Re: -Under The Sea-
____母なる海と誰かが言ったけれど、あながち間違いでもなかったみたいだ。
宝石のような銀の泡と共に、僕の下らない呟きが上へと舞い上がる。あんなに綺麗な僕の吐息と、あのつまらない言の葉が、同じ僕の口から生まれたなどとは信じがたい。僕は、それらが黒の彼方へと消えていくのを確かめ、ゆっくりと目を閉じた。
____嗚呼、どうせ暗闇だもの。何も変わらない。そうだろう?
返答は無い。そんな事分かりきっていた筈なのに、何故かきゅうっと胸が締め付けられた。分かってた筈なのに。
僕はゆっくり微笑むと、ぎゅっと拳を握り締めた。何かが指の間をすり抜けていく。それは僕にとって喪失なのか。それとも、元々僕の手の中には無かったものなのか。
____でも、僕はずっと永遠に君を取り戻すことは出来ない。
____君はまだここにいるけど、もうここにはいない。
____折角、君に会いに来たのに。全部、聞こえてるんでしょ?
____意地が悪いなあ。
返答は無い。僕はため息をついた。きっとまた、さっきの銀色の宝石が僕の唇の端から旅立ったのだろう。悲哀と切なさを内包して。いつだってそうだ。いつも君は僕を振り回してばかりで、こんなところまで会いに来させる。君は、この海の、この闇の何に惹かれた? 僕にはさっぱりなんだ。君のことはいつも理解出来ない。
でも。
____僕を振り回してくれるのは、君だけなんだよね。
何処かで何かが揺らぎ、体が不意に暖かくなった。うっすらと目を開ける。ほんの少し驚愕が襲い、僕は瞬きをした。