が痛くなるのを矢野はおさえた。
ため息をついて白い天井を見つめた。綺麗なくらい白い天井だ。
矢野は目の前の浦風の顔をもう一度直視した。
真剣だが、どこか恐怖を抱えているような悲しい顔。
自然とため息がこぼれる。
「ハァー……。わぁったよ、俺のやれる範囲で協力してやるよ」
浦風の表情が明るくなるのが解かった。
同時に友人を巻き込んでしまったことに罪悪感でも感じているような顔を作る。
「テメェが協力しろつったんだろうが。なに自分で巻き込んで自分で落ち込んでんだよ」
片手を上げて呆れたような顔で言う。
浦風の口から「すまねぇ……」と重々しい言葉がこぼれる。
矢野は「あぁあああぁぁ゛!」と言って頭を掻いた。
面倒くさいとでも言うようなトーンだ。
矢野がイラついた面持ちで浦風の顔を睨んだ。
そして怒鳴るように叫んだ。
「天才弁護士、矢野徹(やの とおる)の息子! 矢野翼(やの つばさ)をなめじゃねぇぞ!」
まるで決め台詞を言いきった主人公のような面持ちの矢野を浦風は目をパチクリさせながら見つめた。
浦風は矢野の家族が弁護士であることを知って矢野を訪ねに来たのだ。
だが、なぜかしら決め顔でそんな事を言われると言葉を失う。
なにが言いたいのか理解できなくなる。
とにかく空気を呼んで「ッア、ウン。ソウダネ」と言っておく。
片言だったので完全に矢野が怪訝しい顔をしたがそんなことはどうでもいい。
浦風は険しい表情に戻り、本題を切り出した。
「っで……問題なのが……」
「その‘ミッション’ってヤツだな」
浦風の言葉を矢野がつなぐ。
浦風が険しい表情で「あぁ」とうなずく。
矢野は考えるようにまた天井を見つめた。またも綺麗な白い天井が目に映る。
少しの間をおいて「っで、そのミッションってヤツの内容は?」と浦風に問う。
「……餓鬼を救いだせだとよ。ヒーローみたいに」
浦風がそう言うと、矢野は突然にも大声を上げて笑い出した。
「ギャハハハハハッ」と不気味な笑いが家中にこだまする。
浦風に怒りの感情が募る。
「なに笑ってんだよ。アマゾン川にフィギア捨てるぞ」
「アハハハハッ! だってよぉ! お前がヒーロー?! んだ、そりゃ! 笑えねェ!」
「それにアマゾン川は日本のほぼ裏側だからいけねぇよ」と笑いながら付け加える矢野。
矢野の発言に「腹の底から笑ってんじゃねぇか」と突っ込みを入れる浦風。
「だって、お前さー……ヒーローって器じゃねぇだろ? まぁ、ヒーローはヒーローでも……」
矢野は片手で顔を覆った。そして手の下から黒色の瞳を覗かせる。
「ダークヒーローの方がお似合いだろ」
それは浦風自信と同じ考えだ。
浦風と矢野は口角を上げた。
浦風と矢野の考えが一致した。
矢野が少し身を乗り出して「そのミッションとやらはいつだ」と切り出す。
「……午後一時。ショッピングモールに行けってよ。その後のことはそん時って言われた……」
「確定された連絡手段は言われてないわけか」
矢野の痛い言葉に浦風はうなだれた。
しかし、矢野はそんな浦風は放ることにして「っで」と口を開く。
「話は少々巻き戻って、お前が所轄署を差し置いて本庁へ直行したわけってのは」
「事件に使用とされたと思われるナイフになぜか俺の指紋が付いてたから」
浦風が座っているソファの背凭れに寄りかかる。
天井を通り越して自分の背後が見えた。相変わらずのフィギアが目に入った。
「そんだけじゃ物的証拠としては扱われない。そもそも、お前と殺された餓鬼。会ったこともねぇんだろ?」
流石は天才弁護士と名高い男の息子、とでも言ったところだろうか。
顔がマジだ。高校に上がってから二年間、二次元に囚われ学校には全く来ていないような奴のツラではない。
と、一人静かに思う浦風であった。
浦風は矢野の問いに「今回のニュースで初めて知ったよ」とそっけなく返した。
矢野が顎に手をあてる。ドラマやアニメで探偵がするポーズだ。
「つーことは、ケーサツは指紋だけをカテにお前をパクるつもりだったわけだ」
「? 指紋だけじゃダメなのか?」
「いや、それでも場合によっちゃ充分だ。普通だったらな」
真剣な面持ちの矢野に「どう言う意味だよ」と再び問う。
矢野は浦風の問いにゆっくりと、懇切丁寧に、とまでは言わないがそれなりの親切さをこめた説明をする。
「指紋が出たとは言え相手は高校生だぞ? 前科持ちとは言え、最近では全く問題を起こしていない奴だ」
「指紋だけで引っ張ろうとしたなんて考えられねェ」と矢野は付け加えた。
真剣な面持ちの矢野。浦風は落ち込んだような顔でうつむいた。
浦風の頭の中は「だったら、なんで」と言う言葉でいっぱいになっていた。
矢野は人知れず目の前の友人の心境を察する。
そして、言うかどうか悩んでいた言葉を静かに口にした。
「……ケーサツに、お前を犯人に仕立て上げようとしている奴がいるのかもしれねぇ」
沈黙が流れた。
浦風も矢野もなにも言わない。
なにも言えない。
その沈黙を破ったのは矢野だった。
「まぁ、これはただの推測だ。確信なんかねぇよ」
最後に「まぁ、ホントにそうだったらお前そうとう嫌われてるってことだけどよ」と付け加える。
浦風はなにも言わない。
黙ったままだ。顔を見せないせいで、なにを考えているのかさへ矢野には理解できない。
矢野は無表情になってため息をついた。
「……ホントにそうだったら、俺はどうすればいい」
沈黙を挟んでのその言葉はひどく重い声だった。
矢野は友人のその言葉にどう答えて良いのか解からなかった。
笑って「知るか」と言ってやるべきか。真面目な顔で「さぁな」と言ってやるべきか。それとも……――。
どの考えも名案ではなかった。
「……ホントにそうだったら、俺はお前になんて謝ればいい」
沈んだ声だった。
「なんで謝んだよ」と矢野が言う。
「だって、ケーサツ相手じゃお前でも太刀打ちできねェじゃねぇか。お前に……物凄い迷惑かけるじゃねぇか」
本当に、酷く落ち込んだような口調だった。
この小説面白いです!
