【断捨離】
「ティッシュをどうぞー」
ティッシュ配りのアルバイトを始めてもうすぐ一年になる。もう二十四になる俺だが、不況により職に就けずアルバイト生活をしていた。
人通りの多いこの場所でもティシュを貰ってくれるのはごく僅か。今日のノルマが達成できないこともよくある。残して戻ると給料が減るので出来るだけ配ってしまいたい。
「おーい。どうだ、配りきれたか?」
この人は先輩で、残ったティシュをゴミ箱に捨て、誤魔化すということをしている
「今日もダメでしたね。こんなに人がいるのに」
「仕方ない、またあのゴミ箱に捨てるか。お前も来るよな?」
「…はい。」
しかし俺には捨てることができない。何故なら…
「捨てるぞ」
ガサガサ
『…て…ない…』
「よーし、戻るぞ」
「うっす。」
『…てない…す…』
俺はある特殊な力を持っている。
『捨てないで!』
物の声が聞こえるのだ。