Hello♪ぽちです(*ノω`*)
書き終えました!『先輩。』です。よかったら是非見て下さい★"
=http://ha10.net/novel/1425705788.html=
今回もたくさんのアドバイスなどのレスを待っています!
◇‐.◇‐.◇‐.◇‐.
高校生に入った私。
高校といえば、部活で青春とか一番楽しいくて熱くなれると思ってる。
だから、部活に入って毎日充実したい。
私と部活の物語。
いや、私の青春と部活の物語。
これは一生の思い出と宝物としたい。
久しぶりです !!!!
テスト乗り越えて来ました! 気楽になったから、これからは毎日更新出来そうです(●´ω`●)
これからもよろしくお願いします!
**
時間短縮のため先攻、後攻を決めず、その学校で行うチームが自動的に後攻になるから、うちらは後攻となった。
後攻ということは先に守備から始まる。
ピッチャーはボールとグローブを持ってマウンドへ、キャッチャーは防具を体に着けてキャッチャーミットを持ってホームベースへ、内野手は各ベースの回りに、外野手は遠くの方へ向かってゆく。
「ノーアウトー」
キャッチャーが指を丸めてゼロというのを表す。
「ストライク!」
うちのチームのコーチが腹から出す声はグラウンド中に響き渡る。
「マネージャー、書けてる?スコア」
今日もベンチスタートだった野崎先輩がスコアブックを書く用の机にいる私に覗きながら話しかけてきた。
「あ、んー。微妙です」
「そうか」と言って、離れていってしまった。
今日はベンチスタートの野崎先輩だが、必ずスタメンで活躍する日が来ると私はひそかに思っている。
こんなに努力している人はあまり見かけによらない。
というか、絶対にスタメンで活躍して欲しい。
「アウト!」
セカンド方面に転がったボールはやがてファーストのミットへときちんと収められた。
「ナイス、セカンド」
3アウトを取った彼らがベンチへ戻ってきた。
**
「お疲れさまです」
ベンチに戻ってくる選手に一言つづ掛け、迎え入れる。
「打てよー」
サインの確認をして、ヘルメットを被り、バットを持ってバッターボックスへと1番バッターが入った。
「ボウル!」
相手のチームのコーチがやる審判はうちのコーチと違いあっさりとした口調でカウントをしていく。
「抜けろ、抜けろ」
サード方面に転がっていったボールは抜けることを願っていたベンチを静かにさせた。
サード方面といえぞ、フェアボールであり、なかなか捕りにくいボールなのだが、相手選手は楽々とフェアのボールをさばいた。
その後もレフトフライに倒れた2番バッター。
早くも2アウトとなってしまった。
「打て!打て!打て!」
後輩がバッターボックスの先輩をリズムに乗りながら応援する。
「3ボウル、2ストライク」
あと一球で決まる、いわゆるフルカウントというやつだ。
ファールの場合はフルカウントで続行されるが、ファール以外はあと一球で決まる。
もちろん長打を打てる力も必要だが、ベースに立つには選球力も大切だ。
選球力がなく、ストライクゾーンではないボールを振ってしまうと、フライになったりしてすぐアウトになってしまう。
「おぉ」
難しいぎりぎりストライクゾーンのボールをなんとかバットに当て、ファールゾーンに運び思わずベンチから歓声が起こる。
「あー…」
粘ったものの最後はボールと判定したバッターに対し、審判はストライクと判定したため、3アウトになって終わった。
野球部マネージャーなんですけど、日向もこんな青春したぃなーって思ぃながら読んでます!!
応援してるんで、更新頑張って下さぃー!!ww
>>70 日向様
ありがとうございます!
野球部のマネージャーなんですか!?
羨ましすぎます(〃ω〃)
あたしの憧れっていうか、妄想というのか、なんか自由に書いてるんでよくわかんないんですけど…(汗)
これからも是非よろしくお願いします!
