むかしむかし、俺が死ぬ前の話。
自分の"殺した"人間の骨を使い、麻雀牌を作って収集している魔女がいた。
巧みな話術で人を惑わせ、時には怪しげな薬を渡し、人殺しの手伝いをしていたと思う。
彼女は確か、"半殺し屋"と名乗っていた。
>>02 登場人物
[東塚 黒之助 (ひがしづか くろのすけ)]
新米のキャリア刑事(25歳)。
幼少期に母を殺害した父を逮捕するため、密かに捜査している。
唯一父親の手がかりを掴めるかもしれない紗宵に頼ろうとするも、刑事としてのプライドとの間で苛まれる。
[秋南 紗宵 (あきなみ さよい)]
自称"半殺し屋"として復讐の手伝いをしている中年女性。
等価交換を信条としており、『誰かを殺めるなら自身も殺めろ』という条件を飲める者だけ依頼を引き受ける。
自殺した依頼人の骨を麻雀牌にして収集している。
普段は麻雀バーのオーナーを一人で切り盛りしている。
[東塚 浦之助 (ひがしづか うらのすけ)]
黒之助の父親。
妻を殺害し、黒之助に暴行などの虐待を行っていた。
約十数年間もの間逃亡しており、未だ行方は掴めない。
博打狂いで、特に高レートの賭け麻雀に明け暮れていた。
[東塚 衣亜 (ひがしづか いあ)]
黒之助の母親。
夫の浦之助からDVを受けた末に殺害されてしまう。
なぜか紗宵と面識がある。
[筒中 色之助 (つつなか いろのすけ)]
浦之助の隠し子と名乗る謎の青年(19歳)
黒之助と同じく父親の浦之助を捜しており、復讐を果たすために紗宵を頼る。
浦之助の残した借金を連帯人として背負わされており、とてつもなく貧乏。
[竹柴 索子 (たけしば もとこ)]
自称"色之助の彼女"だが相手にされていない女性(23歳)。
色之助に助けられたことから、借金を肩代わりする。
両親はマカオでカジノを経営しており、金銭感覚の狂ったお嬢様なところがある。
[萬屋 千鞠 (よろずや ちまり)]
黒之助の同僚の刑事で、黒之助に想いを寄せている。
不可解な自殺の真相を探っており、紗宵の元へと近づいていく。
「今月二件目ですよ、欠損自殺者! 多くないですか!?」
「あぁ、そうだな」
刑事というのは忙しいもので、昼食の時間ですら優雅にとることはできない。
東塚黒之助(ひがしづか くろのすけ)、今年配属されたばかりの新米刑事だ。
午後からの捜査会議に向けて、同僚の萬屋千鞠(よろずや ちまり)とコンビニ弁当をつつきながら配布された資料に目を通していた。
隣から萬屋が捜査情報に対して一々ツッコむので、鬱陶しくなってきた。
「ただ自殺しただけなら珍しくもありません。でも、なぜか自殺した加害者は必ず体のどこかが欠損しているんですよ! 腕とか、足とか。欠損した所も現場からは見つかっていないですし」
「……そうだな、変だな」
確かに奇っ怪だな、と少し冷たいトンカツを飲み込みながら思ったが、頭に捜査情報を詰め込むのに精一杯で、気の利いた返事をする気力が無い。
死因、脂肪推定時刻、被害者や加害者の相関関係、解剖結果。
これらを全て把握し、その上で自分の見解も述べられるようにしなければ置いてけぼりにされる。
まぁ、今回は痴情の縺れから成る刺殺だろう。
被害者は九島真太、加害者はその妻九島京子。
ベッドの上で二人とも亡くなっており、夫の方はは首を切られ、妻の方は腕が切り落とされ、もう片方の手で自身の心臓に包丁を突き刺している。
恐らく文字通り寝込みを襲った後に自殺したとみた。
ここまではドラマなどでお馴染み──よくある事なのだが、問題は自殺した妻、九島京子の片腕の行方だ。
現場からは見つかっておらず、侵入した形跡はあるが足取りは掴めていない。
