早く忘れて、楽になりたい。
>>2
こんにちは!掛け持ちしまくってます薫です!
自分が葉っぱに来れるかさえ危ういのに、どうしても書きたくて……スレ立てちゃいました!
かなり色々放置してますので、どうにかします(笑)
今回はファンタジー。
パラレルワールド、魔法など出てきますので、苦手な方は注意してください。
荒らし、なりすまし厳禁ですよ!
コメントくれたらめちゃくちゃ喜びます。
では……start!
「おーい、みゆ〜!さ、か、え、み、ゆ〜‼」
バタバタと走る足音。
小学5年生となり、初めて出来た友達が、自分の名前を呼んでいる。
そんな風景を見るのも、今日で3日目。
みゆはパタンと本を閉じて、ため息をついた。
1人、『秘密基地』でのんびりできる時間は終わったらしい。
……分かりやすい、単純なあの子のことだ。
自分が1人で本を読むのが好きだなんて、分かるはずもない。
それに、秘密があるなんてことも。
(絶対の魔法、なんて……。あの子なら気付けるわけがない)
気付かれないから、大丈夫だよね。
自分に自分で言い聞かせたみゆは、トントンと階段を降りていった。
「ねえねぇ、みゆは好きな人いるのー?」
下校中、弾丸のように話しまくるりのの唐突な言葉に、みゆは少し顔を強張らせた。
しかし、それも一瞬。
「あたし?いるよ?」
あっさりと答えたみゆの眼には、『自信』の二文字が見てとれる。
(あたしには、絶対の魔法があるから……!)
りのなんかに知られたって、痛くも痒くもないんだから。
そんなことを思いながら、聞き返すみゆ。
「りのはいるの?誰?」
「わたしー?いるよ!星康人くん」
「マジッ!?」
余裕だと思って自分から訊いたは良いが、あわてるみゆ。
(嘘、同じじゃん…)
しかし、そう思ったのは、りのも同じらしい。
「え、えと…」
2人の間に気まずい沈黙が流れた。
しかし、みゆは余裕の表情に戻っている。
「かぶっちゃったね…ま、お互いに頑張ろ?」
そして、微塵も思っていないことを言う。
4年生の時に転校してきたりの。
この『かわせみ第一小学校』に1年生の時からいるみゆは、りのよりも、相手の星康人と親しい。
それに、自分には……!
みゆは、内心クスッと笑ってしまった。
その後は、全く別の話をして家へ帰った。
そして――みゆは、先ほどから頭にある『絶対の魔法』について考える。
絶対の魔法。
それがいつからなのか、どのようにして手に入ったのかは分からない。
しかし、気が付いたら使えるようになっていた。
最初は――保育園に入る前。
平仮名をうまく書けるようになりたいと思った。
その時に、初めてこの能力を知った。
『絶対、平仮名を上手く書けるようになる!』
心の中で強く唱えたら…そう、急に平仮名が上手く書けるようになっていた。急に。
その時は驚いたが、すぐにそれを理解する。
そして味わった、優越感。
あたしは、『絶対◯◯する』『絶対◯◯になる』と心の中で強く唱えたら、それを現実にすることが出来るんだ――。
それを知ったときに芽生えた、『あたしは他の人とは違う、特別なんだ』という思い。
言葉で表しようのない、どこか黒い喜び。
そして―その『絶対の魔法』に絶対の自信を持つみゆは、今もその能力を、毎日のように使っている。
しかし、その能力のことは誰にも言っていない。
自分だけの秘密だ。
1人で回想をしていると、我に返った。
明日の学校の用意でもしようかと、予定帳を取り出す。
明日は新学期が始まって、まだ5日目だというのに実力テストがある。
みゆは勉強があまり得意ではない。
しかし、学校では勉強ができるという位置付けだ。
――正しくは、テストで点数が取れるという位置付け。
そう、絶対の魔法を使えるのだから。
その時、りのとの会話を思い出したみゆは、ハッとした。
――りのと、好きな人が同じ。
純粋で可愛らしい容姿のりのには、絶対の魔法を使わないと勝てない。
みゆはそう判断して、先手を打つことにした。
「絶対、康人ともっと親しくなる……!」
胸の辺りで手をくんで、ギュッと目を閉じる。
(絶対、絶対、りのには負けない!あたしの方が、ずっとずっと前から、康人のことが好きだったんだから……!)