**
打たれたり、打ったりしたがなかなか両者とも譲らず1人もホームベースを踏むことなく、このまま6回を向かえた。
「ファースト交代します」
監督さんが相手のチームにファーストの交代を告げ、元々スタメンで出場していたファーストの選手は代打で起用された1年がファーストにそのまま入ることになった。
「マネージャーも交代したことスコアに書いといてね」
何がなんだかごちゃごちゃしてき、焦りが出てきたため返事の声も発することが出来ず、こくりと頷くことしか出来なかった。
「俺の出番来るかな…」
不安そうに聞いてくる野崎先輩は笑顔の裏側に寂しいという感情が見えてくる。
「来ますよ、絶対」
いつも頑張っている野崎先輩は私は一番に応援している。
好き、という感情よりも尊敬というのが強いかも知れない。
「マネージャーも頑張ってね」
頭をポン、ポンと優し叩き彼もまた私と同じように私を応援してくれているのだろうか。
試合に集中しないといけないのはこれからなのに、まだ両者とも無点ということで飽きてきた。
そんなこと思ってはいけないのだが、やはり点数が入らない試合より、入って入れられてというシーソーゲームのような展開の方が飽きずに楽しめる。
「ピッチャー、ストライクいけるよー」
ボウル先攻となってきた6回は選手もベンチもより声が大きくなり始める。
この雰囲気はいいが、ボウル先攻になると球数が増えてくると、疲労が溜まり最後まで持たなくなってしまう。
「ボウル!」
ストライクの判定がされることなく、バッターボックスにいた相手のバッターは4ボウルを選びファーストまで歩いた。
「タイムお願いします」
4ボウルになったところで、キャッチャーが審判へタイムを要求し、各守備のところからピッチャーマウンドへと選手が集まる。
**
マウンドで集まる選手は何を話しているのか、遠くて何にもわからない。
ただ、選手は笑顔でいるからきっと作戦なんて話していないだろう。
ピッチャーを励まし、落ち着かせるためのタイムをキャッチャーが取った。
「ありがとうございました」
キャッチャーが審判にタイムを取ったお礼を言う。
タイムが終わったらしく、みんながそれぞれの守備の場所へと散らばっていく。
「頑張るぞー!」
4ボウルをついさっき取ったことのようには思えないくらい明るくて元気だった。
そういう表現を見たら、なんだか自然とこちらまで笑顔にさせていく。
「ストライク」
やはりタイムを取ったお陰なのか、今までボウル先攻だったのが、ストライク先攻へと変わっていった。
「ナイス、センター」
センターフライとなったそのボールはきちっとグローブの中へと収められ、アウトを取ることができた。
だけど、4ボウルを選んだランナーはタッチアップがあり、2塁へと進めた。
「ランナー気にしずいこうぜぇ」
ショートにいる主将が一声掛けると、「おう!」という言葉が響き渡りまるで練習試合とは思わせないような集中力と真剣さだ。
「ショート、!!」
ベンチからショートへ転がるボールを見て、取れるよ、とか言うように守備の名前を言う。
**
ショートの主将はグローブに上手く収め、3塁に進めようとするランナーをサードでアウトにし、サード守備はファーストに送球しアウトを取り、ゲッツーとなり交代を迎える。
「ナイス、主将!」
「さすがお前はすごい主将だな」
たくさんの主将を讃えるような声が聞こえた。
「ねぇねぇ、マネージャーちゃん」
みんなに囲まれていた主将はスコアを書いている私の元へと近寄ってくる。
「主将さん」
「俺の名前、高橋隆だけど」
確か前にも私に名前で呼べと言われたことがあったような。
「なら私だってマネージャーって名前じゃないですよ?」
普段の私なら先輩にそのようなこと言うタイプではない。
だが、調子に乗ってみたというか、どんな反応をするのか見てみたいというか、いつも言われっぱなしでいたらこちらだってやってみたくなってしまう。
「菜月ちゃん」
スコアボードが置かれている机に彼は肘を当てて、私の下の名前を呼び微笑んできた。
「主将さん、バッターじゃないんですか?」
少し照れくさくなってしまい、主将にバッターが回ってくるのは、まだのはずだが紛らわせるために、と思った。
「違うよ、菜月ちゃん。菜月ちゃん、呼んでよ」
あまりにもしつこくて、そうとう呼んで欲しいとは。
「隆さん」
そう呼ぶと、肘を崩して手を机に思いきり付けて顔と顔の距離が近くなっていくのがわかる。
「ちょ、ちょ、主将さん。近いです」
距離が近すぎて、あまりにも近くて、この人は何を考えているのか。
「あ、ごめん、つい」
つい……?
これって、ついやってしまうことなのか。
私が止めなかったらこの人はきっと私にキスを求めていただろう。
ぁ、はぃ、野球マネージャーしてますょ!
主将さん、どーしちまったの!!??
