夢の中のキミと

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1:みぃ◆8Q:2017/08/14(月) 15:44

初めまして!
みぃです。
デビュー作は『ここは明確スイーツ研究部!』(小説板でただいま10巻)

●メッセージ●

今回は『夢の中のキミと』です。
第2回目の恋愛小説に挑戦!
優しくて前向きなすぐ行動する琴ちゃんを見守ってください。

●他作●

『ここは明確スイーツ研究部!』
(小説板・創作板連載中)
『1%の叶わない恋』
(小説板連載中)
『*レインボーハッピー*』
(小説板連載中)
『マオの内緒アート日記』
(小説板連載中)
『類木川小学校児童会』
(創作板・短編小説板連載中)

2:みぃ◆8Q:2017/08/14(月) 16:12

人物紹介

鬼頭 琴
優しく、妹&弟想いの中学1年生。
5人兄弟の1番上。生まれつき体が弱く、倒れることも…。

灰塚 将太
琴のことを笑わせてくれて、助けてくれる。いつも笑顔な秀才。

紫村 陽太
学年1イケメンで、強引なところも。
琴のことが好き。

3:しほ:2017/08/14(月) 16:51

入ってもいいですか?
自己紹介だけで気に入っちゃいました

4:みぃ◆8Q:2017/08/14(月) 17:02

あらすじ

体が弱くて、5人兄弟の長女の中学1年生の琴は、妹や弟、お母さんとお父さんに心配をかけないようにとひとつの目標を立てる。
その目標に向かって走るけど、学年1イケメンの陽太に出会う。
自分の目標を第一に考えている琴が好きになった陽太はちょっとでも一緒にいたい。
だけど、家族・体・目標を考えている琴には上手く届かなくて…。

5:みぃ◆8Q:2017/08/14(月) 17:03

あ、どうぞどうぞ!
ありがとうございます!

6:みぃ◆8Q:2017/08/14(月) 17:29

1.初めてだらけ

桜がチラチラ散り始める頃。
新しい新品の制服を着た、同じ1年生の中。
お母さんとお父さんと並んで歩く。
すると、小学校の頃同じ学校だった子が受け付けをしていた。
わぁー、大人っぽい。
私も、あんな風になれるのかな。

「じゃあ、お母さん、お父さん、行ってくるね!」

私は、制服をなびかせ、スクールバッグを片手に受け付けに走った。

「名前教えてください」

3年生に言われて、ドキンとする。
大人っぽくて、憧れる制服を着こなす先輩たち。

「鬼頭琴です」

先輩がチェックを入れて、教室まで案内してくれる。
ドキドキ。
私の名前は鬼頭琴。
鬼の頭って書くけど、みんな全然恐くないって言うよ。
優しくていい子って言ってくれる。
人見知りがちょっとあって、困ってるんだけどね。

「ここです」

着いたところは、1年3組。
よーし、頑張るぞっ!
私の席に座ると、後ろの子が肩を叩いてきた。
この子は、小学校から同じの、香織ちゃん。

「みんな静かだね」

うん。
私、あんまりこういう空気苦手だから大変かも。
ちょっと静かすぎると、緊張しちゃうっていうか。

「みんな緊張しちゃってるのかな」

香織ちゃんとうなずきあっていると、斜め前の席の男の子がおしゃべりしてる。
ずいぶんにぎやかなクラスになる、予感がするのは…私だけっ?
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
『夢の中のキミとvol.1』

7:薫◆uI:2017/08/14(月) 17:31

みぃの新作?楽しみ!

いろいろ掛け持ちできてすごい!

わたしは1つをちゃんと完結させたい人だから………尊敬‼

8:みぃ◆8Q:2017/08/14(月) 17:50

ありがとう!
掛け持ちし過ぎてる気も…。
とりあえず、新しく新作を書くのはストップする予定だけど、ある漫画をちょっと参考にさせていただきます。
尊敬だなんて、ありがとう!

9:薫◆uI:2017/08/14(月) 17:53

>>8

うん。わたしも数日前にたてた新しい小説スレに新作かいたよ〜(宣伝)

頑張ってね!

