不思議なことに。
この世には世界が゛2つ゛、在るらしい――……
✽。*
>>02登場人物
しばらく歩くと、学校らしき建物に着いた。
俺の普段通っている学校と同じような感じだ。
学ランのバッジを見る限り、翔也と同じクラスらしい。
彼に着いていけば大丈夫だろう。
「おはよー」
「……おはよう」
翔也に続いて俺も小声で軽く挨拶する。
「あ、翔也君!夢斗君、おはよう!」
翔也の時と同じく、顔も名前も覚えがない女子が挨拶を返してきた。
なんで俺は彼女の名前を知らなくて、彼女は俺の名前を知っているのだろう。
夢だからだろうか。
幸いにも教室に座席表が貼ってあったから、一関と印字された場所に座ることができた。
「どうしたの、夢斗君。普段と様子が違うけれど……というか、一週間も休んでたよね」
隣席で話しかけてきた女子は……双美亜女だ。
現実にもいる、唯一見覚えある人。
にしても、夢に出てくるほど彼女と俺は親密な関係だったろうか?
「……別に。変わんねーよ」
「ふーん。ま、いいけど」
やけに目ざといな……
多分、俺が違う俺だってことに、少し感づいているかもしれねぇ。
まぁ俺の夢だし、バレたところでどうってことないがな。
「じゃあ今日はー、予告通り理科の小テストだ」
授業が始まり、小テストの解答用紙が配られる。
教科書が鞄に入っていたので授業前にザッと見たが、現実でやっている内容で特に心配することもなさそうだ。
問題は10問、一問10点か。
気圧の問題、楽勝だな。
にしても、この夢一体いつまで続くんだろうか……
「テスト終了。後ろから回収しろ」
テストの解答用紙が前に回されていく。
確かこの夢の中では、俺はバカってことになってるんだったな。
「いーちのせきぃ〜、お前また珍回答書いたか?」
「だってお前、この前の社会のテストでペリーのこと豊臣秀吉って書いてたもんなぁ〜」
「今回も期待してるぜ、珍回答」
「あはははははっ!」
クラスの全員がこっちを見て大笑いしている。
完全に舐められているんだ、一関夢斗は大バカだってな。
けれど証明してやるよ。
本当の一関夢斗はバカじゃない……ってな。
――キンコーン……
終業のチャイムが鳴ると、先生が今日やった小テストの束を持って「返却するぞ」と言った。
「今回はデキが悪いぞー!平均点52点!このクラスが最後だが、学年で満点はこのクラスで一人だけだ」
「うっわー、満点って誰だろ」
「俺やべぇよ、赤点だわ〜!つーかhPaって何?」
「ま、最下位になることはないだろ。一関がいるんだし」
次々と名前が呼ばれ、悲鳴や歓喜の声があがる。
「一関夢斗…………満点、だ。よくやったな」
先生が優しい顔で、俺に解答用紙を手渡した。
悲鳴や歓喜の声が、水を打ったように静まり返り、視線が一気に俺に集中する。
ほら見たかよ、一関夢斗はバカじゃない。
花丸のついた解答用紙を受け取る。
「上出来」
俺は口角を釣り上げ、二ヤッと不敵な笑みを浮かべた。