ぁー、続き気になります(*・・*)
>>75 日向様
野球してる男の人ってかっこいいですよね ♪"
女の子1人だとやっぱ複雑ですね (´・ω・`)
楽しみに待って頂けたら嬉しいです !*/
**
「菜月ちゃん、あのさ…」
もうこれ以上何か言われるとさすがに困る。
それに私にとってこれが初めての練習試合だから相手チームのスコアも書かないといけないし、集中が途切れてしまう。
顔がまだ近くにあり、バッターが見えなくて審判の声でストライクがボウルかを判断しなければならない。
「主将」
その声は蓮汰だった。
私が困っているのを真っ先に察して、助けてくれたのだろうか。
本当にありがたい存在だ。
主将は蓮汰に呼ばれ、「試合終わったら一緒に帰ろうよ」という一言を残しバット振りの練習をしている蓮汰達の元へと駆け付けた。
蓮汰と目が合い、私は手と手を合わせ頭を下げてありがとうと示すかのようにした。
すると、蓮汰は答えることもなくバット振り練習へと戻った。
「ストライク」
主将がいなくなって、審判の声と空振りをするバッターが見える。
「打てるぞ」
監督さんがそう励ますとそれに答えるかのようにヘルメットに手を当て、再びバッターボックスに戻り気合いを入れ直す。
「ストライク!」
だが高速ボールを投げてくるピッチャーには勝てなかった。
「あと1アウトだけど行けるぞ」
**
「代打、お前行け」
拓真くんのバッターの順番だったのだが、監督さんが指したのは、野崎先輩だった。
私は嬉しい気持ちでいっぱいだったが、野崎先輩はまさか、と言う顔をしていてきょとんとしている。
「いけー、野崎!」
ベンチは完全にテンションが上がっており、野崎コールまで起こっている。
もちろん、拓真くんもそこの中に入っていて笑顔で送り出していた。
「頑張って下さい!!」
私も部員と同じように、まだよく状況がわかっていない先輩を励ます。
そして、先輩はヘルメットを被りバットを持って一歩一歩バッターボックスへと近づいていった。
もしかしたら、初めてピッチャーに立ち向かう先輩を見たかもしれない。
「ボウル」
ボールを見たというか、どちらかといえば、緊張をし過ぎて手が動かなかったという感じだ。
まだ緊張が見られ、バッターボックスのなかで足を動かしたり何度も自分が被っているヘルメットを触ったりしている。
「ストライク」
振ったが間に合わず空振りをしていた。
タイミングが合わないのか。
わずか3球で追い込まれ、カウントは1ボウル2ストライクとなった。
「打てるぞお」
注目は両チームとも野崎先輩にあった。
「うおぉぉ!!!!」
次の瞬間、野崎先輩が振ったバットに当たったボールは鳥のように鮮やかに空を大きく飛び、外野を超えた。
「走れ、走れー!」
打て、その次は、走れ。
まさに野球をやっている。
打ったら、ベースを駆け回る。それが野球だ。
「野崎ーっ」
外野のボールは内野へと返されそこからボールがホームベースへと戻ってくることはなかった。
が、野崎先輩はダイヤモンドを全力疾走で走りきり、ホームベースへと一直線だった。
「やったな!!」
大きな歓声が、今までバッターボックスで固い表情をしていた人を自然と笑顔へと変えてゆく。
あれから点数が両者とも入ることはなく、1対0でこちらの勝利で練習試合が終わった。
野崎先輩はランニングホームランと記録され、努力をすれば必ずいつかは報われるということをこの人はみんなに教えてくれた。
ぽち。さん!
こんばんは、初めまして。
「 希空 (*´つω・。) Noa 」という奴です←
ぽち。さんの前回の小説、『 先輩。 』
すべて読ませていただきました!とっても面白かったです!
すごい、きゅんきゅんしました! ( 笑、
今回のぽち。さんの小説、『 部活。 』まだ少ししか読むことが出来てませんが、
とても、面白いし、すんごい才能あると思います! ( うん、ほんとに、
これからも頑張ってください!更新、楽しみに待ってます(*´艸`*)
訂正
× ぽち。さん
○ ぽちさん
すべてに「 。 」が付いてしまって、本当にすみませんでした!
>>79
希空(*´つω・。) Noa 様
「先輩。」の方も読んで頂いて、本当にありがとうございます !!!*
いやいや、まだ皆さんの文才には勝てませんが…。
これからも是非よろしくお願いします (*´エ`*)
**
次の日の野球部とソフトボール部とサッカー部のグラウンドの部活は、昨日の野崎先輩のランニングホームランの話題でいっぱいだった。
今まで試合に出ていなかったし、それに拓真くんとの事件もあり、あまりいい評判ではなかったのだが、顔が整っていることもあり、特にソフトボール部の部員はみんなが注目していた。
「マネージャー、」
……と思っていたら、野崎先輩が野球着を着てこちらへ走ってくる。
「昨日はお疲れ様でした」
半日の試合だったが、点数が入らない試合だとやはり疲れが溜まっていて、みんなはとっとと帰ってしまったから誰とでも話せず終わっていった。
「昨日はありがとう」
え……。
私は別に何もしていないし、お礼を言うのは部員のみんなもあると思う。
それに、野崎先輩の努力だし。
「マネージャーのお陰で頑張れたんだ」
笑顔でそう話しかけてくる彼は、なんだか嬉しそうでこちらまで嬉しくさせてくれる。
「これからも頑張って下さい!」
私はずっと応援していますから。
絶対にこの人は私の気持ちを裏切らないだろう。
「あのさ、これからも近くで俺のこと見ててよ」
「もちろんです!」
それがマネージャーの仕事だから。
野崎先輩だけでなく、野球部員、全員これからも見守るし、このチームに私がいないといけないと必要とされるのを目標として、それからみんなで甲子園に行けるように頑張っていこうと入部した頃から思っていたことだ。