10:みぃ◆8Q:2017/08/14(月) 17:56

ありがとう!
小説板に建てたの?
何て言うスレ?

11:薫◆uI:2017/08/14(月) 17:59

>>10

小説板だよ〜見たら分かると思う。

わじ小ラジオ部ON AIR!っていうの。

良ければ読んでね‼(下手だけど)

12:匿名:2017/08/14(月) 18:20

お前すげえよ
だから
読者を癒すように、楽苦しく執筆してください

13:みぃ◆8Q:2017/08/14(月) 18:49

2.先生は味方

入学式。
右となりは知らない子、左となりは香織ちゃん。
校長先生の話が終わり、いよいよ先生発表だった。

「1年1組…1年2組…1年3組、花村けいこ先生。1年4組…」

花村けいこ先生、かぁ。
全然知らないなぁ。
見たことも、聞いたこともない。
でも、優しそうな名前。
ここの学校、珠朱藻中学校は、資金がいっぱいで私立並みに規模がある。
道に迷っちゃいそうだよね〜。
そんなことを考えていると、あっという間に入学式が終わった。
教室に帰ると、花村先生が笑った。

「面白そうな子たちね〜」

あ、やっぱり思うよね?
私だけじゃないんだ。
今からは、ちょっと休憩と言うか、みんなとおしゃべりする時間。
みんなと慣れるためにね。

「ねえねえ、香織ちゃん!」

みんなが香織ちゃんのところに集まると、私の後ろがわっと盛り上がる。
特別、私と香織ちゃんが仲良しなわけじゃないから、香織ちゃんが仲良しの子と話していて。
私なんかは、存在感ない感じ。
あわてて席を立つと、花村先生に呼ばれた。

「みんなの中に入らないの?」

「あぁ、入ってみたい気もします、けど。大人数が苦手なので」

あ、入学早々目は着けないでください、お願いします〜!
すると、花村先生の表情が曇った。

「体が弱いのよね。辛くなったら、いつでも言ってください。鬼頭さんも元気でいてほしいから」

わ、私の名前覚えたんだ。
ペコリと花村先生にお辞儀して、席に着く。
お願いします、誰か話しかけて!

「あ、琴ちゃん!」

香織ちゃんが話しかけてくれて、みんながこっちを向く。
花村先生を見ると、強い眼差しでこっちを見ていた。

「は、はーい」

「琴ちゃんも一緒にしゃべろ!」

香織ちゃんが誘ってくれて、クラスのみんなの輪に入る。
キラキラしたカワイイ子ばかりだぁ。

14:みぃ◆8Q:2017/08/14(月) 18:51

>>11
分かったよ!
コメントしてあるからね。
でも、教えてくれてありがとう!

>>12
ありがとうございます!
これからも頑張ります!
(薫ちゃんに言ってたらすみません!)

15:ルナ◆3es:2017/08/14(月) 18:57

新作おめでとう!

16:みぃ◆8Q:2017/08/14(月) 19:03

ルナ、ありがとう!!
めっちゃ嬉しい。
これからも良ければ見てください!

17:みぃ◆8Q:2017/08/15(火) 23:05

3.恐怖の名字通り

ちょうど私が入ったところのとなりにいた子の名札は…海村さん。
すごいカワイイ子だな。

「どうしたの?鬼頭さん。あれ?鬼頭さんだよね?」

「鬼頭琴です」

すると、男の子たちがチラチラこちらを見ていた。
何よ。
気づけば、私を見ているようにも感じる。

「海村さん、あれ」

私が男の子を指差して海村さんを見たけど、香織ちゃんとの話に夢中すぎて聞いてなかった。
存在感、ずっと薄かったもんな。
男の子たちはコソコソ話してるし。
私のこと話してるの?

「ねえ、香織ちゃん!」

海村さんが身を乗り出して香織ちゃんの机に前のめりになると同時に、私は押されて、他の子の机と私の頭が激突しちゃった!