「九島京子が切り落とした腕を誰かが持ち去ったんでしょうか? それとも九島京子が自殺した後に誰かが切り落としたんでしょうか? なんの為に腕を持ち去ったんでしょうか!? 持ち去った人物は九島京子とどういった関係なのでしょうか!?」
「それを午後からの会議で考察するんだろ。今分かったら苦労しない」
さっさと弁当を平らげた俺に対し、先程から話してばかりの萬屋の弁当は減っていなかった。
こいつは泳がないと死ぬマグロみたく、口を閉じたら死ぬのだろうか。
「そろそろ時間だ。俺はもう会議に行く」
「あ、待ってくださいよ〜クロノスさん!」
「その呼び方やめろっ!」
萬屋は焼肉をかき込みながら俺を追いかけた。
人懐っこい、悪く言えば馴れ馴れしい。
萬屋は"黒之助"が長くて呼びにくいから、と勝手にクロノスとあだ名をつけて呼んでいる。
いつしか他の部署にまで広まり、上司にまで"クロノス君"と呼ばれる始末。
実際、黒之助は俺の親父がクロノスを意識して名付けたものだから似ているのも当たり前だ。
だが、俺はこの名を忌み嫌っていた。
「本物なら苦しんでない」
ギリシャ神話に登場する有名な神、クロノス。
彼は自身の実父であるウラノスの局部を鎌で切断して殺害する。
クロノスだったら、実の父親を殺せた。
俺のウラノス──東塚 浦之助(ひがしづか うらのすけ)は、あと少しで時効が成立する。
「なにぼーっとしてるんですか、クロノスさん」
「……別に。眠いからコーヒー買ってくる」
コーヒーを飲んで一服吹かした後、会議の3分前に着席した。
大方資料は目を通してあるので焦ることもない。
会議が始まると、全員一斉にホワイトボードへ目を向けた。
顔写真や地図、遺体の写真がマグネットで貼られている。
管理官が手元のファイルを読み上げながら、考察を述べる。
「自殺した九島京子の右腕についてですが、持ち去った人物は恐らく玄関から入ってきたと思われます。鍵を破壊した形跡は認められなかったため、元から玄関には鍵はかかっていなかったのでしょう」
「鍵を所持してるのは、高校生の息子の九島裕司君だろう? 彼が持ち去ったという線は?」
「事件当日は恋人の家で一泊していたというアリバイがあるのでその線は薄いかと」
家中の窓は閉められており、唯一空いていたのが玄関。
まぁ、九島京子が戸締りを任されていたのならば、鍵をかけていないのも頷ける。
これから死ぬことが分かっているのだから、わざわざ鍵をかける必要もないと思ったのだろう。
「しかし腕か……利用価値のある臓器ならまだしも腕、しかも死んだ人間のを持ち出す者の意図が知れん」
理事官は顔を顰め、ホワイトボードを眺めた。
視線の先には、ミロのヴィーナスよろしく右腕を切り落とされた女性の遺体。
シーツとネグリジェに赤黒い血がこびりつき、スプラッター映画のワンシーンを彷彿させる。
と、その時、隣に座っていた萬屋がピンと右腕を上げて何か言いたそうにしていた。
「萬屋、なんだ?」
「はい! 恐らくこの事件も、今月に3件あった遺体欠損の自殺者と関連があります。今回は片腕、その前は左足、それから頭、そして先月は骨盤なども持ち去られていました。持ち去った人物は、恐らく身体中のパーツを集めるつもりなのではないでしょうか!? なんかこう……リアル人体模型、みたいな……!」
萬屋の発言に、次々とパイプ椅子の軋む音が響いた。
身を乗り出し、前後左右と相談し始める刑事達。
「猟奇趣味のある者の犯行か……」
「少なくとも九島京子に対する恨みとかではなさそうだな」
「それなら腕とかチマチマ集めてないで一気に持ち去るだろう?」