犯人の正体すごく知りたいです( *`ω´) !!
きゅーさん>>
コメント有難う御座います
面白い、と言って頂けて嬉しいです^^
犯人の正体……ですか?
実を言うと、私も解かりまs((殴
犯人の正体……ですか?
それは、まだまだ秘密ですよ^^
では。
コメント本当に有難う御座います
今後もお暇があったらコメント宜しくお願いします
矢野は黙って浦風の頭にチョップを喰らわせた。
「いっで」と声を上げると、浦風は頭をさすって顔を上げた。
無表情の矢野の顔が見えた。
「なにすんだ、テメェ」と言うと、矢野は静かに言った。
「迷惑? 今更、何言ってやがる。今更んなこと言ったってどうしようもねぇだろうが」
最後に「イラつく」と付け加えて、矢野は言った。
浦風は驚いたような表情を作った。
コイツこんな良い奴だったっけ?、と頭の中に疑問を浮かばせていたのだ。
しかし、その疑問はすぐに打ち砕いて、静かに笑って見せた。
「ワリィ」と笑いながら答える。
「謝んな、ド阿保」と矢野がイラついた表情で答えた。
これが普通なのだ。
そう、これが浦風秀哉と言う人間と矢野翼と言う人間の関係なのだ。
憎まれ口を叩いて殴り合える関係なのだ。
一方が笑っていれば、一方が怒っている関係なのだ。
その普通が目の前に広がることが、浦風にとってどれほど温かい物なのか――。
到底矢野には理解出来ないものだろう。
『ピンポーン!』
不意に無機質な音が家中にこだました。
二人とも驚いた顔色でその部屋の扉に目を向ける。
そして顔を見合わせた。
片桐は一之瀬と一人の男と一緒にとある一軒家に訪れていた。
今、巷を騒がせている幼女刺殺事件と警視庁で起こった刑事射殺事件の重要参考人の友人の家だ。
片桐の記憶が正しければ、家の住人の名前は矢野翼。
天才弁護士の息子で、数年ほど前からひきこもりになったとか。
確か中学生の女の子もいたと聞いたが、今の片桐にその情報はさほど関係ない。
「おい、片桐」
片桐がきつい眼差しでその家を凝視していると、不意に一之瀬が片桐の名を呼んだ。
突然のことに一瞬ひるむも、「なに」とすぐに切り替える片桐。
「……んな、鬼みてェな顔してんじゃねぇよ。相手さん、まだ高校生なのに女の本性を知ることになるぞ」
「悲しい現実は成人になってからでいい」と付け加える一之瀬。
一之瀬の言葉にカチンと来たのか、片桐は自分の周りに黒いオーラをまとわせる。
「それは何か? ケンカ売ってんの? ケンカ売ってんでしょ? 私、ケンカ売られてるんでしょ?」
「心外だな。俺は自分より年下の奴にケンカを売るようなことはしねェ」
「年下つっても、数ヶ月だけでしょうが! そんだけで年上気分に浸ってんじゃないわよ!」
「肉体年齢の話じゃねェ。精神年齢の話だ。俺は精神年齢小学生にケンカは売らねェって言ってんだ」
「アンタ、やっぱりケンカ売ってんだろ!?」
いつの間にか口喧嘩を勃発させる二人。
そんな二人を呆れ顔で見つめていた男がため息を吐いた後、一人その家のインターフォンを押した。
男はインターフォンを押すと、面倒くさいと言わんばかりに頭を掻いた。
少し経つと家のドアが、チェーンをつけたまま開いた。
ドアの隙間から茶髪の髪を持った少年が顔を出す。
少し怪訝しそうな顔をつくった後「誰ッスか、アンタら」と少年は言った。
男は言い争う二人を一瞥した後、「警視庁から来ました」と極力丁寧な口調で言ってみせた。
少年は訝(いぶか)しげな顔でその男を睨む。男は面倒くさいと言うように頭を掻く。
「……ホントにケーサツなんすか」
少年は男に問う。少年の視線は男から言い争う片桐と一之瀬に向けられていた。
男はその二人を一度だけ見据えた後、少年に顔を向けた。
「そーだよー、ケーサツだよー。あそこに体は大人、頭脳は子供の人がいるけど間違いなくケーサツだよー」
「……それ逆じゃないっすか?」
「良いんだよ、そういうことは」と言って、男は少年にドアを開けるよう言った。
少年は目の前の男と言い争う二人を交互に見据えた後、ため息をついて一度ドアを閉めた。
チェーンを外す音が聞こえて少し経つと、ドアが静かに開いた。
少年が黄色いカチューシャをつけた頭を掻きながら「どーぞ」と男に言った。
男は「どーも」と言って家の中に上がった。
言い争う二人を置いて。
* * *
「――最近の浦風秀哉との接触はー?」
少女が描かれたポスターが壁と言う壁に貼られた部屋の中で男は言った。
少年はその部屋の入り口付近で口に手を当てながらあくびを一回。
男に言われて、少年は「あ? 浦風?」と聞き返す。
男は部屋の中を一瞥し、部屋中央にあいてあるソファに腰掛ける。
「っそ。浦風秀哉。聞くには小学校時代からの知り合いらしいじゃん。最近も会ってんの?」
警察の者とは思えない口調の男に少年は呆れを覚える。
少年は男の質問に頭を掻きながら答えた。
「浦風君とならついさっき会ったよー? もー、どっか行っちゃったけど」
少年の口調も男と引けを取らない。
男は少年の発言に具体的な感情を示さず「ふーん」と返した。
「行き先はー?」
脱力感溢れる男の口調に、少年は気を悪くするでもなく「駅前のショッピングモール」と答えた。
男はそれを聞くと「あざした」と言ってソファから立ち上がった。少年はまたも訝しげな顔をつくる。
「信じんのかよ」
「疑うことは大事だが、信じる方が何かと良いんでね」
少年の質問に男はケロリとした顔で返した。
その部屋を出ようとする男の背中に少年は言う。
「アイツは……浦風は餓鬼殺しなんてやってねぇ」
男は少年の顔を見た。長い髪のせいで表情は読めたものではないが、少年の口調で今の表情に察しはついた。
一度ため息をつくと、男は玄関に歩を進めながら言った。
「それを決めるのは俺でもお前でもねェ。どこぞのお偉い裁判官だ」
「そっちに至っては、お前の親父さんの方が適任だろ」と付け加えて、男は玄関へ向かった。
* * *
男は少年宅を出た後、ズボンのポケットから携帯を取り出しどこかにかけた。
プッシュ音のあと着信音が男の耳に届き、少し経つと着信音が切れる音がした。同時に誰かが電話に出た。
「っあ、龍崎(りゅうざき)です。はい。容疑者の友人宅捜査終えました。はい」
まだ言い争っている精神年齢小学生を無視して、男は続ける。
「容疑者、来てませんでした。はい。えぇ。こっちじゃ足取りもつかめそうにねェっすわ。えぇ」
「引き続き、そこらへん捜査します」と言って、男は電話を切った。
携帯をポケットに入れなおすと、男はスタスタとどこかへ向かって歩き出した。
「――っあ、っちょ、どこ行くのよ、龍崎……!」
男の行動に、一之瀬と言い争っていた片桐が疑問符を浮かべ、そう言った。男は片桐の質問に一言。
「駅前のショッピングモール」
刑事さん信じるんだ...←うちも信じる。
逃走劇だなんてヤバい(//▽//)
っていうか、家に居るじゃん(笑)
上げ♪(*^ ^)ノ
81:マキ:2013/11/09(土) 22:02 ID:zic れい>>
コメントありがと!