「わぁー、ごめんねー。大丈夫ー?」

「いいよいいよ、気にしないで」

海村さんに笑いかけると、みんな「大したことないんだ」とか、「なーんだ。心配して損した」なんてつぶやかれた。
本当は、気にしないでってほど痛くなくないのに。
すごく痛い。
だって、私の体は弱くて、すぐ倒れちゃうんだもん。
ちょっと打っただけでも、治るのが遅いし。
こんなに打ったけど、どうなるんだろ。まだ座り込んでいると、海村さんがしゃがみこんだ。

「あんた、何してんの?私が悪いってみんなに見せつけたいの?弱い子だねえ、鬼頭さんって。名字の通り、怖い怖い子だよ」

海村さんが立ち上がるとき、クスッっと笑った気がして、恐ろしい気持ちでいっぱいだった。

「ちょっ、鬼頭さん?」

花村先生の声が聞こえたかと思うと、私はパタリと倒れてしまっていた。

18:みぃ◆8Q:2017/08/16(水) 17:07

4.初日から!?

ここは、花畑!
綺麗〜素敵。
お花をたくさん摘んで、輪にしてネックレスにして掛ける。

「琴ちゃん」

誰?
後ろを振り向くと、知らない男の子…じゃないじゃん!
あ、人違いだ。
となりでお花を摘んでいる女の子のところに男の子は行く。
男の子のことも人違いだったし、呼んだ人も人違いだったし。

「どうしたの?ヨウタくん」

女の子が男の子と話していて、私はとなりにいちゃいけない気がして立ち上がった。
なのに、頭がクラクラ。
私は、お花の上にパサッっと倒れた。


蛍光灯が…眩しい。
目を開けると、お母さんが手を握っていた。

「花村先生、琴が起きました」

花村先生は走ってきて、顔や手を触る。ここは…ベッドが4つ。
人形がちょっと置いてある。
そして、優しい雰囲気の先生とカウンター。
ということは…。

「鬼頭さん大丈夫?ここは保健室よ。先生は、関田先生」

白衣の、保健室の先生、関田先生は、アンケート用紙を持ってきた。

「初めまして、鬼頭さん。関田です」

関田先生はアンケート用紙の書き方を説明してくださって、渋々書いた。
お母さんは、ずっと花村先生と話していて、入学初日から保健室って…。

「鬼頭さん、いい?あなたが倒れてしまう原因はよく分からない。だけど、倒れてしまうことは確か。先生と、いろいろな約束をして、なるべく健康に生きること。いいわね?」

「はい」

私は、いきなり先生と約束をしてしまったのだった。

19:みぃ◆8Q:2017/08/16(水) 18:26

5.ビスケット事件発生

さっき見たのは、夢?
花畑の。
きっとそうだよね。
お母さんに聞いたら、「夢でしょ」って言われたもん。
それより…。
どうしてこんなに倒れる回数が増えてるんだろう。
小学校の頃は、月に一度くらいだったのに。
今では多くて1週間に一度くらい。
家族を困らせてばっかり。
小5の弟、葵。
小1の妹、莉乃。
年中の弟、隆翔。
2歳の妹、莉桜。
こんなに小さな子ばかりなのに。

「お姉ー、おやつ」

葵がビスケットをお盆に乗せて私の部屋に入ってきた。
小5の反抗期くらいの時期の割りにはケンカも少ないし、優しい。
よくおやつ持ってきてくれたりね。
だけど…ドジ!

「ありがとう。葵」

「って、あっ!」

バサバサバサー!
葵が、私の勉強机の脚に足を引っかけて、私にビスケットをかける。
上から葵が倒れてきて、体重が少なくて痩せてる私に、小5の体格の葵。
私はうめく。
ビスケットはボロボロ。

