一つ、小さな影が素早く森を駆け抜けた。
纏った布を揺らし、小さな相棒を連れ、いつもの場所へ向けて足を動かす。
木々の隙間を、大きな雑草を掻き分け、ぼんやりと見える光を目指し、その人影は走っていたはずだった。しっかりと、光から目を離さず。
____ ふと、視界が切り替わる感覚に瞳を揺らす少女は、自慢の黒髪に触れた。変わらない。いつも通りの黒髪と、目の前に入るのは
いつも通りの、教室の扉だ。
・感想とか書いてくれるとモチベ上がります
>>5
ありがとうございます
楽しみにしてます!
8:百合◆xs:2018/08/11(土) 14:20
涙をこらえ、膝に顔を埋めていると、ふと、誰かに肩を叩かれて顔を上げる。
「 __Y.どうしたの? 起きたと思えば膝抱えて 」
そう言いながら私に向かって首をかしげるのは、妖精の羽らしきものを生やし、パタパタ途中を飛ぶ小さい猫。
その猫が目の前に来たのにハッとして、慌ててベッドの上に座りなおす。
「 あ、なた…は? 」
震える手を伸ばし、相手を指差してそう問えば、普通の猫のように毛繕いする姿を見せてんー、と伸びをした後こちらへ向き直し、
「 Y.君、頭壊れちゃった? 」
「 は? 」
唐突に心に刺さることを言われ、素で返答すると、猫は愉快に笑って早々、と小さく呟く。
「 その返しが何時もの君だね、何か起きたと思って心配しちゃったよ 」
その何気ない一言と、今までの会話に何か引っかかりを感じて、猫に視線を向ける。
猫は、自然に気づくなり体制を変えて、次の発言を待つように私を見つめる。
私は、恐る恐る口を開いて、猫に問いかける。
「 Yって、貴方が指す “ 君 ” って____誰のこと? 」
そう、私の問いを聞くと、猫は何も答えず表情も変えずその場に固まる。
凡そ数秒で気まずい雰囲気が流れ始め、猫は空気を読んだように咳払いをした。
「 ごめ、どう言うことかわからないんだけど 」
猫は困ったような表情を浮かべ、私に近づけばまじまじと姿を見つめて続ける。
「 容姿も別に変わったところはないし、性格も____ まぁYにしたらおとなしいくらいで… 」
猫曰く、私と “ Y ” と言う名の少女には余り性格的違いがないらしく、信じきれてないことを実感させるような視線で私を見つめた。
「 まぁ、もっと緊張が解けたのが Y って感じかな 」
…肉体。
ふと、この身体が少女の物だと思い出して髪に目を向ける。
私は確かに黒髪…だった。はず、なのに、
「 …な、んで 」
瞳に入った金色の髪は、確かにその身体が “ Y ” と言う少女の物だと突きつけられる、十分な証拠だった。
知らなかった、トリップする恐ろしさを。
グッと唇をかみしめて、猫を見つめれば、猫は少し息を整えてから、わかったよ、と零す。
「 君の言うことを信じ、他の人にはこのことは黙っておこう。…だから、君もバレないように気を付けて。ある程度は僕が教える 」
猫の真剣なその瞳を見つめてゆっくりと頷けば、猫は安堵のため息をこぼしつつ私に “ Y ” と言う少女のことについて、語り始めた____
猫が言うことが正しければ、私の素と Yと言う少女の性格は似ているらしい。
「 一人称、性格、気をつけてね 」
猫の注意にコクコクと頷きながら出された衣装を見に纏い、立ち上がる。
「 うわ、かる 」
Yの身体はそう言葉がこぼれるほど軽々しかった。
「 嗚呼、その子の身体は風の加護を受けているからね 」
「 …ふぅん、凄い子なんだ? 」
そう言いながら猫に視線を向ければまぁね、と小さく呟きながら私に後をついてくるように仕草を見せる。
後に続きながら外に出れば辺りは緑色が覆い尽くしていた。
天才じゃん
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