逃走劇なんて響きの良いものじゃないよ((笑
でも、まあ、うん。
頑張るだけ、頑張るよ←
匿名さん>>
有難うございます!
矢野はソファに腰を沈め、白い天井を見ながらため息をついた。どうしよもない脱力感が矢野を襲う。
その時、矢野の頭を駆け巡るのは腐れ縁の友人の顔と、その友人の二つの言葉だった。
つい先ほど、家のインターフォンがなった時、矢野は即座にその友人に家の裏口から逃げるよう言った。
友人は少しだけ反抗の色の見せたが、矢野の真剣な面持ちで言葉を詰めていた。
「いいから、行けつってんだよ」
そう言って、矢野は壁に掛けられていたハンガーから紺色のパーカーを友人に投げつけた。
友人はひどく困惑した表情で矢野を見つめていた。
矢野は頭を掻きながら「その服、洗濯して返せよ」と言ってゆっくりと玄関へ向かった。
友人は矢野の名前を呼んだ。「んだよ」と言いながら振り返ると、そこにはあまり見ない友人の真面目な顔が見えた。
友人はその顔で矢野を見つめながら言った。「ホントに、ワリィ」と。
そして――
「次は、このキャラの名前、フルで言ってみせらあ」
――そう言って、友人は家の裏口へ向かった。
矢野はその友人がどこに向かうのか察しがついていた。
友人は‘ダークヒーロー’になりに行くのだ。
矢野は苦笑すると玄関のドアの前に立った。
そして、今。
矢野は、一人、天井を見ながらつぶやいた。
「言えなかったら訴えてやらあ」
第三話・幼女誘拐事件 終
三章も、やっぱり素晴らしい!!
友情…(感動っ)
れい>>
コメントありがとう!
第三話も無事完結! これも、れいたちのお陰だよ!
友情ね……。うん。
きっと、仲良いんだろうね。あの二人。
第四話・幼女救出作戦
駅前に位置する、大手デパート。
デパート中心に広い中庭を構え、洋服店、飲食店などが配置される。
他にも、そこには中庭一個と半分をしめる巨大ホールも設置してある。
そのホールに設置された非常用階段への鉄筋扉が、静かに、内側に開いて行く。そして、
「よし……誰もいねェな」
そこから、警戒心を尋常じゃないほど露わにした浦風が顔を出した。
ほとんど人通りのないデパートの通路に設置された扉をあけると、浦風は物静かに誰もいない通路に出た。
通路に出ると、つい先ほど矢野に貸してもらった紺色トレーナーのパーカーを深くかぶった。
一度ため息をついて誰もいない通路を見る。
「来れたもんには来れたが、流石に早すぎたか……。車力半端ねェ」
誰もいない通路に人知れず設置されてある時計を見る。十一を少し過ぎたころだった。
矢野の家を出た浦風。
すぐ近くに今いるデパートへ向かうトラックを見つけた浦風は、すぐさま行動を起こした。
「ヤバいかなー……」と思いつつ決心し、そのトラックに乗り込み歩くよりも早くデパートに到着したのだ。
だが、
「俺、どうすんのッ?」
心配は募るばかりなのだ。
『――お客様のお呼び出しを致します』
不意に、デパート内に放送が入り浦風はその放送に耳を貸しながら人通りの無い通路から普通通路に出た。
誰もいない通路は幅が広く、壁とガラス窓で囲まれていた。ガラス窓を覗くと広いデパートの中庭が見える。
『浦風、秀哉様〜、浦風、秀哉様〜。落し物が届いております。至急――』
デパートなどの独特な区切り放送を聞いて、浦風は宛ても無く動かしていた足をとめた。
そして、壁に設置されている新品同様の綺麗なスピーカーに目を向けた。
一瞬、驚きと困惑が入り混じった顔で「っえ」と漏らしたが、放送の声はもう一度同じことを言った。
疑心を募らせ、不審に思う浦風。
同姓同名? いや。偶然にだってほどが……。
そんな事を考えながらスピーカーを見ていた浦風はある答えに行きついた。
それは不意に思ったに過ぎない答えだったが、どこか自分に説得力を持たせるものだった。
浦風は渋い顔をつくって、声を漏らした。
「あの野郎か……」
それは、今の現状をつくりだした元凶の……――。
* * *
「――お手数お掛けしてしまい、申し訳ありません」
浦風が放送で指定された個室に向かうと、少なからず美人に類される女性が頭を下げながらそう言った。
今、『落し物管理センター』と言う名札が掛けられている個室の前に浦風はいた。
その目の前には赤い柄の携帯を持った美人の女性が一人。
浦風は「ああ、大丈夫っすよ」と丁重に言いながら女性と向き合う。
「っで、あの、そのケータイなんですけど……」
「ああ。どうぞ」
女性は特になにを言うでもなく、浦風に携帯をつきだした。浦風はそれをぎこちない仕草で受け取る。
その際、
「あの、このケータイ、どこにあったんですか? でもって、俺……のだって解かった理由とかって……」
浦風は区切り区切りに聞く。なるべく変な感情を抱かせないよう自然と笑みを浮かべながら。
女性は浦風のそんな考えを察する様子もなく「ああ」と微笑みがちに言った。
「つい先ほど、こちらに届けられて、電話がかかってきたんですよ」
女性の言葉に「電話?」と浦風は聞き返した。
久しぶりに来ちゃいました( ̄▽ ̄)
やっぱり面白いです!( ̄▽ ̄♡))
しかも心情が上手過ぎますよ…!!