――どれほどの時間が経ったのだろうか。
「みゆ、ご飯よ」
と心配した母親が部屋をノックするまで、みゆはずっと、絶対の魔法を繰り返していた。
――その時はまだ、楽観視していた。
翌日、みゆは登校する。眠い目を擦りながら。
しかし、昨日のことを思い出すと、一気に目が覚めた。
(康人は、どこ……?)
絶対の魔法が効いているはずだから、話しかけてくれるよね。
みゆはその嬉しさに、口元を押さえた。
そう断言できるほどに、慣れているのだ。
絶 対 の 魔 法 を 使 う こ と に。
しかし、タイミングというものもある。
康人を見付けて、
「おはようっ!」
と反射的に挨拶をしたみゆの横から、
「康人くんおはよ〜っ!!」
聞きなれた声が。りのである。
(えっ、何でいるのよ!!)
驚いて、りのを見つめるみゆ。
するとりのは、勝ち誇ったように、静かに口角をあげた。
「みゆも、おはよう」
この微笑みを見ると、ああ、りのって美人なんだ……と改めて感じてしまう。
昨日よりも自信があるような、大人びた雰囲気。
(え、なんでよ……!!)
あの、子供っぽくはしゃいでいたりのとは大違い。
その微笑みに、みゆは違和感を覚えるのだった。
その後、普通に
「あ、おはよう」
と挨拶を返してもらえた二人だが、横入りされた気がしたみゆは、どこか落ち着かなかった。
(なに、りのったら急に……)
心の中で少し悪態を付くものの、りのには普通の顔で接する。
こんなこと、全然気にしてないんだから!
……そう、思い込んで。
りのも康人も悪くない。
それを知っているからこそ、無性にはらただしかった。
しかし、それも一瞬で解決する。
みゆは、新たに挨拶をする対象を見付けたのだ。
「るこるん!おはよ〜!!」
仲の良い友達の、瑠湖である。
今年はクラスが分かれてしまったが、去年は同じクラスだったので、大の仲良しだ。
「おおっ、みゆっちお久!」
愛らしいボブヘアーを揺らして、瑠湖が駆け寄ってくる。
自分のことを、みゆっち……というあだ名で呼ぶのは、瑠湖だけ。
それだけ親密な友達同士なのだと、りのに見せつけたい。
みゆは、なぜかりのを敵視してしまう自分自身に腹を立てつつ、謎の快感も覚えていた。
一時間目は、実力テストがある。
朝はなにかと慌ただしいので、その後はりのや瑠湖、康人と話すことはなかった。
朝の会で、軽くテストの注意点の説明を受けて、すぐに一時間となる。
まわってきたテスト用紙に『栄美憂』と記名しながら、みゆはいつも通りの行為を始めた……。
(絶対、この問題を正しく解く!)
心の中で強く唱えるうちに、頭に浮かんでくる、解法と答え。
左手で鉛筆を握りしめ、右手ではシャツの胸元をギュッと掴む。
そして。頭の中に、はっきりと、明確におりてきた答えを、解答用紙に書き込んでいった。
――最初は、『問題を解くヒントが欲しい』『解き方を簡単に教えて』といった、些細なものだった。
しかし、深みにはまっていくと中々抜け出せず。
必ず満点を取れるよう、答えを欲するようになった。
そして、今。
(りのには負けたくない。あたしのこと、康人に見てもらいたい……)
強く強く念じ、手に力を込めて。
――国語、算数、共に満点を取った。
「ねぇっ、みゆっち!」
肩を、軽くポンと叩かれて振り向くと、そこにいたのは……りの。
みゆは、りのに『みゆっち』と呼ばれたことに少々憤りを覚えつつ、
「なに?」
と応じた。
(なに、るこるんと同じように呼んじゃって……)
「もう、怖い顔しないでよ〜。そんなことよりさ、今日、一緒に帰ろ?」
「あ、ごめん無理」
思わず即答してしまった。
今日はなんとなく、りのと関わると良いことが起こりそうにない。
……それに、
「今日、るこるんと一緒に帰る約束しちゃったんだ」
そう、先約があるのだ。
それを何気なく伝えると、みゆはまたしても謎の快感を覚える。
あたしはりのとは違う、特別な能力を持つ者だ、という意識。
(るこるんと二人で帰るんだから!昨日一緒に帰ったし、良いでしょ!)
