※亀更新
※感想等は見ている方が不快にならない程度の言葉遣いで。
ご理解頂ける方のみどうぞ。
シミ一つない天井に若草色のカーテン。そしてよく分からない大量なぬいぐるみ。
ぼんやりとそれらが自分の視界に入る。こういった状態を夢うつつと言うのだろうか。
……もっと、しっかりしたい。
そう思っても行動に移せない。そんな自分に虫酸が走る。
もっと、自分が強かったら……
〜
「林君! ……林君!」
自分の名前を大声で呼ぶのは養護教諭の宮島叶だった。
「み、宮島先生。おはようございます……」
タオルケットに添えられた真っ白で綺麗な手を見つめた。なんとなく目を合わせるのが気まずい。
「もうお昼よ。午後からは授業行けそう?」
「いや……ちょっときついっす」
一時間も授業に出ていないのだから止めるのが普通だが、宮島先生は「分かったわ」と一つ返事で答えてくれるのだ。ここまで来ると「白衣の天使」というよりも「白衣の女神」といった方が合っている気がする。
「みやちゃ〜ん! 一緒にお昼食べよ!」
勢いよく扉が開いたかと思うと、突然女子生徒が入ってきた。
全く、ノックもしないで失礼な。
「うん、今行くね」
弁当包みを片手に走る宮島先生は、生徒たちとあまり変わらない。寧ろ、先生の方が可愛らしく見える。
「じゃあ林君。今日は病院で早退だよね? 気をつけて帰ってね」
病院……。ああ、今朝そう嘘をついた事を思い出した。
さっさと帰ろう。そしてさっさと寝て全ての事を一瞬でも忘れよう。
鞄を手に取り、保健室を後にした。
〜
もう五月か。やけに生暖かい空気が漂っている訳だ。
「あれ? 浩介じゃん。おーい!」
少し離れた場所から聞き慣れた声が響いた。
「あ、河原さん。お久しぶりです」
その人は中学時代の部活の先輩、河原さんだった。
「俺は創立記念日で休みだけど……、お前さぼり?」
気になった事をストレートに聞いてくる所が全く変わらない。
しかし変わらない先輩に少しだけ安心してしまった。
「はい、さぼりです」
「まじか。じゃあ、これからゲーセン行かねえ?」
「そうですね、行きましょう」
河原さんが誘ってくれて良かった。もし今帰っていたら姉が心配するだろう。
河原さんと雑談をしながらゲームセンターへと足を運んだ。
「うわあ……広いっすね」
「だろ? 最近出来たみたいなんだ」
平日の真っ昼間といえ、やはり人が多い。ゲームや景品の種類も多いため、誰でも入りやすいのだろう。
「お。これ浩介が好きだったゲームじゃん。相手してやろうか?」
河原さんが指指したゲームは昔自分が大好きだったシューテイングゲームだった。わりと古いゲームだが、操作もあまり難しくないし何より面白い。
「いいんすか? お願いします」
専用のモデルガンを手に取り、小銭を入れようとしていたら、視線を感じ、後ろを振り向いた。小柄なポニーテールの女子がこちらを見ていた。
「か、河原さん。なんか見てる人いるんですけど……知り合いですか?」
「え? どこだよ。……あ、里花じゃん。おーい! こっち!」
河原さんが手を振ると、里花と呼ばれた女子は嬉しそうにこちらに走ってきた。
「河原君! やっぱり!」
「よう里花。ゲーセンなんて来るんだな。あ、浩介。これ彼女の里花」
か、か、彼女……しかも可愛い……
グーパンチを百発受けられたようなダメージだ。
「里花、三人で一緒に回らないか?浩介もいいよな!」
この男はなんて事を言うのだろうか。
無神経にも程がある。カップル+部外者…… みじめ過ぎるだろ。
「いや、ちょっとヤボ用思い出したんで今日はここで」
「何だよ。じゃあ今度な」
ここのゲームセンターは広くて助かる。これで河原さん達とバッティングしなくなる。
奥の方にはクレーンゲームやカードゲーム等の子供向けのゲームが多かった。
「……ん、あれってもしかして」
ウサギのキャラクターのイラストが大きく描かれていた。
そう、姉の大好きなウサギのキャラクターだ。
これのクレーンゲームがあるのか。たまには何か取っていってやろう。
「ええっと……三回ニ百円で、五回四百円か」
財布の中身を確認していると、クレーンゲームの側に女子高生らしき人物が現れた。
「へえ、男子でもこんなゲームやるんだ」
いきなり馴れ馴れしく話しかけられ動揺していると、少し微笑んでまた話しかけてきた。
「このウサギのぬいぐるみ、欲しいんでしょ。あたしこのゲーム得意なんだ」
「は、はあ。そうなんすか……」
どういう訳かぬいぐるみを取って貰う事になった。
その女子は慣れた手つきで操作し、アームが軽々ぬいぐるみを持ち上げた。
「え、凄い。たった一回で……」
「でしょ。ほいウサちゃんだよ」
顔の前にぬいぐるみを近づけられた。
大きいぬいぐるみのため、なかなか迫力がある。
「気にいった? あ、そういえばその制服……あたしの学校と一緒?」
「え? あ。本当だ」
その女子が身に付けていた制服は浩介が通っている学校の制服だった。
「奇遇だね。名前は? あたしは八神琴子。三年」
「……林浩介、二年です」
「そっか。じゃあね」
そう言って手を振り、そっけなく帰っていった。
あの人なんだったんだ……
背中が見えなくなるまで八神先輩を見つめた。
【とても面白いです!八神 琴子ちゃん、初対面の人に声かけたりとか、でしょ、ほいウサちゃんだよ、っていうところが可愛かったです!これからも頑張ってくださいね、じゃじゃんさん!】
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