いつもと変わらない街並み。
いつもと変わらない人々。
いつもと変わらない日常。
……変わらないまま、時が過ぎていた。
と、言うより、過ぎる時すらその場所には存在しないのである。
全ての時が、止まっているのだから。
「……はあっ、はあっ!」
全てが止まった世界で、ただ一人動いている少女がいた。
その少女は、腰にバックルを巻き、肩や脚に防具のついた青色の戦闘服に身を包んでいる。
「誰か、誰かいないの?誰か、止まっていない人は……!」
その少女は、探していた。
手に持ったもう一つの同じバックル……タイムドライバーを託せる人間を。
「居るはずないだろ?俺らが全部止めてんだから」
「くっ……また、あなた!」
少女を嘲笑い、立ちはだかる若い青年。
長丈の服を着た青年の隣には、怪獣をそのまま小型化したような異形の怪物が従えられていた。
「ぐるるるる……」
「ま、負けないんだからっ……勝って、明日を取り戻してみせるんだから!」
少女は、戦闘用手袋で覆われた両手をしっかりと構え、戦闘態勢を取る。
「やれ」
青年の合図で、怪人が少女に襲いかかった。
そして少女も、怪人に向かって飛びかかり、そして………!
光が、彼女たちを包んだ。
クライマックスか!?
82:ふたば◆r.:2019/09/28(土) 20:42 ……直後、変身が解除され、あすかが倒れた。
力尽きるように崩れ落ちる彼女を、サキミラが受け止める。
「あすか……」
「おねえ……ちゃん……もう、巻き戻さなくてもいいよ……わたし、
思い出したの。お姉ちゃんがお姉ちゃんだった時のこと。
もうそれだけで、わたしは十分まんぞくだから……」
あすかの呼吸が、どんどん小さくなる。
意識が戻らなくなるだけではない。死ぬことを暗示しているようだった。
パラドックスの言う通り、限界が来たのだ。
「ダメよ……それじゃあ私は、何のために戦ってきたの!あすかを、妹を助けるためだったのに……!」
サキミラはあすかの手を握り、必死に呼びかける。
彼女の目からは、涙がこぼれ落ちていた。
「お姉ちゃんは……明日に向かって、すすんで……わたしはずっと……それを願ってたから……」
「あすかちゃん……せっかく、奇跡が起きたと思ったのに……いや!死んじゃ、いや……!」
玲奈も、あすかに呼びかけた。
死なないで、死なないでと。心の中でも叫んでいた。
その願いを跳ね除けるように、あすかの目がどんどん閉じていく。
「ありがとう……わたし、みんなの明日を……守れ______」
あすかはゆっくりと目を閉じ、手からも力が抜けた。
そして完全に、動かなくなった。
「あすか……あすかぁぁぁぁぁ!うわああああああん!」
サキミラはついに、大声を出して泣いた。妹の名を呼びながら、泣いた。
時空の歪みでも何でもない、実の妹のために。
二人の変身が解けると同時に、あすかの体が光の粒子に包まれていく。
「あ……」
「ドライバーも、消えていく……」
あすかと一緒に、3人のタイムドライバーも粒子に包まれていた。
そして発光し、消え去った。
……学校の騒がしさが、二人の耳に入ってくる。
全て終わったのだ。全て。時間が止まることも、もうない。
「咲ちゃん……タイムドライバーって、あすかちゃんの願いそのものだったんじゃないかな」
「えっ?」
「みんなで生きたいって言う、願いの形だったのかもしれない。叶わなかったけど」
空を見上げながら、玲奈は呟く。
サキミラも同じように見上げながら、返事をした。
「ううん。私たちは確かに、同じ時間を生きたよ。いっぱいいっぱい。
あすかは、疲れちゃっただけなんだよ。だから……休ませて、あげようっ……!」
二人は抱き合い、しばらく涙を流した。
泣き疲れるまで、泣き尽くしたのだった。
___20年後。
「……はい、強盗容疑ね。器物破損もあるわね」
「く、くそおっ!」
白昼の街中……。
一人の女性刑事が、犯人を捕まえていた。
肩を極めつつ、軽やかに手錠を掛ける。
「お疲れ様です!今川刑事!」
「はい、しっかり取り調べしなさいよね」
駆けつけた他の警官に引き渡され、犯人は連行されていった。
今川と呼ばれたこの女性は、サキミラ……咲である。
あの戦いから、咲は警察官になることを夢見た。
あすかの守った明日を、今度は自分で守れるようになりたいと。
「みんな、あなたのことを忘れちゃったよ。あすか。
でも、私と玲奈は、ちゃんと覚えてるから……見てくれてるかな、ふふっ」
上を見上げ、独り言のように言う咲。
空は雲のない青空で、日差しも少し眩しい。
___頑張って
そんな声が、彼女に聞こえた気がした。
終わり。
泣けた…
俺もこんなふうに書いてみたいなぁ
泣けて頂けてとても嬉しいです
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