「お母さーん!」

葵が立ち上がってビスケットをはらい落としながらお母さんを呼ぶ。
私の部屋、ビスケットで汚い。

「琴!?大丈夫?葵、言ったでしょ?ちゃんと琴には気を付けてって」

葵がうつむいて肩がちょっと震えてるし。
きっと、私がどうなっちゃうのかって怖くてたまらないんだよね。

「お母さん、葵は悪くないよ。私のために来てくれたんだから」

葵は、私の方を見てにっこり笑った。

「琴は優しすぎるのよ」

「うんん。私がこんなだからいけないだよ。もう大丈夫だから、ね」

私は無理に笑って布団の中に顔をうずめた。

20:みぃ◆8Q:2017/08/16(水) 20:54

6.可愛い妹

トントントントン。
誰かが階段を上ってくるだけなのに。
お腹を叩かれているような感覚。
痛い、痛い…。

「琴お姉ちゃん大丈夫?」

「もうご飯の時間だよお」

莉乃と莉桜が体をちょっと揺すった。
い、痛いっ!
だけど、心配そうな顔で、さすっているように感じたので、痛いなんて言えなかった。

「大丈夫だよ。ごめんね。さあ、行こう」

莉乃と莉桜の背中を軽く押しながら一階へ向かう。
お腹をつつかれたような感覚。
莉乃と莉桜が揺すったところが妙にすごく痛かった。

「あ、琴!大丈夫だった?」

「うん。全然大丈夫。気にしないで」

とは、言ったものの。
私、ご飯食べられなさそう。
箸を握った瞬間、お腹に激痛がほとばしる。

「キャアッ!」

私は箸を飛ばしてお腹を抱え込んだ。

「琴っ?」

「琴…!」

「お姉!?」

「琴ねー?」

「琴お姉ちゃん!?」

「琴お姉ちゃん…!」

私はこういう感覚を感じた場合、どうなっちゃうの…?

21:みぃ◆8Q:2017/08/16(水) 21:19

7.小さいメイドさんたち

私が目を開けた世界は、怖い。
暗くて、霧がかかっていて。
私にとって善はあまり思い浮かばないかもしれない。
だって…体のどこかが痛くて、常に辛いことが多いんだから。
体のことだけじゃない。
私の家はちょっと貧しい。
家族が多いし、みんなまだちょっとは手がかかる子ばかり。
ちょっとは、私も我慢してるけど。
我慢しても、一番私が手がかかるんだよね。
ごめんね、私がいて。


気配がする。
私が寝ているベッドのとなりにある、いつもはお母さんが治療とかで座っている椅子に…誰かが。

「ハッ!」

「鬼頭さんっ。起きたばかりなんだから落ち着いて」

は、花村先生か。
って、どうして私の家に!?
階段を上ってくる音がして、ドアの方を見ると、莉乃と莉桜が来た。

「花村センセー、お茶いかがですか」

「あら、ありがとうございます。じゃあ、いただこうかしら」

莉乃と莉桜が行ってからは、花村先生はすごく笑っていた。
私も笑っていたかったけど、それで緩んだら痛くなる気がして笑わなかったの。

「鬼頭さん大丈夫?すごい汗かいてるけど」

「大丈夫です」

汗を拭くと、汗が次々に出てくる。
ベッドの後ろのハンカチで拭きながらチラリと時計を見る。
日付と時間が書いてある時計。
え…?
この時計壊れたかな…?

「花村先生、入学式っていつでしたっけ?」

「一昨日よ。鬼頭さん、入学式の夜からずっと寝てたって聞いて、日曜日だけど訪問させていただいたの」

お、一昨日って…2日間寝てたの!?
また階段を上る音がして、莉乃と莉桜が来た。

「どうぞ」

「あらまあ、ありがとう。小さいメイドさんたちね」

小さいメイドさんたち…。

「あ、鬼頭さん、明日と明後日は、とりあえず学校を休むこと」

ええ!
みんなと話したかった。
花村先生は席を立って部屋を出ていってしまった。

22:みぃ◆8Q:2017/08/17(木) 16:46

8.怖くないこと

3日後。
私はようやく学校に向かった。
ひとりで。
制服のスカートをなびかせながら、スクールバッグを握り締める。
さぁ〜、友達たっくさん作るぞぉ!

「あ、鬼頭さん!」

花村先生が職員室の前から手を振っている。
め、目立ってる〜。
私が目立つことしないでくださいよ〜!