「そうじゃなくて、部活以外のところでもずっと近くにいてほしい」
いきなりのことで。
でも、野崎先輩は淡々と私に告白をしてきた。
じんわりと自分の顔やら耳やらが暑く赤くなっていくのがわかった。
**
「……告白、ですよね」
告白と確かなわけではないから、勝手に答えを出すのは失礼だと思った。
「おう」
野崎先輩は顔を赤くすることもなく告白をしてき、余計に緊張をしてくる。
心臓のドクドクという音が彼にも聞こえてしまうのではないか、というくらい激しく動いている。
「あの……」
私の答えは迷うことなく、決まっていた。
「ごめんなさい」
嫌いだからではない。
だけど他で恋愛禁止とされていない部活で関係を見てきて、別れてしまい気まずくなって部活に出れなくなってしまう人がいると聞いたことがあるから、この野球部で恋愛禁止になっている理由が少しわかった気がする。
それに、あまり今は彼氏が欲しいなんて思っていなくて、マネージャーに懸命に取り組みたいと思っているし。
「そっか、わかった」
先輩の顔は一瞬下がったものの、またいつものような素敵な笑顔を見せた。
作り笑いなんて決してしない。
「あ、でも今までどうり楽しく接して下さいね」
私も野崎先輩の笑顔に負けないくらいの笑顔を向けた。
「可愛いよ、その笑顔」
私の上がっている頬を触り、練習へと戻っていった。
さっきの野崎先輩は違和感がありまくっていたけど、普段どうりになってくれてこちらも安心した。
告白を断ったことで、気まずくなってしまうかもしれないとも思っていたけど、この人はそういうタイプではなく結構あっさりしていて本当に安心。
「よし頑張ろ」
急いでみんなの練習しているグラウンドへ向かう。
「マネージャー」
練習試合が終わったため、ユニホームのゼッケンを取る仕事が待ち構えていた。
正直、裁縫は出来ないんだけど……。やるしかない。
**
「おっそ」
さっさと練習を見てアドバイスをしたらいいのに、いちいち私に愚痴愚痴言ってくる監督さん。
「まさか、岡田さ、家庭科出来ないでしょ」
図星で言われたため、もう嫌になってついに無視をして関わらない方向性へと考えを変えた。
「絶対これ俺の方が上手く出来るよな」
私が持っていたゼッケン付きのユニホームとハサミを取り上げて、監督さんがせっせとやり遂げて、それも早いのに綺麗に出来ていているから余計ムカつく。
「これ全部俺が今日中に終わらせてあげるから、お前は1日監督やれ。どうせお前が裁縫やってたって1ヶ月かかっても終わんないから」
今日中にゼッケンを外すように言われていて、でも私がやるとなったら絶対終わらないから、そこは助かったけど、監督を変わって私がやるのはちょっと無理かな。
「早く動け」
鋭い目でこちらを睨んできたため部員の元へと行くしかなかった。
「あれ?監督は?」
なかなか顔を見せない監督さんが気になっているようだ。
やっぱり監督さんは必要とされてるのに。
「お裁縫やってます」
なんで、と驚いている。
誰だって驚くだろう。だってあの見た目が頑固なオヤジっぽい人が裁縫をしているのだから。
バットをビュンビュン振り回して部員を怒鳴り付けるのではなく裁縫をしているのだから。
「私が1日監督ということになっちゃって……」
これまた驚いている。
いつも対して動かないし、ランニングに誘われてもやりたくないと断ってばかりで運動ができるなんて印象が無いだろう。
**
「こんなマネージャーちゃんに監督なんて出来んのかな」
キャッチャーをしていり先輩がポロッと溢した一言は私はあまし気にならなかったが、蓮汰はなんだかムスッとしている。
「……蓮汰?」
みんなよりも遠くにいる蓮汰だが、表情はこちらにもハッキリと見えてくる。
「お前、出来ねーだろ。監督なんて。いっくら1日だからってさ」
返ってきた言葉は私がイメージしていたものと違い、固まってしまった。
てっきり、蓮汰の顔はムスッとしていたように見えたから、「こいつなら出来る!」というようなことを言ってくれると思っていた。
「ま、いいっしょ。菜月ちゃん元気だし、1日くらい楽しくワイワイ野球やろうぜ」
やはり、こういうところできちんとまとめてくれるのは主将だ。
主将の本音を聞いたことがない。
いつだって、みんなのことを考えて、正しい判断をしてくれる。
「やるっか!!」
最終的にはみんな乗ってくれて全員で、私が率いるチーム練習がスタートした。
「今日は楽しく頑張りましょう!よろしくお願いします」
「「おぉー!!!!」」
私の一声で野球部が始まった感じがする。
いつもは練習前には組まない円陣を組み、気合いを入れ直して練習を始めることにした。
「監督、何しましょうか」
いきなり頼ってくる部員たち。
いつもは練習メニューが一通りあってそれを文句ひとつ言わずやっているが、さすがに今日くらいは別メニューでやりたいのだろうか。
「ランニングしよ」
ジャージに着替えて、動けるような格好をしているため、私も一緒に外周を走ることにした。
いつもなら私語厳禁のランニングも私語という訳ではないが、作戦とか相手校の弱点とかを話ながらランニングをしていく。
すると、あっという間に終わった。
「今日は早く終わったように感じた」
そう聞いた瞬間、嬉しさが 込み上げてきて顔が緩む。
楽しかった、ってことだよね。
訂正
× 「キャッチャーをしていり先輩が …… 」
◯ 「キャッチャーをしている先輩が …… 」
すいませんでした。
以後気を付けて書いていきたいと思っています。
これからも読んで頂けると嬉しいです m(__)m
**
「次は?」
いつもだったら、ランニング後はキャッチボール。
だから、キャッチボールでもやろうかな。
「キャッチボールで」