きゅーさん>>
コメント有難うございます。
お褒めの言葉、光栄に思います!
自分では、これで本当にいいのか分からないので、
きゅーさんのように、率直な一言が頂けるとありがたいです。
有難うございます
こんにちは!
読ませて頂きました!
すごく面白いです!更新頑張ってくださいね!
Sikiさん>>
コメント有難うございます
Sikiさんにコメントをいただけるとは……長生きはするものですね←w
お褒めの言葉、ありがたいです
これからも皆さんに「面白い」と言ってもらえるよう努力する所存です
では、コメント有難うございました
今後もお暇があれば、お願いします
浦風の聞き返しに女性は頬笑みを浮かべる顔で「はい」と答える。
「『浦風君って言う子がこの携帯落っことして今泣き喚いてるんです』って言って……」
頬笑みの顔でそう言われ、浦風は怒りに似た感情を芽生えさせた。
浦風はそこらへんの物を破壊したくなる衝動を抑えて「へぇー、俺が泣き喚いてるー」と言う。
女性は、まだ頬笑みを浮かべて言う。
「ええ。あと、『茶髪で髪の毛をピンでとめてる子だからすぐ解かります』と言われましたね」
浦風はそれを聞いてなるほどと納得した。
だから、本当に自分の手にある携帯が浦風の物だと簡単に断定したのだろう。
まあ、正確には浦風の物ではないが。
「っあ、そう言えば」と女性は何か思い出したように言う。
「『黒いパーカーを着ていて、その下は学ランだけど怪しまないで下さいね。近くでバイトしてるだけなんで』」
「って、笑って言ってましたよ」と女性は付け加える。
女性は「怪しむ」と言うことを知らないように微笑んだ。
しかし、それとは対照的に浦風は目を見開き言葉を失った。
「そうッスか。有難うございました」と言って浦風は頭を下げると、踵(きびす)を返し駈け出した。
そして、考えた。
――どうして、電話の相手は自分がパーカーを着ていることを知っている?――
浦風が今着ているパーカーを着始めたのは、矢野の家にいた時から。
そう考えると、浦風は矢野の家にいた時から電話の主に監視されていたことになる。
速めていた足を、浦風は緩めた。そして、自分の背後に目をやる。
そこには天井に取り付けられた、防犯用のカメラが。
浦風は、それを見て苦笑と自嘲を混ぜたような笑みを浮かべた。
「本格的すぎんだよ、『容疑者X』さんよお……」
「――ちょ、龍崎(りゅうざき)!」
片桐は自分の前を黙々と進む男――龍崎(りゅうざき)の名を叫ぶように呼んだ。
呼んでも全く微動だにせず、黙ったままの龍崎の肩に片桐は力強く手を置いた。
「龍崎ってば!」と言いながら、無理に龍崎を振り向かせる片桐。
背の高い建物を横に、龍崎は足をとめた。「なに?」と虚ろな目で片桐に問う。
「な、なにはこっちのセリフよ! 駅前のショッピングモールって、なんでそんなとこ向かってんのよ!」
「えー? なんとなくー?」
龍崎の脱力したような答えに「はあ?!」と片桐は声を荒げる。
龍崎は気の抜けた目で複雑な顔をする片桐を見ている。
それとは対照的に、馬鹿でも見るような目で片桐は龍崎を見た。
「な、なんとなくって……、アンタふざけてんの? 私たちは遊んでるわけじゃないのよ」
「片桐の言うとおりだ。龍崎、今回の事件に関係あるなら構わないが説明くらいしてもらわねえと困る」
片桐に一之瀬の加戦が加わる。
龍崎は真面目な顔つきの片桐と一之瀬を前に、一度頭を掻いた。
そして、虚ろな目を青い空に向ける。先ほどまで厚い雲が覆っていた空を。
「じゃあ、言うけど。怒んない?」
「怒んない」とため息交じりな片桐。
「始末書モンだ、とか言わない?」
「言わん」と鋭い目つきの一之瀬。
「自分たちはカンケー無いから他県に飛ばされるなら俺だけ飛ばされろ、とか言わない?」
「「言わない」」と二人の揃った声。
龍崎はなにを言うでもなく、少し考えるようなそぶりを見せた後、口を開いた。
「容疑者の浦風秀哉がショッピングモールに向かってるって、さっきの男の子が言ってたから」
静寂が、三人の間だけを、包み込んだ。
その静寂を突き破ったのは、片桐と一之瀬の二人だった。
二人は打ち合わせでもしたかのように「はあああああああ゛?!」と同時に声を上げた。
龍崎はその声が飛ぶ前に耳を塞ぎ、鼓膜が破れることは回避する。
「な、ちょ、はあ?! さっきの男の子って、や、矢野翼?! あ、あんたその時なにも……」
「言うわけ無いじゃん。だって、言ったら言ったで本庁に連絡するし」
「当たり前でしょ?! って言うか、あんた本庁に連絡してないんじゃないでしょうねぇ!?」
「っえ? してないけど? って言うかする必要がどこにあんの?」
「あんたの脳味噌はスポンジとワタの合体物か?!」
「って言うかそんな怒んないでよ、片桐ちゃん」と龍崎は片桐を鎮めようとする。
だが――
「龍崎! そんな重要な情報を本庁に報告してないなんて知れたら、始末書モンだぞ! 解かってんのか?!」
「なんとか回避するって。俺、本気の時はいろいろ開花する人だから」
「始末書書くのを回避する余裕があるなら、本庁に連絡入れろ!」
「やだよー。所轄に手柄とられるかもしんないのにー」
「子どもか、お前は! 容疑者逮捕が最優先だろうが! 始末書だけじゃすまねえぞ!」
「わかったって。って言うか、始末書、始末書うるさい」と龍崎は一之瀬を鎮めようとする。
しかし――
「移動がきてもお前だけ飛んでけ! 俺たちは一切関係ないからな!」
「他県の所轄に飛ばされることになっても、あんただけ飛びなさいよ! 私たちは全くの無関係だから!」