「体調は悪くない?痛いところはあるの?眠たくない?」

「はい!めちゃめちゃ元気です!」

花村先生に笑いかけたら、ホッっとしたかのようにため息をついた。
花村先生が職員室に戻り、ひとりポツンと取り残されると…。

「琴ちゃーん」

校門の方から、香織ちゃんを先頭にいろんな子が走ってきた。
クラスの子かも。
その中には、香織ちゃんとずっと小学校の頃遊んでた子もいた。

「ど、どうしたの?」

知らない子ばかりで後ずさりすると、グッっと香織ちゃんが前に歩み出た。

「どうしたのって、声かけてあげたんだよ。だって、ひとりぼっちだったじゃんか」

ひとりぼっち。
私、この言葉は怖くない。
目の前で、香織ちゃんたちは笑ってるけど、こんなの何にも怖くない。
慣れてるから。
どれもこれも、だいたい慣れてる。
心配されたって、ただ思い出させてるようにしか感じない…。
私の…イヤな気持ちを。

「何、琴ちゃん」

怒ったように香織ちゃんが詰め寄る。
私、これは怖いんだ〜。
どんどん私の立ち位置が狭くなっていって、いつしか周りは敵だらけ!

「そーいえば、私ちょっと早く行っていろいろしなきゃー。じゃーねー」

私は、ちょっと琴ちゃんを押して昇降口まで走った。
もーう。
中学生になってから、香織ちゃんキャラ変わった気がする。
何と言うか、常に中心って感じ。
人って、そんなにすぐ変われるの…?
なら、私も…!
私は、教室に大きく踏み込んだ。

23:くねくね:2017/08/17(木) 19:09

クエックエックエックエックエックエックエックエックエックエックエックエックエックエックエックエックエックエックエックエックエックエックエックエックエックエックエックエックエックエックエックエックエックエックエックエックエックエックエックエックエックエックエッ

24:くねくね:2017/08/17(木) 19:09

クエックエックエックエックエックエックエックエックエックエックエックエックエックエックエックエックエックエックエックエックエックエックエックエックエックエックエックエックエックエックエックエッ

25:みぃ◆8Q:2017/08/17(木) 19:11

荒らしはお断りします。
お帰りください。

26:みぃ◆8Q:2017/08/28(月) 10:54

9.みんなの気持ち

男の子はみんなでワイワイ。
女の子はグループに別れておしゃべりしたり、スマホ見たり、雑誌見たり。
完全に置いてかれてる…!

「あ、あのっ!おはよっ!」

いち早くグループに入るため、近くの女の子に声をかけるけど…。
ひとりの女の子はあいさつしてくれたんだけど、もうひとりの女の子は逃げていった。
どうして?

「鬼頭さんだよね。鬼頭さんって、初日から海村ちゃんに怒られたの?」

「え…?」

海村さんを、私は怒らせたの?
その女の子は、胸の辺りに付いているの名札を見せてくれた。
…富山、さん。

「鬼頭さん、怖いって有名になっちゃってる。私は富山ね」

富山さんは、ちょうど入ってきた香織ちゃんを指差した。
香織ちゃんが流したの?

「香織さんと海村ちゃんが組んでると思うの。多分だけどね」

海村さんは分かるけど、香織ちゃんまでそんなこと言ってるの!?
なんか、寂しい。
保育園の頃から一応一緒なのにぃ。

「あ、さっき逃げちゃった子は、鬼頭さんのこと嫌いなんじゃないよ。分かってあげて」

「じゃあ何?何で逃げたの?」

富山さんは、グッっと口を詰まらせ、私に優しい目を向けた。

「あの子、海村ちゃんが天敵で、鬼頭さんがいろいろ海村ちゃんとあったから、関わると…」

「危ないってこと?」

私といたら危ないから関わりたくないってことなの?

「ちょっと、行くね」

あっ。
富山さんにまで嫌われたら、どうやって生きてくのーーー?

27:みぃ◆8Q:2017/09/02(土) 19:44

10.敵ばかりの空間

四時間目も終わり、お弁当タイム。
私は、お弁当持ってきてないから学食で食べるか、売店で買うんだ。
でも…私は場所を知らない!
誰かに聞かなきゃ!

「あの、富山さん」

笑いかけながら言ったけど、ニ、ゲ、ラ、レ、タ…。
ウッソー!
嫌われちゃったってことっ!?
思わず冷や汗が流れる。
私の青春時代がぁっ!