「馬鹿、いっぺんに持ってけないから分けてんだろ。今月は腕と足、来月は頭蓋骨〜みたいな感じで」
「デアゴスティーニの付録かよ」
萬屋の言った考察は分からなくもないが、俺はその可能性は無いと思った。
遺体は腐敗する。
腐敗した遺体は悪臭を放つから長いこと置いていけないだろうし、そんな家があれば目立つに決まっている。
「しかし遺体は腐敗するので、全て集まる頃には人体模型どころではないと思いますが」
中年の刑事が、ちょうど俺の思ったことを代弁して述べていた。
萬屋は悔しそうに唇を歪めたが、萬屋よ。
その線、そう遠くもないと俺は思うぜ。
「これでますます分からなくなってきたな……」
「もう一度捜査だ。萬屋の言う通り、自殺遺体の欠損はこれが初めてじゃない。過去に起きたこの手の事件を洗い直して関連性を見つけろ!」
「はいっ!」
会議はお開きとなり、次々と出口から人が吐き出されていく。
さーて、これからどうするか。
「息子に話を聞くか……」
事件当日に鍵を持っていたという九島京子の一人息子、九島裕司の元へ向かうことにした。
九島裕司は現在、警察の手によって拘束されている。
取り調べに来て欲しいと要請すると、すぐに手配してくれた。
龍柄の派手なスカジャンを着た九島少年は警官に連行され、取り調べ室に入れられた。
慣れたような素振りで、俺の対面にあるパイプ椅子へと腰掛ける。
両親が死ぬという突然すぎる悲劇と、何日にも渡る取り調べに疲れたのか彼はやつれていた。
よくよく見ると目の周りも僅かに腫れていて、泣いた跡がある。
「何度も申し訳ない、少し尋ねたいことがあって」
「……事件当日なら俺、恋人んとこ行ってたし何も知りません」
何度もしつこく訊ねられたのだろう、目も合わせず、投げやりな様子で返した。
「ご両親、いつも仲悪かったのか? きっとお前さんも夫婦喧嘩に巻き込まれたりしただろう」
「んなこと訊いてどうすんだよ。もうお袋が犯人だって分かってんだろ。構うなよ」
静かだが、憤りの篭もった声だった。
──似ている、20年前の自分に。
「いやなに、俺も母を父に殺されたことがあってね。お前さんみたいな境遇の子はどうも放っておけなくてな」
「……刑事さんも……?」
「19年前、俺が六歳の時。殴り合いの末だった。犯人の親父はあと1年で時効成立だ」
少年の訝しげな表情が一変、警戒が薄れた顔になった。
母親を殺されて良かったと思ったことは決してないが、こういう昔話は被害者遺族の心を開ける。
利用できるものは、できる限り利用する。
「浮気が原因だった。前は、あんなんじゃなかった」
物憂げな瞳からは、今にも塩水が零れ落ちそうだ。
これ以上家族のことを詮索するのは彼にとってもよろしくないと思い、話題を変える。
「そ、そうか……あー、そうだ、事件前に鍵を誰かに渡していたりとかしたか?」
「鍵? 別に渡してねぇけど……」
事も無げに返す辺り、嘘をついている様子も見られない。
だとすると、玄関の鍵は元から開いていたことになる。
まるで九島京子がわざとその人物をおびき寄せるように……。
「あぁもう散々だ。お袋も親父も死ぬし、百合は連絡つかねぇし……っ」
「百合? 事件当日に会ってた彼女か?」
頭を抱えて項垂れる彼の口から、聞き慣れない名が出る。
「そう。連絡しても出ねぇし、取り調べばっかで会いに行けねぇし……」
「あー……分かった。俺がその人のとこに連れてってやるよ……」
「本当か!?」
さすがにもう事件と無関係に近い彼を何日も閉じ込めておくのは不憫だろう。
連絡がとれないというのも警察としては事件性が無いか少し心配だ。