二人は声を重ねて龍崎に言い張った。
瞳孔を開き、怒鳴り散らす二人を前に龍崎はため息を吐いた。
「って言うか、さっき約束したことフツーに破ってない?」
コント見てるみたいで楽しいっ!(笑)
普通に約束破っちゃってるじゃんw
れい>>
最近、書き方を変えてコメントを少し増やそうかと思ってね
今まで無駄に描写とか心情とか多すぎて、
セリフ無かったから読みずらいかなーって思ってさ^^
そしたら、書いてるこっちも楽しかった←
「って言うか、大丈夫だって」と言って、龍崎は片桐と一之瀬を追い越す。
「なにが大丈夫なのよ」と片桐は龍崎の背後から喰いかかる。
龍崎は足を止めず、片桐に背を向けたまま口を開いた。
「本庁にこのことバレる前に、浦風秀哉をしょっ引けば問題ねえだろ?」
そう言う龍崎の顔は、先ほどまでの気の抜けた顔とは一風変わっていた。
大きく開かれた瞳孔と、大きく上がった口角を見せるその顔を見て、一之瀬と片桐は息を呑んだ。
先ほどのまでの軽い口調とは一変した、低い声に背筋を凍らせる。
一之瀬も片桐もなにも言えなくなり、ただただ表情の変わった龍崎を見ていることしかできなかった。
そんな二人を尻目に、龍崎は鼻で笑うと一人で黙々と足を速めた。
「……マジな目つきね」
龍崎の背中を前方に、片桐が言う。「ああ」と一之瀬が短く肯定する。
「餓鬼殺しの容疑者逮捕がかかってんだ。アイツも本気なんだろうが……あの目は、まずいぞ」
一之瀬は冷や汗を頬に垂らし、苦々しく言った。
片桐も一之瀬の思っていることを察したのか「同感……」と声を低める。
「こら、あいつが逮捕する前に私たちが逮捕しないとまずいんじゃないの?」
苦笑にも似た笑みを浮かべながら、片桐は言う。一之瀬も苦笑のような笑みを浮かべた。
そして足を進めていく。
歩を進める3人の背後に、人影がついてくることにも気付かず――……。
不意に手元にある携帯が振動するのを感じて、天井に取り付けられた防犯カメラから視線をそらした。
見れば、携帯の画面に『非通知』から着信がきている。
浦風は一瞬どうすべきか迷ってから二つ折り式の携帯を開き、受信ボタンを押す。
「もしもし」と戸惑ったように言うと、少しの間を置いて聞き覚えのある声が聞こえて来た。
『やー! 浦風君! 元気にしていたかい? 余裕はあるかい? 生きていることを謳歌しているかい?』
電話越しから大声で突然的にそんな事を言われ、一瞬ひるみ携帯を耳から離す浦風。
電話越しの相手はそんな浦風を気にかけてない様子で大声で続ける。
『いやー! 午後一時って言ったはずなのに早すぎるねー! どうしたの? 僕が恋しくなったのー?』
「その自信はどっから湧いてくんだ殺人魔っ」
皮肉たっぷりに言ってみたが、相手にはそんなこと屁でも無いのか『あっははー!』と笑って返された。
その笑いでさへも今の浦風にとっては、怒りを思わせるものであるわけで。
『まあ、いいや。浦風君の誠意に答えて、ちょっとだけ時間を早めておいてあげたからさ』
口角を上げるのが電話越しでも察しがついた。
浦風は「?」と思いつつ誰もいない通路で電話に耳を傾ける。
壁とガラスで囲まれる通路。聞き耳を立てれば、通路の向こうから人の物らしき声が聞こえてくる。
『浦風君、その通路をまっすぐ進んだ先にある曲がり角を右に曲がってよ』
一瞬眉間にしわを寄せ、自分の横に構えてある通路のガラス窓に目をやった。
ガラス窓の外には小さな人の群れと、車の行列が大きな道路で成しているのが見える。
その他にも大きなビルの群れがいくつか。
浦風は立ち並ぶビルを睨みながら言われた通りまっすぐのびる通路の先にある右折道を曲がった。
『そしたら、まっすぐ進んでモールまで行ってよ』
曲がり道を曲がったところで電話の主は言う。
浦風は携帯と道を交互に見ながら、目の前の道を直進した。
数メートル行けば、昼間だと言うのに子供を連れた母親が多いショッピングモールエリアが見える道。
少し速足で歩くと、壁に設置されたスピーカーからショッピングモールのテーマソングが聞こえてくる。
『でもって……、はい! そこでストップ!』
言われて、浦風は即座に足をとめた。そこは、デパートの中庭へ行く階段がすぐ横に設置された通路。
階段が設置されているところの反対側には洋服店がズラーっと並んでいる。
テーマソングが大音量で浦風の耳に入ってくる。
『っで! そこに関係者以外立ち入り禁止の通路があるでしょ? そこ入って!』
電話越しの人物が大声で言う。浦風は一瞬「っは?」と思いながら辺りを見渡した。
すると、今の場所から少し行ったところにある店と店の隙間に幅が狭い通路が見えた。
近付くと、確かに黄色と赤がまじりあった看板に『関係者以外立ち入り禁止』と書いてあった。
中庭にも店の中にも人だかりが出来ている中、浦風は一瞬ためらった様子を見せてから静かにその通路に入った。
電球が無く、窓も無いので通路は薄暗かった。
人の和気あいあいとした声やテーマソングが遠く聞こえると同時に、左折道が見えて来た。
『っでもって。左に曲がる道があるはずだから、そこを曲がってつきあたりにある部屋に入ってよ』
浦風は言われた通り曲がり角を左に曲がり、道のつきあたりにある扉を見つけた。
不信感を胸に抱きつつ浦風はその扉を開けた。
そして――
「おにいちゃん……」
不意に自分の下から弱々しい小さな声が聞こえた。聞くにまだ若い声。
「っあ?」と、声を上げつつ、浦風は視線を下げた。
そこには、まだ小学生くらいの小さな女の子が――
