☆魔法少女始めました☆

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1:スミレ◆aw:2018/06/14(木) 21:53

ピピピピ……そんな音をたてるのは、枕元にある目覚まし時計だ。

それが聞こえるということは、もう朝なのだろう。


「ううん、もう少し寝かせて……」

私は、のんきなことを言いながらも、目覚ましを止めた。


「ふぁあぁぁぁ……」

大きなあくび。自分でもわかるくらいの。
そんなわけで、今日も一日が始まるのだ。

2:スミレ◆aw:2018/06/14(木) 21:57

「おはよ、ママ」

「いのり、おはよう」

リビングに降りると、ママが朝ごはんを作っているところだった。


「もうすぐ出来るから、他の準備済ませちゃいなさい」

「はぁい」

私は寝起きだったので、まだだるそうに返事をする。

「準備……顔洗ったりとか」

そうつぶやくと、洗面所に向かった。

3:スミレ◆aw:2018/06/14(木) 21:57




「ぷはぁ……ふう」

顔洗ったり、歯を磨いたり、とりあえずやることはやっただろう。
目が覚めてきた私は、もう一度リビングに向かうことにした。


どたっ……



「……ん!?」

ドアの前で、足を止める。
何か、足音みたいなのが聞こえた気がしたからだ。


「な、なに?」

耳を澄ませてみるけど、何も聞こえない。
大きな音のはずだったけど、洗面所には私以外誰もいなかった。


「きの……せい?」

まだ目が覚めてないのかなって思ったので、
もう一度顔を洗ってから戻ることにした。

4:スミレ◆aw:2018/06/14(木) 22:11

「ふうっ……ふうっ……ぷはあ……」

二回目は顔を洗うだけだったので、少し回数を増やした。

小学生でここまで顔洗ってるの、私くらいだろうな……なんて思いながら、
顔をタオルで拭く。

「……もう、何も聞こえないよね?」

顔を洗う回数を増やしたのは、さっきの出来事が怖かったからっていうのもある。

……だけど、もう大丈夫だろう。

頭の中で言い続けながら、私は洗面所のドアに手をかける。
……その時だった。


どたっ どたっ


「え……」

さっきの音が、また聞こえてきた。
どたって、床を踏む音みたい。

……つまり。

「だれか、居るの……?」

洗面所に、誰かがいる。なんかそれしか思いつかない。


どたっどたっ……


「……また!」

どたどたって音。どこから聞こえてくるんだろう……?
そして、誰が居るんだろう……

5:スミレ◆aw:2018/06/15(金) 01:22

誰か、居る……こういうのはママを呼んだほうが良いはずだ。
泥棒さんなら、警察に110番してもらえるし。


「よし……」

ママを、呼ぼう。そう思った私は、ゆっくりと後ずさりながら
後ろにある洗面所のドアを開ける。そして……


「マ―――」


大声で、ママを呼んだ……はずだった。


「……ちょっとだけ、静かにしててほしいキラ!」

「ん、んー……!?」


なにかに、口をふさがれる。
それは、泥棒さんじゃなくて……うさぎのぬいぐるみだった。



「……転送!」

てんそう……ぬいぐるみがそう言うと、目の前が真っ白になっていく―――

6:スミレ◆aw:2018/06/15(金) 01:51

「……はっ!」

目が覚めた私は、周りを見渡してみた。


「ここ……どこ?」

黒目の青っぽい色があって、それが続いている場所。
アニメで言うと、いくうかん?


「起きたキラね」

「あ、ぬいぐるみ……」

声のしたほうを見ると、さっきのうさぎのぬいぐるみが、
ちょこんと立っていた。


「きららはぬいぐるみじゃないキラ。妖精キラ」

「ようせい……ようせい!?」


朝のアニメでやってるような、魔法少女のおとも……
それが今、私の目の前にいる……のかな?


「妖精キラ。きみには、魔法少女になってほしいキラ」

「え……!?」

本当に、魔法少女のおともだった。
それよりも、私が魔法少女に……?