上にかけ合った結果、俺が同伴することを条件に、1日外出を認めて貰うことが出来た。
車を手配して少年を助手席に座らせると、小音でラジオをかけた。
ノリのいい女性DJのお便り紹介。
ラジオネーム"刺身とかに付いてる小さいタンポポみたいな花"さん。
くだらなさすぎて、すぐにラジオを切った。
「……で、その百合って人はどこにいる?」
「多分この時間なら、家じゃなくてバイト先にいる可能性が高いと思う。麻雀バーの"緑一色(リューイーソー)"ってとこ」
「麻雀……」
俺の親父も麻雀を嗜んでいた。
否、嗜むなんて上品な言葉じゃなくて、溺れていたって言う方が正しい。
高レートの賭け麻雀に手を出し、運否天賦に任せては一喜一憂していた。
幼い頃は積み木の代わりに親父の麻雀牌を積んでいた記憶がある。
麻雀に罪はないが、麻雀は嫌いだ。
あの牌のぶつかる音、ジャラジャラと響く点棒の音、ロン、ポン、チーの鳴き声。
「まぁいいや、緑一色(リューイーソー)ね」
エンジンをかけ、やり切れない気持ちでアクセルを踏んだ。
Googleマップで検索しても目欲しい情報は無かったため、九島少年の案内を頼りに走らせた。
踏み切り待ちで互いの会話が途切れ、沈黙が流れる。
カン、カンと規則正しい電子音だけが流れていく。
なんとなく気まずくなり、なにか話題を、できれば情報収集を、と無いに等しいコミュ力を発揮する。
「麻雀、やるのか?」
「ううん、麻雀全然分かんねぇ。1回だけお袋に『紗宵(さよい)さんに息子を見せてあげたい』って連れてこられて、そん時にバイトしてた百合と会って連絡先交換しただけ。麻雀やってんのはお袋。ちょっとだけお金も賭けてた」
「そうか……俺は親父の方が麻雀やってたなぁ」
麻雀という点でも、少年と俺には共通点があったようだ。
捜査情報で博打狂いとも書かれていなかったし、俺の親父とは違って本当に趣味、常識程度に牌を摘んでいるだけなのだろう。
まぁ低レートだろうが高レートだろあが、賭け麻雀は賭け麻雀、違法だ。
「捨牌読みもロクに出来ない、無駄にカンする、点数計算は遅い。今思えば、あんな男は食い物にされるだけだったよ」
「刑事さん詳しいじゃん。麻雀やってたの?」
「……少し、勉強してたことがあって」
『黒之助、大きくなったら俺とコンビ打ちでたんまり稼ぐんだからな。今の内にルール覚えとけよ』
あの男を狂わせるほど面白い麻雀ってものを、怖いもの見たさで少し齧っていた。
母を失い、父を逮捕することだけが目標だった時に、なにか一つでも熱中できるような趣味が欲しかったのかもしれない。
結局、牌の音は不快な過去を思い出させるだけで、俺を燃やしてはくれなかった。
──ガタンガタンと電車が忙しなく通り過ぎ、瞬きを一度したら既に車体は消えていた。
「あっ、次、左」
「はいよー」
もう一度ラジオを付けると、今度はまともなニュース番組が流れていた。
「あーここが緑一色(リューイーソー)だよ」
少年が指さしたのは、こじんまりとしたビルだった。
深いヒビ割れ、ガムテープで補強されたガラス、雨樋に巻き付くツタ。
テナント募集という看板がついていたが、当分店なんか入らないだろう。
幸いにも駐車場が空いていたため、車を停めてビルへ入る。
どうやらこのビルの地下一階が麻雀バーらしい。
「緑一色(リューイーソー)ってなんだ? 最初はみどりいっしょく、って読んじゃったよ」
「知らなかったんかい……麻雀の役だ。しかも役満、揃えられたら凄い。文字通り緑だけの牌で、最も美しい役だって言う人もいる。詳しくはググれ」
「へぇー、よく分かんねぇけど、すごいってのは伝わった」