「おにいちゃん、こんなところでなにしてるの?」
女の子は浦風の顔をまじまじと見上げながら問いかける。
窓は無く、電気もついていない、物置のような部屋の中、浦風はその女の子に変な視線を送った。
大きな黒い瞳と、黒い長髪を頭上で二つに結んだ女の子は、まだ浦風をまじまじと見つめている。
浦風は「っあ、いや、っえ、あの」と言葉にならない言葉を並べる。
「っえ、いや、あの、お、お前こそ何やってんの?」
やっとの思いで浦風は女の子に聞く。女の子はなにを言うでもなく大きな瞳で浦風を凝視する。
「……まいは、ままをまってるの」
女の子は小さな声で言った。
浦風は「っえ」と声を漏らした。
まい、と名乗った女の子は浦風に言う。
「まい、ままとはぐれちゃって。だから、ここでまま、まってるの」
浦風は何と言っていいのか解からず、とにかく一度その場にしゃがみ込み女の子と視線を合わせた。
こんな時、何と言っていいのか分からないがとにかく何か言わなくては。
なんでもいい。なにか一言。
浦風は「だけど、まま、ぜんぜんきてくれなくて」と言って目に涙を浮かばせる女の子を見つめる。
少し考えたような間を開けると、浦風は優しげな口調で言った。
「じゃあ、俺がお前の母さん探してやるよ。だから……、泣くなよ」
不器用に笑ってみせると、女の子は少しの間を開けた後、にっこりとほほ笑んだ。
「うん」と笑顔でうなずく、女の子を、浦風は懐かしむような視線で見つめた。
『――ッピ……』
そんな音が浦風の耳に入ったのは、女の子と一緒にその部屋から出ようとした時だった。
浦風は薄暗い通路から出る道へ出ていた足を止め、視線を背後に向けた。
背後には物置にしか見えない部屋が見える。
無造作に置かれた段ボール。それに敷き詰められたいろんなもの。その段ボールにかぶせられた白い布。
浦風は目を細めた。
床に適当に置かれた、白い布がかぶせてある段ボールの中。赤く光るなにかが――。
それを見た瞬間、浦風は目を見張った。
* * *
昼間なのに天井に着いた電球が光を放つ、デパートの通路。
洋服店がズラーっと並ぶ中で、何人もの人が世間話に吹ける。そして笑う。
並んでいる店で品物を手にとって話し合う店員や客がいる。
店の前に流れるように続く通路に設置された中庭へ通じる階段の下からも楽しげな声が漏れてくる。
そして、中庭からも子供の声や大人の女性の物の声が空へ向かって飛んでゆく。
そんな中で、『関係者以外立ち入り禁止』という看板が立てられた狭く薄暗い通路から一人の少年が――
「ッ――!」
一人の少年が一人の女の子を両手で抱えて、その狭い通路から姿を現した。
少年は来ている黒いパーカーを後ろになびかせながら、通路の目と鼻の先にある中庭へ行く階段を――
「みんな、逃げ――」
なにかを言いながら階段を飛び越えた。だが、その言葉を言うよりも早くその場に轟音が響いた。
その場に響いたのは、人の耳をつんざく音そのものだった。
『ドォォオオン――!』
その日。
駅前に置かれた巨大デパートの一角が壮大な音と被害を上げて爆発した。
『ドォォオオン――!』
地鳴りのような音が耳に入って着た瞬間、片桐、一之瀬、龍崎の三名は目を見開きその身を震わせた。
「な、なに?!」と焦りの声を漏らす片桐。
三人はその声に同感するかのように目を見開きあたりを見渡した。
そして、数十メートル行ったところにある建物から煙が立ち上がっているのが見えた。
「ちょ、あそこって浦風秀哉がいるって言うデパートじゃ」
片桐が驚いたような口調と表情で言ったとほど同時に龍崎は駈け出した。
それを追って一之瀬も駈け出す。そして、またもそれを追うように片桐も駈け出した。
* * *
目の前の光景が、正直信じられなかった。
ただ呆然としていることしかできない自分を、他人はどう思うのか。
そんなことを考えながら浦風は目の前の光景を黙って見ていた。
燃え上がる炎。
床に倒れる人。
地面に流れる血。
鼻に届く鉄の香り。
聞こえてくる喚き声。
そんなものが浦風の周りを包む。そんなものが浦風の世界を埋め尽くす。
「怖い」と言う感情も「マズい」という思いも「嘘だろ」と言う言葉もなかった。
「……なんだ、これ」
呆然とする中で、それだけが出せた言葉だった。
燃え上がる朱色の炎を目に、浦風は成す術も無く先ほどまで平穏だったデパートの中庭に座り込んでいた。
「……おにいちゃん?」
まるで魂が抜けたみたいにボーっとしていた浦風だが、不意のそんな声に我に返った。
そして声のした方を見れば先ほどの女の子が今にも泣きそうな顔で浦風を見ていた。
浦風は「あー……」と思いながらその女の子を見た。そして、手に握っていた携帯を耳に宛てた。
『ツー、ツー、ツー』と無機質な音が流れてくる。
「おにいちゃん……、だいじょうぶ?」
なんの感情もこもらない顔で立ちあがった浦風に女の子が声をかける。
色の無くなった浦風の瞳に泣きそうな顔の女の子の声が写る。
どこか遠くからサイレン音が聞こえて来た。
女の子がサイレンのする方に視線を向けた。浦風はそんな女の子の頭に手を置く。
「……おにいちゃ」
「わりぃ。お前の母ちゃん探せねえは」
女の子の言葉をさえぎり、浦風は静かにそれだけ言う。心配そうに「おにい、ちゃん?」と声をかける女の子。
それを見下ろしながら浦風は来ていたパーカーを女の子の頭からかぶせた。
「いいか、がきんちょ」と前置きをして浦風は女の子に言う。
「なるべく早く、こっから離れろ。どこでもいい。誰かいるところにだ。誰でもいい。わかったか」