だと思った、というように直ぐにグローブとボールを持ち、いつものペアでキャッチボールをしようとする。
「んで、今日は1年と2年のペアでキャッチボールをして下さい」
これをやることに意味はない。
だが、1年と2年でキャッチボールをすると2年にとっては、これといって利点はないが、1年にとってはたくさんのことを学ぶことのできるからチャンスだ。
「お前、組もーぜ」
先輩から後輩を誘っているという感じ。
例え、その先輩と合わなくたって断ることなど出来ないから仕方なくやってるなっと思うペアも見られた。
しかし、やっぱり何があれ得るものは多いだろう。
「マネージャー、悪いけどボール取って」
目の前にあるボールに気付かず突っ立っていた。
「いきまーす」
久しぶりに投げたボールはコントロールがダメダメで少し高めに相手に投げてしまった。
「ありがとう」
へなちょこのボールだったけど上手く掴んだ。
グローブを上にあげてお礼を言った。
「マネージャー、危ない!」
すると次は、顔ギリギリにボールがきた。
もう少し顔が出ていたら絶対当たっていただろう。
「ごめん」
急いで謝りに来て、ボールを取ってまたキャッチボールに戻った。
この位置で部員を見るということは本当に危険なんだということが身で感じた。
迫力がありすぎて、逆に私はこういうのが好きなんだけどね。
**
冬じゃないから肩を温める訳ではないけど、ある程度肩を慣らすキャッチボールをし、次のメニューへと移る。
「バッティングやりましょう!」
バッティングは、部員みんなが好きな練習だ。
ストレスを全て吐き出せるし、いい当たりをすれば、その分飛んでいく。
「トスからで」
トスバッティングは、ペアになって1人が投げて、1人がネットに向かってひたすら打っていく。
これもキャッチボール同様に先輩と後輩のペアでやるようにした。
本来の監督さんは、こういうときはアドバイスなどをしているけど、私はアドバイスなんてとてもじゃないけど出来ないから、見ているだけだと何だか物足りない気もする。
「監督さん」
あまりにもやることがなくて、お裁縫をしている監督さんの元へと行くことにした。
「お、みんな楽しそうにやってるな」
いつもはキツい練習で笑いなんて見られることがないけど、今日は緩い監督だから笑いながら楽しそうにやっている。
「お裁縫ありがとうございます」
監督を代わりにやるなんて初めは絶対に私には出来ないだろうって思っていた。
でもやってみると、部員1人1人の個性が改めて見ることができたり、みんなと一緒に動いたりするのが面白くて、やらしてもらえて本当によかった。
「お前も練習やればいいじゃん、暇そうだし」
私の話にちゃんと答えてくれる監督さんだが、黙々と選手のユニホームに目をやり、ゼッケンとユニホームを繋いでいる糸を次から次へとほどいていく。
「今日中なんでお願いします」
少しだけ話して再び練習へと戻った。
テストが近いため更新遅くなります<(_ _*)>
**
「マネージャー、トス終わったよ」
私と監督さんがいなくたって、一言二言は喋っていただろうが、笑わずにひたすら打ち続けていた。
「次何やります?私、打てないからノックなんて出来ませんよ」
いつもは監督さんが打っていて、それでノックをしているが、どうしよう。
……あ。
「コーチ、ノックお願いします」
コーチはいつも練習試合で審判をやってくれたり、合宿へ行ったりすると食事の管理などをしてくれたりしている。
野球経験者だから打てるし、部員とバッティングセンターに行くこともあるらしい。
「俺?」
20代の若いイケメン。
名前は知らないが、この高校の先生ではない。
会社員で、部活の時間になると毎日のように来てくれる。
「はい!お願いします」
少し考えたようだったが、「お前ら走れよ」と言いバットを持った。
「守備着けー!」
部員はバットを置き、使ったボールを拾い集めると、グローブを片手に自分の守備についた。
「いくぞ!!」
そう言いながら、コーチはノックをしていく。
監督さんよりも若いせいか、球が始めから速い。
だが、部員も負けてはいない。
そのボールを素早くグローブに流し入れていく。
「マネージャー、ボール出しお願い」
バットで打つコーチにボールを次から次へと渡していくという仕事を任された。
私も部員と共に声だしをしながら。
「ナイスプレー」
スライディングしながらボールをフライで捕ったライト。
みんなが褒める。
**
「お前ら上手くなったな」
コーチ自らがノックをやり、見ていてわからなかったところがわかったらしく、苦手なことや得意なことが確認できたらしい。
「またノックやって下さい!」
主将が言うと、「またやらせてね」と答えた。
監督さんは結構いい年だから、コーチがノックをやり、監督さんは外から見ていてアドバイスをすればいいと思った。
だけどそんな簡単には監督さんは許さないと思うけどな。
「次は、声だしの練習をやりましょう」
これはいつもやらない練習だ。
こんな声だしをやる時間があれば、バットを1回でも多く振るのが当たり前だから。
だけど私はそれよりもこのチームには声が足りていないと思った。
始めは出ていたとしても、だんだんと薄れていく。
声は何よりも選手には励ましになる。だからこそ、声をどの学校よりも出せるチームになりたい。
「なにやる?」
「学校の校歌を歌います」
甲子園に出場したら必ず歌う、校歌。
だから校歌を歌い、声だしをすることにした。
みんな甲子園なんて程遠い存在だと思っているから、少しでも行けるんだ、目指そうという気持ちになるように。
「じゃあ、いきます。1、2、3、はい」
「………」
合図まで出したのに、誰も歌わなかった。
どうして?恥ずかしいから?ばかばかしいから?