――瑠湖は、絶対の魔法のおかげで出来た、大切な友達。
『親友の二人』という関係を、壊したくないのだ。
しかし、りのはそんなことはお構い無し。
「へえ、るこるん?と一緒に帰るんだ。じゃ、わたしも一緒に三人で帰る!」
「え……」
(もう、なんでこうなるのよ!何、りのってばわがまま言っちゃって……)
みゆの心情を読んだかのような、りのの発言。
それにイライラとしつつ、みゆはハッと思い付いた。
――絶対の魔法を使えば、瑠湖と二人で帰ることができる。
りのに気取られないように、スカートの裾をギュッと握りしめて。
心の中で唱えようとした……その時。
「あっ、るこちゃーん!!」
りのが大声をあげた。
それを聞いて、無意識に手の力を弱めるみゆ。
瑠湖に絶対の魔法がバレたら……それを考えると、怖くなるのだ。
しかし、
「あっ、気のせいだったみたい!ごめんね、みゆ」
と悪びれなく言うりの。
その能天気な言葉に、みゆの中に怒りの感情が湧いてきた。
「りの、今のってわざと……」
ポロッと溢した、自分の声。
その意味を理解した瞬間、みゆはあることに気付き、サッと顔を青ざめさせた。
(りの、もしかして、絶対の魔法に気が付いて……)
嘘だ、嘘だと思いたい。
当然、りのが口に出した訳じゃないし、みゆの考えすぎかもしれない。
……でも。
(『完璧な栄美憂』じゃ無くなるかも……)
りのも瑠湖も康人も、そんな自分を好きでいてくれる訳がない。
――そんなの嫌だ。
率直にそう思ったみゆは、必死で頭を働かせながら瑠湖を待った。
「あっ、るこちゃーん!」
今度こそ、瑠湖が来たようだ。
しかし…みゆが瑠湖に話しかける前に、りのは自己紹介をしていた。
「わたし、りの!縣莉乃っていうんだよ!よろしくねっ!!」
「よろしく〜。ウチ、参沢瑠湖っていうの。参るに沢って書いて、みさわ。よろしくね〜!!」
二人の世界に入る前に、あたしも輪の中に入らないと…!
そう思ったみゆは、
「るこるん!」
と、割って入った。
「今日、あたし用事あるんだ!だから、早めに…」
途中まで言うと、瑠湖は察してくれたよう。
「そだね、ごめん。帰ろっか〜」
と、校門に向かって歩き始める。
それに安堵するみゆ。
……当然、用事があるなんて嘘だ。
ただ…二人で帰りたいがために吐いた、小さな嘘。
親友を騙した……。
少しの罪悪感は覚えるものの、みゆは何事も無かったかのように歩く。
しかし、心の中は正直。
(結局、りのも一緒になっちゃった)
……と文句を垂れる。
しかし次の瞬間、
「ねえ、二人は今日のテストできたー?」
というりのの声にハッと我に返った。
意味深な笑み。
(りの、本当に絶対の魔法に気付いたのかな…)
改めて不安になった、みゆ。
しかし、そんなことは二人に関係ない。
「え〜っ、ウチ全然自信ないよ…。みゆっちも天才だけど、りのちゃんも頭良さそうだもんね〜」
瑠湖の純粋な返答に、みゆは複雑だった。
(りのも、頭が良さそう……?)
自分の方が、りのより頭が良い。
みゆは確信していた。
日々の生活態度を見て、特に。
(りのは空気読めないし、言動も幼稚だし……)
瑠湖は、優しいんだ。
だから、思ってもいない褒め言葉を……。
でも、絶対の魔法を使わずに比べたら?
そう考えると、学力は負けているかもしれない。
その事実が、よりみゆを苛立たせた。
……でも。
(絶対の魔法を使いこなして、人の裏側も考えて行動しているあたしだもん。負けるなんて、あり得ない…)
そう無理矢理思い込んだみゆは、
「りのはどうなの?勉強得意?」
と、強気に返した。
邪魔ス冫ぞ(▼一▼)ノ ̄~~ズカズカ ¬(`A´)ノ=〔〕邪魔すんなら帰ってええよ
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