そんな雑談を挟みながら古びたコンクリートの階段下ると、電光看板が点滅していた。
どうやら壊れかけているらしい。
"麻雀bar 緑一色"という筆書体の文字が踊り、下部には緑一色の牌が並んだイラストが描かれている。
ドアを開けると、一気に夜の世界に来たみたいになった。
窓が無く、明かりも白熱灯がぽつぽつとあるだけなので、午後一時に似つかわしくない薄暗さだ。
奥の方で全自動麻雀卓を囲む中年男性を横目にカウンターの方へと進む。
「いらっしゃいま……えっ、裕司君……!?」
丈の短いチャイナドレスを纏った少女が、お盆を落として九島少年を見ていた。
どうやら彼の推測通り、百合さんはバイトに出ていたらしい。
「警察に行ったんじゃ……あっ!」
「……警察?」
九島少年が顔を顰めた。
「なんで俺が警察に行ったって知ってるんだよ。連絡してないよな?」
「あっ……いやその……」
口篭り始めた彼女は、弁解できずに動揺している。
どうやら何か、事情を知っているらしい。
「あーらら。よくもドジ踏んでくれたねェ、百合」
予想外の展開に立ち往生していると、カウンターの奥の方から、一人の女性がコツコツとヒールを高らかに鳴らして現れた。
なんだ、この女──。
歳は多く見積って50くらいだが、ド派手な赤いスーツを着ている。
しかし若作りしているような見苦しさはなく、見事に調和していた。
ただでさえ着こなしにくい赤いスーツを、宝塚歌劇団よろしく着てみせている。
唇もこれまた血肉を貪った後のような真っ赤な紅を引いており、思わず自身も喰われそうな畏怖を覚えた。
髪は白髪のはずなのに、なぜか銀髪だと思わせるような輝き。
少し長めの前髪が片目を隠し、ミステリアスな雰囲気を漂わせる。
少女は勢い良く頭を下げると、申し訳なさそうに謝罪した。
「すっ、すみません紗宵(さよい)さん……!」
「まぁいいさ」
紗宵、聞き覚えのある名だと思ったら、先ほど九島少年の話に出てきた人物だ。
つまり九島京子と交流があった人物。
「九島さんとこの息子さんか、久しぶりだね。立ち話もなんだ、座ったらどうだい?」
「はぁ……」
俺と少年は顔を見合わせると、端っこのカウンターへと腰掛けた。
平日の昼間っから酒を飲む酔狂な連中は後ろの麻雀に熱中しているオヤジくらいなもんで、カウンターには俺たち以外の客はいなかった。
「好きなカクテル言いな。アタシの奢りだからうんと高いのでもいいさ」
紗宵と呼ばれていた女性は手際よくカクテルグラスを拭きながら言った。
「俺未成年だし……」
「あ、俺も勤務中なんで飲酒はちょっと……」
「ノンアルのカクテルもあるだろうが! ちっとは腕を自慢させておくれよ」
「んな事言われても俺にカクテルの善し悪しなんか分かんねぇよぉ。ノンアルのカクテルとか知らねぇし」
少年はメニューを訝しげに眺めてブツブツと呟いている。
「じゃあ無難にフロリダで……」
「ふろりだ?」
「ちょっと豪華なオレンジジュースだと思え」
フロリダとはもちろん、あのオレンジの産地で有名なアメリカのフロリダからついたカクテルだ。
オレンジジュースにレモン果汁や砂糖、アロマチック・ビターズ(リキュールの一種)を加えたもので、ノンアルコールカクテルの代表みたいなものだ。
「フロリダのカクテル言葉は元気。両親を亡くして落ち込んでる今のアンタに必要なもんじゃないかい? 少年」
「あっ、そういえばそのこと……! なんでおばさんと百合が知ってんだよ!?」
そんな会話を一言二言交わしたその間に、彼女はいつの間にか二人分のカクテルをカウンターに置いた。
カクテルグラスには夕焼けのようなオレンジが注がれ、レモンとチェリーがトッピングに浮かんでいる。