新版です。
前回受けたご指摘等を元に、再び一からスタートしたいと思い、更なる加筆修正版として連載をさせていただきます。
前スレは今後も番外編用や感想·意見用として残しますので感想等はそちらにどうぞ。
...今度こそ万人受けする書き方をせねば...
【episode1 1-2 -Internal Sarver Error- 暮らしの価値観】
◆
朝飯も食べ終え、早速部活へ行く準備を始める。...行きたくねぇなぁ。
必要最低限の持ち物(タブPC、有線LANケーブルの予備、諸々の追加プログラムを仕込んである外付けユニット三台、総重量約17kg)をバッグに詰め、外を出ようとした。
...が、何故か文香がついてこようとしている。
「...え、待って、何でお前がついてきてんの?」
「え〜、たまには遊びに行くくらいいいじゃん? 私お兄ちゃんがどんな事やってるかとか見たこと無いしさ!」
そう嬉々として語る妹であるが...俺、別に学校でもこことやってる事変わんねぇんだよな...。
「...まぁ迷惑掛けねぇようにな...」
「やた〜!」
一度決断すると梃子でも動かんこいつの事だ、断った所でどうせついてくる。なのでやむなく同伴を許可した。...甘過ぎるなぁとも思わんでもないが、実際断っても無駄なので致し方ないと思う。
通勤ラッシュの時間もまぁまぁ過ぎた今の時刻は9:30過ぎ。閑散とした住宅街に、蝉や鳥の鳴き声が響く。蝉は嫌いだな...鳴き声聞いてるだけで暑苦しくなってくる...特にひぐらしなんかは鳴いたら嫌な事件が起こりそうで本当に嫌いだ。
かといって少しでも涼しい気分になろうと虚空を見上げて風を感じようとすると今度は天空から円形の物体が☆富竹フラッシュ☆をかましてくるので逃げ場が無い。
一刻も早く部室に入らないと死ぬ...。だから夏は嫌いなんだぁ...。
...因みに。
「う...うぅ...どうしよ...あんな事言うんじゃなかったぁ...うぐぅ......」
...今例のブラコンさんは俺の後ろをついてきているわけなのだが...俺が後ろを向くと、案の定項垂れていた。何か心なしか涙浮かべてるようにさえ見えるんだが。そんなにか。
「ったく...ほれ、小銭あるから自販機で何か買ってこい」
「あ、ありがとお兄ちゃん...」
まぁ兎に角、こいつは物凄い暑がりだったりする。人間が生活する適正温度と言われている25°cを一度でも越えるともうアウト。なのである意味適正温度越えているかどうかの指針にもなるっちゃなるが、いくらなんでも俺はそこまで非道じゃない。こいつがヤバくなり始めたら温度下げよう、って程度。
...あれ?それじゃあ結局指針になってね? まぁいいか。
と、無駄すぎる思考に頭の回転をフル活用していたら、気が付くと学校が目前に迫っていた。
ここまでくればもう知らん。今暑くなろうが部室に入ればこっちのもんだ。
「...よし、ちょい早歩きすっからついてこいよ〜」
「え、うぇっ!?」
まず涼もう、とにかく涼もう。そう考えて足早に部室へ向かった俺であったが...