静かにゆっくりそう言うと、浦風は心配げな顔をつくる女の子をその場に置いてその場を去った。
別にどこに行くでもない。ただ歩を進めたかっただけだ。そうでもなければ狂ってしまいそうだった。
今にも壊す勢いで手元の携帯を握り、浦風は歩を進めた。
なんの感情から来たのか解からない思いを胸に、なにも考えずに。
「なにこれ、ひっど」
目の前のデパートから黙々と空へ立ち昇る煙を見ながら、龍崎は他人事のように声を漏らした。
デパートからは人の群れが外へ必死に逃げだしてきている。子連れの女性の割合が多い。
それとは対照的に早くも駆けつけた消防車から一斉に数人の男たちが現れデパートの中に入っていく。
片桐たちが駆け付けた時、デパートはすでに困惑と悲鳴が響く場所と化していた。
無論、警察ではあるものの消防隊ではない片桐たちに出来ることなど一つも無い。
出来て逃げ遅れた人たちの誘導だろう。
「出火元はデパートの中庭! 至急、救急隊、及び消防隊はむかえ!」
消防車の近くでそんなことを言っていた人がいたのを片桐は知っていた。
だから出来ることなら中庭へ行って誰か助けてやりたかったが、
「消防隊がいる今、俺たちに出来ることは無い。ここで様子見だ」
と言う一之瀬に止められた。
片桐は悔しそうな顔をしながらその言葉に従うことにした。
だが、
「……」
龍崎は一人、真剣な顔つきで見える範囲のデパート一体を見ていた。
と言っても、円形方のデパートの表面を流すように見ていたにすぎないが。
そして、ある一点を見た瞬間、龍崎は顔の動きを止めた。そしてそこに向かって走り出した。
「! りゅ、龍崎?!」
突然の行動に反応が遅れる片桐と一之瀬。
龍崎はそんな二人の声も無視して『関係者以外立ち入り禁止』と赤文字で書かれた白い扉を開けた。
きゅーです。
やっぱり、ストーリー構成と登場人物のチョイスが良いですね。
警察達の性格も真面目だけではなくてGOODと思います。
しかも、刑事物とか、サスペンスなのは、若干読み飽きる部分もあるのですが、
この作品は、飽きずに読みやすいので私の大好きな小説です!
あと、なんだか
上から目線になってしまいました!
スイマセン(>_<)
きゅーさん>>
いつも、コメント有難うございます
そう言って頂けると、不肖このワタクシ、嬉しいの一言で御座います←
誰か一人でもそう言ってくれる人がいると思うと、
とても嬉しいですね。やっぱり。
上から目線だなんてとんでもない!
胸を張って言いたい事を言える人はいい人じゃないですか!
今後も、バシバシ言いたいこと言って下さい!
コメント、本当にありがとうございました!
今後もお暇があれば、ぜひお願いします!
龍崎は、浦風くんと一緒に居た女の子を助けに行ったのかな?とか、推測してみたり(笑)
107:マキ:2013/12/15(日) 09:35 ID:zic れい>>
推測されると、今後を考えている自分がなんか嬉しくなる
『おー。そう考えたかー。おしいww』とか思いつつ、今後の展開を作成(笑)
まあ、自分の考えてる展開に不満があったらみんなの予想に身を任せちゃうかm((殴
いつも、コメント有難う!
れいの期待に添えられるような作品をつくっていけるよう頑張るよ!
「ハァ……ッハァ……ッフ……ッハ」
息を荒げ走っていれば、やっと自分がどこにいるのか解からないのが理解出来た。
よくよく見ればいつの間にか人気の無い、薄暗い通路にいた。
「どこだ、ここ」といろんな意味でかいた汗をぬぐう浦風。
周りに人らしき者は一人としておらず、見えるのは電気のついていない薄闇の通路と、
「? ボイラー、室……?」
『ボイラー室』と赤字で書いてある白い扉だけ。
一瞬考え、ここからならどこか外へつながる道があるのでは? と思うと、浦風は即座にその扉を開いた。
すると、
『ドン!』
重々しい音が、行き成り耳に飛び込んできた。そして、空を切るような聞き覚えのある音も。
反射的に「どわっ?!」と言いながらその場にのけぞる。鉄製の床に手をつき伏せると声が飛んできた。
「っあ、わりぃ。当たった?」
のんきな声だった。
浦風は鉄製の床につけられた鉄柵に手を伸ばし、柵の隙間から声の飛んできた方に視線をやった。
浦風が伏せている通路の下、本当の地面と言えばいいのか分からい場所に。
そこには黒い短髪をこしらえ、右手に黒い拳銃を握った男が、
「浦風秀哉だな。幼女殺人事件、及び、刑事殺人で――」
男が淡々とした口調で言っていると突然男のズボンのポケットから音楽が流れて来た。
携帯かなにかの受信音楽だろう。
男は舌打ちをすると拳銃の銃口を浦風に向けながら携帯を開いた。
「はい、こちら龍崎。んだよ。今いいとこなのに――」
『アンタ今どこ!? ――独断行動たぁいい度胸してるなテメェ! 殴るぞコラ!』
男と数メートル離れている位置にいる浦風からも電話から流れる声が聞こえて来た。男と女の声だった。
浦風は行き成り聞こえてきた大きな声にびくりと体を震わせた。
龍崎、と名乗っていた男が携帯から少し耳を離し手話のような動きで浦風にゴメンと言っている。
「っあ、案外良い人」と思いながら銃口を向けられていることを忘れかける浦風。
『ヴー、ヴー、ヴー』
不意に制服のズボンのポケットに入れた携帯が音を立てて振動を起こした。
またもびくりと体を震わせる浦風。すぐにポケットから携帯を取り出し電話相手を見る。
まあ、相手など見るまでもないが。
浦風は『非通知』と出ている相手を見ながらあからさまに顔を険しくさせ、受信ボタンを押した。
「……ッテメェ! さっきの爆発、一体なんだ! テメェ、なんか知ってんだろ!」