「何してるの、鬼さん」

「私は鬼なんかじゃないよ。私は琴。名前で呼んでよね」

キッっと見据えた先は、海村さん。
もちろんのごとく、カワイイ海村さんの取り巻きまでにらんできて。
やっぱり一番最強なのは海村さん。

「鬼さんとしか呼びたくな〜い」

取り巻きの子たちはクスクス笑って、クラス2大女の子グループのもう片方も来た。

「何してるのぉ?鬼琴ちゃん」

「鬼琴じゃない。鬼頭琴!」

思いっきりにらんだ先は、香織ちゃんたち一同。
香織ちゃんと海村さんは、見事に分裂したらしい。
どちらにも所属していないのは、富山さんペアと、本が好きそうな、読書してる子、5人グループだけ。

「鬼さんはかわいそうよねぇ。友達がいなくてひとりぼっちで」

海村さんが言ったのに、香織ちゃんたちもクスクス笑う。
ここにいても仕方ないや。
教室を出ようとした途端に、ひとりの笑い声が届いた。

「あれぇ?もしかして本野も聞いてたわけ?」

海村さんが、読書してる女の子に向かって言った。
本野さんかあ。
名前通り、本に関係してること好きそうだな。

「面白いな、本野!」

本野さんの肩は震えていて、怖くて震えていると言うよりは、面白くて震えているイメージ。
どうして面白いの…。
私の肩も、フルフルと震える。

「ちょっと!いい加減にしなよ。鬼頭さんは鬼じゃないから。海村さんも、もっといい行い出来ないの?」

5人グループのひとりが声を上げる。
後ろの4人は縮こまってるけど、その子だけ堂々としていた。

「鬼頭さん、行こっ!」

その子は、4人と私を引き連れてトイレへ行った。

28:みぃ◆8Q:2017/09/02(土) 20:22

11.噂は広がる

何か、『友達』って感じ。
私はあんまりいなかったから、イメージでしかないんだよね。

「鬼頭さん、私は海籐柚奈子。海村さんの敵。鬼頭さん、私たちと遊ぼ?」

海籐さんたちは、にっこり笑いかけてくれた。
ほぼ。
私に初めの友達。
であり、最後の友達になるかも。

「ありがとう!琴って呼んでいいよ!私は何て呼べばいい?」

海籐さんたちとワイワイトイレで話していると、先輩たちが入ってきた。
ちょっと緊張かも。
面と向かって会うのは初めてだし。

「1年の鬼頭って子荒れてるらしいから注意だね」

「琴って名前だってよ。家もビンボーで、汚いし怖いって海村ちゃん言ってたよ」

海村さん、先輩たちにもチクったの!?
ちょっと前のめりになった海籐さんを止めて、続きを聞く。

「私らは、まあ金持ちじゃん。ここの学校来ないでほしいよな」

「マジそれな。ここは、公立の中でも金かかるとこ。お前が通うとこじゃねえって言いに行こ」

私追い出される!
ってここ、お金かかるの!?
お母さんは、比較的安いって…!
もしかして言い訳!?
お母さんが安心させようとして?
それとも、先輩たちのウソ?
どっちにしろ、嬉しいことはない。