「なんで歌わないんですか?」
みんな揃ってそっぽを向いた感じがした。
「意味ある?」
どうやら私が考えていたことが伝わっていなかったらしい。
言わないと伝わらないのかな……。
**
「甲子園に出ることになったら歌うことになるから練習しておこうと」
そう言うと、ざわつき始めた。
「甲子園とか本気で言ってる?この学校、一回も甲子園なんて出たことないんだよ」
私立高のくせして、野球部はあまり他の部活に比べて援助されていない気がする。
だが、それが原因で甲子園に行けないわけじゃない。
みんなが甲子園を遠いものだと思っているからだ。
「なら甲子園に出て、それを変えればいいじゃないですか」
サッカー部は毎年地区大会優勝、バスケ部は男女ともに全国大会出場の常連、陸上部は全国大会優勝を毎年のように争っている。
運動部だけでない。
文化部の吹奏楽は県大会出場、演劇部はいろんなところから注目を浴びている。
そこに野球部も加わればいいのだ。
「そんな簡単じゃねーんだよ」
みんな、あなたたちと同じ学年の人ばかり。
同級生なのに怖がっていてどうするんだ。
「簡単です、勝てるんですから、このチームは」
毎年のようにテレビで甲子園予選から甲子園までずっと見ていたが、勝っていくチームはひとりひとりがやるべきことをきちんとやりこなしていき、ミスをしても声を掛け合って、マウンドにちょくちょく集まっている感じがする。
このチームはそれが出来ている。
あとは実力を付けて、全てを出しきれば勝てる。
「みんなで目指しましょうよ、甲子園」
えー、とか言いながらも「歌おう」という声が聞こえた。
「だな、甲子園行けなくても学校で歌えばいいしな」
よし。これから、全部員が甲子園を目標にしてくれるようにするのが私の課題だ。
**
「やりますね、3、2、1、はい」
私が指揮者となり、部員が照れながらも歌った。
活動を終えた吹奏楽部が野球部のグラウンドをジロジロ見て通りすぎてゆく。
知らない人にとっては、すごく下らなくてバカバカしいのかもしれない。
それでも夢を仲間と共に叶えるのはみんな同じ。
「もう一回歌おーぜ」
生意気な1年は他の部活に見せつけたいらしく、ノリノリに歌った。
「じゃあさっきよりも大きな声で!」
とてもじゃないけど、それは歌とは言えないような音程の外れよう。
でも、野球部らしい低めのキーで上手く歌っていく。
2回目はみんなの姿勢が変わり、応援団のように体をえびぞりにして手を後ろに組んで腹の底から歌っている。
「めんどくさい部員達だね、ほんと」
「は?」
__あ、
つい口に出してしまった。
やる気が出れば一生懸命やるのに、出るまでは長いしみんなまとまってるから私が説得しても効果なくて、だけど部員の誰か1人が揺れれば全員揺らぐ。
「なんでもないです、すいません」
強い視線を浴びたがもう慣れた。
「今日はこれで終わります、お疲れさまでした」
1日監督はこれにて終了した。
本物の監督さんに挨拶をし解散となった。
「おいちょっと待て、全員こっちこい」
監督さんの誘導で野球部の部室までやって来た。
部室の前に置いてあるベンチにクーラーボックスが数個並べられていた。
「1人1個持ってけ」
監督さんが差し入れをくれた。
監督さんが差し入れを持ってきてくれるのは本当にあるかないかで、試合があっても差し入れがない日だってある。
のくせして、今日はただの練習なのに差し入れがある。どうして?