受信ボタンを押した直後に怒鳴るように叫んだ。龍崎が怪訝そうな顔で浦風を見る。浦風はそれを無視。
電話から返答らしき声は聞こえてこない。っが、
『浦風君、浦風君! その男の人! 死んじゃったりしちゃったりしちゃうかもしれないよ!』
国語能力の無い言葉に、「っはい?」と声をあげてしまう浦風。
気を取り直して携帯に話しかけている龍崎に視線をやり、その周りにも目を向けてみる。
すると――、
突っ伏している浦風からすれば、はるか上空に近い天井に、赤く光るなにか。
見覚えのあるそれを目に、浦風は目を見開いた。
『そこボイラー室でしょ? 運が悪いねー、浦風君も。なにもそこに逃げ込むことは無かったのにさ』
まるで語尾に音符マークでもつけられ、可愛さアピールでもしてくるような女子の口調に怒りがわいた。
しかし、怒りの言葉を口にするよりも先に体が動いていた。
気付いたら鉄柵に足をかけ、龍崎に飛びつこうとしている自分を、浦風は「大馬鹿だ」と思った。
焦りからか、呆れからか、怒りからか、浦風の口角が上がった。
龍崎が浦風の突然的な行動に驚き即座に銃口を向けるも、浦風が龍崎に飛びかかる方が早かった。
「テメ……!」と携帯と拳銃を両手に握って口ごもる龍崎を下に、浦風は一言だけ声に出した。
「ボイラー室で爆弾が爆発したら、どうなるよ?」
苦々しい笑みで言うと、浦風は視線をはるか頭上の天井に向けた。
* * *
『ドォォオオンッ――!』
地響きのような音がして携帯を片手に握った片桐と険しい顔をした一之瀬が体を震わせた。
他にも、その場にいる消防隊や警察陣、そして報道陣も身震いをし耳をふさいだ。
そして、その場にいる皆が皆、視線を目の前のデパートに集中させる。
見れば、デパートの一部から黒い煙が炎と一緒に空へ向かって上がっているではないか。
「……ざき、龍崎! ねえ、ちょっと! 龍崎!」
携帯に向かって叫ぶ片桐。
携帯からは『ツー、ツー、ツー』と言う無機質な音しか聞こえなかった。
女の子じゃなくて、浦風を見つけたのか!
112:マキ:2013/12/22(日) 16:37 ID:zic れい>>
ご明答!
さあて、これからどうしようかなー(にや←
耳に届く思いの無い無機質な音は片桐の顔に絶望の色を浮かばせた。
「嫌だ」と言う言葉が、片桐の脳内を埋め尽くす。
その隣で、一之瀬も黒縁眼鏡のレンズに空へ立ちこむ黒い煙を映しながら息を呑んだ。
二人の後ろで消防隊や警察官が大声で何か叫ぶ。
「……ざき」
片桐はか細い声で呟いて弱々しく一歩足を踏み出した。
そして、はっきりと「龍崎」と声に出して走り出そうとする。
それを止めたのは一之瀬だ。
「やめろ、片桐! 今行ったら……」
「離してよ、黒眼鏡!」
片桐の腕を力強く掴み、言った一之瀬に片桐の率直な言葉が飛ぶ。
「くろめが……!?」と自分につけられた悪態に言葉を一瞬なくす一之瀬。
しかし、すぐに気を取り直して、片桐に説教でもたれてやろうかと一呼吸置く。
だが、一之瀬が言うよりも早く片桐が、
「早く行かないと龍崎が死んじゃうじゃない! もう、嫌よ! 知り合いが死ぬのなんて!」
そこまで聞いて、一之瀬は片桐の腕を掴む手の力を少しだけ緩めた。
その時、頭の中にはつい数時間前射殺された刑事の顔が――。
そこまで考えて一之瀬は思考回路を強制的に止め、片桐の腕を力強く掴んだ。
「じゃあ、お前は死んでいいってか?!」
怒鳴るように叫ぶと、片桐は怒られた時に子供が作る顔をつくった。
一之瀬は真剣な顔で、今にも泣きそうな片桐を見据える。
「……冷静になれ。お前一人で突っ走っても、なにかが解決できるわけじゃねえだろ」
片桐は大粒の涙を流しながら、数秒を置いて「ごめん」と一之瀬に返した。
「――……えぇっと、誰が死んじゃうんだって……?」
泣き出す片桐の肩に手を添えて火を上げるデパートに目をやる一之瀬の背後から聞き覚えのある声がした。
一之瀬は驚きから目を見開き即座に振り返る。
そこには、見覚えのある男の顔が。
「りゅ、りゅう、ざき……」
一之瀬は驚きが隠せないと言う口調でそう言った。
片桐が一之瀬の言葉に目を見開き素早く下げていた顔を上げる。そして、一之瀬の背後に目をやる。
やはり、そこには見覚えのある男の顔があるわけで。
「りゅう、ざき……?」
疑問形の言葉になってしまった。
しかし、自分の数メートル前にいるのは確かに見に覚えるのある男。
着ている白い服が所々ボロボロで、かすり傷なんかも見える。でも、その男は確かに。
「りゅうざき……!」
片桐は大粒の涙を流しながら男の名前を叫んだ。その声を聞いて男がため息をついた。
一之瀬がパクパクと口を閉じたり開いたりして信じられないと言う文字を顔に浮かべている。
男――龍崎はムッとした顔で「んだよ」
「お、お前、ど、どこから?! ッと言うか、い、今の爆発は? お、お前、な、なんで」
「ああ? なに? 俺がここにいちゃだめなワケ? 死ねってか? 殉職(じゅんしょく)しろってか?」
「誰もそこまでは言ってないだろうが!」
ムキになって怒鳴りを上げる一之瀬とは対照的に片桐は今だ泣き止む素振りを見せない。
龍崎はそんな二人を交互に見比べてもう一度ため息をついてから頭を掻いた。
そして、「まあ、ちとあってな」といって明後日の方向に視線を向けた。
* * *
「ボイラー室で爆弾が爆発したら、どうなるよ?」
…ん?ボイラー室て何すか?←アホ
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