「 新入生の皆さん、ようこそ。帰宅部へ 」
桜の花弁が絨毯と化した四月半ば、橋下高等学校では新入生歓迎会が行われていた。
新入生は生徒会特製の新歓パンフレットを手にして、面白おかしく説明される部活動紹介を見ている。
「 なあ谷、お前部活どうすんの? 」
部活動紹介も終わりに差し掛かってきた頃、谷と呼ばれた男児は、隣に座っている頭を丸めた男児に話しかけられていた。
「 んー、まだ決めてない。でも多分帰宅だと思う。田中は? 」
「 俺は野球続けるよ 」
「 だよなあ…… 」
坊主頭の田中と谷は小学校からの友人だった。
髪の毛伸ばしてぇなあ、なんて言っていた田中が、入学式前に態々丸刈りにしていたのだから、谷は田中がどの部活に入るつもりでいるのか分かっていた。だから聞き返したのは殆ど確認に近く、社交辞令のようなものだった。
「 谷はもう野球はやんねぇの? 」
そして谷は小学生だった頃、田中と一緒に野球をしていた。始めたのは二人とも小学二年生の時。谷は中学生になる時に野球を辞めたのだ。
「 野球はもういいや。疲れるし 」
「 ……そっか 」
谷は田中の顔は見なかった。見たら自分が悪いことをしているように思ってしまうから。
谷には部活動で青春をするつもりはなかった。
青春には努力がいる。実らない努力はしたくない。
だからこそ早く家に帰りたいし帰宅部でいいや、なんて安易な考えは捨てるべきだったのだ。
さっそく面白いですね!応援しています!!
4:匿名:2019/09/26(木) 18:26帰宅部、という部活はありませんよ
5: 緋 ◆JA:2019/09/26(木) 21:37
結局谷は何の部活にも入らなかった。
この高校の特色として生徒の部活率の高さが挙げられているだけあって、何の部活にも所属していない人はこのクラスの中で数える程しかいなかった。
四月も終わりかけた頃。
谷は教師に呼び出しを食らっていた。呼び出されていたのは複数名だったが、仲の良い田中は呼び出されておらず、その事実が谷の不安を煽った。
「 日下部、谷、内藤、和田、今日の放課後に多目的室に来てくれ 」
クラスメイトの名前と顔が未だに一致していなかった谷は、教師に言われた時には分からなかったが、多目的室に行って彼ら三人の顔を見たらすぐに分かった。
この四人はどこの部活にも所属していない人だと。
部活に所属していない人を集めてどうするのか。学校の評判のためにどこかの部活に所属するよう言われるのだろうか。谷の頭には疑問しか浮かばなかったが、呼び出し通告をされた時より不安感はなかった。
次第に多目的室に人が集まってきた。
谷の中では全員新入生なのかという疑問が湧いてきたが、谷にはそれを分かる術はなかった。だがクラスでは片手で数えられる程しかおらず異端者のように扱われていた部活動無所属者も学校全体、あるいは一学年ともなれば一つの教室が丸々埋まる程にはいるという事実に安堵感さえ覚えた。
そんな時だった。
「 おお、今年もこんなに入部希望者がいるのか 」
「 問題なのは、この中から一体どれほどの人が残るのか、っていうことだな 」
とある生徒二人が多目的室に入ってき、何の躊躇いもなく部屋の前の方に立ったのは。
>>3 ありがとうございます! そう言って頂けると嬉しいです。
>>4 理解しています。ですがこの小説は私の想像で書きますので、何でも許せるような広い心持ちで読んで頂ければと思います。