**
クーラーボックスの中には冷えきっているカラフルなアイスキャンディーがたくさん入っていた。
きっと子供の好みがわかんないからお店にあるアイスキャンディーを端から端まで買ってきたんだろう。
差し入れがあって監督さんらしくないないなっと思っていたが、やっぱりこういうところに監督さんらしいところが隠れていた。
「ありがとうございます」
袋をちぎり、アイスキャンディーを口の中に入れる。
汗をかいていたのが嘘のように一瞬で汗はなくなり体が冷めていく。
ソーダ味に当たった私はあまりの冷たさに歯が痛み始めみんなのようにバクバク食べれなくなった。
すると、アイスキャンディーが溶け始めて手に垂れてくる。
「これ」
裁縫道具とゼッケンと不器用に畳まれたユニホームを監督さんに渡された。
「ありがとうございました、本当に助かりました」
「おう」
意外と家でも奥さんの手伝いとかしてるのかな、とか考えたりしたがあの性格からして多分やってないな。
「すいません、ちょっと手汚ないんでもう少しだけ持ってもらっていてもいいですか?」
嫌な顔をしながらだったが、ちゃんと待っていてくれた。
「ありがとうございます。これどこに保管します?」
「部室に適当に置いといて」
「はい」
**
部室の奥の方の棚にユニホームとゼッケンを重ねて置いておいた。
ホコリとか砂とかがすごく多い部室に保管するのは少し抵抗があるが、使う前に洗えばいいから、それに他に保管する場所がないから仕方なく部室の綺麗なところに置いた。
「……今日はお疲れ」
部員はもう帰っていったが、監督さんは部室の前で待っていてくれた。
「こちらこそお裁縫、ありがとうございました」
すると、エクレアをくれた。
多分このエクレアは私だけに用意してくれたものだ。
「これ貰ってもいいんですか?」
実を言うと、今はダイエット中。
最近動いてるはずなのに体重は増えていく一方。
いっぱい動くからすぐお腹が空いてたくさん食べてしまうのが原因だろう。
だからなるべく朝食、昼食、夜食の三食以外で摂取するのは避けていたのに。
「お前がチームを変えた」
そのご褒美にエクレア。
すごく嬉しい。嬉しいけどアイスキャンディーも食べたばっかだから、明日食べることにすることにした。
「お家で頂きます、ありがとうございます」
監督さん、やっぱり好き。
一番チームを思っていないようで、誰よりもチームを愛しているのは監督さんだと思う。
「明日も頼んだぞ」
シャイな方は苦労されてるんだなとか思った。
監督さんみたいな人は絶対に伝わりにくい。
これが部員に届いていてくれてればいいのだが、これがまたこの部員らはみんな揃って鈍感。
気づいたときには卒団してるだろうな。
「明日もよろしくお願いします」
エクレアをリュックサックに入れて私も門へ向かった。
**
「ただいまーっ」
エクレアを貰ったり、嬉しいことを言ってもらったりしていつもは疲れて玄関に入っても「ただいま」と言うことは少ないのだが今日は気分が良い。
「おかえり、お疲れさま」
リビングに入ると、お母さんは夕食を作っていて、焼き肉のタレの匂いがリビング中に広がっていて食欲が湧いてきた。
「これ、蓮くんがなっちゃんにって持ってきてくれたよ。1日監督やらしてもらったんだね」
お母さんは私にコンビニのビニール袋ごと渡した。
「コンビニってそのまますぎるじゃん」
「いいじゃん。なんか蓮くんらしい」
コンビニのビニール袋の中には炭酸飲料やスナック菓子、グミなどたくさん入っていた。
**
「蓮くんにお礼かなんか言っておきなさいよ」
うん、と頷きリュックサックとコンビニのビニール袋を持ってジャージのまま2階の自分の部屋へと向かった。
「はあ」
部屋に入った瞬間今まで溜まっていた疲れが一気に込み上げて来た。
【ありがとう】
私は一言だけ蓮汰にLINEのメッセージを送った。
いつもは即急に返ってくるメッセージがなかなか返ってこない。
__ただ忙しいだけだよね。
「なっちゃーん、ご飯出来たよ」
そう言われてスエットに着替え直して1階に降りていくと、珍しく家族全員が揃っていた。
「お、お兄ちゃん!久しぶりだね」
2、3日見ていなかったお兄ちゃんの顔。
相変わらずの顔でかっこいいような……でもやっぱり兄弟だからそうは思えない。
「よっ」
小さく手を上げて挨拶を交す。
「マネージャー順調か?」
「まぁね」
うちのお兄ちゃんは彼女がいるから部活とかも色々で大変だけど、私の場合は彼氏がいないからマネージャーをしていたって何とも思われない。
「お前モテるだろ、野球部のマネージャーとか。いくら不細工でもお前程度だったらちょっとはモテてもいいんじゃね?」
上から目線なのは本当に直して欲しいところなんだが。
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「そりゃ、1回くらいは告白されたよ」