「先輩、鬼頭さんは、優しくていい子です。ビンボーなんて関係ないです」

海籐さんっ!
でも、標的は海籐さん。
先輩たちは、海籐さんに愚痴を言ったり、叩いたり。

「先輩っっっ!私が鬼頭琴です。海籐さんは関係ありません!」

私は、何とか海籐さんを後ろに回し、前に出た。
ちょっと何かされたとしても、私には味方がいるから大丈夫。

「聞いてたってことね。じゃあ話は早い。ここから出てけ。お前はいてほしくない」

「マジだよ。学校全体の敵」

「私には味方がっ、」

「いねぇだろ」

先輩たちは、ほっぺたを叩き、トイレに転がすように倒させ、あげくの果てには意識がもうろうと…。
私の命の灯火が、またひとつケムリを上げた。

29:みぃ◆8Q:2017/09/02(土) 20:52

12.私の決断

最近は、ずっとこんな夢ばっかり。
男の子が、いつも呼ぶの。

「琴ちゃん」

私は毎回振り返るけど、呼んでるのはとなりで花の冠作ってる子。
花畑でね。

「どうしたの、ヨウタくん」

ヨウタくんって名前なんだ〜。
ってところまでは分かるの。
でも、ね…。


ちょっと白い。
ゆっくり目を開けると、蛍光灯が光っていた。

「あら、鬼頭さん。大丈夫ですか?」

花村先生!
時計を見ると、朝の6時。
微妙に察したところは、ずっと花村先生は付きっきりでいてくれたということ。
目の下にクマが出来ていた。

「おはようございます。…あの、すみません」

花村先生は、私の手をギュッっと握っていて、微笑みかけた。
あたかも、「良かった…」って言ってるみたい。

「6時ですよね…」

「ええ。鬼頭さん、12時からずっと寝てたから」

18時間も寝てたの!?
私、そんなに寝た記憶ない。
花村先生は、売店で人気って言われてるらしいあげパンをくれた。
もっちもちで、ふわふわでもあり、砂糖がよく絡んでおり、温かい。
甘くて美味しい。

「今日は、ずっと保健室で寝てなさいね」

「いいえ。私はこの学校を卒業することにしました。退学でもいいです」

私は、ベッドのすみにまとめてあった荷物を手に保健室を出た。
このまま家も出たとする。
こんなままじゃ、命の灯火は真っ暗になってもおかしくない。
家へ帰ろう。
私は、しっかり寝て、普通の子になったら、受験しよう。
途中受験。
そうでもして、私の実力見せつけてやるんだから!

30:岬◆8Q:2017/09/17(日) 17:51

13.私の運命?

花村先生が、私の手を掴んだ。
拍子に、荷物がババッっと落ちる。

「体調のせい?先生ね、鬼頭さんも仲間と一緒に頑張ってほしいの。簡単に退学は出来ません」

琴ちゃん…琴ちゃん。
ヨウタくんって子の声がする。
どうしても、その子に会いたいな。

「鬼頭さん、どうして退学したいの」

花村先生に見つめられて、ドクンと脈打つ。
本当のことは言いたくない。
認めたくないもん。
私が迷惑な人なんだって。
居場所を、消そうとしている人が周りにいっぱいいるって。
だから。

「体が弱いのは仕方ないから、出来ることいっぱいやってみたいから」

「なら、ここの学校で、仲間と出来ますよ。わざわざ退学しなくても」

必死さが伝わる。
認めてくれてる人、花村先生しかいないかもだよ。
先生は、生徒の味方だもんね。
敵になったら捕まるから。
もし、捕まらなかったとしたら。
先生はどうしてるの…?

「とりあえず、寝てください。ゆっくりしてから話しましょう」

電機を消して、私はまた、深い眠りに落ちた。


花畑。
となりにも私に似た女の子。
花の冠を作っているの。

「琴ちゃん、琴ちゃん」

私は後ろを振り向いた。
男の子は、こちらに歩いてくる。
ゆっくりととなりに座って、手を握った。

「ちょっと、俺の話を聞いて」

私はコクンとうなずいた。
ヨウタくんだ、この子。
見覚えがあって、すぐ分かった。

「琴ちゃんはね、すごく悲しい運命を辿ることとなる。そんな中で、キミは恋するんだ。でも忘れないでほしい。キミの恋は絶対消えるから。まるで、ケムリのように。キミは炎だよ」

えっ?
ヨウタくんは立ち上がって、となりの女の子のところに座った。
これは私の物語?
だとしたら、私は恋するの?
いや、ウソだよ…。


「はっ」

「鬼頭さん!?」

外は眩しい太陽。
登校している子の声も聞こえる。
私、一夜過ごしたんだ。
花村先生の目の下はクマが!

「すみません、先生!」

「いいのよ。それより、今はどう?」

花村先生がおでこに手を当てる。
ちょっとホッっとしたような顔を見せて、ご飯を差し出した。

「鬼頭さんのお母さんが持ってきてくれたパン。妹さんが、高熱でお迎えに来れなかったそうよ」

高熱っ!?
莉乃かな、莉桜かなっ?
私なんかほっといて、治してっ!

「ごめんなさいってすごく謝ってたわ。伝えてくださいって」

「いいんです」

私は、平静さを装って笑った。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
名前変えました。


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