7:スミレ◆aw:2018/06/15(金) 02:14

夢だ。わたし、まだ起きてないんだ。そうに決まってる。


「……えいっ」

夢なら覚める。痛くない。
そう思って、ほっぺたをつねってみた。


「ッ……!!」

痛かった。


「……何してるキラ?」

「あはは……」

困った表情でこっちを見る妖精さんに、わたしは
苦笑いしか出来なかった。


「妖精さん、なんで私なの?というか、どうして私の家にいたの?」

わからないことがいっぱいなので、色々聞いてみることにした。


「順を追って説明するキラ。まずきららは、この地球の反対側にある
妖精の世界からやってきたキラ」

「地球の反対側?そんなのがあるの?」


「妖精の世界と地球、何百年も前からバランスをたもってるキラ」

「へぇ……」

地球の反対側の世界……難しい宇宙の話はよくわかんないけど、
なんとなく興味が湧いてくる。


「で、その世界は滅んでしまったキラ」

「ほろんだ!?」

興味をもたせておいて、今度はこんなことを言うなんて……


「こっからがちょっと長いキラ。心してきくキラ」

「う、うん……」

8:スミレ◆aw hoge:2018/06/15(金) 16:32

「平和な妖精の世界に、また別のところからの闇の組織が現れたキラ」

「ほろんだって……そいつらがやったの?」

私が聞くと、きららはこくりとうなずく。


「名前は、ブラックダーイ。世界を暗黒に染めるとか言ってたキラ」

「すっごく悪そう……」


「悪いってレベルじゃないキラ!きららの仲間たちは、みんなあいつらに捕まって……」

きららの言葉が、なんだか激しいと感じた。
お友達が捕まるなんて話、しないほうが良かったのかな……?


「ごめん!そこまで話させちゃって……」

「良いキラ。そこまで説明しないといけないキラ」

そう言うと、きららは続けた。


「きららだけ、なんとか逃げられたキラ。
そして、ブラックダーイを倒すために、人間界へ……」

「で、わたしの家に……」

9:スミレ◆aw:2018/06/16(土) 00:56

「実を言うと、一週間前から家の中にいたキラ」

「そんな前から!?」

一週間……全然気づかなかった。
というか、家族の誰も気づいてなかった。


「今日も近くにいたのに、あまりにも気づいてもらえなかったから……こう、ドッタンバッタンと」

「あれ、ちょっと怖かったんだから」


あのときは、ほんとに怖かった。
しかもそのまま口塞がれるし。


「キミ……なんでそんなに冷静キラ?」

「えっ?」



「だって、きららのこととか魔法少女のこととか、普通はこんらんするキラ」

混乱してないわけじゃ、ないんだけどな……。
だけど、そこまで慌ててないのは自分でも……なんでだろ?


「……わかった!」

「キラ?」


「ほっぺたつねって、夢じゃないって思ったからだよ」

「夢じゃなかったら、余計こんらんするキラ!」


「しないよ?」

「えっ」

私の言葉に、きららは目を丸くした。


「なんか、納得しちゃって」

言葉が出なかったから……こんな答えになっちゃった。
でも、いいよね?


「そうだ。なんで私が、魔法少女なの?」
私の質問に対して、きららは首を横に振る。


「そこは細かい事情が色々あるキラ。聞くなキラ」

「えー」

……そこ、いちばん大事なところだよね?
そう言いたい思いをぐっとこらえた。

10:スミレ◆aw hoge:2018/06/16(土) 17:25

「妖精の世界からなんとか持ち出した、魔法の変身アイテム……渡しておくキラ」

きららはそう言うと、どこからか長い棒を取り出してきた。

「これ……」


ただの棒じゃない。
キラキラとした飾りがついた、魔法のステッキだ。


「これで、キミも魔法少女キラ!」

……魔法のステッキを、手に入れた。


「魔法少女になったけど……私、どうすればいいの?」

「そうキラ!生き残ったきららを追いかけて、あいつらがこの世界に入ってくるキラ。絶対!」

「えっ!」


口に出さなかったけど、もともとこれ……きららのせい?


「というわけで、よろしく頼むキラ!」

「よろしくって―――」

次の瞬間また、目の前が真っ白になって……


「あ……」
気がついたら、洗面所に戻っていた。


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