自慢気に話すと「1回だけかよ」と突っ込まれた。
可愛い目も可愛らしいアヒル口もいいくらいに掛かった天然パーマも鼻が高いのも親の良いところを全て取っていったのはお兄ちゃんだ。
「甲子園行けるようにお前がサポートしてやらんと」
さっさと夕食を食べて、再び2階へと上がった。
プロ野球はよく見ていて結構詳しい方だが、甲子園は全くわからない。
どの高校が強くて、どの高校が優勝しているのかすらわからない。
インターネットで検索をかけてみるがうまくヒットしない。
【蓮汰:太らないようにしろよ】
丁度いいところに蓮汰からLINEが来たから、蓮汰に甲子園のことについて教えてもらうことにした。
【はいよ(`・ω・´)】
【てかさ、甲子園のことについて教えてよ。全くわかんないから】
すると、すぐに返事が返ってきた。
【蓮汰:わりぃ、俺甲子園とか興味ないわ】
確か中学校の頃とか、野球が強い高校に入って甲子園出る!とか言っていた気がしたけど……。
気のせいだったのか。
【そうだったっけ?】
【蓮汰:おう】
どうやら、あの話をしていたのはもしかしたら蓮汰じゃなかったらしい。
【じゃあ明日ね〜】
既読は付いたものの、それからの返信はなかった。
**
最近、蓮汰は向かえに来てくれなくなり、朝早くから1人で電車に乗って学校へ行く。
みんなよりも早く学校にいくため丁度通勤ラッシュと重ならずに行けるから問題はないけど。
「おはようございます」
昨日の今日もあり、みんな気合いが入っていていつもよりも早めに集合していた。
「岡田」
監督さんもいつもはノソノソ来るのだが今日は早かった。
「お前以外には話したんだけど昨日みんなが帰った後に蓮汰が来てな、これ」
みんなに伝わったのは多分連絡網だ。
私は連絡網に加われていないため知ることが出来なかった。
これ、といって見せてきたのは学校で指定されている正式な退部届の紙だった。
きちんと印鑑も押してあり受理されるものだ。
「どうして……」
特にいじめられていたわけでも、誰かに憎まれたりしていたわけでもない。
私には心当たりがなくて、どうして辞めることに決めたのか全く理解できない。
「あいつ最近ガラの悪いやつらと絡んでるらしいぞ」
拓真くんが口を開いた。
ガラの悪い人?
小学校の低学年だったときなんていじめられっ子で弱々しくて頼りなかったあの蓮汰がどうしてそんな人達と話が合うの?
「マネージャーなんか知らないの?」
私は横に首を何度も振った。
でも何となく昨日のLINEの返信の内容がわかったような気がした。
確かに蓮汰は甲子園に憧れていた。
……もう野球が嫌いになっちゃったのか。
「監督さん、蓮汰がそれ届けに来たときなんか言ってませんでしたか?」
「ありがとうございましたって一言だけ」
何を考えてるの?
**
あれから何度もLINEしてみたり電話をしてみたりもしたが、スルーされている。
LINEに関しては既読は付くものの返信はない。
「蓮汰、学校にも来てないらしいよ」
ついに学校にまで来なくなった。
あれほど学校が好きだったのに。
「なんかあったの?」
「ん……」
部員らも思い当たることがないらしい。
ガラの悪い人達と遊んだりするのは別に悪くないとは思っている。それが蓮汰にとって居心地のいいのならば。
だけど合わないのに無理をして釣り合おうとしているのなら、今すぐにでも遊んだりするのはやめて欲しい。
「私今日、蓮汰の家行ってくるね」
俺らも行かせて、と言ってきたがもしものことが合ったときに彼らにはガッカリしてほしくない。
だから今日は私1人で行くことに決めた。
「じゃあ報告待ってる」
なぜ連れて行かないかという理由は話さなかったが、いくら鈍感でもこれくらいのことは察してくれた。
__ピンポーン
「菜月です。蓮汰いますか?」
インターホンには答えず玄関から顔を出したのは蓮汰のお母さんだった。
「ごめんね、最近帰ってないの」
家にも帰らなくなってしまった。
どこでなにをしてるのかな。
どこで寝てるのかな。
ちゃんと寝れているのかな。大丈夫かな。
「理由がわかんなくて」
お母さんも心配そうな顔をしていた。
前よりも老けた感じが見られて、きっとお母さんは私達よりも、うんと心配している。
……早く帰って来なよ。
「ありがとね。わざわざ」
お母さんが焼いたクッキーを持たせてくれた。
これも蓮汰のために作ったクッキーだと思うと何だか貰いにくかったが断るのも失礼だと思ったから貰っておいた。
食べるのはまだやめよう。
「帰って来たらまた連絡下さい」
ニコっと微笑んで蓮汰の家を後にした。
あげ
102: アーヤ◆TQ:2017/09/16(土) 15:56良い感じで面白
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