...あれ、何か忘れてるような。
【episode1 2-1 -403 ForBidden- 証明の価値観】
「よっしゃ着いた...はー涼しい...」
「うっ...く...はぁ...はぁ...ううぅ...」
足早のはずが気が付けば全力疾走へとクラスチェンジし、思い切り昇降口の引き戸を開けて本日のお勤め開始。文香も若干遅れて昇降口に入る。
...と同時に吹き荒れる冷房の風と突然吹き出す汗。昇降口限定とは言え廊下にも冷房が入っている辺り流石比較的新しい校舎だ。
それにしても登校しただけでここまで汗だくになるとは相変わらず夏はとんでもない。やっぱり夏は嫌いだ。誰がなんと言おうと嫌いだ。海に行くにもこの内陸じゃあ面倒だしプール行くにしてもそんな仲の友達居ないし。まず外に出たくないもんだ。それでも何だかんだで毎日外出しては居るんだけどなぁ...。
と勝手に思考して勝手に憂鬱な気分になりながら廊下を歩いていく。
そしていつもの部室の前に立ち、ドアノブを捻ろうとして手を止める。
...何か音がする。
中から音が聞こえている。
いや、あの時確かにああ言われたけどまさかなぁって一生懸命に振り払おうとしてたんだけどその矢先に「本当でしたー!!」って言われても困るんだけど。
「...? お兄ちゃ〜ん、入らないの? 開けるよ?」
「え、あ、ちょ、おま」
静かにパニック状態になる兄の事情など露知らず、文香は俺の目の前で堂々と部室の扉を開けてしまった。
そして目に入ったのは_____
「本当に来やがったこいつ...」
膝に来た。力が抜け、空気に膝カックンでもされたのかと疑いそうになる程華麗に、されど儚く、俺は地面(ウレタン樹脂製)に崩れ落ちた。
目の前に、つい昨日あったばかりの奴が居る。しかも何故かくつろいでる。
「あら、約21時間ぶりね。案外遅くて来ないのかと思ったわよ、もう...」
「...そもそも来いと言った覚え無いんだけどな」
俺の人生の歯車、昨日を境に狂いに狂ってませんか、神様。
【Episode l 2-2 -403ForBidden-証明の価値観】
...数分が経ち。
相も変わらず少しばかり蒸し暑い部室の椅子に、向かい合って俺と秋宮は座っていた。
文香は扇風機の前に座ってぐったりとしている。大丈夫かこいつ...。
「さて、話を聞こうか君」
「いきなり何を改まってるのよ」
的確なツッコミを入れられてしまった。
仕方ないだろ! お前のせいで俺の夏休みがよくわからんことになってんだよ!!
「...まぁいいわ、別に今日は入部しに来たとかそういうんじゃないし」
「え? あれ? そうなの?」
なんと言うか肩透かしを喰らった気分になったがそもそも俺が早計だった気もしないでもないので黙っておく。
とは言え、なら何故来る必要があるのか。まだ何かしらで戦うつもりだとでもいうのか。
そんなことを考えていると、秋宮はおもむろに鞄からスマホを取り出した。
「今日はこの件で、ちょっと助けがほしくてね」
そう言って机の上に出されたその画面には...LINEの画面が写っていた。
「...これがどうかしたか...ん?」
言いかけたところでその画面の異様さに気付き、言葉を止めた。
そこは...一昔前であれば、『学校裏サイト』とでも言われていたかのような、要は随分と黒々しいものだった。
「...もう気づいたみたいね。そう、これは所謂裏サイト。愚痴とかが行き交うようなグループ」
「それを何で俺に見せる?」
「...これ」
と、画面をスライドさせていく秋宮。
そこには―――――――「美乃」という人物への、熱烈な批判が飛び交っていた。
【Episode l 2-3 -403ForBidden-証明の価値観】
「何だ...これ...こんなもんこの学校にあんのかよ...黒っ」
「やっぱそう思うわよね...」
しかもその内容の酷いこと酷いこと。
「キモい」「うざい」なんてテンプレート発言は勿論のこと、「今日机荒らしてやったwww」とか「いっそ明日捻っちゃおうよwww」なんて具体的な事まで書かれてる。
俺はその美乃という人物は知らないんだが、ここまで言われてると流石に同情する。
いや、そりゃ相手の方も見ず知らずの奴に同情されたくなんかないだろうけど。
「それでお前は俺にこれを見せてどうしたいん...いや、大体分かった。つまり―――」
「そこに書かれてる『明日捻る』ってのが今日なのよ。」
「で、それを止めてほしい、と」
「そう言うことよ」と、重々しい面持ち(言ってて噛みそう)で頷く。
まぁ、目的は分かった。
が、だ。
何故それを俺に頼みに来るのかってのと、何故秋宮がそれを止めようとするのかってことだ。
いや、前者は俺が「そういう系」に強そうだからなんだろうが、後者が分からん。
「...何故お前がその事を気にするんだ?」
そう率直に聞くと、秋宮は明らかに呆れて言った。
「...それ、私達のクラスの事なんだけど」
「え°」
拍子抜けし過ぎて本来付かないはずの半濁音が付いてしまった。俺もどう発音したのか分からん。
え、てか何、俺の秋宮同じクラスだったの? 知らなかったわやべぇわ。
「考えてもみなさいよ、私達のクラスでこんなことになってるのはっきり言って雰囲気的に最悪じゃない。何とかしたいって思うのが人として普通でしょ?」
「...その言い方だと少なくともお前は参加してな...ハブられてるんだな」
「ちょっと、何で言い直したのよハブられてなんかないわよ」
はいはい...取り合えず確信した。
俺の人生に神なんていねぇ、と。